ホーム法人の決算と申告 › 設備を買って税金を減らす…
更新日 2026-08-05 法人の決算と申告

設備を買って税金を減らす2つの制度──認定が要らない投資促進税制と、認定が先に要る経営強化税制

「決算前に機械を買えば税金が減る」と言われたことはあると思います。半分は正しく、半分は足りません。

中小企業の設備投資で使える制度は、大きく2つあります。片方は認定手続が要らないかわりに措置が控えめで、もう片方は即時償却まで使えるかわりに設備を買う前に計画の認定を取っておく必要があります

そして、どちらにも「これは対象外」という線が引かれています。いちばん多い誤解は、パソコンや事務机は投資促進税制の対象にならないということです。

この記事の結論

  • 使える制度は2つ。中小企業投資促進税制(措法42の6)中小企業経営強化税制(措法42の12の4)
  • 投資促進税制は認定不要。特別償却30%または税額控除7%。ただし税額控除は資本金3,000万円以下の法人だけ
  • 投資促進税制に器具及び備品は入らない。工具も「製品の品質管理の向上等に資する測定工具及び検査工具」だけ
  • 経営強化税制は即時償却または税額控除7%(資本金3,000万円以下は10%)。ただし経営力向上計画の認定が先
  • 令和7年度改正でC類型(デジタル化設備)が廃止、B類型の投資利益率が5%以上→7%以上
  • 令和8年4月1日以後に取得する工具・器具備品の金額基準が30万円→40万円に上がった
  • 税額控除は2つ合計で調整前法人税額の20%が上限。控除しきれない分は1年繰越し
  • 国税庁タックスアンサーは「令和7年4月1日現在」のままで、40万円の引上げが反映されていないページがある(2026年8月時点)

1. まず2つを並べる

中小企業投資促進税制(措法42の6) 中小企業経営強化税制(措法42の12の4)
事前の手続 不要 経営力向上計画の認定が必要
特別償却 基準取得価額の30% 即時償却(建物等は15%・25%)
税額控除 7%(資本金3,000万円以下の法人等のみ) 7%(資本金3,000万円以下は10%
対象法人(特別償却) 中小企業者、農協等、商店街振興組合 中小企業者等のうち特定認定を受けた特定事業者等
適用除外事業者 対象外 対象外
適用期限 令和9年3月31日まで 令和9年3月31日まで
控除限度 2つ合計で調整前法人税額の20%、繰越1年 ★同左
所有権移転外リース 税額控除のみ(特別償却は不可) 税額控除のみ

「特別償却30%」と「即時償却」を比べると経営強化税制のほうが強く見えます。ただし特別償却も即時償却も課税の繰延べで、税額の総額は変わりません。永久に効くのは税額控除のほうです。

2. 中小企業投資促進税制──対象資産の線引きが厳しい

認定手続が要らないので使いやすい制度です。ただし対象資産が細かく限定されています。新品であることが前提です。

対象資産 金額の基準
機械及び装置 1台または1基の取得価額160万円以上
測定工具及び検査工具(製品の品質管理の向上等に資するもの) 1台120万円以上、または1台40万円以上でその事業年度の合計120万円以上(※)
ソフトウエア 一のソフトウエアが70万円以上(またはその事業年度の合計70万円以上)
車両及び運搬具(一定の普通自動車) 貨物の運送用で車両総重量3.5トン以上
内航海運業用の船舶 基準取得価額=取得価額×75%

※この単体基準が、令和8年4月1日以後に取得等をするものから30万円→40万円に引き上げられました(後述)。

★器具及び備品は対象外です

ここが最大の落とし穴です。パソコン、事務机、応接セット、レジ、複合機は入りません。

工具のうち対象になるのも、「製品の品質管理の向上等に資する測定工具及び検査工具」に限られます。一般的な工具は対象外です。「工具器具備品が120万円以上なら使える」と読める説明を見かけますが、条文の書き方はそうなっていません。

器具備品を対象にしたいなら、経営強化税制(後述)を使うことになります。ただしそちらは計画認定が先です。

そのほかの除外

  • 貸付けの用に供する資産(内航船舶貸渡業を除く)
  • 匿名組合契約等の目的である事業の用に供するもの
  • コインランドリー業(主要な事業であるものを除く)の用に供する機械装置で、管理のおおむね全部を他の者に委託するもの

指定事業でないと使えない

製造業、建設業、卸売業、小売業、道路貨物運送業、倉庫業、飲食店業、一般旅客自動車運送業などが指定事業です。不動産業と一部のサービス業は指定事業に含まれていません。買う資産だけでなく、使う事業も見る必要があります。

