
法人の決算と申告の全体像
番号を押すと、その章に飛びます。
読む目安 約12分制度は2026年9月時点
はじめての方へ ── このページに出てくる言葉(13語)
- 事業年度
- 会社が決めた1年の区切り。個人事業のように1月から12月とは限らず、始まりの日も決算日も会社ごとに違います。
- 均等割
- 法人住民税のうち、もうけの額に関係なくかかる部分。赤字の年でも払います。
- 定期同額給与
- 毎月同じ額を払う役員報酬。この形なら会社の経費になります。
- 事前確定届出給与
- 役員に賞与を出すときに、支給日と金額を先に税務署へ届け出ておく給与。届け出たとおりに払わないと経費になりません。
- 役員社宅
- 会社が住まいを借りて、役員に貸す形。役員が会社に決められた額を払っていれば、その差額に税金はかかりません。
- 減価償却
- 高いものを買ったときに、その年に全額を経費にせず、使う年数に分けて経費にしていく計算。
- 資本的支出
- 工事のうち、価値を高めたり使える年数を延ばしたりする分。その年の経費ではなく、資産になります。
- 交際費
- 取引先の接待や贈答に使ったお金。法人には、経費にできる金額に枠があります。
- 決算整理
- 帳簿の残高を実際の残高に合わせ、今期の分と来期の分を振り分ける、決算のときの作業。
- 勘定科目内訳明細書
- 売掛金や借入金などの中身を、相手先ごとに書き出す提出書類。作る作業がそのまま点検になります。
- 別表
- 法人税の申告書につける計算用紙。決算書の利益から、法人税の所得へ計算し直すために使います。
- 所得
- 法人税を計算するもとになる金額。決算書の利益に足し引きをして出します。利益とは別のものです。
- 青色申告・欠損金
- 帳簿をきちんと付けることを届け出て受ける扱いが青色申告。税金の計算のうえでの赤字が欠損金で、青色申告なら次の年以降へ持ち越せます。
法人を作った人も、引き継いだ人も、個人事業と大きく違うところがあります。1年の終わりに決算書と申告書を自分で組み立てることです。
申告書を書く段階では、できることがほとんど残っていません。税額が動くのは決算日までです。上の図は、その「いつ」の順に並べてあります。
1決算から申告までの流れをつかむ
決算日から申告期限までに何が起きるのか、順番だけ先に押さえる
決算は、大きく3つに分かれます。数字を締める、税金を計算する、出して納める。
このうち税額が変わるのは、1つ目までです。2つ目は、決まった数字を決まった様式へ書き写す作業に近いものです。だから「決算対策」という言葉が指しているのは、いつも決算日より前の話です。
- 数字を締める決算日までの取引と残高を確定させます。税額が動くのは、ここまでです。
- 税金を計算する決まった数字を、決まった様式へ書き写していきます。
- 出して納める期限は決算日から2か月。ここでできるのは、期限を守ることだけです。
会社にかかる税金も1つではありません。法人税のほかに地方の税金がいくつも付いてきて、出す先も税務署・都道府県・市町村の3か所に分かれます。
しかも、もうけがゼロでも払う分があります。法人住民税には、利益に関係なくかかる部分(均等割)があるからです。「利益がゼロなら税金もゼロ」にはなりません。
もっと詳しく(3本)
2役員報酬と役員賞与を期首で決める
事業年度が始まって3か月以内に社長の報酬額を決め、あとは動かさない
社長の報酬の決め方が、個人事業と法人でいちばん大きく違います。好きなときに好きな額を出せるわけではありません。
毎月同じ額を払います。変えていいのは、原則として期首から3か月以内の1回です。この形から外れた分は、払っても経費になりません。
報酬を変えられる時期
事業年度が始まった日から3か月
いま、その3か月の中にいるか──
注意 役職が大きく変わったときは、期の途中でも動かせます。業績が著しく悪化したときも動かせますが、引き下げる方向だけです。「資金繰りが苦しい」「目標に届かなかった」は、この例外に入りません。
賞与も同じです。出すと決めた時点で税務署に届け出ておかないと経費にできません。しかも、届け出た額と1円でも違うと、その全額が対象から外れます。
- 毎月、同じ額を払う
- 変えるのは期首から3か月以内に1回
- 賞与は、先に届け出たとおりに払う
- 儲かったから、年度末に増やす
