経理と確定申告の全体像
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- 青色申告・白色申告
- 帳簿のつけ方で分かれる、2つの申告のしかた。青色は事前に申請が要るかわりに、もうけから一定額を引ける特典が付きます。
- 決算書
- 1年の売上と経費をまとめた紙。青色申告では「青色申告決算書」、白色申告では「収支内訳書」という名前になります。
- 確定申告書
- もうけから控除を引いて、納める所得税を決める紙。決算書とセットで出します。
- 仕訳
- 1件の出入りを「何に使ったか」と「どこから出したか」の2つで書き表した、1行の記録。帳簿はこれの積み重ねです。
- 勘定科目
- 支払いを分類する名前。消耗品費・通信費・地代家賃など。同じ種類の支払いは、毎回同じ名前に入れます。
- 元入金
- 自分のお金から事業へ入れた分。会計ソフトの最初の設定で、開業日の口座残高といっしょに入れます。
- 所得控除
- 「この分には税金をかけません」と、もうけから引いてもらえる金額。年金や保険料など、払った証明が要ります。
- 源泉徴収
- 報酬を払う側が、先に所得税を差し引いて国へ納めておく仕組み。申告で精算され、払いすぎていれば戻ります。
- 決算整理
- 12月31日で線を引いて、帳簿を今年の分だけにそろえ直す作業。年に1回、申告の前にやります。
- 棚卸
- 年末に残っている在庫を数えること。売れ残った分は、今年の経費になりません。
- 減価償却
- 長く使う高いものを買ったとき、代金を何年かに分けて経費にしていく方法。
- 家事按分
- 家賃や電気代のうち、仕事に使った割合だけを経費にすること。面積や時間で分けます。
- e-Tax
- 国税庁の電子申告のしくみ。申告書をインターネットで送れます。65万円控除の条件のひとつです。
- 振替納税
- 税金を口座振替で納める方法。先に申し込んでおくと、引き落としで払えます。
確定申告の勉強は、たいてい簿記の用語から始まります。そこで止まってしまう人がほとんどです。順番が逆です。
まず、その帳簿を誰が見るのか(0)。そのうえで完成品を見ます。決算書がどういう紙で(1)、それがどうやって作られるのか(2)。この2つが分かると、会計ソフトが何をしている道具なのかの見当がつきます。あとは道具をそろえて(3)、1年の流れ(4〜8)を順番にやるだけです。
0経理は何のためにやるのか
帳簿の渡し先を3つとも知ってから、経理の作業に入る
出来上がった帳簿には、渡す先が3つあります。税務署だけではありません。同じ1組の数字を、3者がそれぞれ違う目的で見ます。
- 1年のもうけを計算して、決算書と申告書にする
- 3つのうち、これだけが義務。税務調査で見られるのもこの帳簿
- 事業でお金を借りるとき、銀行や公庫が見るのはこの決算書
- 住宅ローンや部屋を借りるときの収入の証明も、この2枚
- 何にいくら使って、いくら残ったのかが月ごとに見える
- 値上げ・仕入れ・人を雇うときの判断材料になる。納税の資金も読める
1つ目だけが義務です。ただ、そこだけを見て1年に1回まとめて片づけると、いちばん役に立つ3つ目が手に入りません。かかる手間は同じなのに、もったいない話です。
3つとも、材料は同じ帳簿です。税務署のために作った紙が、そのまま銀行への説明書きになり、自分の判断材料になります。だから経理は、税金の話であると同時に経営の話です。
1決算書を見てみる
まず完成品を見る。確定申告で出すのは、この2枚です
この「もうけ」が、そのまま2枚目の1行目になります。
先に引かれていた分が多ければ、ここがマイナス=還付です。
金額はすべて例です。控除の額は年によって変わります(復興特別所得税は省いています)。
むずかしそうに見えますが、どちらも引き算です。
1枚目は、1年の売上から経費を引いて、いくらもうけたかを出す紙です。2枚目は、そのもうけから控除を引いて、税金を決める紙です。1枚目の答えが、そのまま2枚目の1行目に流れ込みます。
そして、経理と呼んでいる作業は、ぜんぶ1枚目を作るためのものです。レシートを取っておくのも、口座を会計ソフトにつなぐのも、行き先はこの1枚です。
青色申告ではない人(白色申告)は、1枚目が収支内訳書という別の紙になります。売上から経費を引く、という考え方は同じです。違うのは、青色申告特別控除の行がないことです。
