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更新日 2026-07-23 起業時の知識第5回

個人事業主と法人、結局どっちが得?税金・社会保険・信用・手間を全部くらべた

「独立するなら、いっそ最初から会社(法人)にした方が得なのでは?」——開業を考え始めると、必ず一度はぶつかる問いです。ネットには「法人の方が節税になる」「個人は税金で損する」という言葉があふれていますが、その多くは“ある売上規模の人にとっては”という前提が抜け落ちています。

結論から言えば、これから独立する多くの人は、まず個人事業主でスタートして問題ありません。そのうえで「どこまで大きくなったら法人化を考えるか」を知っておく——これがいちばん損をしない順番です。この記事では、個人と法人の違いを5つの軸で並べて、あなたが今どちらを選ぶべきかを整理します。

この記事の結論
– 個人と法人は「税金・社会保険・信用・手間・コスト」の5軸で違う
利益が小さいうちは個人が軽く、大きくなると法人が有利になりやすい
– 法人化の“隠れコスト”は社会保険料と均等割(赤字でも年約7万円〜)
– 目安は所得800万〜1000万円。ただし数字は人により変わるので試算が前提

まず結論:5つの軸でくらべる

個人事業主 法人
税金 所得税は累進(5〜45%)。稼ぐほど税率が上がる 法人税の実効税率はおおむね一定。所得が大きいほど有利になりやすい
社会保険 国民健康保険・国民年金 健康保険・厚生年金に強制加入(会社負担が発生/将来年金は手厚い)
信用 取引・融資でやや不利な場面がある 対外的な信用を得やすい
手間・コスト 開業届だけ。維持費ほぼゼロ 設立費用がかかり、赤字でも「均等割」(最低でも年約7万円)。決算も複雑
始めやすさ 届出1枚ですぐ 登記が必要(司法書士の領域)

ポイントは、税金だけで判断しないこと。法人化で税金が減っても、社会保険料の負担増や事務コストで手取りが逆に減ることは珍しくありません。

税金:個人は「累進」、法人は「ほぼ一定」

個人事業主の所得税は累進課税で、所得が増えるほど税率が上がります(所得税法の税率表で5〜45%)。これに住民税10%、業種によっては個人事業税(3〜5%)も加わります。

一方、法人の所得にかかる法人税等の実効税率は、規模が大きくなってもおおむね一定です。さらに、社長個人が受け取る「役員報酬」には給与所得控除が使えるため、同じ利益でも所得を分散して税負担を下げやすくなります。中小法人には所得800万円以下の部分に軽減税率(15%)も設けられています(租税特別措置法。適用期限のある措置のため、2026年時点では最新の適用状況を要確認)。

つまり、利益が小さいうちは個人の累進の方が軽く、利益が大きくなると法人の方が有利になりやすい——これが「◯◯万円から法人化」と言われる背景です。

イメージで言うと:所得が数百万円のうちは、個人の所得税率も比較的低く、法人化しても社会保険料や均等割・税理士費用などのコスト増が、税金の節約分を食いつぶしてしまいがちです。ところが所得が800万〜1000万円を超えるあたりから、役員報酬による所得分散(給与所得控除)や税率差のメリットがコスト増を上回りやすくなります。ここが「法人化の分岐点」とよく言われるゾーンです(実際の分岐点は事業内容・家族構成・報酬設計で変わるため、あくまで目安です)。

社会保険:法人化の”隠れコスト”

見落とされがちなのがここです。法人になると、社長ひとりの会社でも健康保険・厚生年金への加入が原則として強制になります(健康保険法・厚生年金保険法)。将来の年金は手厚くなりますが、保険料は会社負担と個人負担の両方がかかり、「法人化=節税」のつもりが手取りは減ったという失敗の典型がこれです。

なお、社会保険の個別の加入手続きや保険料計算は社会保険労務士(社労士)の領域です。この記事は制度の全体像の説明にとどめます。

信用・手間・コスト

  • 信用:取引先や金融機関によっては法人としか取引しない・法人の方が融資に前向き、という場面があります。
  • 手間とコスト:法人は設立時に費用がかかり(株式会社でおおむね20〜25万円、合同会社で6〜10万円程度)、利益が出ていなくても法人住民税の均等割(最低でも年約7万円)が毎年かかります。決算・申告も個人より複雑で、税理士費用も上がりがちです。
  • 設立の手続き:法人設立の登記は司法書士の領域です。具体的な設立手続きは専門家に依頼するのが安全です。

で、あなたは今どっち?

判断の目安をまとめます。

  • まずは個人事業主でOKな人:これから独立する/利益がまだ読めない/手続きや固定費をシンプルにしたい。→ 多くの人がここ。
  • 法人化を”検討”するサイン:利益(おおむね所得800万〜1000万円)が安定して見えてきた/取引や融資で法人格が必要になった/役員報酬による所得分散のメリットが社会保険料の増加を上回りそう。

「◯◯万円から得」という金額は、給与所得控除・税率差・社会保険料のバランスで人によって変わります。数字を鵜呑みにせず、自分の利益と状況で試算するのが正解です。迷ったら、まずは個人で始めて、伸びてきたら改めて法人化を計算すれば十分間に合います。

よくある質問(FAQ)

Q. 「法人の方が節税になる」と聞いたけど、本当?
利益が大きい人にとっては本当ですが、利益が小さいうちは逆に手取りが減ることもあります。社会保険料の増加・均等割・設立費用・税理士費用まで含めて比べる必要があります。「規模による」が正確な答えです。

Q. 個人で始めて、あとから法人にできる?
できます(法人成り)。多くの人が「まず個人 → 利益が安定したら法人化」という順で進みます。最初から法人にする必要はありません。

Q. 法人にすると、赤字でも税金がかかるって本当?
本当です。法人住民税の「均等割」は、赤字でも毎年かかります(最低でも年約7万円)。個人事業なら赤字の年に事業関連の固定的な税負担は基本的に発生しません。

Q. 法人化のタイミングは、消費税とも関係ある?
関係することがあります。法人成りによって消費税の納税義務の判定がリセットされる場合があるなど、消費税の観点から法人化時期を検討するケースもあります。判断が複雑なので、具体的な数字で相談するのがおすすめです。

この記事の主な根拠(出典)

  • 所得税法(所得税の超過累進税率)/地方税法(住民税・個人事業税)
  • 法人税法/租税特別措置法(中小法人の軽減税率15%。適用期限あり・2026年時点)
  • 健康保険法・厚生年金保険法(法人は社会保険の強制適用)
  • 国税庁タックスアンサー(法人化・給与所得控除・均等割の各項目)

※税制・料率は改正されます。実際の判断は最新情報と個別試算で。社会保険手続きは社労士、法人設立登記は司法書士の領域です。

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