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更新日 2026-07-23 起業時の知識第20回

生活費と事業費が同じ口座で混ざっている…事業主貸・事業主借で立て直す方法

「事業のお金も生活費も、全部ひとつの口座。しかもプライベートのカードで経費も払っていて、もう何がなんだか分からない」——確定申告の時期に、通帳とにらめっこして頭を抱える。開業したばかりの人に、本当によくある状態です。

でも、安心してください。混ざっていても、立て直せます。 個人事業には「事業主貸」「事業主借」という、まさにこういうときのための便利な勘定科目があります。この記事では、ぐちゃぐちゃになったお金を整理し、来年からラクにするための手順を、具体的な仕訳例つきで解説します。

この記事の結論
– 生活費と事業費が混ざっていても、あとから整理できる
– カギは事業主貸・事業主借。個人と事業のお金の行き来を記録する2つの科目
– 手順は「①事業用口座を作る ②混在分を仕訳で整理 ③以後は分けて運用」
– 完璧な過去より、来年からきれいにすることを優先

まず知っておく:混ざっても“違法”ではない

最初に安心してほしいのは、生活費と事業費が同じ口座にあること自体は、違法でも間違いでもないということ。個人事業では、事業のお金と個人のお金が行き来するのはむしろ自然なことです。問題は「記録の仕方」であって、混在そのものではありません。

その記録のためにあるのが、次の2つの勘定科目です。

立て直しの主役:「事業主貸」と「事業主借」

勘定科目 どんなとき イメージ
事業主貸 事業のお金を、個人(生活費など)に使ったとき 事業から個人へ、お金が出ていった
事業主借 個人のお金を、事業のために使ったとき 個人から事業へ、お金が入ってきた

覚え方のコツは「事業から見て、どっち向きにお金が動いたか」。事業のお金を生活に回したら「事業主貸」、自分のポケットマネーで事業の支払いをしたら「事業主借」です。難しく考えず、この2つに振り分けるだけ。

具体例で見る仕訳

例1:事業用の売上が入った口座から、生活費10万円を引き出した

事業主貸 100,000 / 普通預金 100,000

→ 事業のお金を個人に使ったので「事業主貸」。

例2:プライベートの財布から、事業の消耗品5,000円を現金で買った

消耗品費 5,000 / 事業主借 5,000

→ 個人のお金で事業の支払いをしたので、相手科目は「事業主借」。

例3:個人用クレジットカードで、事業のソフト代 3,000円を払った

通信費(等)3,000 / 事業主借 3,000

→ カードが個人名義でも、事業の経費なら計上OK。支払元が個人なので「事業主借」。

このように、「経費かどうか」と「どの財布から払ったか」は別問題。事業に必要な支出なら、個人のお金・個人カードで払っても、事業主借を使えばきちんと経費にできます。

立て直しの3ステップ

ステップ1:まず「これから」を分ける

過去をさかのぼって完璧に直すより、まず今日からです。事業用の口座を1つ用意し(屋号なしでOK)、事業用カードを決めて、以後の事業の入出金はそこに寄せます。これだけで、来年の申告は劇的にラクになります(口座を分ける意義は関連記事へ)。

ステップ2:混在していた期間を、仕訳で整理する

今年すでに混ざってしまった分は、会計ソフトで一つずつ振り分けます。

  • 事業の入出金 → そのまま該当科目で記帳
  • 生活費の出金 → 事業主貸
  • 個人のお金・個人カードで払った事業の経費 → 経費科目/相手を事業主借

会計ソフトなら「事業主貸」「事業主借」を選ぶだけ。件数が多くても、口座・カードを連携すれば明細が自動で取り込まれ、あとは振り分けるだけになります。

ステップ3:期首・元入金を整える(初年度なら)

開業初年度で立て直す場合は、開業時点の「元入金」や期首残高の設定もあわせて確認しておくと、帳簿がすっきりします(詳しくは関連記事へ)。

「事業主貸・事業主借」は年末にどうなる?

この2つの科目は、その年の個人と事業のお金の行き来を記録するもので、年をまたぐと翌年の期首に元入金へ振り替えられて、いったんリセットされるのが基本です(会計ソフトが自動処理します)。だから「今年たくさん事業主貸が出た」からといって、税金が増えたり減ったりするわけではありません。あくまでお金の出入りを記録するための科目で、利益(=税金)を直接動かすものではない、と理解しておけば十分です。

よくある質問(FAQ)

Q. 事業主貸が多いと、税務署に何か言われる?
事業主貸自体は、事業のお金を生活に回した記録に過ぎず、それだけで問題になるものではありません。ただし、事業の経費に私的な支出(家事費)を紛れ込ませるのはNG。プライベートな支出はきちんと事業主貸で処理しましょう。

Q. 生活費と事業で共通のもの(自宅の家賃・電気代)は?
自宅兼事務所の家賃・光熱費・通信費などは、事業で使う割合分だけを経費にできます(家事按分)。事業割合を合理的に決めて、その分を経費計上します。

Q. 過去の分、どこまで直せばいい?
今年の申告に必要な範囲を整理すれば十分です。完璧を目指して止まるより、来年から分けて運用するほうが、はるかに効果的です。

Q. 個人カードのポイントやキャッシュバックは?
事業の支払いで得た個人カードのポイントの扱いは細かい論点です。基本は、事業の経費は税抜・税込の支払額で計上し、ポイントは通常、受け取った時点等で必要に応じて処理します。判断に迷う場合は個別にご相談を。

まとめ

  • 生活費と事業費が混ざっていても、立て直せる(混在自体は違法でない)
  • 事業主貸(事業→個人)/事業主借(個人→事業)で行き来を記録する
  • 経費かどうかと、どの財布から払ったかは別。個人カードでも経費にできる
  • 手順は「まず今日から分ける → 混在分を仕訳 → 期首を整える」
  • 来年からきれいにを優先。過去の完璧さにこだわらない
この記事の主な根拠(出典)

  • 個人事業における事業主貸・事業主借の会計処理(複式簿記の一般的な取扱い。期首に元入金へ振替)
  • 所得税法45条・所得税法施行令96条ほか(家事関連費・家事按分の考え方)
  • 所得税法231条の2ほか(記帳・帳簿保存義務)

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