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更新日 2026-08-07 節税・経費

繰り延べただけの節税は、いつ税金が戻ってくるのか──減価償却・倒産防止共済・生命保険の出口

「今期は利益が出たので、即時償却で全額落としました」「倒産防止共済に240万円入れました」「法人保険に入りました」。

どれもよくある決算対策です。そしてどれも、税金が消えているわけではありません。先送りされているだけです。

問題は、先送りされた税金がいつ・いくら戻ってくるのか、そして戻ってくる年に何をぶつけるのかを決めているかどうかです。ここを決めずに入ると、数年後に「解約したら全部雑収入になって、その年に大きな税金が出た」という形で返ってきます。

この記事の結論

  • 繰延べ型の節税は5年・10年で通算すれば損金の合計が同じ。総額は減らない
  • だから効くのは「今期だけ利益が突出している」会社。利益が平準化している会社ほど効果は薄い
  • 減価償却:早く落とした分、翌期以降の償却が減る。売却時には帳簿価額が下がっている分だけ譲渡益が出る
  • 経営セーフティ共済:解約手当金は全額が益金。しかも2024年10月1日以後の解約は、解約日から2年間は掛金が損金にならない
  • 法人保険:令和元年6月の通達改正で「全額損金」は終わった。解約返戻金は益金
  • 出口にぶつける先は役員退職金・大規模修繕・赤字の年・設備の除却
  • 入る前に「いつ出すか」と「そのとき何にぶつけるか」を決める

1. 繰延べとは何が起きているのか

繰延べ型の節税は、損金を前倒しし、益金を後ろにずらすものです。

たとえば600万円の設備を即時償却したとします。通常なら6年で100万円ずつ落とすところを、初年度に600万円落とす。

通常の償却 即時償却
1年目の損金 100万円 600万円
2〜6年目の損金 各100万円 0円
6年間の合計 600万円 600万円

合計は同じです。動いたのはタイミングだけ。

だから繰延べが効くのは、税率が下がる方向にタイミングをずらせるときです。

  • 今期だけ大口の売上があり、翌期以降は落ち着く見込み
  • 今期は年800万円超の所得帯(税率23.2%)だが、翌期は800万円以下(15%)に収まる
  • 数年後に役員退職金という大きな損金が出る予定がある

逆に、毎年同じくらいの利益が出ている会社では、繰延べの効果はほとんどありません。同じ税率帯の中で前後させているだけだからです。

2. 減価償却──出口は「売却」と「償却の枯渇」

減価償却は、繰延べのなかで最も基本的なものです。少額減価償却資産の特例、一括償却資産、特別償却、即時償却。どれも「早く落とす」制度です。

出口は2つあります。

(1)翌期以降の償却費がなくなる

即時償却をすれば、その資産の償却費は以後ゼロです。翌期の利益がそのぶん増えます。

(2)売却したときに譲渡益が出る

早く償却した分だけ帳簿価額が下がっています。同じ金額で売れば、そのぶん売却益が大きくなります。「4年落ちの中古車で節税」がよく語られますが、売却まで含めれば効果は縮みます(中古の車・機材を買ったとき耐用年数はどうなる?)。

注意が2つあります。一括償却資産は、除却・滅失・譲渡があっても損金が増えません。3年均等償却を続けるだけです。また少額減価償却資産の特例には貸付用資産の除外があります(少額資産の線は3本ある)。

3. 経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)──出口が最もはっきりしている

掛金は月20万円まで、年間240万円まで全額損金。積立限度額は800万円。入口の効き方は強い制度です。

出口はこうです。

  • 解約手当金は全額が益金(法人なら雑収入)。40か月以上納めていれば掛金全額が戻りますが、その全額に課税されます
  • 12か月未満の解約は掛け捨て(掛金が戻らない)
  • 損金算入は現実に支払った日。手形の振出しでは足りません。決算月に間に合わせるなら「振込による前納」

そして令和6年度改正で条件が1つ増えました。

2024年10月1日以後に解約した場合、解約の日から2年を経過する日までに再加入しても、その掛金は損金になりません。「解約して受け取り、また入り直して落とす」というループが封じられました。

つまり出口で必ず課税されるうえ、出口の直後に入り直せない。だから解約する年に、ぶつける損金を用意しておく必要があります。

制度の詳細は 期末に間に合わせる2つの打ち手──決算賞与の3要件と、経営セーフティ共済の「振込」、個人事業主版は 経営セーフティ共済は個人事業主も使える にあります。

