簡易課税の届出は「前年12月31日まで」が原則──2割特例・3割特例を使った翌年だけは、申告期限まで待てる
消費税の簡易課税は事前届出が原則です。「今年の分を、申告のときに簡易課税でやりたい」は、普通は通りません。
ところが2割特例や3割特例を使った翌課税期間だけは、その申告期限まで待てます。これは「うっかりの救済」ではなく、試算してから決めていいという意味の緩和です。
この記事の結論
- 原則=適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(消法37①)。個人なら前年12月31日
- ★特例=2割特例・3割特例を適用した課税期間の翌課税期間の申告期限まで(平成28年改正法附則51の2⑥・51の3⑤)
- ★届出書には「その課税期間から適用を受ける旨」を記載する
- ★例外。その翌課税期間が令和8年9月30日以前に終了する場合は「その課税期間中」=末日まで
- ★★休日の扱いが2つで逆。申告期限は土日祝や12月29日〜31日なら翌日に延びるが、課税期間の末日は延びない
- ★登録した年にも別の特例がある(平成30年改正令附則18)
- ★出す前に4つ確認する。基準期間5,000万円以下/2年縛り/設備投資の予定/そもそも提出できない期間
1. 原則──「始まる前の日」まで
事業者は、(略)その納税地を所轄する税務署長にその適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに(略)届出書を提出した場合には(略)
(消費税法37条1項の趣旨)
個人事業者なら前年12月31日、3月決算法人なら前期の3月31日です。★12月31日が日曜でも延びません。課税期間の末日は休日で延びる日ではないからです。
そして★「あとから今年の分を簡易課税に」は、原則としてできません。この一点で毎年事故が起きます。
2. ★特例──2割特例・3割特例を使った翌期は、申告期限まで
2割特例や3割特例を使った事業者が、その適用を受けた課税期間の翌課税期間に簡易課税を使いたい場合は、その翌課税期間の確定申告期限までに届出書を出せば足ります。出したときは、その課税期間の初日の前日に提出したものとみなされます。
★届出書には「その翌課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨」を記載します。いつから適用したいのかを書く欄がある、ということです。
★★これは「試算してから決められる」ということです。その年の売上と経費が全部出そろってから、
- 3割特例(納付は売上税額の3割)
- 簡易課税(事業区分ごとのみなし仕入率)
- 一般課税(実額)
の3つを計算して、簡易課税が有利だったときだけ届出書を出せばよい。逆にほかが有利なら、出さなければいいだけです。有利不利の比較表は2割特例が終わるにまとめました。
3. ★例外──令和8年9月30日以前に終わる期は「課税期間中」
緩和されたのは「その翌課税期間が令和8年10月1日以後に終了する課税期間である場合」です。それより前に終わる期は、従来どおり「その課税期間中」=末日までに出さなければなりません。
該当するのはごく一部ですが、9月決算法人がここに当たります。
| 立場 | 2割特例を使った課税期間 | 簡易課税を使いたい課税期間 | 届出書の提出期限 |
|---|---|---|---|
| 9月決算法人 | 令和7年9月期 | 令和8年9月期(令和8年9月30日終了) | ★令和8年9月30日まで(=課税期間の末日。申告期限ではない) |
| 10月決算法人 | 令和7年10月期 | 令和8年10月期(令和8年10月31日終了) | 令和8年10月期の申告期限(令和8年12月31日→令和9年1月4日) |
| 12月決算法人 | 令和8年12月期 | 令和9年12月期 | 令和9年12月期の申告期限(令和10年2月29日) |
| 個人事業者 | 令和8年分 | 令和9年分 | 令和9年分の申告期限(令和10年3月31日) |
| 個人事業者 | 令和10年分(3割特例) | 令和11年分 | 令和11年分の申告期限(★令和12年4月1日) |
★9月決算法人だけ、期限が1年近く早く来ます。「申告期限まで待てる」と覚えていると間に合いません。
4. ★★休日の扱いが、2つで逆になる
同じ制度の中で、延びる期限と延びない期限が同居しています。
| どの期限か | 土日祝・12月29日〜31日に当たったら |
|---|---|
| 確定申告期限まで、というほうの期限 | ★翌日に延びる。法人の申告期限延長の特例(消法45の2①)等で延長される場合は延長後の期限 |
| 課税期間中(末日まで)、というほうの期限 | ★★延びない。末日が日曜でも、その日が期限 |
★上の表の「令和12年4月1日」がその例です。令和11年分の申告期限は本来3月31日ですが、その日が日曜のため翌日になります。国税庁の資料も4月1日と書いています。
★「令和9年1月4日」も同じ仕組みです。10月決算法人の申告期限は令和8年12月31日ですが、12月29日から1月3日までは期限に当たらないので、年明け最初の平日になります。
★逆に9月決算法人の「令和8年9月30日」は、何曜日でも延びません。
5. ★登録した年にも、別の特例がある