2仕訳が決算書になるまで
決算書の1行は、レシート1枚ずつの合計。その積み上げ方が「仕訳」です
1枚目にあった「消耗品費 90,000円」は、1年ぶんのこまごました買い物を足した数字です。
- 出来事8月3日、文具店でペンとノートを3,000円ぶん買った。
- 仕訳消耗品費 3,000 / 現金 3,000
「何に使ったか」と「どこから出したか」を、1行で書く。これが仕訳です。 - 集計1年ぶんを費目ごとに足す。消耗品費は90,000円。
- 決算書その合計が、1枚目の「消耗品費 90,000円」の行になる。
決算書の行は、売上も経費も、どれもこの作られ方をしています。
会計ソフトがやっているのは、3の集計です。2の「この支払いはどの費目か」だけを、自分で決めます。ここが分かると、ソフトの画面が急に読めるようになります。
費目(勘定科目)の名前で悩まないでください。同じ種類の支払いを、毎回同じ費目に入れる。それだけで決算書は使えるものになります。
3会計ソフトを用意し、最初の設定をすませる
会計ソフトを1つ選んで事業用の口座・カードとつなぎ、1年目のうちに設定をすませる
作る紙と作られ方が分かったら、道具をそろえます。一度そろえれば、あとは毎年同じ道具で回せます。記帳を人に任せる場合も、口座とソフトをそろえるところまでは同じです。
会計ソフトクラウド型を1つ
取引を記録して、決算書と申告書まで作る道具。無料のお試しで画面の好みを見て決めれば十分です。
選ぶ目安は、口座とカードを自動で取り込めること、AIとつなげられること
事業用の口座とカード生活用と分ける
分けた口座とカードを会計ソフトにつなぐと、取引が自動で入ってきます。混ざったままだと、1件ずつ「これは事業の分か」と仕分ける作業が続きます。
選ぶ目安は、明細がネットで見られて、会計ソフトの連携先に入っていること
パソコンスマホだけでは足りない
日々の入力はスマホのアプリでもできますが、決算と申告の画面はパソコン前提で作られています。
選ぶ目安は、仕事の道具なので代金は経費。高いものは何年かに分けます(6章)
会計ソフトでよく使われているのはfreee・マネーフォワード・弥生の3つ。どれを選んでも決算書と申告書は作れるので、選び比べに時間をかけすぎないのがコツです。
これから選ぶなら、AIとつなげられるクラウド型をおすすめします。取り込んだ明細にAIが費目を提案してくれるので、こちらは合っているかを見るだけで済みます。会計データをAIに直接読ませられるソフトも出てきていて、「先月はいくら残った?」がその場で分かります。何をAIに任せ、何を任せないかは経理のAI活用のコースにまとめています。
青色申告の申請
1月16日以後に開業した年は、開業から2か月以内。それ以外は、その年の3月15日まで
申請書を、この期限までに出したか
開業届といっしょに出しておくのが確実です。1日遅れても、期限は延びません。
- 青色申告の申請は、期限を過ぎたら1年待ち
開業した年から青色にするなら、開業から2か月以内(1月15日以前の開業ならその年の3月15日まで)。1日遅れると、65万円控除は翌年からになります。
申請のしかたは「起業時の知識」のコースに - 会計ソフトの最初の画面で、開始残高を入れておく
開業日の口座残高と、自分が事業に入れたお金(元入金)です。ここを空のまま1年進むと、65万円控除に必要な貸借対照表が合わなくなります。
- メール・ネットで届いた請求書と領収書は、データのまま保存する
印刷して紙で持っているだけでは、原則みとめられません。PDFを1つのフォルダにため、ファイル名を「日付_相手_金額」でそろえておけば足ります。
- 家事按分の割合を、先に決めておく
家賃なら面積、電気なら使う時間。年末に思い出そうとしても無理なので、決めた根拠を1枚メモに残します。使うのは6章です。
- 納税用のお金を、最初からよけておく
所得税のあとに住民税・国民健康保険(課税事業者なら消費税)が続けて来ます。もうけの3割ほどを別口座に置いておくと、慌てません。
- 書類の置き場所を1か所つくる
証明書と領収書を入れる封筒を1つ。中身を選ぶのは5章でやるので、いまは入れる場所を決めるだけで十分です。
もっと詳しく(6本)
4会計ソフトに記録する
自動で入ってきた取引を、月に1回だけ確認する
