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コース 4 / 全体像

AIに実務を渡す前に、
決めることが3つあります

何を渡すか、情報をどう守るか、出てきたものをどう確かめるか。この3つを先に決めておくと、AIは実務で使える道具になります。

経理のAI活用 読む目安 8分 宍倉奎次郎(税理士・宅地建物取引士・賃貸物件を持つ大家)
この記事の前提

経理・税務の実務にAIを使いたい人に向けたコースです。プログラミングの知識は前提にしていません。内容は2026年7月時点のものです。

AIを実務に使うとき、多くの人はいきなり「やらせてみる」から始めます。それでうまくいかないのは、たいていAIの性能のせいではありません。何を渡すか、情報をどう守るか、出てきたものをどう確かめるか——この3つを決めていないからです。

順番は、上の5つです。1と2は最初に一度だけ。3と4は渡すたびに毎回。5は、そこまで来てからで十分です。

あなたはいま、どこにいますか

AIを実務で使ったことがない1 から順番に読んでください
使ってはいるが、実務に渡すのは怖い2 で線を引いてから 3
顧客情報を入れていいのか分からない3結論は「そのまま渡さない」
出てきた答えが合っているか不安4検証は省けません
自分の業務に合う道具がほしい5 に、実際に作った2例があります

1道具を知る

やること

チャットAIとの違いを知り、まず自分のパソコンで動く状態にする

「AIに質問する」道具と、「AIに作業させる」道具は別物です。前者は聞いて答えをもらうもの、後者は手元のファイルを読んで、書き換えて、実行するものです。実務を渡したいなら、必要なのは後者になります。

導入はエンジニアでなくてもできます。ただし、つまずくところはだいたい決まっています。前提の確認、入れる順番、動かないときに見る場所。ここを順番どおりに進めれば、たいてい越えられます。

2渡す業務を仕分ける

やること

「渡していい業務」と「渡してはいけない業務」の線を、使う前に引いておく

仕分けの軸は2つです。間違えたときに取り返しがつくかと、正しいかどうかを自分で確かめられるか

下書き、整理、転記、比較、集計。この種の作業は、間違っても自分が気づいて直せます。渡して大丈夫です。逆に、判断そのもの、署名や押印を伴うもの、そして確かめる手段がないものは渡せません。合っているか確認できない仕事を渡すのは、任せているのではなく、丸投げして祈っているだけです。

もうひとつ、ここで決めておきたいのが「AIに作ってもらう」と「自分で作る」の境目です。自分が中身を読めないものは、あとで直せません。その状態で業務に組み込むと、動かなくなった日に手が止まります。

3情報の守り方を決める

やること

ダミーデータで仕組みを作り、完成してから本物を通す

まず、よくある誤解をほどきます。「AIに入れた情報は学習される」は、使っているサービスと契約形態によって変わります。一律に危険でも、一律に安全でもありません。自分が使っているものがどうなっているかは、一度確認しておいてください。

そのうえで、実務ではダミーデータで作って、完成してから本物を通すやり方をおすすめします。仕組みを組み立てている段階では、中身が本物である必要はありません。名前も金額も架空でよく、形式さえ合っていれば動きます。

注 意

士業には守秘義務があります。判断の基準を「学習されないから大丈夫」に置くと、サービスの規約が変わるたびに揺れます。そもそも渡さなくても作れる設計にしておくほうが、確実です。

4頼んで、必ず検証する

やること

目的・前提・出力の形を先に伝える。出てきたものは、別のやり方で必ず確かめる

同じAIでも、頼み方で結果は変わります。特に効くのは、何のためにやるのか前提として何が決まっているのかどんな形で返してほしいのかの3つを先に渡すこと。これだけでやり直しが激減します。

そして検証です。ここは省けません。AIは、それらしく間違えます。桁がひとつ違う、似た名前を取り違える、書いていない前提を勝手に補う。どれも見た目は整った形で出てくるので、読むだけでは気づけません。

注 意

実際に起きるヒヤリハットは、だいたい同じ形をしています。合計を別の方法でもう一度出す——これだけで、かなりの部分が手前で止まります。

5道具を1つ作ってみる

やること

繰り返していて面倒な業務を1つ選び、実際に作ってみる

読むだけでは身につきません。毎月繰り返していて、間違えても取り返しがつくものを1つ選んでください。

入口として向いているのは、督促状の起票です。入金データと請求データを突き合わせて、誰にいくら残っているかを出し、文面まで下書きする。出すかどうかの判断は自分がして、手を動かす部分だけを渡す——この形が、AIの使い方として一番はずれがありません。

もう少し大きいものなら、業務用のデータベースを自作する道もあります。市販のソフトに自分の仕事を合わせるのではなく、自分の仕事のほうに道具を合わせられるのが、この作り方の利点です。

要 点

完璧な道具を作る必要はありません。目指すのは、一度作ってしまえば、次からは直すだけで済む状態に持ち込むことです。

続く仕組みにする

一度作った道具は、使わないでいると作り方を忘れます。半年後に直そうとして、自分が何をしたのか分からない、ということが普通に起きます。

対策はひとつで、解体していく過程を、そのまま書き残しておくことです。どこで詰まって、何を試して、なぜその形にしたのか。これは自分のための手順書になり、同時に、誰かの役に立つ一次情報にもなります。

このページは制度の一般的な説明です。実際の判断は個別の事情によって変わります。

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