3. 中小企業経営強化税制──認定が先

こちらは設備を買う前に、経営力向上計画の認定を取っておく必要があります。認定は事業分野別の主務大臣に対して行います(新類型の投資計画確認は経済産業大臣)。

対象になる設備は、類型ごとに分かれています。

類型 設備の内容
A類型(生産性向上設備) 旧モデルと比べて生産性が年平均1%以上向上する設備。★令和7年度改正で指標が「単位当たり生産量、歩留まり率又はコスト削減率」に見直し
B類型(収益力強化設備) 投資計画の投資利益率が一定以上。★5%以上→7%以上に引上げ
~~C類型(デジタル化設備)~~ 令和7年度改正で除外(廃止)
D類型(経営資源集約化設備) 修正ROAまたは有形固定資産回転率が一定以上上昇する設備
経営規模拡大設備(新類型) ★令和7年度改正で新設。売上高100億円超を目指す投資計画で、平均投資利益率7%以上+経営規模拡大要件について経済産業大臣の確認

★A・B・D類型からは、暗号資産マイニング業の用に供する設備が除外されました。

規模要件

対象資産 金額の基準
機械及び装置 160万円以上
工具、器具及び備品 30万円以上 → ★令和8年4月1日以後の取得等は40万円以上
建物附属設備 60万円以上
一定のソフトウエア 70万円以上
建物及びその附属設備(新類型のみ) 一の建物及び附属設備の取得価額の合計1,000万円以上

器具及び備品が対象に入っているのが、投資促進税制との大きな違いです。

新類型は建物も対象、ただし縛りがある

新類型(経営規模拡大設備)では、建物及びその附属設備まで対象になります。措置は次のとおりです。

対象 特別償却 税額控除
機械装置、工具、器具備品、一定のソフトウエア 即時償却 7%(資本金3,000万円以下は10%
建物及びその附属設備 15%(一定の要件を満たす場合は25%) 1%(同2%)

対象になる金額は60億円が限度です。また、建物等については、給与の支給額の増加に関する目標を達成した事業年度でないと特別償却・税額控除を適用できません

★そして、いちばん見落とされやすいのがこれです。

新類型の経済産業大臣の確認を受けた中小企業者等は、その投資計画の計画期間中、中小企業投資促進税制と中小企業者等の少額減価償却資産の特例を適用できません(措法42の6①、67の5①)。

大きな投資計画を1本通したせいで、日常的に使っている30万円(→40万円)未満の即時損金が計画期間中まるごと使えなくなる、ということが起こり得ます。

4. 令和8年4月1日からの40万円

令和8年度改正で、金額の基準が2か所動きました。

制度 改正前 改正後(令和8年4月1日以後の取得等)
投資促進税制の工具(合計120万円の枠に入れる単体基準) 30万円以上 40万円以上
経営強化税制の工具及び器具備品 30万円以上 40万円以上
(参考)少額減価償却資産の特例 30万円未満 40万円未満。従業員500人超→400人超が対象外に

投資促進税制の見直しは令和8年4月1日以後に終了する事業年度から適用されますが、施行日をまたぐ事業年度には経過措置があり、施行日前に取得したものは30万円以上で判定します。単体の判定は取得等をする日で行います。

ここで一言だけ注意しておきます。国税庁タックスアンサーのNo.5433は、2026年8月時点でも「令和7年4月1日現在法令等」の表記のままで、この40万円への引上げが反映されていません。タックスアンサーだけを見て金額を確定させないでください。国税庁「令和8年度法人税関係法令の改正の概要」か、中小企業庁のパンフレットと突き合わせるのが安全です。

5. 20%の天井と、赤字の年

税額控除には共通の上限があります。

投資促進税制の税額控除と経営強化税制の税額控除は、2つ合計でその事業年度の調整前法人税額の20%が上限。控除しきれなかった金額は1年間だけ繰り越せます

赤字の年は税額控除に意味がありません。引く相手の法人税額がないからです。繰越しは1年しかないので、翌期も赤字なら消えます。

赤字が見込まれる年は、特別償却(即時償却)のほうも見送るのが筋です。償却費を前倒ししても損金が増えるだけで、繰越欠損金が積み上がるにすぎません。

6. 順番を間違えると使えない

制度の中身より、手順のほうで落ちることが多い制度です。

やること いつまでに
経営力向上計画の認定申請(経営強化税制) 設備を取得する前。決算間際に思いついても間に合わない
取得 期末まで
事業の用に供する 期末まで。納品されただけ・据え付けただけでは足りない
損金経理(特別償却の場合) 確定した決算で
明細書・適用額明細書の添付 確定申告書に