- 月ごとに額を変える
- 届け出と違う額の賞与
払うこと自体は自由。ただし経費から外れる
「今年は儲かったから、年度末に自分へ賞与を出す」は、法人ではできません。決めるのは期首です。決算の直前に思いついても、間に合う形が残っていません。
3役員個人への支払いを整える
社宅・退職金など、会社から社長個人へ渡すお金の形を先に決めておく
会社から社長個人へお金が動く形は、大きく3つです。ここは形を間違えると、会社の経費にならないうえに、社長個人にも税金がかかります。
毎月の報酬前の章
毎月同じ額を払います。額を決められるのは期首から3か月以内です。
1年に1回しか動かせません
住まいを貸す役員社宅
会社が借りて社長に貸し、社長は決められた額を会社に払います。家賃の一部が会社の経費になります。
払う額が足りないと、差額が給与になります
辞めるときに渡す役員退職金
受け取る社長個人の税金が軽くなる渡し方です。株主総会で決めて支給します。
高すぎると判断されると、超えた分は経費から外れます
社宅と似ていても、社宅にならない形があります。現金で住宅手当を出す形と、社長本人の名義で借りている部屋は、社宅になりません。どちらも全額が給与として課税されます。
退職金は、相場と言われている計算式が、実は法令のどこにも書かれていません。役員としての働きに見合う額かどうかで判断され、高すぎれば超えた部分が経費から外れます。
代表を退いて会長や相談役になったときに退職金を出せるかどうかも、肩書きではなく実態で判定されます。名前だけ変えて仕事も報酬もそのまま、では認められません。
もっと詳しく(2本)
4経費と資産の線を引く
買ったもの・直したものを、その年の経費にするのか、何年かに分けるのかを判定する
高いものを買うと、その年に全額は落ちません。何年かに分けて経費にしていきます。ここまでは個人事業と同じです。
法人には、これに加えて法人だけの条件があります。従業員の数や、ほかの会社との資本関係によって、使える特例が変わります。金額の線だけを覚えていると、判定を間違えます。
工事の代金が来たとき
元に戻すためか、価値を上げたか
その工事は、元の状態に戻すためのものか──
迷ったときの当てはめには、決まった順番があります。金額の小さい基準から順に見ていくので、先に大きい金額の基準を見ると不利になります。
そもそも「いくらで買ったことになるのか」も決まりごとです。仲介手数料は買値に含める、登録免許税は選べる。最初の1回の判定で、その資産を何年でいくら経費にできるかが決まります。
事務所の礼金のように、モノが残らないのに資産になるものもあります。払った年に全額は落ちず、決まった年数で分けていきます。
もっと詳しく(3本)
5交際費と保険の枠を知る
交際費と保険料が、いくらまで・どの区分で経費になるのかを、使う前に確かめる
支出のなかには、金額に枠があるもの、経費と資産に分けなければならないものがあります。使ったあとでは動かせません。
交際費には上限があります。中小の会社には年800万円までという枠があり、そこを超えた分は経費になりません。1人あたりが小さい飲食は枠の外に出せますが、そのためには領収書だけでは足りません。誰と会ったのか、何人だったのかまで記録が要ります。
法人保険は、事情が変わりました。かつての「保険料の半分を経費にできる」という扱いは、根拠になっていた通達ごと廃止されています。いまは、解約したときに戻ってくる割合の大きさで区分します。
- 保険金を受け取るのは会社
- 解約したときに戻る割合が小さい契約
- 従業員も含めて広く加入している掛け捨て
- 解約したときに戻る割合が大きい契約
- 戻ってくる分は積み立てとして残す
- 経費になるのは、残りの部分だけ
- 受け取るのが社長個人や家族
- しかも対象が社長など一部の人だけ
- 社長個人に所得税と住民税がかかる
受取人が家族でも、広く加入していれば給与にはならない
給与と判定されると、社長個人と会社の両方に負担が出ます。会社の税額は変わらないのに、社長個人に追徴が出て、会社には天引きの漏れが残ります。契約は途中で変わるので、決算のたびに受取人と対象者を見ます。
もっと詳しく(3本)
6決算前にできる打ち手を選ぶ
決算日の3か月前に今期の利益の見込みを出して、どの手を使うかを決める
