
消費税とインボイスの全体像
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- 課税事業者
- 消費税を申告して納める立場の人。売上の大きさで決まるほか、インボイスの登録をしていれば売上に関係なくこちらです。
- 免税事業者
- 消費税を納める義務がない立場の人。預かった消費税を納めない代わりに、払った消費税も引けません。
- 基準期間
- 納める立場かどうかを判定するための、2年前の期間。個人はその年の前々年、法人は前々事業年度です。
- 課税売上高
- 消費税がかかる売上の合計。この額が判定にも、計算方法の選択にも使われます。
- インボイス(適格請求書)
- 登録番号や消費税額が書かれた請求書・領収書。書式の問題ではなく、払った税を引くための条件です。
- 仕入税額控除
- 仕入れや経費で払った消費税を、預かった消費税から引くこと。消費税の実務は、ほとんどがこの話です。
- 本則課税
- 払った消費税を1件ずつ集計して引く、原則どおりの計算方法。一般課税とも呼ばれます。
- 簡易課税
- 仕入れを集計せず、売上の消費税に業種ごとの割合をかけて納める額を出す方法。使うには先に届出が要ります。
- 2割特例・3割特例
- インボイスの登録をきっかけに課税事業者になった人だけが使える、期限つきの計算方法。届出は要りません。
- 経過措置
- 登録していない相手に払った消費税を、一部だけ引ける扱い。引ける割合は段階的に下がります。
- 少額特例
- 金額の小さい仕入れについて、インボイスを保存しなくても引ける扱い。これも期限つきです。
- 課税売上割合
- 売上全体のうち、消費税がかかる売上が占める割合。これが下がると、払った税を全額は引けなくなります。
消費税は、預かった分から払った分を引いて納めます。たいていは2か所でつまずきます。どの計算方法を選ぶかと、払った分をどこまで引けるかです。
そして選ぶ権利は、届出書を1枚出し忘れるだけで消えます。期限は年末に集中していて、休日でも翌日には延びません。上の順で見ていきます。
その前に ── 消費税のしくみ
7つの章に入る前に、この税金そのものの形を押さえておきます。ここを読めば、全体の形がわかります。
- 売上で、消費税を預かる代金と一緒に受け取っています。自分のお金ではありません。
- 仕入れや経費で、消費税を払うこちらは支払いと一緒に、相手へ渡しています。
- 差額を納める預かった分から払った分を引いた残り。この「引く」が実務のほとんどです。
| 納める額 | 売上で預かった税から、仕入れや経費で払った税を引いた残り。この引くほうが仕入税額控除で、実務のほとんどはここの話です |
|---|---|
| 売上の種類 | 課税・非課税・免税・不課税の4つに分かれます。輸出は税がかからなくても払った税を引けますが、住宅の家賃は非課税なので引けません |
| 納める人 | 原則は2年前の売上で決まります。ただし登録している人は、売上がどれだけ下がっても納める側です |
| 額の出し方 | 本則課税・簡易課税・特例の3つ。どれを選ぶかで税額が変わり、簡易課税は先に届出が要ります |
| 引く条件 | 帳簿とインボイスの保存。ただし、金額が小さいものや、そもそも相手から受け取れないものには例外があります |
| 期限 | 申告は個人が翌年3月末、法人は決算日から2か月。届出書の期限はこれとは別で、年末に集中しています |
納める立場かどうか
判定に使う数字は、2年前(基準期間)の課税売上高です。
その額が1,000万円を──
インボイスの登録をしていれば、売上がどれだけ下がっても納める側です。ほかにも、前年前半の売上や給与、法人の資本金で決まる道があります。
この6つのうち、自分で決められるのは「額の出し方」です。しかも決める権利は期限で消えます。以下の7章は、その順に並んでいます。
もっと詳しく(1本)
1自分の納め方を決める
自分がどの計算方法で納めるのかと、それをいつまでに決めるのかを確かめる
計算方法は3つあります。払った消費税を1件ずつ積み上げる方法、売上から決まった割合で出す方法、そして登録をきっかけに課税事業者になった人のための特例です。
