インボイス登録をやめたい──取消届出書は「15日前」まで。しかも、やめても2年は免税事業者に戻れないことがある
「取引先が減ったので、インボイスの登録をやめたい」
手続そのものは届出書1枚です。ただし日付を1日間違えると1年待ちになり、さらに★登録をやめても免税事業者には戻れない期間があります。ここを知らずにやめると、インボイスを出せないのに消費税は納めるという状態が生まれます。
この記事の結論
- 登録をやめるには「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を出す
- 期限は翌課税期間の初日から起算して15日前の日。個人事業者なら12月17日
- ★1日でも遅れると、効力が失われるのは翌々課税期間の初日。実質1年待ち
- ★★土曜・日曜・祝日・12月29日〜31日でも延びない
- ★★免税事業者から経過措置で登録した人は、登録をやめても「登録日以後2年を経過する日の属する課税期間」までは免税事業者になれない
- ★再登録すると、また同じ2年が走る
- 課税期間の途中でやめる手続はない
- 税務署から職権で取り消される場合もある(1年以上所在不明など6事由)
1. まず、出す書類
適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書(登録取消届出書)を、納税地を所轄する税務署長に提出します(消法57の2⑩一)。
理由を書く必要はありません。取引先の同意も不要です。
2. 提出日と、効力が失われる日
| 提出日 | 登録の効力が失われる日 |
|---|---|
| 翌課税期間の初日から起算して15日前の日まで | 翌課税期間の初日 |
| ★14日前の日から、その課税期間の末日まで | ★翌々課税期間の初日 |
個人事業者が令和9年1月1日から登録をやめたい場合、期限は令和8年12月17日(木)です。
★12月18日に出すと、登録が切れるのは令和10年1月1日になります。1日の差で、インボイスを出す立場が丸1年延びます。
3月決算法人が4月1日からやめたいなら3月17日、9月決算法人が10月1日からやめたいなら9月16日です。
3. ★★休日でも延びない
国税庁のQ&Aは、この点をはっきり書いています。
「翌課税期間の初日から起算して15日前の日」が日曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日その他一般の休日、土曜日又は12月29日、同月30日若しくは同月31日であったとしても、これらの日の翌日とはなりません。
年末の締切の全体像は消費税の届出書カレンダーにまとめました。
4. ★★やめても、2年は免税事業者に戻れないことがある
ここがいちばん見落とされます。
免税事業者が登録を受けるには、本来なら課税事業者選択届出書が必要です。しかし令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に登録する場合は、登録申請書に登録希望日を書くだけで登録できる経過措置があります(平成28年改正法附則44④)。多くの個人事業主はこのルートで登録しています。
★この経過措置で登録した場合、登録日の属する課税期間の翌課税期間から「登録日以後2年を経過する日の属する課税期間」までの各課税期間は、登録をやめても、基準期間の課税売上高にかかわらず免税事業者になれません(同附則44⑤)。
| 登録日(個人事業者) | 免税事業者に戻れない最後の年 |
|---|---|
| 令和6年4月1日 | 令和8年分(2年を経過する日=令和8年3月31日) |
| 令和7年7月1日 | 令和9年分(同=令和9年6月30日) |
| 令和8年10月1日 | 令和10年分(同=令和10年9月30日) |
★登録日の属する課税期間が令和5年10月1日を含む場合(制度開始と同時に登録した人)は、この2年縛りの対象外です。
何が起きるか。令和7年12月1日に取消届出書を出して令和8年1月1日に登録が切れても、令和8年分は課税事業者のままです。インボイスは交付できないのに、消費税の申告と納付は必要になります。
★やめるなら、この2年が終わってからにするか、2年目までは「登録を続けたほうが有利」と割り切るかの二択になります。
5. ★再登録すると、また2年が走る
「いったんやめて、必要になったらまた登録する」を考える人がいます。可能ですが、条件があります。
- 再登録には改めて登録申請書の提出が必要
- 登録申請書に登録希望日を記載し、★その日から起算して15日前までに提出する
- 事業者区分は便宜上「免税事業者」として記載する
- ★★再登録した日以後2年を経過する日の属する課税期間まで、また免税事業者になれない
