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更新日 2026-08-05 法人の決算と申告

「法人保険で節税」は令和元年6月に終わった──保険料を損金と資産に分ける、いまのルール

決算前に保険の提案を受けて、「これは2分の1が損金になります」と言われたとします。その説明の根拠は、いま生きているでしょうか。

「長期平準定期保険は2分の1損金」「逓増定期保険は3分の1」——この言い方のもとになっていた個別通達5本は、令和元年6月28日にまとめて廃止されました。代わりに入ったのが、いまの法人税基本通達9-3-5の2です。

古いルールが消えたわけではありません。古い契約にだけ残っています。だから実務では、契約日を見るところから始まります。

この記事の結論

  • 令和元年6月28日付の通達改正で、定期保険・第三分野保険の保険料の取扱いが全面的に入れ替わった
  • 同時に、長期平準定期・逓増定期・がん保険・介護費用保険などの個別通達5本が廃止された
  • いまの区分は最高解約返戻率で決まる。50%以下/50%超70%以下/70%超85%以下/85%超の4つ
  • 新旧の分かれ目は2つある。一般の定期保険等は令和元年7月8日以後の契約、解約返戻金相当額のない短期払のものは令和元年10月8日以後の契約
  • 30万円の特例は2種類あって、要件が違う。片方は「その事業年度に支払った保険料」、もう片方は「年換算保険料相当額」
  • 30万円の判定は、契約ごとではなく「一の被保険者につき合計」で行う
  • 保険期間が終身の第三分野保険は、116歳までを計算上の保険期間とする

※制度はいずれも2026年時点のものです。

1. 令和元年6月28日に何が起きたか

国税庁は令和元年6月28日付 課法2-13ほか2課共同「法人税基本通達等の一部改正について」で、定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いを見直しました。このとき、次の5本の個別通達が廃止されています。

廃止された個別通達 日付・番号
法人が支払う「がん保険」(終身保障タイプ)の保険料の取扱いについて 平成24年4月27日 課法2-5
法人契約の「がん保険(終身保障タイプ)・医療保険(終身保障タイプ)」の保険料の取扱いについて 平成13年8月10日 課審4-100
法人又は個人事業者が支払う介護費用保険の保険料の取扱いについて 平成元年12月16日 直審4-52
法人が支払う長期平準定期保険等の保険料の取扱いについて 昭和62年6月16日 直法2-2
法人契約の新成人病保険の保険料の取扱いについて 昭和54年6月8日 直審4-18

太字にした昭和62年の通達が、「長期平準定期保険は2分の1損金」「逓増定期保険は2分の1・3分の1・4分の1」の出どころでした。この通達はもうありません。

2. ★分かれ目の日付は、2つある

ここを1つだと思っている人が多いところです。改正通達の経過的取扱いは、保険の種類で日付を分けています。

対象 新しい取扱いが適用される契約
定期保険・第三分野保険(下記を除く) 令和元年7月8日以後の契約
解約返戻金相当額のない短期払の定期保険・第三分野保険 令和元年10月8日以後の契約

それぞれの日より前の契約は、改正前の取扱いと、廃止前の個別通達の例によります。つまり昭和62年通達の2分の1損金は、令和元年7月7日以前に契約したものについては、いまも生きています。

古い契約に新ルールを当てるのも、新しい契約に古いルールを当てるのも、どちらも誤りです。保険証券の契約日を見てください。

適用日前の契約に、適用日以後に契約内容の変更があっても、新しい取扱いにはなりません。ただし転換・払済保険への変更・契約の更新は「新たな契約への切替え」とされるので扱いが変わります(自動更新は例外)。ここは お金が1円も動かないのに、仕訳が要る に分けて書きました。

3. いまのルール(法人税基本通達9-3-5の2)