払った税を1件ずつ積み上げる本則課税
領収書とインボイスを集めて、実際に払った税を引きます。届出は要りません。
大きな買い物の予定がある人。払った税が預かった税を上回れば、還付になります
売上から割合で出す簡易課税
仕入れを集計せず、売上の消費税に業種ごとの割合をかけて出します。集計の手間が消えます。
使いたい期が始まる前に届出が要る。還付は受けられない
売上の税だけで決める2割特例・3割特例
登録をきっかけに課税事業者になった人だけの方法です。届出は要らず、申告のときに選びます。
期限つき。順に終わっていく
その特例は、順に終わっていきます。個人には次の特例が用意されましたが、法人には用意されていません。いつが自分の「最後の年」かは、決算期で決まります。まず自分の期がいつ終わるのかを確かめてください。
終わったあと、積み上げる方法にするか、割合で出す方法にするかは選べます。ただし割合で出す方法は、届出が先です。原則として、使いたい期が始まる前に出しておかなければなりません。
簡易課税を選ぶ前に
来期に、機械や車、建物を買う予定はあるか
大きな買い物の予定が──
簡易課税は、いったん選ぶと2年は戻せません。来期だけでなく、その次の年の予定まで見て決めます。
特例を使った年の翌年だけは、申告期限まで待ってから決められます。試算してから選べる、めずらしい期間です。
もっと詳しく(2本)
2免税事業者への支払いを見直す
取引先に登録していない人がいるか調べ、支払額の決め方を確かめる
登録していない相手に払った消費税は、全額は引けません。しかも引ける割合は段階的に下がり、いずれゼロになります。
- 払った消費税を引ける
- インボイスを保存すれば足りる
- 全額は引けない
- 引ける割合は、段階的に下がっていく
引けない分は、その取引の金額に含める
割合が変わる区切りは、支払った日ではなく取引をした日です。そのため、同じ1年のなかに2つの割合が混ざる年があります。
引けなかった分は、消えてなくなるわけではありません。その取引の金額そのものに含めます。買ったものが資産なら、取得価額が上がります。
確かめておきたいことがあります。インボイスを必要とするのは、取引先のうち払った税を実額で集計している人だけです。相手が簡易課税や特例で申告しているなら、登録の有無で相手の税額は変わりません。
価格の決め方には気をつけます。「登録していないなら消費税分は払えない」と相談すること自体は問題になりません。一方的に決めて通告すると問題になります。
協議をしないまま支払額を下げると、法律に触れます。実際に注意を受けたのは、発注する側が小さな事業者へ一律に通告した例です。話し合った記録を残してください。
3インボイスが要らない場面を覚える
領収書がなくても引ける取引を知り、毎回探す手間をなくす
すべての支払いにインボイスが要るわけではありません。要らない理由は3つに分かれます。
金額が小さいから、要らない少額特例
一定額を下回る仕入れは、インボイスを保存しなくても引けます。手続も届出も要りません。
期限つき。いつ終わるかを先に確かめる
相手が渡せないから、要らない帳簿だけで引ける取引
電車代、自販機、出張旅費など。帳簿に書くだけで引けます。
摘要欄に何と書くかが決まっている。書き方を外すと引けない
金額が小さいものの例外は、期限つきです。ずっと使えるわけではないので、いつ終わるのかを頭に入れておいてください。同じ経過措置でも、この特例だけ終わる時期が違います。
帳簿だけで引けるほうには、線引きがあります。セルフレジや駐車場は自販機に当たりませんし、電車代も金額が大きくなれば保存が要ります。「小さい買い物だから領収書は要らない」は、いまは通りません。
4家賃と振込手数料の扱いを決める
毎月同じ形で発生する取引を、一度だけ整えて終わりにする
毎月払うものは、毎月インボイスをもらうとは限りません。家賃のように、契約書と通帳の組み合わせで足りるものがあります。通帳を見れば「何月分をいつ払ったか」がわかります。
そのとき、契約書を作り直す必要はありません。足りない項目を通知書1枚で補えば済みます。なお、住宅の家賃はそもそも非課税なので、この話は起きません。