やめる → 戻る → またやめる、を短期間で繰り返すことはできない設計です。
6. 課税期間の途中ではやめられない
期中に登録を取り消す手続はありません。買手が期の途中で突然インボイスを受け取れなくなることを避けるための設計です。
期限を落としたときのリカバリーは、課税期間の特例(1か月・3か月)を選択して課税期間を区切る方法しかありません。ただし★課税期間の特例を適用すると2割特例は使えなくなります。節税のために取消しを急いだ結果、かえって負担が増えることがあります。
7. 税務署から取り消されることもある
自分でやめるだけでなく、税務署長が職権で登録を取り消せる場合があります(消法57の2⑥)。
- 1年以上所在不明であること
- 事業を廃止したと認められること
- 合併により消滅したと認められること
- 納税管理人を定めなければならない事業者が、納税管理人の届出をしていないこと
- 消費税法の規定に違反して罰金以上の刑に処せられたこと
- 登録拒否要件に関する事項について、虚偽の記載をした申請書を提出し登録を受けたこと
★1の「所在不明」は、申告書の提出がなく、郵便が返戻され、電話も通じないといった状態を指します。廃業した場合は事業廃止届出書、合併の場合は合併による法人の消滅届出書の提出義務があり、これらの提出でも登録は失効します。
8. やめる前に確認する3つ
- ★取引先の内訳。インボイスを必要とするのは、本則課税の課税事業者だけです。簡易課税・2割特例の相手や一般消費者には影響しません
- 買手の負担。登録をやめると、買手は仕入税額控除が経過措置の範囲に縮みます。2026年10月からは7割です(2026年10月から、免税事業者への支払いは「7割しか引けない」)
- ★自分が上の2年縛りに当たっていないか
登録するかどうかの判断軸そのものはインボイスに登録すべき?迷ったときの判断フローにまとめました。
範囲注記:この記事は消費税法上の登録の取消手続を扱っています。取引価格の見直しに関する独占禁止法・中小受託取引適正化法の適用は公正取引委員会・中小企業庁の所管です。個々の期限は課税期間と登録日によって変わるため、提出前に所轄税務署または関与税理士に確認してください。この記事は2026年8月時点の制度に基づきます。
まとめ
- 登録をやめる書類は登録取消届出書。理由も取引先の同意も要らない
- 期限は翌課税期間の初日から起算して15日前の日(個人は12月17日)
- ★1日遅れると、切れるのは翌々課税期間の初日=実質1年待ち
- ★★休日でも延びない
- ★★経過措置で登録した人は、やめても「登録日以後2年を経過する日の属する課税期間」まで免税に戻れない
- ★再登録すると、また2年が走る
- 期中に取り消す手続はない。リカバリーは課税期間の特例だけで、2割特例が使えなくなる
- 職権で取り消される場合が6つある
- 消費税法57条の2第10項1号(登録取消届出書と登録の効力)/同6項(税務署長による登録の取消し)/消費税法施行令70条の5第3項(15日前の日)
- 平成28年改正法附則44条4項(免税事業者の登録に係る経過措置。登録希望日)/同5項(登録日の属する課税期間の翌課税期間から登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までは免税事業者となれない)
- 国税庁 インボイス制度に関するQ&A 問13(登録の取りやめ。令和6年4月改訂)/問13-2(登録に係る経過措置により課税事業者となる期間における再登録。令和8年4月追加)/問16(登録の取消し。令和5年10月改訂)/問17(適格請求書発行事業者が免税事業者となる場合)
- 消費税法基本通達1-4-1の2(適格請求書発行事業者は基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも免税事業者とならない)
- 消費税法19条(課税期間の特例)/平成28年改正法附則51条の2(2割特例。課税期間の特例の適用を受ける課税期間は対象外)
- ※2026年時点の制度に基づく記事です
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👉 消費税の届出書カレンダー|「12月17日」と「12月31日」は出すものが違う
👉 2026年10月から、免税事業者への支払いは「7割しか引けない」
👉 インボイスに登録すべき?迷ったときの判断フロー【取引先タイプ別】
👉 2割特例が終わる|個人は3割特例へ、法人は特例なしへ。最後の年は決算期で決まる
👉 売上1000万円を超えそう。消費税の課税事業者になるタイミングと、その前にやること