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更新日 2026-08-05 法人の決算と申告

決算整理は「残高を実際に合わせる」作業──勘定科目内訳明細書を1枚ずつ作れば、それがそのまま点検になる

決算整理と聞くと「難しい仕訳を切る作業」に思えますが、やっていることは1つです。

帳簿の残高を、実際の残高に合わせる。そして当期に属する損益を当期に、翌期に属する損益を翌期に振り分ける。

そして実務でいちばん効率がいいのは、勘定科目内訳明細書を1枚ずつ作っていくやり方です。「決算整理を終わらせてから内訳書を作る」のではありません。内訳書を作る作業そのものが決算整理です。得意先別の売掛金を並べれば残高が合わないところが出ますし、借入金を返済予定表と突き合わせれば長短の区分が決まります。

この記事は、その点検項目を科目ごとに並べたものです。

この記事の結論

  • 決算整理=残高を実際に合わせる期間帰属を直す。この2つだけ
  • 勘定科目内訳明細書を作る作業が、そのまま残高の検証になる
  • 収益は引渡しの日・役務提供の日に計上する(法法22の2)。★請求書をいつ出したかは関係ない
  • 調査で最初に見られるのは期ズレ。★20日締めなら21日〜月末の売上を期末に計上する
  • 仕掛品は商品だけの話ではない。翌期の売上に対応する当期の支出は資産に残す
  • 租税公課は「いつの分か」ではなく「いつ確定したか」で入る事業年度が決まる(法基通9-5-1)
  • 仮払金・貸付金を残したまま決算を締めない。役員への支出は給与と見られる
  • 期末を過ぎるとできないことがある。損金経理が要件のものは決算まで

1. 貸借対照表の点検

上から順に見ていきます。「つまずきやすい点」のほうが本題です。

科目 確かめること つまずきやすい点
株主名簿・役員 株主の異動、持株数、議決権数、役員の就任・退任と任期 同族会社の判定(別表二)とみなし役員の判定の基礎資料。名義株のままだと判定が変わる。発行済株式数に自己株式は含めない
現金 期末に実査する。金種表を残す 帳簿現金がありえない金額になっていると、社長への貸付金と見られる
預金 銀行別・口座別に残高証明と照合。定期預金の未収利息 個人名義口座の混在。簿外口座は必ず問題になる
売掛金 得意先別に残高を確認。締日以降の売上を計上する 20日締めなら21日〜月末の販売分。調査で最初に見られる
受取手形・電子記録債権 期末の手持ち・割引・裏書の区分 割引・裏書譲渡した手形の既存債権も貸倒引当金の対象になる
棚卸資産 実地棚卸。数量×単価。仕入先に預けてある商品、預け在庫、未着品 評価方法は届出がなければ最終仕入原価法。評価損は要件が厳しく、期末までに売却・廃棄してしまうほうが確実
仕掛品 翌期の売上に対応する当期の支出 ★商品の棚卸と違って忘れやすい(後述)
前渡金・前払費用 期末月に払った翌期分の費用を抜き出す 領収書の日付だけで損金かどうかは決まらない。期末月付けの旅行会社の領収書が翌期の出張分なら前払費用
貯蔵品 期末に買い込んだ切手・収入印紙・商品券 消耗品で貯蔵中のものは棚卸資産
仮払金・貸付金 ★中身を必ず解消する。役員貸付けは利息を計上 給与等に充てるための支出はその時点の給与として源泉課税。無利息貸付けの利息相当額も原則課税
固定資産 現物の有無、除却・廃棄したものの落とし、遊休資産、事業供用日 ★期末に駆け込みで買った資産の「事業の用に供した日」は否認の常連
保険積立金 保険会社の証明書で残高を照合。契約者・被保険者・受取人を毎年確認 法人保険の損金区分
買掛金・未払金・未払費用 期末までに債務が確定しているものを計上 債務未確定のものを入れると加算される
借入金 返済予定表と照合。長短の区分。役員借入金の残高 支払利息の未払計上、期間対応
預り金 源泉所得税・社会保険料の預り残高が納付額と合うか 合わないときは源泉徴収漏れか納付漏れ
不良債権 回収不能債権の洗い出し 期末までに事実を完成させる必要があるものがある(貸倒損失