4. 法人保険──「全額損金」はもう存在しない

令和元年6月28日付の通達改正(課法2-13)で、それまでの個別通達5本が廃止されました。長期平準定期保険の「2分の1損金」の根拠だった昭和62年の通達も、この中に含まれています。

現在は最高解約返戻率で4区分されます。

最高解約返戻率 資産計上
50%以下 全額損金
50%超70%以下 40%を資産計上
70%超85%以下 60%を資産計上
85%超 最高解約返戻率×70%(開始から10年までは×90%)

そして解約返戻金は益金です。資産計上した分を取り崩し、差額が利益として出ます。

つまり法人保険も繰延べです。保障が要るから入るのは合理的ですが、節税のために入るなら出口の設計が前提になります。詳しくは 「法人保険で節税」は令和元年6月に終わった、受取人の設計は 保険料がまるごと給与になるとき を参照してください。

5. 出口に何をぶつけるか

繰延べた税金が戻ってくる年に、大きな損金を用意できれば、繰延べは「先送り」から「消化」に変わります。ぶつける先は主に4つです。

ぶつける先 何が起きるか
役員退職金 最も金額が大きい。共済の解約益・保険の解約返戻金を同じ期にぶつけるのが定番。個人側も退職所得(控除後2分の1・分離課税・社会保険料なし)
大規模修繕・設備の入替え 修繕費として落ちる部分は損金。ただし資本的支出との区分に注意(その修理は経費?資産?
赤字の年 業績が落ちた年に解約すれば、益金が欠損を埋める形になる
設備の除却 使わなくなった資産の除却損。ただし一括償却資産は落ちない

このうち役員退職金が本命です。共済の解約と退職金の支給を同じ事業年度に合わせれば、益金と損金が相殺されます。退職金の適正額には限界があるので、役員退職金の適正額 で先に上限の考え方を確認してください。

6. 入る前に決めること

繰延べ型に入るときに、最低限決めておくのは次の3つです。

  1. いつ出すか。何年後に解約・売却・除却するのか
  2. そのとき何にぶつけるか。退職金なのか、修繕なのか、赤字なのか
  3. 出せなかったらどうするか。予定が狂ったとき、そのまま持ち続けられるか

この3つが決まっていない繰延べは、税金の借金です。借金そのものは悪ではありませんが、返済計画のない借金は困ります。

そして忘れやすいのが、節税しすぎることのコストです。融資も住宅ローンも、決算書で判断されます。所得を削りすぎた年の決算書は、金融機関には「利益の出ていない会社」に見えます(節税しすぎると詰む場面)。

7. 判断の順番

決算対策を検討する順番は、次のとおりです(決算対策には4つの型しかない)。

  1. 期ズレの正常化から入る。未払費用の計上漏れ、売上の帰属年度。現金を使わずに所得が動く唯一の型
  2. 次に税額控除を探す。総額が本当に減るのはここだけ
  3. 最後に繰延べを、いくら使うか決める

繰延べを最初に検討するのは、順番が逆です。現金が出ていくものは最後に回してください。

まとめ

  • 繰延べはタイミングをずらすだけ。5年・10年で通算すれば損金の合計は同じ
  • 効くのは今期だけ利益が突出している会社。平準化している会社では効果が薄い
  • 減価償却の出口は「翌期以降の償却がなくなる」と「売却時に譲渡益が出る」
  • 一括償却資産は除却・譲渡でも損金が増えない
  • 経営セーフティ共済は解約手当金が全額益金2024年10月1日以後の解約は2年間、再加入しても損金にならない
  • 法人保険は令和元年6月の通達改正で最高解約返戻率による4区分。解約返戻金は益金
  • ぶつける先は役員退職金・大規模修繕・赤字の年・除却。本命は退職金
  • 入る前に「いつ出すか」「何にぶつけるか」「出せなかったらどうするか」を決める

この記事の主な根拠(出典)

  • 租税特別措置法66条の11(特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例=経営セーフティ共済)/同法施行令39条の20
  • 租税特別措置法通達66の11-2(損金算入の時期)/66の11-3(前納掛金)
  • 法人税基本通達9-3-5・9-3-5の2(定期保険及び第三分野保険に係る保険料)/令和元年6月28日付課法2-13
  • 法人税法施行令133条の2(一括償却資産の損金算入)/租税特別措置法67条の5(少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)
  • 法人税法34条(役員給与の損金不算入)/所得税法30条(退職所得)
  • ※経営セーフティ共済の2年ルールは令和6年度改正により令和6年10月1日以後の解約に適用されます
  • ※出典の各ページは2026年8月7日に確認しました。制度は改正されることがあります

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