対象は、保険期間が3年以上の定期保険・第三分野保険で、最高解約返戻率が50%を超えるものです。

最高解約返戻率 資産計上期間 資産計上額 取崩期間
50%以下 ─(9-3-5により期間の経過に応じて損金)
50%超70%以下 保険期間の開始の日から、保険期間の40%相当期間を経過する日まで 当期分支払保険料 × 40% 保険期間の75%相当期間経過後から、保険期間の終了の日まで
70%超85%以下 同上 当期分支払保険料 × 60% 同上
85%超 保険期間の開始の日から、最高解約返戻率となる期間の終了の日まで(※下記の注) 当期分支払保険料 × 最高解約返戻率×70%(※開始の日から10年を経過する日までは×90% 解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間の経過後から、保険期間の終了の日まで

85%超の資産計上期間には、3つの補正が入ります。

  1. 最高解約返戻率となる期間の経過後に、解約返戻金相当額の増加分を年換算保険料相当額で割った割合が70%を超える期間があれば、その期間の終了の日まで延びる
  2. それでも5年未満になる場合は、5年を経過する日まで
  3. 保険期間が10年未満なら、保険期間の50%相当期間を経過する日まで

「期間」は事業年度ではありません。保険期間の開始の日(契約日)以後、1年ごとに区切った各期間のことです。決算月とはずれます。

該当する期間が複数あるときは、いちばん遅い期間をとります。

4. 最高解約返戻率を、どう出すか

分母と分子の決め方に、実務上の細かいルールがあります。

論点 取扱い
解約返戻金相当額 契約時に保険会社から示された各期間の金額による。パンフレットの標準例ではなく、保険設計書等に記載された、その契約の金額
端数 原則は切り捨てない。ただし保険設計書等に小数点2位以下を切り捨てた率が記載されていれば、それで区分を判定してよい
前納・短期払 前納は各期間の保険料に充当される部分の合計額、短期払はその期間までに実際に支払う保険料の合計額を分母にする
保険給付のない特約(保険料払込免除特約など)・特別保険料 主契約の保険料に含めて計算する
保険給付のある特約 主契約とは区分して取り扱う
契約者配当 解約返戻金相当額に含めない(契約時に確実に見込まれている場合を除く)
生存給付金・無事故給付金 将来の払戻しを約束しているので含める
変額保険・積立利率変動型 契約時に示される予定利率で計算してよい
外貨建て 契約時の為替レートで計算してよい

5. ★30万円の特例は2種類ある

ここが実務でいちばん混同されます。根拠も要件も別物です。

9-3-5(注)2 9-3-5の2 ただし書
対象 保険期間を通じて解約返戻金相当額のない短期払の定期保険・第三分野保険(ごく少額の払戻金があるものを含む) 保険期間3年以上の定期保険等で最高解約返戻率50%超のもの
30万円で見る金額 その事業年度に支払った保険料の額 年換算保険料相当額(保険料総額 ÷ 保険期間の年数)
追加の要件 最高解約返戻率が70%以下であること
効果 支払った日の属する事業年度の損金にしてよい 9-3-5の例による(=期間の経過に応じて損金)

片方は「その年に払った額」、もう片方は「1年あたりに換算した額」です。年払いか短期払いかで数字が大きく変わるので、どちらの通達の話をしているのかを先に決めてください。

判定は「一の被保険者につき合計」

どちらの30万円も、契約ごとではなく、一人の被保険者について会社が入っている全部の契約を合計して判定します。保険会社が違っても、加入時期が違っても、合計します。

  • 9-3-5の2ただし書のほうで合計に含めるのは、最高解約返戻率が50%超70%以下のものだけです
  • 役員や部課長その他特定の使用人のみを被保険者としていて、保険料が給与になるものは、判定に含めません
  • 改正通達の適用日より前に契約したものは、判定に含めません

期の途中で追加加入して30万円を超えたら、超えた時点以後の期間分から本則に戻ります。逆に一方を解約して30万円以下になったら、その時以後の期間分は本則の適用がなくなります(事務が煩雑なら、その事業年度の全額をまとめて扱うことも認められています)。

