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更新日 2026-08-05 法人の決算と申告

仲介手数料は取得価額、登録免許税は選べる──「いくらで買ったことになるのか」で、その資産の一生が決まる

決算で「この請求書は資産か経費か」を判定したあと、もう1つ決めることがあります。資産にすると決めた場合、いくらを取得価額にするのかです。

減価償却資産を買ったときに決めるべきことは2つしかありません。取得価額と耐用年数です。この2つが決まれば、あとは償却方法に従って機械的に計算するだけになります。

そして取得価額は、修繕費か資本的支出かの判定とは違って、明確な条文と通達があります。にもかかわらず現場で毎年ズレるのは、「算入しなければならないもの」と「算入しないことができるもの」が混ざっているからです。

この記事の結論

  • 購入代価だけではない。引取運賃・購入手数料・関税・据付費などは算入必須(法令54①一)
  • 不動産の仲介手数料は「購入手数料」なので算入必須。登録免許税・不動産取得税は選べる(法基通7-3-3の2)
  • 選べるものは「算入しないことができる」だけ。算入してもよい。特別償却の金額要件を満たしたいときは、あえて算入する手もある
  • ★★一方通行。いったん取得価額に入れたら、後の事業年度で抜き出して損金にはできない
  • 土地と建物を一緒に買っておおむね1年以内に壊すと、建物の帳簿価額も取壊費用も土地の取得価額になる(法基通7-3-6)。償却できなくなる
  • 借入金の利子は算入しないことができる。ただし★建設仮勘定に含めた時点で「算入した」ことになる
  • 消費税の経理方式で判定額が変わる。免税事業者は税込一択
  • 通達は「自動車取得税」と書いたまま。その後継の環境性能割も令和8年3月31日で廃止された

1. 条文が「合計額」と書いている

まず法律の側から見ます。

購入した減価償却資産 次に掲げる金額の合計額
イ 当該資産の購入の代価引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税(附帯税を除く)その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
ロ 当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の額
(法人税法施行令54条1項1号)

ポイントは「合計額」です。購入代価は取得価額の一部でしかありません。

区分
購入の代価 本体価格
購入のために要した費用(例示) 引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税
事業の用に供するために直接要した費用 据付費、電気配線工事費、試運転費、中古資産を使い始めるために必要となった修繕費

関税は算入必須です(附帯税は除きます)。海外から機材を輸入したときに、関税だけ「輸入諸経費」で落としているケースがよくあります。

「事業の用に供するために直接要した費用」を忘れないでください。エアコンの本体価格が9万8,000円でも、取付工事費が2万円なら取得価額は11万8,000円です。10万円未満の即時損金は使えません。

2. ★算入必須/選べる/そもそも入らない

現場で迷うのは、条文の例示にない周辺費用です。通達が例示を置いています。

次に掲げるような費用の額は、たとえ固定資産の取得に関連して支出するものであっても、これを固定資産の取得価額に算入しないことができる。
(1) 次に掲げるような租税公課等の額
不動産取得税又は自動車取得税
ロ 特別土地保有税のうち土地の取得に対して課されるもの
ハ 新増設に係る事業所税
登録免許税その他登記又は登録のために要する費用
(2) 建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等でその建設計画を変更したことにより不要となったものに係る費用の額
(3) 一旦締結した固定資産の取得に関する契約を解除して他の固定資産を取得することとした場合に支出する違約金の額
(法人税基本通達7-3-3の2)

3列に並べると、こうなります。

扱い 主なもの 根拠
算入必須 本体価格、仲介手数料(購入手数料)、引取運賃、関税、据付費、試運転費、立退料、造成費用 法令54①、法基通7-3-5
算入しないことができる(選べる) 不動産取得税登録免許税・登記費用、新増設に係る事業所税、特別土地保有税、借入金の利子、割賦の利息相当部分、計画変更で不要になった調査・設計費、契約解除の違約金 法基通7-3-3の2、7-3-1の2、7-3-2
そもそも取得価額にならない 固定資産税、自動車税、自動車重量税、新工場の落成・操業開始の記念費用 法基通7-3-7

不動産の仲介手数料と登録免許税は、扱いが逆です。同じ日に同じ決済で払っていても、仲介手数料は法令54条が名指しした「購入手数料」なので算入必須登録免許税は通達が「算入しないことができる」と言っているので選べます。ここを一緒に処理している決算書をよく見ます。

逆に、寄附金や負担金という名前でも算入必須になることがあります。都道府県・市町村から工場誘致等で土地を取得し、代価のほかに寄附金・負担金の名義で金銭を支出した場合、実質的にみてその資産の代価を構成すべきものと認められるときは取得価額に算入します(法基通7-3-3)。名前ではなく中身で見ます。

