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青色申告をする個人事業主を想定しています。制度は2026年7月時点のものです。
節税と聞いて最初に思い浮かぶのは、たぶん「何かを買って経費にする」でしょう。でもその前に、押さえておくべきことがあります。
1万円を経費にしても、税金が1万円減るわけではありません。減るのは税率をかけた分だけです。税率20%の人なら、住民税とあわせても3,000円ほど。残りの7,000円は、ただ出ていったお金です。
だから節税には順番があります。お金が出ていかないものから順にやる。上の5つは、その順番に並べてあります。
あなたはいま、どこにいますか
| そもそも何が経費になるのか曖昧 | 1 から順番に読んでください |
|---|---|
| この支出は経費でいいのか迷っている | 2 に費目ごとの線引きがあります |
| 10万円を超えるものを買った・売った | 3 へ。売ったときは売上ではありません |
| 12月になった/申告が近い | 4。お金を使わずに増やせる経費があります |
| 利益が出た。制度を使って減らしたい | 5。ただし出口まで見てから |
1経費の考え方を先に固める
「戻るのは税率の分だけ」と「順番はお金が出ていかないものから」の2つを頭に入れる
経費とは、売上に直接対応する原価と、事業のために必要な販売費・一般管理費です。判断に迷ったときの軸はひとつしかありません。その支出が売上とどうつながるかを、他人に説明できるかどうかです。
そして順番です。節税は、効果が同じなら手元にお金が残るほうが得です。まず青色申告特別控除を取り切る。次にすでに使っているのに経費に入れていないものを拾う。家賃・電気・スマホの家事按分を入れる。所得控除の取りこぼしを潰す。ここまでは1円も出ていきません。何かを買うのは、そのあとです。
レシートでも領収書でも経費にできます。大事なのは形式より中身で、「誰と・何のために」をその場で書き足しておくことです。これがないと、半年後には自分でも思い出せません。
2迷う費目の線引きを知る
「事業に必要」と「私生活でも使える」が重なる費目を、迷う前に整理しておく
否認されやすいのは、私生活でも使えてしまうものです。服、美容、健康、勉強。どれも「事業のためだ」と言えますが、同時に自分のためでもあります。
線引きの考え方は費目が違っても共通していて、それが無かったら売上が立たないかを見ます。制服やユニフォームのように事業でしか使わないものは通ります。スーツは私服にもなるので、原則として通りません。資格取得費も、いま事業でやっていることの延長なら経費、新しい資格そのものを取る費用は「新たな地位を得る支出」として通らないという整理になります。
なお、法人と違って個人事業主の接待交際費に金額の上限はありません。ただし上限がないことと、何でも通ることは別です。
一番大きな落とし穴は家族への支払いです。生計を一にする親族に払った家賃・外注費・給与は、所得税法56条により必要経費になりません。実際に払っていても、契約書があってもです。例外は、届出を出した青色事業専従者給与だけです。
3高いものを買ったとき・売ったとき
10万円を境に扱いが変わる。買った年に全額落とせるかを、買う前に確認する
10万円未満なら、買った年に全額経費です。10万円以上は原則として、耐用年数にわたって少しずつ経費にします(減価償却)。12万円のパソコンが全額落ちないのは、このためです。
ただし青色申告なら特例があります。少額減価償却資産の特例は、2026年(令和8年)4月1日以後に取得したものから、30万円未満→40万円未満に引き上げられました。年間合計300万円までという上限は変わりません。買う時期が年度をまたぐなら、ここは確認する価値があります。
中古を買った場合は、耐用年数が新品より短くなります(簡便法)。よく言われる「4年落ちの車」は、この計算の結果として出てくる話です。
売ったときが要注意です。事業用の車や機械を売った代金は、売上ではありません。譲渡所得です。50万円の特別控除があり、保有5年超なら課税されるのは半分だけ。売上に混ぜると、税金を払いすぎます。
4年末から申告までに拾える経費
お金を追加で使わずに、今年の経費を増やせるものを拾う
ここが一番「使わずに効く」ところです。
未払費用——12月分の外注費、翌月払いの給与、12月に使ったクレジットカード。まだ払っていなくても、その年に債務が確定していれば、その年の経費になります。現金が出た日で切っていると、まるごと落ちます。
短期前払費用——家賃や保険料を月払いから年払いに切り替えると、1年分をその年の経費にできます。ただし支払った日から1年以内にサービスが終わることが条件なので、11月に「12月から1年分」を払うと使えません。そして効くのは、切り替えた年の1回だけです。
貸倒れ——回収できない売掛金は損失にできます。青色申告なら、年末残高の5.5%を貸倒引当金として計上する道もあります。
災害や盗難にあったときは、処理が2つに分かれます。事業用資産なら必要経費、自宅と家財なら雑損控除です。まとめて処理すると、どちらかを取り損ねます。
5お金を出す節税は、出口まで見てから
「入口でいくら引けるか」ではなく「受け取るときいくら課税されるか」で選ぶ
小規模企業共済、iDeCo、経営セーフティ共済。掛けた分だけ課税所得が減るので、節税の代名詞のように語られます。でもこれらは税金が消えるのではなく、受け取るときまで先送りされているだけです。
経営セーフティ共済は年240万円まで全額経費になりますが、解約手当金は全額が事業所得の収入になります。小規模企業共済は受け取り方で退職所得にも公的年金等の雑所得にもなり、65歳未満の任意解約は一時所得です。入口の扱いだけを見て決めると、出口で驚くことになります。
そしてiDeCoには、注意すべき改正が入りました。iDeCoの一時金を受け取ったあとに退職金を受け取る場合の調整期間が、「前年以前4年内」から「9年内」に延びました。令和8年1月1日以後に受け取る退職手当等から適用されます(いわゆる5年ルールが10年ルールになった、という話です)。退職金が先でiDeCoが後の場合の19年内は、変わっていません。
節税しすぎると詰む場面があります。融資も住宅ローンも、直近3期の決算書で判断されます。所得控除は繰り越せないので、利益を削りすぎると控除がまるごと無駄になります。その年だけでなく、数年先から逆算して決めてください。
+1年目・赤字の年・やめるとき
ここまでが基本の順番です。最後に、当てはまる人だけが読めばいい4つの場面を挙げておきます。
開業1年目には、その年しか使えないものがあります。開業費は繰延資産なので、赤字になりがちな1年目に落とさず、利益が出た年に好きな額だけ償却できます。前職の給与がある年なら、事業の赤字と損益通算できます。一方で、少額減価償却の300万円や個人事業税の290万円控除は月割りになります。
赤字の年こそ申告してください。青色申告なら純損失を3年繰り越せます。前年に税金を払っているなら、繰戻し還付で戻ってくることもあります(期限内申告と、請求書の同時提出が条件です)。
やめるときにも手当てがあります。廃業したあとに届いた請求書でも、事業をやっていた期間に対応するものなら経費にできます(所得税法63条)。在庫を自分で使う場合は、販売価額の70%が目安です。
不動産を持っているなら、青色申告特別控除が事業所得と不動産所得であわせて1回であることに注意してください。逆に、事業所得があれば、不動産が事業的規模(5棟10室)でなくても65万円が使えます。
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このページは制度の一般的な説明です。実際の判断は個別の事情によって変わります。