現金・仮払金・貸付金の3つは、決算整理というより「会社と社長のお金が混ざっていないか」の点検です。ここが崩れている会社は、ほかの論点をどれだけ丁寧にやっても調査で持っていかれます。

2. 損益計算書の点検

科目 確かめること
売上高 収益計上時期(後述)。期ズレ。返品・値引・割戻しの処理
売上原価 期首棚卸+当期仕入−期末棚卸。★原価に含めた交際費・寄附金を抜き出す
受取利息・受取配当金 源泉徴収税額の集計(別表六(一))。受取配当等の益金不算入(別表八(一))の対象か
租税公課 損金算入のもの/不算入のもの/附帯税に区分。★別表五(二)の縦計と租税公課勘定の残高を突き合わせる検算
交際費 他科目に紛れているものを拾う。製造原価・棚卸資産・固定資産の取得価額に含めた交際費も。未払交際費も含める
寄附金 現実に支払ったものだけ。未払・手形は不可
役員給与 定期同額給与・事前確定届出給与の要件。経済的利益の有無
人件費 決算賞与の未払計上要件。社長の親族等(特殊関係使用人)の給与水準
地代家賃 前払家賃、役員から借りている物件の賃料水準、社宅の徴収額
雑収入・雑損失 消費税の端数、還付加算金、保険の解約返戻金、助成金

交際費と寄附金は「勘定科目を見ても分からない」科目です。交際費は原価や資産に紛れ込んでいることがあり、寄附金は未払のまま計上されていることがあります。どちらも800万円の枠や損金算入限度額の計算がずれる原因になります。

3. 収益はいつ計上するか

資産の販売等に係る収益は、目的物の引渡しの日、または役務の提供の日に計上します(法法22の2①)。

請求書をいつ出したかは、税務上まったく関係ありません。

引渡しの日として認められるのは、出荷日・船積日・相手方に着荷した日・相手方の検収日・相手方が使用収益できることとなった日などです。販売する物や契約の内容に応じて合理的な基準を選び、継続して適用するのが条件になります。「今期は検収日、来期は出荷日」はできません。

近接する日の特例もあります(同②)。委託販売やガス・水道・電気のように、公正妥当な会計処理の基準に従って引渡しの日に近接する日(契約効力発生日、検針日、仕切精算書到達日など)に収益経理した場合は、その日でかまいません。

計上する金額は、原則として引渡し時の価額(時価)です。ここに1つ、覚えておくと得な決まりがあります。

収益の額は、その代金が貸し倒れる可能性や、買い戻される可能性が「ないもの」として計算する(法法22の2⑤)。

つまり、「この取引先は危ないから売上を少なめに立てておく」はできません。回収できなくなったら、そのときに貸倒れとして落とすのが税務の順序です。

なお、返品調整引当金と長期割賦販売等の延払基準は廃止されています。経過措置も終わっているため、いま新たに使うことはできません。

4. ★調査で必ず出る期ズレの4類型

決算整理の失敗は、ほとんどがこの4つに集約されます。

# 類型 具体的に何が起きるか
1 売上の期ズレ 締日以降の売上、検収前の出荷、工事の進捗分
2 仕入・外注費の期ズレ 期末までに検収した仕入の未計上、翌期分の前払
3 前払費用の未計上 期末月に払った翌期分の保険料・家賃・広告費
4 貯蔵品の未計上 期末に買い込んだ切手・印紙・消耗品

1と2は逆方向に効きます。売上の期ズレは所得を増やす方向、仕入の期ズレは減らす方向です。調査官は当然、売上は翌期に飛んでいないか、仕入は当期に食い込んでいないかという見方で入ってきます。両方向を自分で点検しておくと、指摘されても説明ができます。

3については、1年以内の役務提供に対応する前払で継続適用しているものは、支払った期の損金にできる取扱い(短期前払費用)があります。線引きは短期前払費用の判断にまとめています。

