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更新日 2026-07-23 起業時の知識第10回

開業届の「開業日」はいつにする?さかのぼりは可能?副業・準備期間ありなど全パターンで解説

開業届の用紙を前にして、いちばん多くの人がペンを止めるのが「開業日」の欄です。「実際に稼ぎ始めた日?」「準備を始めた日?」「思い切って独立を決めた日?」——正解が分からないまま、なんとなくの日付を入れてしまう。しかも「もう半年前から少し稼いでいたけど、さかのぼって書いていいの?」という不安まで重なります。

先に結論をまとめます。開業日は「事業を実態として始めた日」を自分で合理的に決めて構いません。過去にさかのぼることも可能です。ただし、開業日の決め方ひとつで「今年、青色申告(最大65万円控除)ができるかどうか」が変わってしまう、という見逃せない落とし穴があります。この記事では、あなたの状況がどのパターンかを特定し、「結局、何日にすればいいのか」を具体的に決められるところまで案内します。

この記事の結論(先に3つだけ)
1. 開業日は自分で決める。「最初の売上日」「開業準備が整った日」あたりが決めやすい
2. さかのぼりは可能。ただし「開業日から2ヶ月」を過ぎると、その年は青色になれない(所得税法144条)
3. 開業届そのものに提出遅れの罰則はないが、青色申告承認申請書とセットで早く出すのが最善

そもそも「開業日」に厳密な決まりはない

税法上、「開業日はこの日でなければならない」という明確な定義はありません。開業届(正式名称:個人事業の開業・廃業等届出書)は、事業を開始したことを税務署に知らせる書類で、事業開始の事実があった日から1ヶ月以内に提出することとされています(所得税法229条)。

ここで大事なのは、「開業日」=「あなたが事業を実態としてスタートさせたと合理的に説明できる日」であって、税務署が勝手に決めるものではない、ということ。だからこそ、次に説明する“状況別の考え方”で、自分にとって有利かつ説明のつく日を選べます。

【全パターン】あなたはどれ?状況別「開業日の決め方」

自分がどのケースに当てはまるかを確認してください。

あなたの状況 開業日の考え方 具体的にどの日にする?
これから事業を始める 営業開始・受注開始の日 開業準備が整い「今日から営業」と言える日
すでに数ヶ月、収入がある 実態として事業を始めた日 最初の売上・受注が発生した日(さかのぼり)
副業から本業に切り替える 「事業」と呼べる規模になった日 独立・専業化した日、または副業開始日
準備期間が長かった(店舗改装など) 準備完了・オープンの日 開店日・サービス提供を始めた日
年をまたいで準備していた その年の営業開始日 実際に売上が立ち始めた年内の日

ケース1:これから始める人は「営業開始日」でシンプルに

まだ売上がなく、これから始める人は難しく考えなくて大丈夫です。「準備が整い、いつでも仕事を受けられる状態になった日」を開業日にすればOK。契約日や最初の受注日に合わせるのも自然です。

ケース2:すでに稼いでいる人は「最初の売上日」を軸に

「実は3ヶ月前から少しずつ仕事を受けていた」という人は、最初の売上・受注が発生した日を開業日にするのが最も説明しやすい選び方です。これは“さかのぼり”になりますが、後述のとおり問題ありません。

ケース3:副業から本業化する人は「専業化した日」でよい

副業時代から所得はあったが、この度きちんと独立する——という人は、専業として事業を本格化させた日を開業日にできます(もちろん、副業を始めた日を開業日にする考え方もあり、状況により選べます)。迷ったら「事業として腰を据えた日」を基準にしましょう。

いちばんの注意点:「さかのぼり」と青色申告の2ヶ月ルール

開業日をさかのぼること自体は可能です。開業届を1ヶ月の期限より遅れて出しても受理されます。問題は、青色申告の申請期限が「開業日」を基準に動くことです。

青色申告承認申請書の提出期限(所得税法144条)
– 原則:青色にしたい年の3月15日まで
– その年の1月16日以後に開業した人開業日から2ヶ月以内

つまり、こういう事故が起きます。

  • 例:実態は 4月1日 に事業を始めていた
  • 手続きが遅れ、7月10日 に開業届+青色申告承認申請書をまとめて提出
  • 開業日を実態どおり4月1日にすると、「開業から2ヶ月=6月1日」が申請期限
  • すでに期限切れ。今年は白色(青色の65万円控除は来年から)

このケースで「その年をどうしても青色にしたい」からと、開業日を実態と大きく違う直近の日付に書き換えるのは、事実と異なる届出になり避けるべきです。開業日は“税金を軽くするために盛る”ものではなく、あくまで実態で決めるもの。だからこそ、開業を決めたら開業届と青色申告承認申請書を同時に、できるだけ早く出す——これが唯一にして最大の予防策です。

開業日は「開業費」の範囲にも効いてくる

もう一つ、開業日は開業費(開業準備のために開業日“前”に使ったお金)の範囲にも関わります。開業日を後ろに置くほど、それ以前の準備費用を開業費として集められる範囲が広がるという関係です。ここは節税に直結するので、開業日を決めるときに一緒に考えておくと得をします。

よくある質問(FAQ)

Q. 開業日を「1年前」にさかのぼってもいい?
実態としてその日から事業をしていたと合理的に説明できるなら不可能ではありませんが、あまりに古い日付は説明が難しくなります。基本は「最初に売上・受注が発生した日」を軸にしましょう。過去年分については、その年ごとに申告義務が生じていた可能性もあるため、心配なときは相談を。

Q. 開業届の提出が1ヶ月を過ぎてしまった。ペナルティは?
開業届は期限を過ぎても受理され、提出遅れそのものに対する罰則は定められていません。ただし青色の期限は別問題なので、遅れに気づいたら青色申告承認申請書と一緒に急いで出しましょう。

Q. 開業日と、実際に開業届を出す日は違っていていい?
違っていて構いません。「開業日=事業を始めた日」「提出日=書類を持って行った日」で、両者は一致しなくてOKです。

Q. まだ売上ゼロだけど開業届は出せる?
出せます。これから事業をする意思があれば、売上ゼロでも開業日を決めて提出できます。

まとめ

  • 開業日は「事業を実態として始めた日」を自分で合理的に決める
  • さかのぼりは可能。ただし青色の「開業から2ヶ月」期限を必ずチェック
  • 状況別(これから/すでに稼いでいる/副業から)で決めやすい基準がある
  • 開業届は遅れても罰則はないが、青色申告承認申請書とセットで早く出すのが最善
  • 開業日は開業費の範囲にも影響する
この記事の主な根拠(出典)

  • 所得税法229条(個人事業の開業・廃業等届出書。事業開始から1ヶ月以内に提出)
  • 所得税法144条(青色申告の承認申請。原則3月15日、1月16日以後開業は開業日から2ヶ月以内)
  • 国税庁タックスアンサー No.2090(新たに事業を始めたときの届出など)

※個別の開業日の妥当性は事業の実態により異なります。判断に迷う場合は個別にご確認ください。

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