3月に消費税を納めた。終わった、と思っていたら、夏にまた納付書が届く。
「二重に請求されているのでは?」——中間申告を初めて経験した人から必ず出る質問です。
二重ではありません。来年3月に納める分の前払いです。ただ、この制度を知らないと資金繰りが確実に崩れます。前年に納めた消費税が大きかった人ほど、金額も大きくなるからです。
この記事の結論
– 中間申告は来年ぶんの前払い。所得税の予定納税と同じ仕組み
– 回数は前年の消費税額(国税分)で決まる。年1回・3回・11回のどれか
– 申告書と納付書がセットで届く。金額は記入済みで、そのまま払えば申告したことになる
– 今年の売上が落ちているなら、仮決算で計算し直して減らせる。ただし還付は受けられない
– 払った中間分は、翌年3月の確定申告で精算される。損はしない
– 2割特例や簡易課税を使っていても、中間申告は来る
理由は2つです。国側から見れば「税収を年内に平準化したい」、事業者側から見れば「一度に払う額を分散できる」。
所得税の予定納税とまったく同じ発想です(予定納税の通知が来た)。ただし消費税の中間申告は、予定納税より対象になる人が多く、金額も大きくなりがちです。消費税は預かったお金を納める税金なので、利益が出ていなくても発生するためです。
判定に使うのは、前年に確定した消費税額のうち国税部分です。地方消費税は含みません。
| 前年の消費税額(国税分) | 中間申告の回数 | 1回あたりの金額 |
|---|---|---|
| 48万円以下 | なし | ―(任意の中間申告制度あり) |
| 48万円超 〜 400万円以下 | 年1回 | 前年税額の1/2 |
| 400万円超 〜 4,800万円以下 | 年3回 | 前年税額の1/4ずつ |
| 4,800万円超 | 年11回 | 前年税額の1/12ずつ |
個人事業主の多くは「なし」か「年1回」です。国税48万円は、税率10%・本則課税でざっくり課税売上5,000万円前後の水準になります(業種と経費構成で大きく変わります)。
期限は、個人事業者の場合、年1回なら8月31日です。年3回・年11回は、それぞれの中間期間の末日の翌日から2か月以内が原則で、11回の場合は年初の数か月分がまとめて後ろにずれる特例があります。届く納付書に期限が印字されているので、そこを見れば確実です。
なお、納付する金額には地方消費税もあわせて乗ってきます。納付書の合計額が「国税分の1/2」より大きく見えるのはそのためです。
税務署から届くのは、中間申告書と納付書のセットです。
そして重要なのが、金額はすでに記入されているという点。前年の実績から機械的に計算されているので、自分で計算する必要はありません。
さらに、消費税には「みなし申告」という仕組みがあります。
中間申告書を提出しなかった場合でも、前年実績にもとづく中間申告書の提出があったものとみなされます(消費税法44条)。
つまり——
届いた納付書で、期限までに払う。それだけで終わりです。 申告書を書いて出す必要すらありません。これがいちばん簡単な対応です。
前年より今年の売上が大きく落ちている場合、前年実績で前払いさせられるのは苦しいはずです。そのときは仮決算という方法があります。
その中間期間(年1回なら1月〜6月)について実際に消費税を計算し直して申告する方法です(消費税法43条)。
| 予定申告(届いた金額を払う) | 仮決算 | |
|---|---|---|
| 手間 | ほぼゼロ | 半年分の決算をもう一度やる |
| 金額 | 前年実績の1/2など | 実際の税額 |
| 売上が落ちた年 | 前年基準なので高いまま | 減らせる |
| 計算がマイナスのとき | ― | 還付は受けられない(ゼロ止まり) |
| 期限を過ぎたら | みなし申告で確定 | 仮決算は選べなくなる |
判断の目安はこうです。
注意点が2つ。期限を過ぎると仮決算は選べません(みなし申告で前年基準の額に確定します)。そして仮決算の結果がマイナスでも還付されません。ゼロになるだけです。