もう1つ迷いやすいのが、振込手数料を差し引かれたときの処理です。売上の値引きとして扱うのか、手数料を払ったとして扱うのかで、記帳の形が変わります。金額が小さければ、返還のインボイスは要りません。
なお、そもそも振込手数料を売手に負担させること自体が禁じられる取引があります。金額ではなく、取引の種類で決まります。
5届出書の期限を押さえる
年末までに出す紙があるかを確かめ、過去に出したものが残っていないかを調べる
消費税では、計算間違いより届出書の出し忘れのほうが高くつきます。出せなかった年は、選ぶ権利そのものがありません。
期限は年末に集中しています。しかも紙の種類によって期限日が違います。個人で暦年の場合、次の3つに分かれます。
登録と取りやめを届け出る期間の初日から15日前の日まで
インボイスの登録申請と、登録をやめる届出。個人で暦年なら12月17日です。
土日祝でも、年末でも翌日に延びない
計算方法と立場を選び直す期間が始まる前の日まで
簡易課税を使う・やめる、課税事業者を選ぶ・やめる届出。個人なら12月31日です。
決算を締めてから、有利なほうを選ぶことはできない
期間の終わりまで待って出す課税期間の末日まで
課税売上割合に準ずる割合の承認申請、申告期限の延長、任意の中間申告。
承認が要るものは、末日ぎりぎりにしない
期限を1日過ぎると、その期間はもう動かせません。「あとから今年の分を簡易課税に」はできません。しかも上の2つの期限は、休日でも年末の閉庁日でも翌日に延びません。確定申告の期限は延びるので、ここだけ逆になります。
登録をやめるときも紙が要ります。しかも、やめれば自動的に元へ戻るわけではありません。人によって、出す紙が1枚から3枚まで変わります。
昔出した届出書が、いまも残っていることがあります。設備投資の還付を受けるつもりが、何年も前に出した届出がそのまま残っていて受けられない。これは実際に起きます。提出済みかどうかは、あとから調べられます。
もっと詳しく(3本)
6控除が減る条件を確かめる
引ける額が減る条件に、自分が当たっていないかを見る
払った消費税が全額引けるのは、当たり前ではありません。いくつかの条件に当たると、引ける額が減ります。
1つは、消費税のかからない売上の割合が増えたときです。全額引ける状態が終わり、2つの計算方法から選ぶことになります。
- 払った消費税を全額引ける
- 仕入れを用途ごとに分ける必要はない
- 全額は引けなくなる
- 2つの計算方法から選ぶ
- 選び方によっては、2年変えられない
住宅の家賃、土地を売った代金が代表
アパートを持っている人は、ここに当てはまりやすくなります。住宅の家賃には消費税がかからないので、それが増えると本業で払った消費税まで引けなくなります。土地を1回売った年も同じことが起きます。
もう1つは、大きな資産を買ったときです。買った年のあと何年かは、計算方法を変えられません。ただし特例で申告していた年に買ったなら、この縛りは生じません。
もっと詳しく(2本)
7立場が変わるときに備える
法人成り・相続など、形が変わるときに切れる手続を先に確かめる
事業の形が変わると、消費税の扱いも決め直しになります。ただし「新しく作ったから、しばらく納めなくていい」とは限りません。
法人にしても、消費税が免税になるとは限りません。資本金、前半期の売上と給与、親会社の規模。どれかに当たれば、初年度から納める側です。登録するなら、その時点で免税の話は消えます。
設立した日から登録したいときは、最初の期のうちに申請します。この期限も、休日や年末の閉庁日で延びません。個人の側でも、廃業の届出や、資産を法人へ渡したときの扱いが残ります。
相続も同じで、亡くなった人の登録は相続人へ引き継がれません。何もしないと、ある時点で登録が切れます。遺産分割より先に片づける手続があります。
このコースの続きはこちらです。
このページは制度の一般的な説明です。実際の判断は個別の事情によって変わります。
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