決算対策と呼ばれているものは、型が4つです。期ズレを直す、税額そのものを減らす、税金を先送りする、所得の種類を変える。手をつける順番も、この並びです。
期ズレを直す現金が出ない
今期に入れるべきだったものを、入れ直します。切手や印紙の残り、請求書が翌月になる経費などです。
まず、ここから始めます
税額そのものを減らす制度を探す
計算した税額から直接引きます。設備投資と賃上げに、この形の制度があります。
次に、使えるものがないか探します
税金を先送りする順番を動かす
今期の経費を増やすかわりに、来期からの経費が減ります。設備を買って全額落とす手が、これです。
毎年だいたい同じ利益の会社では、通算すると税額はほとんど変わりません
所得の種類を変える受け取り方を変える
役員退職金のように、受け取る側の税の重さが変わる形へ移します。
何年もかけて用意するもので、決算月の打ち手ではありません
- 設備投資・賃上げの税額控除など
- 条件を満たせば、払う総額が本当に減る
- 設備を買って全額落とす、など
- 払う年が、後ろへずれているだけ
4つの型のうち、本当に減るのは1つだけ
使えるかどうかは、認定を先に取る必要があるか、赤字でも使えるかで変わります。税額から引く制度は、引くもとになる税額が無い赤字の年には使えません。
決算月に間に合う手もあります。ただし「支払った」と認められる形が決まっているので、手形や月末の申し込みでは間に合わないことがあります。
もっと詳しく(3本)
7決算整理で残高を合わせる
帳簿の残高を実際の残高に合わせ、今期のものだけを今期に入れる
決算整理でやることは2つです。帳簿の残高を実際に合わせることと、来期のものを来期へ送ることです。
- 相手先ごとに書き出す売掛金や借入金を、相手先ごとに並べます。勘定科目内訳明細書を1枚ずつ作る作業です。
- 実際の残高と突き合わせる通帳や返済予定表と照らして、合わないところを直します。
- 今期の分と来期の分を分ける先に払った家賃や、請求書が翌月になる経費を振り分けます。
この順で進めると、提出書類を作りながら点検も終わります。決算整理を終えてから内訳書を作るのではなく、内訳書を作る手そのものが決算整理です。
いちばん判断に迷うのが、回収できない売掛金です。落とせるルートは3つあり、それぞれ条件も手続きも違います。「もう入らないと思う」だけでは落とせません。
もっと詳しく(1本)
8別表を順番に埋める
決算書の利益から、法人税の所得へ書き換えていく
決算書の利益と、法人税の計算に使う所得は違います。その差を1枚で調整するのが、別表四です。
売上から費用を引いた、会社のもうけです。
経費にならないものを足し、税金の対象外のものを引いた金額。こちらに税率をかけます。
調整では2つを見ます。足すか引くか。そして、会社の中に残ったのか、外へ出ていったのか。後者は「追加の仕訳が書けるか」で見分けられます。
別表は、番号順に埋めると必ず詰まります。ほかの別表の結果を使うものがあるからです。書く順番があります。止まる場所も決まっていて、寄附金と、納める税金を先に見積もった金額の2つです。
会計ソフトが出した申告書も、自分で点検できます。見るところは決まっていて、突き合わせる箇所はそれほど多くありません。
もっと詳しく(5本)
9期限までに出して、赤字を次へ送る
申告期限を確かめ、赤字が出た年は次の年に使えるようにしておく
申告と納付の期限は、決算日から2か月です。株主総会が間に合わないといった理由があれば、申請して1か月延ばせます。
ただし、延ばした分には利子がつきます。先に多めに納めておけば止まるので、延長する会社は見込みで払っておくのが実務です。
赤字が出た年は、その赤字を次の年以降の黒字と相殺できます。使えるのは10年先までで、赤字が出た年に青色申告をしていることと、その後も申告を続けていることが条件です。前の年が黒字だったなら、納めた税金を返してもらう道もあります。
赤字の年に申告を出さないと、その赤字を次に使う権利ごと消えます。税額がゼロでも、申告書に書いて出しておくことが条件になっています。
もっと詳しく(2本)
このコースの続きはこちらです。
消費税とインボイス
登録・請求書・申告・届出。特例の終わりと経過措置の切り替えまで扱います。
このページは制度の一般的な説明です。実際の判断は個別の事情によって変わります。