前年の確定消費税額(国税分)が60万円だった個人事業者の例です。
| 時期 | 内容 | 金額(国税分) |
|---|---|---|
| 前年3月 | 前年分の消費税を確定申告・納付 | 60万円 |
| 今年8月31日 | 中間申告・納付(60万円 × 1/2) | 30万円 |
| 翌年3月31日 | 今年分の確定申告。年税額が70万円だったとすると | 70万 − 30万 = 40万円 |
前払いした30万円は、翌年3月にきちんと差し引かれます。総額は変わりません。 変わるのは払うタイミングだけです。
逆に、年税額が中間で払った額を下回れば還付になります。売上が落ちた年は、翌年3月に戻ってくる形です(それでも資金繰りとしては先に出ていくので、仮決算を検討する意味があります)。
消費税の確定申告そのものの流れは確定申告のあとの納税、どうやって払う?、税額の計算方式の違いは消費税の計算方式はどれを選ぶ?を参照してください。
中間申告を無視すると、延滞税がかかります。納期限の翌日から、実際に納付する日までの日数に応じて計算されます。
一方で、無申告加算税は原則としてかかりません。みなし申告の仕組みがあるため、「申告していない」状態にはならないからです。とはいえ延滞税は確実につきますし、督促も来ます。
払えない見込みがあるなら、期限前に税務署へ相談してください。分割納付や猶予の相談ができます。放置がいちばん高くつきます。
中間申告が始まると、消費税の支払いが年2回(または4回・12回)になります。
これは慣れるまで確実に効きます。対策はひとつだけです。
預かった消費税を、売上の入金時点で別口座に移しておく。
消費税は預かったお金なので、本来は使ってはいけないお金です。本則課税なら「売上の消費税 − 仕入の消費税」、2割特例なら「売上の消費税 × 20%」を目安に、入金のつど分けておけば、中間も確定も慌てずに済みます。目安の作り方は稼いだお金、いくら残せば税金で困らない?にまとめています。
2年目に来る税金の全体像は個人事業主に「後から来る税金」一覧で俯瞰できます。
インボイス制度で課税事業者になった人からよく聞かれます。
2割特例の中身はインボイスで課税事業者になった人の2割特例、そもそも課税事業者になるタイミングは売上1000万円を超えそうにまとめています。
Q. 課税事業者になった初年度から中間申告はありますか。
ありません。判定に使う「前年の消費税額」がないためです。中間申告が始まるのは、消費税を納めた翌年からです。
Q. 48万円以下ですが、自分から中間申告できますか。
できます。「任意の中間申告制度」といって、届出をすれば年1回の中間申告ができます。一度に払う額を減らしたい人向けの制度です。ただし、いったん始めると継続の手続きが必要になるので、資金繰りの都合が明確なときだけ使ってください。
Q. 通知が来ませんでした。払わなくていいですか。
前年の税額が48万円以下なら、そもそも対象外です。対象なのに届かない場合は税務署に確認してください。通知が来ないことが免除を意味するわけではありません。
Q. 口座振替(振替納税)にしています。中間分も自動で引き落とされますか。
振替納税を利用していれば中間分も対象になるのが通常ですが、手続きの状況によります。引き落とし日と残高は必ず確認してください。
Q. 金額が明らかにおかしい気がします。
前年の確定申告を修正した場合などに、金額が食い違うことがあります。納付書の金額の根拠は税務署で確認できます。
Q. 中間で払った消費税は、帳簿でどう処理しますか。
税抜経理なら「仮払消費税」、税込経理なら「租税公課」で処理するのが一般的です。確定申告時に精算します。
Q. 法人成りしたら中間申告はどうなりますか。
法人は別人格なので、個人事業のときの実績は引き継がれません。法人の1期目に中間申告はありません。
👉 売上1000万円を超えそう。消費税の課税事業者になるタイミング
👉 インボイスで課税事業者になった人の2割特例
👉 消費税の計算方式はどれを選ぶ?
👉 予定納税の通知が来た
👉 個人事業主に「後から来る税金」一覧