3. ★「選べる」は一方通行

ここが最も見落とされます。

★★いったん取得価額に算入したら、その後の事業年度で抜き出して損金処理することはできません。

登録免許税を建物の取得価額に入れて償却を始めてしまうと、翌期に「やっぱり経費にしたい」は通りません。初年度の処理選択が、その資産の一生を決めます。

もっとも、あえて算入する選択もあります。

「算入しないことができる」であって、「算入してはいけない」ではありません。特別償却や税額控除の取得価額の金額要件をぎりぎり満たしたいときは、算入するほうが有利になることがあります。

中小企業投資促進税制は機械装置160万円以上、経営強化税制の器具備品は30万円以上といった金額要件があります。159万円の機械に据付費が要らず、登録免許税に相当する費用もない──というときに、算入できるものを算入して160万円に届かせる、という判断はあり得ます。逆に40万円未満の少額特例を使いたいなら、算入しないほうに寄せます。

4. ★土地と一緒に買った建物を壊すと、償却できなくなる

不動産を持つ会社にとって、いちばん金額の大きい落とし穴です。

法人が建物等の存する土地を建物等とともに取得した場合において、その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手する等、当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは、当該建物等の取壊しの時における帳簿価額及び取壊費用の合計額(廃材等の処分によって得た金額を控除した金額)は、当該土地の取得価額に算入する(法人税基本通達7-3-6)。

つまり、建物代も解体費も、まとめて土地になります。土地は償却できません。

「おおむね1年以内」は絶対の期限ではありません。通達は「当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかである」ことを要件にしていて、1年以内の着手はその例示です。建築確認申請の内容や、購入前の事業計画・議事録から目的が認定されます。1年を過ぎたから安全、という話ではありません。

更地にして新築する前提で古アパート付きの土地を買うなら、建物に配分した金額はそもそも償却できないという前提で採算を見てください。

逆に、土地の造成費用は分けられることがあります。埋立て・地盛り・地ならし・切土・防壁工事などは土地の取得価額ですが、防壁・石垣積み等でその規模・構造から土地と区分して構築物とすることが適当と認められるものは、構築物にできます(法基通7-3-4)。上水道・下水道の工事も同様です。構築物なら償却できます。

5. 借入金の利子は「建設仮勘定に入れたら負け」

固定資産を取得するために借り入れた借入金の利子の額は、たとえ当該固定資産の使用開始前の期間に係るものであっても、これを当該固定資産の取得価額に算入しないことができる。
(注) 借入金の利子の額を建設中の固定資産に係る建設仮勘定に含めたときは、当該利子の額は固定資産の取得価額に算入されたことになる。(法人税基本通達7-3-1の2)

原則として損金でよい、という結論は変わりません。問題は注書きのほうです。

建設中の物件で、支払利息を建設仮勘定に積んでいく処理をしている会社があります。そのまま竣工時に建物へ振り替えると、利子は取得価額に入ってしまいます。そして前章のとおり、あとから抜き出せません。

借入金の利子は、繰延資産にもなりません(法基通8-1-2(注))。「使用開始前だから資産計上」という発想そのものが、法人税では不要です。

同じ構造のものがもう1つあります。割賦で買ったときの利息相当部分です。契約において購入代価と、割賦期間分の利息および売手側の代金回収のための費用等に相当する金額とが明らかに区分されている場合に限り、その部分を取得価額に含めないことができます(法基通7-3-2)。契約書で区分されていなければ、全額が取得価額です。

6. ★消費税の経理方式で、判定額が変わる

取得価額は金額基準の入口でもあります。10万円・20万円・40万円、160万円、30万円──どれも「取得価額がいくらか」で決まります。

令第133条《少額の減価償却資産》、令第133条の2《一括償却資産》又は令第134条《繰延資産となる費用のうち少額のもの》の規定を適用する場合において、これらの規定における金額基準を満たしているかどうかは、法人が適用することとなる税抜経理方式又は税込経理方式に応じ、その適用することとなる方式により算定した価額により判定する(消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて 9)。

措置法の特別償却等の金額要件、交際費の1人1万円基準も同じ扱いです(同通達9後段)。

そして、選べない会社があります。

消費税を納める義務が免除される法人については、その行う取引について税抜経理方式で経理をしている場合であっても、税込経理方式を適用して法人税の課税所得金額を計算する(同通達5)。