ここからが毎月の作業です。といっても、1件ずつ手で仕訳を書くわけではありません。
3章でつないだ口座とカードから、取引は自動で入ってきます。あなたがやるのは、月に1回、入ってきた分の費目が合っているかを見るだけ。2章の「自分で決めるところ」が、ここです。
手で入れるのは、現金で払った分と、連携できないところから届いた請求書くらいです。ここを溜めると、2月に苦しみます。12か月分をまとめて処理すると、毎月やるより時間がかかります。
領収書と帳簿は、原則7年とっておきます。数え始めは、書類の日付ではなく、その年の申告期限の翌日から。捨てるのは、申告が終わったときではなく、その期間が過ぎてからです。
5書類を集める
申告に使う書類を、封筒1つに集める。届かないものは自分で用意する
年末から2月にかけて、申告に使う書類がバラバラと届きます。ここでは、集めるだけです。ただし、集めそこねた分はそのまま税金が高くなります。
控除の証明書あとから引くための紙
国民年金・生命保険・地震保険・iDeCo・小規模企業共済。10月から2月にかけて、郵送やメールで届きます。
届いたらそのまま封筒へ。申告書に書かなければ、1円も引かれません
源泉徴収された記録先に引かれていた分
報酬から引かれていた分は、税金の前払いです。申告書に書けば、払いすぎた分が戻ってくることがあります。
支払調書が届かない相手もいるので、請求書の控えと入金額でそろえます
そのほかの必要書類自分で用意するもの
国民健康保険の年間納付額、医療費の明細、ふるさと納税の受領証。マイナンバーカードと、還付を受け取る口座も要ります。
届かないものがあります。年明けに自分で調べて用意する分です
集めた書類は、2枚目(確定申告書)の材料です。ここで出てくる控除(こうじょ)とは、「この分には税金をかけません」と、もうけから引いてもらえる金額のこと。年金や保険料を払っている、家族を養っている、そういう事情の分だけ、税金のかかる金額が小さくなります。
- もうけ 2,150,000円1枚目で出したもうけ(1章の例)。
- 控除をぜんぶ引く −1,200,000円年金・保険料・基礎控除など、集めた分だけ引ける。
- 残った 950,000円にだけ税金がかかる控除が増えるほど、ここが小さくなる=税金が減る。
自分で用意しないと手に入らない書類が2つあります。国民健康保険は控除証明書が届かないので、1年に払った額を自分で出します。個人事業主はふるさと納税のワンストップ特例が使えないので、寄付先ごとの受領証もそろえます。
もっと詳しく(10本)
6決算整理をする
12月31日で線を引いて、帳簿を「今年の分」だけにそろえる
決算整理はむずかしく聞こえますが、やっていることは線引きです。1年の帳簿に12月31日で線を引いて、今年の分と来年の分に仕分け直す。それだけです。
なぜ必要かというと、お金が動いた日と、売上・経費になる日はずれるからです。通帳の動きをそのまま並べただけでは、今年の成績になりません。
- 年をまたぐ売上
12月に納品して入金が1月なら、今年の売上です。逆に、代金を先にもらっていても、まだ仕事をしていない分は来年の売上になります。
- 売れ残った在庫
仕入れても、売れ残っている分は今年の経費になりません。売れた年の経費になります(棚卸)。
- 10万円以上の買い物
パソコンや車は、買った年に全額ではなく何年かに分けて経費にします(減価償却)。青色申告なら、一定額までその年に落とせる特例もあります。
- 家や車の、事業で使った割合
家賃・電気代・通信費のうち、仕事に使った分だけが経費です(家事按分)。3章で決めた割合を、ここで当てはめます。
買ったものの値段
パソコン・カメラ・机・車など、何年も使う道具
その1つの値段が、10万円以上か
10万円ちょうどは「以上」の側です。ここから先は金額でさらに分かれるので、迷ったら下の記事で確かめてください。
年をまたぐ売上で、いちばん迷います。日付をどちらで数えるかで、答えが変わります。
- 12月に納品した売上は、今年の売上
- 入金がまだでも、今年の帳簿に入れる
- 通帳の動きだけで決めると、来年の売上にしてしまう
- 税務調査で定番の指摘ポイント
ここまで入れて、1枚目の「もうけ」が確定します。会計ソフトが自動でやってくれる部分もありますが、在庫と家事按分は自分で判断して入れます(按分の決め方は節税・経費のコースにあります)。