5. ★仕掛品は商品だけの話ではない

「うちは在庫を持たないサービス業だから棚卸は関係ない」という会社ほど、ここを落とします。

翌期の売上に対応する当期の支出は、当期の費用ではありません。

  • 来期に開催する展示会のために、当期に払った設営費・外注費
  • 制作途中の書籍、開発途中のソフトウェア
  • 受注しているのに引き渡していない案件の原価

これらは仕掛品として資産に残すのが原則です。費用収益対応は、建設業や製造業だけの話ではありません。

在庫そのものの考え方は棚卸と売上原価にまとめています。

6. ★租税公課は「いつの分か」ではなく「いつ確定したか」

決算整理で意外に間違えるのが租税公課です。その税金が何年度分かではなく、納税方式ごとに決まった時点で損金になります(法基通9-5-1)。

納税方式 損金になる事業年度
申告納税方式 法人事業税、事業所税、酒税 納税申告書を提出した日の属する事業年度。更正・決定によるものはその日
賦課課税方式 固定資産税、償却資産税、不動産取得税、自動車税 賦課決定のあった日の属する事業年度。ただし納期の開始の日、または実際に納付した日に損金経理してもよい
特別徴収方式 ゴルフ場利用税、軽油引取税 申告の日の属する事業年度
利子税・納期限の延長に係る延滞金 申告期限を延長したときのもの 納付の日の属する事業年度。ただし未納額を損金経理で未払金に計上したときはその事業年度

賦課課税方式には3つの選択肢があるという点が実務では効きます。固定資産税・償却資産税は、賦課決定があった日・各納期の開始の日・実際に納付した日のどれで損金経理してもかまいません。ただし選んだやり方を毎期変えるのは通りません

申告納税方式には例外が1つあります。製造原価・工事原価その他これらに準ずる原価に、申告期限がまだ来ていない事業所税が含まれている場合、その金額を損金経理により未払金に計上したときは、その事業年度の損金にできます(法基通9-5-1(1)イ)。原価に入っているものだけが対象で、販売費及び一般管理費に計上している事業所税には使えません。

なお法人事業税・特別法人事業税には別の特例があり、直前年度分は申告がまだでも当期の損金にできます(法基通9-5-2)。これが別表四・五(一)で事業税だけルールが違って見える理由です。

7. 期末を過ぎると手遅れになるもの

決算整理は「期末後にやる作業」ですが、期末までに事実が完成していないと使えないものがあります。

  • 損金経理が要件になっているもの(減価償却費、貸倒引当金の繰入、少額減価償却資産、貸倒損失など)
  • 期末までに債務が確定していることが要るもの
  • 書面による債務免除のように、期末までに行為を終えていないといけないもの

この線引きは決算調整事項と申告調整事項に、期末までの打ち手は決算対策の4つの型にまとめています。

範囲注記:この記事は法人税の所得計算のための決算整理を扱っています。会計監査・株主総会の招集手続・計算書類の承認は会社法の領域で、登記が絡むものは司法書士に確認してください。社会保険料の預り金の点検は、保険料額そのものの決定(算定基礎届・月額変更届)とは別で、そちらは社会保険労務士の領域です。

まとめ

  • 決算整理は残高を実際に合わせる期間帰属を直す勘定科目内訳明細書を作る作業がそのまま点検になる
  • 収益は引渡しの日・役務提供の日。★請求書の日付は関係ない。基準を選んだら継続適用
  • ★収益の額は貸倒れ・買戻しの可能性がないものとして計算する。危ない先だから少なく立てる、はできない
  • 調査で出るのは期ズレ4類型。★売上は翌期に飛んでいないか、仕入は当期に食い込んでいないか、両方向を点検する
  • 仕掛品は商品だけの話ではない。翌期の売上に対応する当期の支出は資産に残す
  • 租税公課は納税方式ごとに損金の時期が違う。賦課課税方式は3つの選択肢があるが、毎期変えない
  • 現金・仮払金・貸付金を残したまま締めない。会社と社長のお金が混ざっていないか
  • 期末を過ぎると使えないものがある。損金経理が要件のものは決算まで
この記事の主な根拠(出典)

  • 法人税法22条の2(収益の額。引渡しの日又は役務の提供の日、近接する日、引渡し時の価額、貸倒れ・買戻しの可能性がないものとした価額)
  • 法人税法施行令31条(棚卸資産の法定評価方法)/法人税法33条(資産の評価損)
  • 法人税基本通達9-5-1(租税の損金算入の時期。申告納税方式・賦課課税方式・特別徴収方式・利子税及び納期限の延長に係る延滞金)
  • 法人税基本通達9-5-2(事業税及び特別法人事業税の損金算入の時期の特例)
  • 国税庁「勘定科目内訳明細書の様式・記載要領」「法人事業概況説明書の書き方」
  • ※2026年時点の制度に基づく記事です

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