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更新日 2026-07-25 経理のAI活用

財産データベースを自作する手順|相続実務を回すための設計リファレンス

相続の実務は、つきつめると「財産をもれなく把握し、正しく評価する」ことに尽きます。ところが現場では、不動産は登記簿、預貯金は残高証明、証券は取引報告書……と資料がバラバラで、案件のたびに一から集計し直す、ということが起こりがちです。

この記事は、散らばった情報を1つの財産データベース(財産DB)にまとめ、AIを設計の相棒にして自作するための設計リファレンスです。コードを書ける必要はありません。大事なのは設計の考え方です。

この記事の結論
– 相続実務の土台は「財産の網羅」。1件1行の財産DBがあると、集計・見直し・申告準備が一気に楽になる。
– 設計は3層:①項目設計(何を持つか)→ ②台帳(1件1行で記録)→ ③集計(名寄せ・小計)
評価額そのものはDBが決めるのではなく、財産評価基本通達・路線価等に従う。DBは「根拠と数字を並べて管理する器」。
– 財産DBは個人情報の塊。ローカル管理・ダミーで設計し、評価と申告の確定は税理士が持つ。

⚠️ 器は自作できても、評価と申告の確定は税理士が
財産DBは情報を整理する器です。個々の財産評価額や相続税の計算・申告は、財産評価基本通達や関連法令にもとづき、税理士が最終確定してください。DBの数字は「根拠つきの下ごしらえ」であって、結論ではありません(2026年時点の情報です)。

なぜ「財産データベース」なのか

資料が種類ごとにバラバラだと、こんな手戻りが起きます。

  • 財産の数え落とし(把握していない口座・保険・貸付金)
  • 同じ人の財産が名寄せできず、全体像が見えない
  • 評価の根拠資料の所在が分からず、確認のたびに探す

財産DBは、これらを1件1行に集約します。1行に「何を・いくらで・どの根拠で・資料はどこに」を並べておけば、集計も見直しも、後からの確認も速くなります。

設計の3層

①項目設計(何を持つか)

最初に決めるのは列(項目)です。ここが設計の8割を占めます。AIには「相続の財産DBに必要な項目を挙げて」と壁打ちしつつ、自分の実務に合わせて取捨選択します。項目例は次章の表を参照。

②台帳(1件1行で記録)

決めた項目に沿って、財産を1件ずつ1行で記録します。種別が違っても同じ台帳に入れておくのがコツ(不動産も預貯金も同じ表)。種別列で分けられるようにしておけば、後から絞り込めます。

③集計(名寄せ・小計)

名義や種別で名寄せし、小計・合計を出します。「被相続人ごと」「種別ごと」「プラス財産/マイナス財産(債務)」で集計できると、全体像がつかめます。AIには集計の下ごしらえ(合計・並べ替え)を頼み、件数と合計は必ず自分で検算します。

持つべき項目(例)

項目 内容 ねらい
財産種別 不動産/預貯金/有価証券/保険/貸付金/債務… 集計・絞り込みの軸
名義・被相続人 誰の財産か 名寄せの軸
内容・所在 物件所在・金融機関・銘柄など 特定と資料照合
評価額 現時点の評価額 集計の元(根拠は別列)
評価根拠 路線価・残高証明・通達の区分など あとで確認できるように
取得日・取得原価 取得の記録 譲渡・見直し時に必要
資料の所在 現物・PDFの保管場所 探す時間をなくす
状態・備考 確認中/確定済 など 進捗管理

ポイントは、評価額の隣に必ず「評価根拠」を置くこと。数字だけを持つと、後で「なぜこの額か」を追えなくなります。

評価はDBではなく「通達」に従う

ここが最重要の注意点です。財産DBは評価額を入れる器であって、評価額を決める道具ではありません。土地なら路線価方式・倍率方式、非上場株式なら区分に応じた方式——評価そのものは財産評価基本通達や関連法令に従います。AIに「評価額を出して」と丸投げして、その数字を鵜呑みにするのは危険です。

DBに持たせるのは、あくまで「通達に沿って人が確認した評価額」と「その根拠」。AIは、根拠資料の整理や集計の下ごしらえを手伝う役に留めます。

守秘とローカル管理(ダミーで設計)

財産DBは、氏名・資産・家族関係が詰まった最も守秘性の高いデータです。

  • 設計はダミーで:構造を作る段階では実データを使わず、ダミーで組む(ダミーデータ生成の手順)。
  • 実データはローカルで:実際の財産情報は手元で管理し、AIに丸ごと渡さない。
  • 最小限で渡す:AIの助けが要るときも、構造や少数のダミー行だけを渡す。

AIに任せられる範囲

任せやすい(AI) 人が持つ
項目設計の壁打ち・たたき台づくり どの項目を採用するかの決定
台帳フォーマットの整形・集計の下ごしらえ 評価額の確定・通達適用の判断
名寄せ・並べ替え・合計の補助 件数・合計の検算と最終確認
入力チェックの観点出し 相続税の計算・申告の確定(税理士)

「作ってもらう」と「自分で作る」の線引きは、次の記事「『AIに作ってもらう』と『自分で作る』の境目」でさらに掘り下げます。

よくある質問

Q. Excelでも財産DBになりますか?
A. なります。大事なのは道具ではなく設計(1件1行・種別列・評価根拠列)です。まずは表計算ソフトで十分始められます。

Q. 評価額はAIに計算させていい?
A. 下ごしらえの試算までにとどめ、通達に沿った確定は人(税理士)が行います。AIの数字をそのまま評価額にしないでください。

Q. 財産DBをAIに読み込ませて相談したい。
A. 実データは読み込ませません。相談したいときは構造やダミー行で。実データはローカルに置いたままにします。

Q. どこまで作り込むべき?
A. 最初は「網羅」と「名寄せ」ができれば十分です。使いながら項目を足していくほうが、破綻しません。

まとめ

財産DBは、相続実務の土台を「探す・数え直す」から「引くだけ」に変えます。項目設計→1件1行の台帳→名寄せ集計の3層で組み、評価額の隣に必ず根拠を置く。そして、評価そのものは通達に従い、確定は税理士が持つ。設計の相棒としてAIを使いつつ、実データはローカルで守る——この形なら、コードを書けなくても実務が回る道具になります。

この記事の主な根拠(出典)
・財産の評価方法(路線価方式・倍率方式ほか)は、財産評価基本通達および相続税に関する国税庁タックスアンサー等にもとづきます
・実データのダミー化・ローカル管理は、士業の守秘義務にもとづく実務原則です
・3層設計・項目例・AIとの役割分担は、筆者の運用方針です(2026年時点の情報です)。

次に読む

👉 「AIに作ってもらう」と「自分で作る」の境目:非エンジニアの道具づくり
👉 個人情報を渡さずにAIで業務を作る:ダミーデータ生成の手順とチェックリスト
👉 AI出力を検証する方法:士業が使うクロスチェックの手順リファレンス

相談したいとき

相続実務やAI活用のご相談は、公式LINEからどうぞ 👉 https://lin.ee/WAIywXB

この記事の位置づけ

この記事は「5 道具を1つ作ってみる」の詳細です。

AIに実務を渡す前に、決めることが3つあります——コース全体のどこにあたるかは、全体像のページで確認できます。

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