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更新日 2026-08-05 法人の決算と申告

保険料がまるごと給与になるとき──法人税は変わらないのに、社長個人に追徴が出る

会社が払った保険料の行き先は、3つしかありません。損金・資産・給与です。

このうち給与になったときだけ、話が法人の外に出ます。法人税では保険料でも給与でも損金なので、法人の税額は変わりません。変わるのは、被保険者になっている個人のほうです。所得税と住民税がかかり、会社には源泉徴収の漏れが生じます。

そして分かれ目は、保険商品の名前ではありません。受取人を誰にしたかと、誰を被保険者にしたかの2つです。

この記事の結論

  • 保険料の行き先は損金・資産・給与の3つ。どれになるかは受取人で決まる
  • 給与になっても、法人税は変わらない。保険料も給与も損金だから。効くのは個人の所得税・住民税と、会社の源泉徴収
  • 養老保険は3パターン。①受取人が全部法人=全額資産計上 ②全部被保険者・遺族=全額給与 ③死亡は遺族・生存は法人=2分の1資産計上(福利厚生プラン)
  • ③でも、役員や部課長その他特定の使用人だけを被保険者にしていると、残りの2分の1は給与になる
  • 定期保険・第三分野保険は、受取人が遺族でも原則は期間の経過に応じて損金。★特定の使用人のみを被保険者にしているときだけ給与
  • 契約者・受取人は何度でも変えられる。提案時の経理処理のまま続けていると、途中から誤りになる
  • 個人年金保険は別の通達。死亡給付金が遺族・年金が法人なら90%を資産計上

※制度はいずれも2026年時点のものです。

1. 通達は「保険の種類ごと」に分かれている

まず、自分の契約がどの通達を見る保険なのかを決めます。

保険 見る通達
養老保険 法人税基本通達9-3-4
定期保険・第三分野保険 9-3-5、9-3-5の2
定期付養老保険等 9-3-6
保険給付のある特約 9-3-6の2(特約の内容に応じて9-3-4・9-3-5・9-3-5の2の例による)
個人年金保険 平成2年5月30日 直審4-19(個別通達)

定期付養老保険等には落とし穴があります。保険料が生命保険証券等で養老保険部分と定期保険部分に区分されていれば、それぞれの通達で処理します。区分されていなければ、全部まとめて養老保険(9-3-4)の例です。定期部分まで資産計上になったり、条件によっては全額給与になったりします。証券に内訳が書かれているかを見てください。

なお、終身保険は9-3-4から9-3-6までの定義のどれにも当てはまりません。通達に直接の定めがないので、契約内容と保険会社の税務取扱いを個別に確認することになります。

2. 養老保険──受取人の組み合わせで3つに分かれる

養老保険は、死亡保険金と生存保険金(満期保険金)の両方があります。だから受取人の組み合わせが3通りになります。

死亡保険金の受取人 生存保険金の受取人 支払保険料の取扱い
法人 法人 全額を資産計上(保険事故の発生・解除・失効で契約が終了するまで)
被保険者・その遺族 被保険者・その遺族 全額が、その役員・使用人に対する給与
被保険者の遺族 法人 2分の1を資産計上、残額は期間の経過に応じて損金。★ただし役員又は部課長その他特定の使用人のみを被保険者としている場合は、当該残額は給与

③がいわゆる福利厚生プラン(ハーフタックスプラン)です。「2分の1が損金になる」という説明は、ただし書に当たらないことが前提になっています。

②に注意してください。ここには「ただし書」がありません。役員だけであろうと全員加入であろうと、受取人が両方とも被保険者側なら全額給与です。

3. 定期保険・第三分野保険は、原則として給与にならない

こちらは満期保険金がないので、シンプルです。

受取人 支払保険料の取扱い
法人 原則として、期間の経過に応じて損金
被保険者・その遺族 原則として、期間の経過に応じて損金。★ただし役員又は部課長その他特定の使用人のみを被保険者としている場合は、給与

「受取人が遺族だから給与」ではありません。全従業員を対象にした定期保険なら、受取人が遺族でも期間の経過に応じた損金です。給与になるのは、対象を絞っているときだけです。

これは最高解約返戻率が50%を超える契約でも同じです。9-3-5の2には注書きがあり、受取人が被保険者又はその遺族で、かつ役員又は部課長その他特定の使用人のみを被保険者としているときは、資産計上のルール自体が適用されず、支払保険料の全額が給与になります。資産計上の話をする前に、ここを確かめてください。

保険料の資産計上区分そのものは 「法人保険で節税」は令和元年6月に終わった にまとめました。

4. ★「普遍的加入」と言えるかどうか

②③のただし書に出てくる「役員又は部課長その他特定の使用人のみ」を避けるには、普遍的に加入している状態を作る必要があります。実務で確かめられるのは、おおむね次の点です。

  • 被保険者を特定の者に限定していない
  • 保険金額を、一律、または職階・年齢・勤続年数等に応じて公平に設定している
  • 加入基準・保険金額の基準を書いたものにしてある
  • 被保険者の大部分が同族関係者だけになっていない
  • 加入の目的を「役員・従業員の福利厚生の充実」として説明できる(保険金額を退職金規程の範囲内に収めるなど)
  • 新しく入社した人を加入させ、退職した人を解約する。入り口だけ整えて、その後放置していると崩れます
  • 養老保険のなかに終身保険が混じっていない