もう1つ、混同されやすい特例があります。
免税事業者がインボイス発行事業者の登録を受けた場合、その登録日の属する課税期間中に届出書を出せば、その課税期間から簡易課税を適用できます(平成30年改正令附則18)。個人事業者ならその年の12月31日までです。
整理すると、簡易課税を「あとから」選べる場面は次の3つです。
| 場面 | 期限 |
|---|---|
| 通常 | 適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで |
| ★免税事業者が登録した年 | その登録日の属する課税期間中(個人なら12月31日まで) |
| ★2割特例・3割特例を使った翌課税期間 | その課税期間の申告期限まで(9月30日以前終了なら課税期間中) |
6. 出す前に確認する4つ
① 基準期間の課税売上高が5,000万円以下か
簡易課税は基準期間(個人は前々年、法人は原則前々事業年度)の課税売上高が5,000万円以下の課税期間に限って使えます(消法37①)。超えた年は自動的に一般課税に戻ります。
② 2年間は戻れない
事業を廃止した場合を除き、適用を開始した課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、不適用届出書を出せません。★実質2年の縛りです。
③ その2年の間に、大きな設備投資の予定はないか
★簡易課税では還付が出ません。仕入れの消費税が売上の消費税を上回っても、みなし仕入率で計算するからです。建物・車・機械を買う年は一般課税、という判断があり得ます。
④ そもそも届出書を提出できない期間ではないか
課税事業者を選択して2年以内に調整対象固定資産を買った場合や、高額特定資産を買った場合には、一定期間、簡易課税制度選択届出書そのものを提出できません(消法37③)。★大きな買い物をした直後は、この確認が要ります。
7. ★出した届出書は、やめるまで効き続ける
これは事故の多いところなので、最後に書いておきます。
簡易課税制度選択届出書は、不適用届出書を出すまで効力が続きます。基準期間の課税売上高が5,000万円を超えた年は一般課税になりますが、届出書が失効したわけではありません。翌々年に5,000万円以下に戻れば、また自動的に簡易課税です。
★「何年も前に出した届出書が生きていて、設備投資をした年に還付を受けられなかった」という事故が実際に起きます。大きな投資を計画するときは、提出済みの届出書の有無を先に確認してください。税務署で確認する方法があります。
範囲注記:この記事は消費税の届出書の提出期限を扱っています。個々の期限は課税期間・決算期・過去に提出した届出書の状況によって変わるため、実際の提出前に所轄税務署または関与税理士に確認してください。この記事は2026年8月時点の制度に基づきます。
まとめ
- 原則=適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(個人なら前年12月31日)
- ★特例=2割特例・3割特例を適用した課税期間の翌課税期間の申告期限まで
- ★届出書に「その課税期間から適用を受ける旨」を書く
- ★★試算してから決められる。簡易課税が有利だったときだけ出せばよい
- ★9月決算法人は例外。令和8年9月期に使うなら令和8年9月30日まで
- ★★申告期限は休日で延びる。課税期間の末日は延びない
- ★登録した年は「登録日の属する課税期間中」でよい(平成30年改正令附則18)
- 出す前に5,000万円以下/2年縛り/設備投資/提出できない期間の4つを確認
- ★出した届出書は、やめるまで効き続ける
- 消費税法37条1項(簡易課税制度。基準期間における課税売上高5,000万円以下、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までの届出)/同3項(届出書を提出できない場合)/同6項(不適用届出書と2年の継続適用)
- 平成28年改正法附則51条の2第6項・51条の3第5項(2割特例・3割特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間に係る確定申告期限までに提出した場合は、その翌課税期間の初日の前日に提出したものとみなす。翌課税期間が令和8年9月30日以前に終了する場合はその翌課税期間中)
- 国税庁 インボイス制度に関するQ&A 問117(2割特例や3割特例を適用した課税期間後の簡易課税制度の選択。令和8年4月改訂)/問117-3
- 国税庁「令和8年度税制改正特集」(簡易課税制度への円滑な移行措置)
- 平成30年改正令附則18条(免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けた場合の簡易課税制度選択届出書の提出時期の特例)
- 国税通則法10条2項(期限が日曜日、国民の祝日その他一般の休日、土曜日等に当たる場合はこれらの日の翌日)/消費税法45条の2第1項(法人の確定申告書の提出期限の特例)
- 消費税法基本通達13-1-3(簡易課税制度選択届出書の効力)
- ※2026年時点の制度に基づく記事です
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