★「事業の用に供した日」は税務調査の常連です。期末に駆け込みで買った機械が、実際に動き始めたのが翌期になっていないか。ここは必ず見られます(→第2回)。

7. 申告書のどこに書くか

書かないと権利を失う任意的調整事項です。

制度 別表(令和7年4月1日以後終了事業年度分)
投資促進税制の税額控除 別表六(十五) 中小企業者等が機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書
経営強化税制の税額控除 別表六(二十三) 中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書
特別償却 別表十六(償却の明細)+特別償却の付表
いずれも 適用額明細書への記載

適用額明細書を付け忘れると、租税特別措置そのものが使えません。別表を書いただけでは足りません(→別表を埋める順番)。

8. 令和8年度に新しくできた制度について

令和8年度改正で、特定生産性向上設備等投資促進税制(措法42の12の7)が創設されました。即時償却または税額控除7%(建物等は4%)が使えます。

ただし、投資計画に記載された取得価額の合計額が中小企業者等でも5億円以上という規模が想定されていて(基準を定める法令は2026年5月27日時点で未公布)、通常の中小企業の設備投資とは想定している場面が違います。

★1点だけ押さえておくべきなのは、この制度の確認を受けると、その投資計画の期間中は中小企業経営強化税制が適用できなくなるということです。大型の設備投資を計画するときは、どちらを取るかを先に決める必要があります。

範囲注記:経営力向上計画の作成・申請、生産性向上要件証明書(工業会等の証明書)の取得、経済産業大臣の確認は、中小企業庁および各事業所管省庁の手続です。認定支援機関(金融機関・税理士等)の支援を受けることが多いものの、認定そのものは税務の手続ではありません。この記事は「認定を取ったあと、税額をどう計算し、申告書のどこに書くか」を扱っています。

まとめ

  • 中小企業の設備投資で使える制度は投資促進税制経営強化税制の2つ
  • 投資促進税制は認定不要、特別償却30%または税額控除7%。税額控除は資本金3,000万円以下だけ
  • ★投資促進税制に器具及び備品は入らない。工具も測定工具及び検査工具だけ。指定事業の縛りもある
  • 経営強化税制は即時償却または税額控除7%(3,000万円以下は10%)。ただし計画認定が先
  • ★令和7年度改正でC類型は廃止、B類型の投資利益率は7%以上に。新類型(経営規模拡大設備)は建物も対象
  • ★新類型の確認を受けると、計画期間中は投資促進税制と少額減価償却資産の特例が使えない
  • ★令和8年4月1日以後の取得から、工具・器具備品の金額基準が40万円
  • 税額控除は2つ合計で調整前法人税額の20%、繰越1年。赤字の年は使えない
  • タックスアンサーは改正が反映されていないことがある。金額は当年の資料で確かめる
この記事の主な根拠(出典)

  • 租税特別措置法42条の6(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除)/42条の12の4(中小企業経営強化税制)/42条の12の7(特定生産性向上設備等投資促進税制)/67条の5(中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)
  • 租税特別措置法施行令27条の6第5項第2号(工具の取得価額要件)/27条の12の4第2項(工具及び器具備品の取得価額要件)
  • 国税庁「令和8年度法人税関係法令の改正の概要」(賃上げ促進税制の見直し、主な中小企業税制の見直し)
  • 国税庁「令和7年度法人税関係法令の改正の概要」(中小企業経営強化税制の見直し、みなし大企業の範囲の見直し)
  • 国税庁タックスアンサー No.5433(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)/No.5434(中小企業経営強化税制)/No.5704(所有権移転外リース取引)
  • 国税庁「法人税等各種別表関係(令和7年4月1日以後終了事業年度等分)」/「適用額明細書の記載の手引」
  • ※2026年時点の制度に基づく記事です。租税特別措置は適用期限と金額基準が繰り返し改正されているため、適用前に当年の内容をご確認ください

次に読む

👉 給与総額が1.5%増えていれば取りに行ける──賃上げ促進税制は「継続雇用者」で判定しない
👉 決算対策には4つの型しかない──「即時償却で全額落ちた」は節税ではありません
👉 その修理は経費?資産?──20万円→3年周期→60万円→10%→7:3 の順で機械的に判定する
👉 法人の赤字は10年持ち越せる──ただし「赤字が出た年が青色」でなければならない

👉 少額資産の線は3本ある──40万円未満に全部寄せる前に、法人だけにある4つの条件を見る

👉 仲介手数料は取得価額、登録免許税は選べる──「いくらで買ったことになるのか」で、その資産の一生が決まる

相談したいとき

👉 税理士の宍倉に相談する(LINE)

FOLLOW & CONSULT

新しい記事はLINEでお知らせ

個別のご相談は、事務所サイトの単発相談で承っています。

LINEで友だち追加個別相談について(事務所サイト)