税務署から調査の電話が来たら──日程は相談できる。調査の日までの1〜2週間が勝負
税務署からの電話は、ある日ふつうにかかってきます。「税務調査をお願いしたいのですが」——この電話が来た時点で、上乗せゼロで直せる道は閉じます。ただし、半分にする道はまだ開いています。
電話から調査の日までは、ふつう1〜2週間。この期間をどう使うかで、調査の結果は大きく変わります。この記事では、電話で何が決まるのか、それから当日までにやること・やってはいけないことを、順番に整理します。
この記事の結論
- 電話で伝えられるのは日時・場所・税目・対象期間など。対象期間はふつう過去3年分(問題があれば5年、不正があれば7年に広がる)
- 日程は相談できます。合理的な理由があれば変更を求められると、法律に書いてあります
- 調査の日までに自分の申告を見直し、間違いがあれば先に修正申告を。この段階なら上乗せは半分(過少申告加算税5%)で済みます
- 書類の書き換え・後づけ・破棄は絶対にしない。間違いが「隠しごと」(重加算税35%)に変わります
- 準備の軸は「対象期間の帳簿と証拠書類を、すぐ出せる状態にしておく」こと
1. 電話で何が決まるのか──事前通知の中身
調査の連絡は、原則として電話で行われます(事前通知。国税通則法74条の9)。伝えられるのは、おおむね次の内容です。
- 調査の開始日時と場所(ふつうは自宅か事務所・店舗)
- 対象になる税目(所得税・消費税、法人なら法人税・消費税・源泉所得税など)
- 対象になる期間(ふつうは直近3年分)
- 用意しておく帳簿書類
税理士に税務代理を頼んでいる場合、この連絡は税理士に入ります。頼んでいない場合は本人に直接かかってくるので、メモを取りながら、上の4点を確認してください。その場で日程を即答する必要はありません。
なお、現金商売など一部の業種では、事前通知なしにいきなり来ることがあります(無予告調査)。これは「事前に知らせると正確な確認ができないおそれがある」と判断された場合の例外的な扱いです。
2. 日程は相談できる
「その日はちょっと……」は、言ってかまいません。仕事の繁忙期、体調、税理士の同席の都合。合理的な理由があれば、日時や場所の変更を協議できると法律に定められています。
大事なのは、準備が間に合わないまま当日を迎えないことです。1〜2週間で書類がそろわないなら、正直にそう伝えて日程を調整するほうが、あいまいな状態で当日を迎えるよりずっとよい結果になります。
ただし、理由なく引き延ばし続けることはできません。感覚としては「2〜3週間の調整は普通、何か月も先送りは不自然」です。
3. 準備する書類──当日「探し回らない」状態にする
用意するのは、対象期間(ふつう3年分)の帳簿と証拠書類です。
- 帳簿──総勘定元帳・仕訳帳(会計ソフトなら出力できる状態に)
- 売上側──請求書の控え、領収書の控え、レジ記録、売上台帳
- 仕入れ・経費側──請求書、領収書、クレジットカード明細
- お金の動き──事業用の預金通帳(プライベート口座も、事業のお金が通っていれば見られます)
- 契約関係──賃貸借契約書、外注の契約書、雇用契約書
- 人に払ったお金──給与台帳、源泉徴収簿、扶養控除等申告書
- 在庫のある商売──棚卸表
当日、調査官の前で書類を探し回ると、それだけで「管理ができていない」という印象になります。箱1つ、フォルダ1つに集めて、聞かれたらすぐ出せる状態にしておくこと。これ自体が立派な調査対策です。
4. 調査官と同じ目で、自分の申告を見直す
書類がそろったら、調査官が見るのと同じ場所を、先に自分で見ておきます。
- 売上の計上漏れはないか──通帳の入金と売上帳簿を突き合わせる
- 売上の期ズレはないか──年末・期末ぎわの売上が翌期に回っていないか
- 経費に私用のものが混ざっていないか──家族の食事、旅行、私用の買い物
- 外注費として払ったお金は、働き方の実態も外注と言えるか
- 家族に払った給与は、仕事の実態と釣り合っているか
ここで「見つからなければ安心」、見つかったら次の項目です。
5. 間違いを見つけたら、調査の日より前に直す
見直しで間違いに気づいたら、調査の日を待たずに修正申告を出します。
調査の連絡が来たあとでも、指摘される前に自分から直せば、上乗せ(過少申告加算税)は5%。指摘されてから直すと10%(50万円を超える部分は15%)です。同じ間違いでも、納める額が倍近く変わります。
「先に直したら、かえって怪しまれるのでは」と心配する人がいますが、逆です。自分で気づいて直せる人だと分かれば、調査はむしろ淡々と進みます。
6. やってはいけないこと
この1〜2週間で、絶対にやってはいけないことが3つあります。
- 書類の書き換え・後づけ──日付をさかのぼって作った契約書、金額を直した領収書
- 書類を捨てる──都合の悪いものを「なかったこと」にする
- 口裏合わせ──取引先や従業員に「こう答えて」と頼む
どれも、単なる申告の間違いを「仮装・隠ぺい」(重加算税35%、調査も過去7年分に拡大)に格上げしてしまう行為です。調査官は書類の不自然さを見るプロで、インクや紙の新しさ、筆跡、取引先への反面調査で裏が取れます。間違いは間違いのまま、正直に直すのがいちばん安く済みます。
7. 当日の段取り
当日は、おおむね午前10時から午後4時ごろまで。ふつう2人の調査官が来て、1〜3日です。
- 場所の準備は、書類を広げられる机があれば十分。昼食の用意は不要です(調査官は受け取れない決まりです。お茶くらいはかまいません)
- 税理士に頼んでいれば、立ち会ってもらえます
- 聞かれて分からないことは、「確認して後日回答します」でかまいません。あいまいな記憶で即答するほうが危険です
当日どこを見られるのか、指摘されたときにどう受け答えするかは、別の記事でくわしく書いています。
まとめ──1〜2週間は「守りの期間」ではなく「動ける期間」
調査の連絡が来てから当日までの1〜2週間は、ただ不安に過ごす期間ではありません。書類をそろえ、自分の申告を見直し、間違いがあれば先に直す。やることをやれば、調査は「確認して終わり」に近づきます。
そして、この期間にいちばんやってはいけないのが、書類に手を入れることです。間違いは直せますが、隠しごとは取り返しがつきません。
この記事は「2 連絡が来たら、調査の日までに備える」の詳細です。
税務調査で見られるのは、申告書ではなく日ごろの帳簿です——コース全体のどこにあたるかは、全体像のページで確認できます。
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