もっと詳しく(6本)
7決算書と申告書を出す
2枚をそろえて、e-Taxで出す。期限は3月15日
記帳と決算整理(4と6)で1枚目、集めた書類(5)で2枚目の材料がそろいました。あとは作って出すだけです。期限は2月16日から3月15日。
「どのソフトで作るのか」で迷う人が多いので、道具の役割をはっきりさせます。会計ソフトは書類を作る道具。e-Taxは、できた書類を国税庁へ送る通り道です。別のものなので、組み合わせて使います。
- 決算整理まで入れた帳簿から、2枚とも自動で出来上がる
- 控除の証明書の数字を入れて、画面の案内どおりにe-Taxへ送信
- 3章でソフトをそろえた人は、これが最短
- 国税庁の無料ページ。質問に答えると2枚が出来上がり、そのままe-Taxで送れる
- ただし帳簿の集計は済んでいる前提。会計ソフトの代わりにはならない
送信に使うのはマイナンバーカードとスマホ。税務署に並ばなくても、家から出せます。
紙で出した瞬間に、65万円控除は55万円に下がります。条件は複式簿記で帳簿をつけることだけではなく、e-Taxで期限内に出すことも入っているからです。同じ帳簿をつけていても、出し方で10万円ぶんの差がつきます。
報酬から源泉徴収されている人は、それが税金の前払いだったことがここで分かります。2枚目の下のほうで精算されて、戻ってくることもあります。
もっと詳しく(5本)
8税金を払い、後から来るものに備える
振替納税を申し込む。そして利益の3割は使わずに残しておく
申告が終わっても、支払いは終わっていません。所得税を払ったあと、住民税・個人事業税・消費税・予定納税が、時期をずらして順番に請求されてきます。
所得税の納付書は、黙っていても届きません。まず振替納税を申し込んでください。口座から自動で引き落とされます。申込みの期限は申告期限と同じなので、申告といっしょにすませておきます。
住民税市区町村から
5月から6月に通知が届きます。年4回に分けて払うのが基本です。
前の年のもうけで決まるので、開業2年目からまとまった額になります
個人事業税都道府県から
8月に通知が届き、8月と11月の2回に分けて払います。確定申告をしていれば、別に申告は要りません。
決められた業種で、もうけが一定額を超えた人だけに来ます
消費税自分で申告する
課税事業者になった人だけです。申告と納付の期限は3月31日で、所得税より2週間おそくなります。
所得税を出し終えて気がゆるむ時期なので、忘れやすいところです
予定納税今年の分の前払い
前の年の税額が大きかった人に、6月ごろ通知が来ます。7月と11月に前払いし、翌年の申告で精算されます。
今年のもうけが落ちる見込みなら、減額を申請できます
4つの中身は起業時の知識に一覧があります。消費税そのものの計算と届出は消費税とインボイスのコースです。
もっと詳しく(5本)
+1年を回せたら
人を雇う前に、届出と源泉徴収の準備をする。判断に迷ったら税理士に相談する
1年をひととおり回せたら、次に出てくるのは人を雇うときの話です。給与を払う側になると、源泉徴収をして納める義務が生まれます。届出・労働保険・社会保険もセットで必要です。外注として払う場合も、相手や内容によっては源泉徴収が要ります。
消費税と法人化については、起業時の知識の最後にまとめています。
ここまで来たら、税理士に相談する時期でもあります。1年目から頼む必要はありませんが、判断を間違えると取り返しがつかない領域に入るからです。
もっと詳しく(5本)
- 決算書の2枚を、いちど眺めてみる売上から経費を引いて、そのもうけから控除を引く。作る紙の形が先に分かると、あとの作業の意味がつながります。1 決算書を見てみる
- 事業用の口座とカードを1組つくって、会計ソフトにつなぐ生活用と分けるところまでやれば、日々の記録はほとんど自動で入ってきます。3 会計ソフトを用意し、最初の設定をすませる
- 青色申告の申請の期限を、カレンダーに書き込む開業から2か月以内(1月15日以前の開業ならその年の3月15日まで)。ここだけは、あとから取り返せません。3 会計ソフトを用意し、最初の設定をすませる
このコースの続きはこちらです。
節税・経費
経費になるかならないかと、節税をやる順番を、個人事業から法人まで扱います。
このページは制度の一般的な説明です。実際の判断は個別の事情によって変わります。