「制度としては全員が対象」でも、実際に入っているのが社長と専務だけなら、実態で見られます。加入対象者の名簿と保険金額の一覧を、毎期の決算で残しておくのがいちばん確実です。

📌 範囲注記
福利厚生規程・退職金規程・就業規則の作成や届出は社会保険労務士の領域です。また、誰を加入対象にするか、保険金額をいくらに設定するかの制度設計は保険会社と相談する部分です。この記事は「その結果として、支払った保険料が法人税の計算上どう扱われるか」を扱っています。

5. ★給与になったとき、本当に痛いのは会社の外側

ここが、この論点でいちばん誤解されるところです。

保険料として処理 給与とされた場合
法人の損金 なる なる(同じ)
法人税額 変わらない
被保険者個人の所得税・住民税 かからない かかる
会社の源泉徴収 不要 必要だった=徴収漏れ

法人税では取り返せません。動くのは、被保険者になっている役員・使用人の給与所得です。源泉所得税の納付漏れとして、会社が納めることになります。役員報酬の額そのものが変わるので、定期同額給与の判定にも波及します(役員報酬を変えていいのは1年に1回、それも期首から3か月まで)。

過少に納付していた源泉所得税には、不納付加算税と延滞税がつきます。加算税の種類と割合は 加算税・延滞税の早見表 をご覧ください。

6. ★契約は途中で変わる。だから毎期見る

生命保険では、被保険者は個人でなければなりません。会社は契約者と保険金受取人にはなれますが、被保険者にはなれません。

そして、契約者の変更・受取人の変更・保険金額の増減は、契約後に何度でもできます。

ここで事故が起きます。保険会社の提案書に書かれた経理処理は「法人が死亡保険金受取人」を前提にしているのに、申込みの段階で死亡保険金受取人を被保険者の遺族に変えたまま、提案書どおりの処理を続けてしまう——という形です。

保険料の額も引落しも変わらないので、帳簿を見ているだけでは絶対に気づきません。

毎期の決算で、保険証券(または契約内容のお知らせ)を1枚ずつ開いて、契約者・被保険者・受取人の3つを確かめてください。保険料の金額ではなく、名義を見ます。

7. 個人年金保険は、別の通達で90%

個人年金保険は満期保険金がなく、死亡給付金の額が払込期間の経過に応じて増えるなど、養老保険とは仕組みが違います。そのため専用の個別通達があります。

死亡給付金の受取人 年金の受取人 支払保険料の取扱い
法人 法人 全額を資産計上
被保険者・その遺族 被保険者・その遺族 全額が給与
被保険者の遺族 法人 90%を資産計上、残額は期間の経過に応じて損金。★ただし役員又は部課長その他特定の使用人のみを被保険者としている場合は、当該残額は給与

養老保険の「2分の1」と混ざりやすいので、区別してください。個人年金保険は10分の9です。

8. 決算で確かめること

  1. 保険証券を1枚ずつ開く。契約者・被保険者・受取人の3つを見る
  2. その契約が養老保険・定期保険・第三分野保険・定期付養老保険等・個人年金保険のどれかを決める
  3. 定期付養老保険等なら、証券で保険料が区分されているかを見る。区分がなければ全部が養老保険の例
  4. 受取人の組み合わせを、通達の表に当てはめる
  5. 「役員又は部課長その他特定の使用人のみ」に当たらないかを確かめる。当たるなら、資産計上ではなく給与
  6. 福利厚生プランなら、加入対象者の名簿と保険金額の基準を決算資料に残す。新入社員の加入と退職者の解約が続いているかも見る
  7. 前期と契約内容が変わっていたら、変わった時点から処理を変える
  8. 給与とすべきものが見つかったら、その人の年末調整・源泉徴収まで戻る

まとめ

  • 保険料の行き先は損金・資産・給与の3つ。決めるのは受取人誰を被保険者にしたか
  • 給与になっても法人税は変わらない。痛いのは個人の所得税・住民税と、会社の源泉徴収漏れ
  • 養老保険は①全額資産計上 ②全額給与2分の1資産計上(福利厚生プラン)の3通り
  • ③のただし書──役員又は部課長その他特定の使用人のみが被保険者なら、残額は給与
  • 定期保険・第三分野保険は、受取人が遺族でも原則は損金。給与になるのは対象を絞っているときだけ
  • 9-3-5の2にも同じ注書きがある。該当すれば資産計上の話にすらならず、全額給与
  • 定期付養老保険等は、証券で区分されていなければ全部が養老保険の例
  • 契約者・受取人は何度でも変えられる。提案時のまま処理を続けない
  • 個人年金保険は別の通達。90%資産計上(養老保険の2分の1と混同しない)
この記事の主な根拠(出典)

  • 法人税基本通達9-3-4(養老保険に係る保険料)/9-3-5(定期保険及び第三分野保険に係る保険料)/9-3-5の2(注)6/9-3-6(定期付養老保険等に係る保険料)/9-3-6の2(特約に係る保険料)
  • 平成2年5月30日 直審4-19「法人が契約する個人年金保険に係る法人税の取扱いについて」(法令解釈通達)
  • 国税庁「定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ」
  • 国税庁タックスアンサー No.5363(養老保険の保険料の取扱い〈令和元年7月8日以後契約分〉)/No.5364/No.5365
  • ※2026年時点の制度に基づく記事です

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