解約返戻金相当額のない短期払のほうは、超えたら「その事業年度に支払ったどちらの保険料も」期間の経過に応じた損金算入に戻ります。年払20万円の医療保険と年払100万円のがん保険に入っていれば、20万円のほうも一括損金にはできません。

📌 「保険期間を通じて」の意味
9-3-5(注)2は「保険期間を通じて解約返戻金相当額のない」と書いています。保険料の払込期間中は解約返戻金がないが、払込期間が終わると解約返戻金が出る商品は、この特例の対象外です。ここは商品説明を読み違えやすいところです。

6. 終身の第三分野保険は「116歳まで」

保険期間が終身の第三分野保険(医療保険・がん保険など)は、保険期間の開始の日から被保険者の年齢が116歳に達する日までを、計算上の保険期間とします。

50歳の役員を被保険者にして終身医療保険に入り、10年払いで払い終えたとしても、保険料は66年に割って損金にしていくのが原則です。30万円の特例が使えるかどうかで、手間がまるごと変わります。

7. 決算前に保険を検討するときの手順

  1. 契約日を見る。令和元年7月8日(短期払で解約返戻金相当額のないものは10月8日)より前か後か
  2. 後なら、保険設計書で最高解約返戻率を確認する。パンフレットの数字ではなく、その契約の数字
  3. 50%以下なら、期間の経過に応じて全額損金。ここで終わり
  4. 50%超なら、4区分のどこに入るかを決める。資産計上期間・資産計上額・取崩期間の3つを、契約時に表にしておく
  5. 同じ人を被保険者にしている他の契約を並べて、30万円の判定をする。どちらの30万円の話かを区別する
  6. 保険期間が終身の第三分野保険なら、116歳までで割る
  7. 資産計上した金額は、別表五(一)に残る。決算のたびに残高を突き合わせる(別表四の留保欄は、そのまま別表五(一)へ引っ越す

📌 範囲注記
どの保険に入るか、保険金額をいくらにするか、保険料が事業規模に見合っているかの判断は、保険会社と募集人の領域です。この記事は「支払った保険料を、法人税の計算上どこに置くか」だけを扱っています。商品ごとの解約返戻金の推移は保険設計書で確認してください。また、保険は資金が固定されます。期末の駆け込みで入る前に、納税資金が残るかを先に確かめてください。

まとめ

  • 令和元年6月28日の通達改正で、個別通達5本が廃止された。「長期平準定期は2分の1」の根拠はもうない
  • 新旧の分かれ目は令和元年7月8日。解約返戻金相当額のない短期払のものだけ10月8日
  • それより前の契約は、いまも旧ルールで処理する
  • いまの区分は最高解約返戻率。50%以下は全額損金、50%超70%以下は40%資産計上、70%超85%以下は60%資産計上、85%超は最高解約返戻率×70%(10年までは×90%)
  • 資産計上期間は保険期間の40%(85%超は別建て)、取崩期間は75%相当期間経過後から
  • 「期間」は事業年度ではなく、契約日から1年ごとに区切った各期間
  • 30万円の特例は2つ。「その年に支払った額」で見るものと、「年換算保険料相当額」で見るもの
  • 30万円は一の被保険者について合計で判定する。会社も加入時期も問わない
  • 終身の第三分野保険は116歳までで割る
この記事の主な根拠(出典)

  • 法人税基本通達9-3-5(定期保険及び第三分野保険に係る保険料)/9-3-5の2(定期保険等の保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合の取扱い)/9-3-6の2(特約に係る保険料)/2-2-14(短期の前払費用)
  • 令和元年6月28日付 課法2-13ほか2課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達)およびその経過的取扱い(廃止された個別通達5本を含む)
  • 国税庁「定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ」
  • 国税庁タックスアンサー No.5364(定期保険及び第三分野保険の保険料の取扱い〈令和元年7月8日以後契約分〉)/No.5364-2
  • ※2026年時点の制度に基づく記事です

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