免税事業者は税込一択です。税抜9万8,000円・税込10万7,800円のパソコンは、免税事業者にとっては10万円以上です。設立して間もない会社ほどここで判定が変わるので、自社が免税事業者かどうかを先に確かめてください。

インボイスの経過措置期間中は、免税事業者等からの仕入れで控除できない部分が取得価額に含まれます。税抜経理でも、控除できない分だけ判定額が上がります。

7. ★通達が改正に追いついていない

上に引用した通達7-3-3の2(1)イは、いまも「不動産取得税又は自動車取得税」と書かれています。この行の最終改正は平成23年です。

  • 自動車取得税は令和元年10月1日に廃止され、自動車税・軽自動車税の環境性能割に移りました
  • その環境性能割も、令和8年3月31日をもって廃止されました。令和8年4月1日以後に取得した自動車には課されません

つまり、2026年4月以降に車を買った法人には、この行の後半を使う場面がもうありません。残るのは不動産取得税のほうで、こちらは健在です。

なお、不動産取得税をいつの損金にするかは、また別の話です。賦課課税方式の租税なので、賦課決定のあった日/各納期の開始の日/実際に納付した日の3つから選べます(法基通9-5-1(2))。取得価額に算入しないと決めた次に、いつの損金にするかをもう一度決めます。この点は決算整理の記事で扱っています。

範囲注記:不動産取得税・登録免許税の税額そのものの計算、登記の手続と必要書類は、税務ではなく登記の領域です。登記まわりは司法書士にご確認ください。この記事は、支払った金額を法人税の計算上どう扱うかだけを扱っています。

8. 現場でやること

決算で固定資産の明細を作るとき、その資産を買った月の総勘定元帳を横に開いてください。

見るもの 判定
仲介手数料・購入手数料 取得価額に入っているか(入っていなければ加算)
据付費・配線工事費・試運転費 取得価額に入っているか
登録免許税・不動産取得税 入れる/入れないを決めて、翌期以降も同じにする
支払利息(建設中の物件) 建設仮勘定に混ざっていないか
立退料 取得価額に入っているか(入っていなければ加算)
消費税の経理方式 税抜か税込か。免税事業者なら税込
古家付き土地 1年以内に壊す計画がないか

中古資産を買ったときは、耐用年数のほうも同時に決めます。取得価額と耐用年数はセットです。中古の年数の決め方は中古資産の耐用年数の記事にまとめています。

まとめ

  • 取得価額は購入代価+購入のために要した費用+事業供用のために直接要した費用の合計額(法令54①)
  • 仲介手数料・引取運賃・関税・据付費・立退料は算入必須
  • 不動産取得税・登録免許税・借入金の利子は「算入しないことができる」=選べる
  • ★★選択は一方通行。後から抜き出して損金にはできない
  • 特別償却の金額要件を満たしたいならあえて算入、少額特例を使いたいなら算入しない
  • 土地とともに取得した建物をおおむね1年以内に壊すと、建物代も取壊費も土地になる(7-3-6)
  • 建設仮勘定に利子を含めたら、算入したことになる(7-3-1の2注)
  • 金額基準は経理方式で判定が変わる。免税事業者は税込一択(経理通達5・9)
  • 通達の「自動車取得税」は廃止済み。後継の環境性能割も令和8年3月31日で廃止
この記事の主な根拠(出典)

  • 法人税法施行令54条1項(減価償却資産の取得価額。1号イの購入の代価と購入のために要した費用、ロの事業供用のために直接要した費用)/同3項(圧縮記帳をした場合)
  • 法人税基本通達7-3-1の2(借入金の利子。注の建設仮勘定)/7-3-2(割賦購入資産等の利息相当部分)/7-3-3(固定資産の取得に関連して支出する地方公共団体に対する寄附等)/7-3-3の2(取得価額に算入しないことができる費用の例示)/7-3-4(土地についてした防壁、石垣積み等の費用)/7-3-5(立退料等)/7-3-6(土地とともに取得した建物等の取壊費等)/7-3-7(事後的に支出する費用)
  • 法人税基本通達8-1-2(注)(固定資産の取得のための借入金の利子は繰延資産に該当しない)
  • 「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」(平成元年3月1日付直法2-1)5(免税事業者の消費税等の処理)/9(少額の減価償却資産の取得価額等の判定)
  • 国税庁タックスアンサーNo.6905(税抜経理と税込経理の選択適用)
  • 東京都主税局・千葉県「自動車税環境性能割」(令和8年3月31日をもって廃止)
  • 法人税基本通達9-5-1(2)(賦課課税方式による租税の損金算入の時期)
  • ※2026年時点の制度に基づく記事です

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