開業日を1日ずらすと青色申告が1年遅れる——2ヶ月ルールの数え方
状況別の開業日の決め方は開業届の「開業日」はいつにする?さかのぼりは可能?にまとめています。この記事は青色申告の2か月ルールと開業日の関係に絞ります。
開業届を書くとき、意外と「開業日」で手が止まります。「実際に稼ぎ始めた日?」「準備を始めた日?」「届出を出す日?」——どれを書けばいいのか分からず、さらに「過去の日付でもいいの?」という不安も重なります。
開業日は、基本的には自分で決めて構いません。ただし、いいかげんに決めると青色申告の期限を逃すという、地味だけれど大きな落とし穴があります。この記事で、損をしない開業日の決め方を整理します。
この記事の結論
– 開業日は「事業を実態として始めた日」を自分で合理的に決める
– 過去日付も可。ただし青色申告の「開業から2ヶ月」期限を必ず確認(所得税法144条)
– 迷ったら開業届と青色申告承認申請書をセットで早めに提出が安全
– 開業日を後ろにするほど、開業費として集められる範囲が広がる
開業日は「事業を始めた日」を自分で決める
税法上、「開業日はこの日でなければならない」という厳密な定義はありません。開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)には開業日を記入しますが、実態として事業を開始した日を、自分で合理的に決めて書くのが基本です。
たとえば次のような日が、判断に使いやすいです。
- 最初の売上が発生した日/最初の受注・契約日
- 店舗や事務所をオープンした日
- 事業としての営業活動を本格的に始めた日
「準備だけしていた期間」と「事業を始めた日」は分けて考えます。準備期間に使ったお金は、後述する開業費として扱えます。
過去の日付でもいい?——できるが、注意点がある
「もう何か月か前から活動していた。開業日をさかのぼって書ける?」という質問はよくあります。
開業届は、その年分の確定申告期限までに提出します(所得税法229条)。つまり、開業した年の確定申告と同じ期限(翌年3月15日)までです。2026年(令和8年)1月1日以後に開業した人が対象で、それより前に開業した人は「事業開始から1か月以内」でした。どちらの場合も、期限を過ぎてから出した届出書も受理されます。開業日を実態に合わせて過去の日付にすること自体も可能です。問題は、次に説明する青色申告の期限との関係です。
いちばん大事:開業日で「今年 青色にできるか」が決まる
開業日を軽く見てはいけない最大の理由がこれです。青色申告をするには「青色申告承認申請書」を期限内に出す必要があり、その期限が開業日を基準に決まるからです。
青色申告承認申請書の提出期限(所得税法144条)
・原則:その年の3月15日まで
・その年の1月16日以降に開業した人:開業日から2ヶ月以内
つまり、過去にさかのぼって開業日を書いた結果、「開業から2か月」がすでに過ぎてしまっていると、その年は青色申告ができません(自動的に白色になります)。開業日をさかのぼるときは、必ずこの2か月の期限を確認してください。
逆に言えば、開業届と青色申告承認申請書はセットで、なるべく早く一緒に出すのが、この落とし穴を避ける最善策です。
「開業日から2ヶ月以内」の数え方
では、その2か月はどこから数えるのでしょうか。まさにここで、開業日が1日違うだけで結果が変わります。
税金の期限の数え方は、国税通則法10条1項で決まっています。要点は3つだけです。
2ヶ月の数え方
・数え始めるのは開業日の翌日(開業日そのものは数に入れません)
・月の途中に開業したら、2ヶ月後の「同じ日」が期限
・月末に開業したら、2ヶ月後の月末が期限
「2か月後の同じ日」がその月に無いときは、その月の末日が期限になります。たとえば12月30日に開業した場合、2月30日という日はありませんから、期限は2月の末日です。
日付を入れて数えてみる
- 1月10日に開業 → 期限は3月15日(1月15日までの開業は原則どおり3月15日)
- 1月16日に開業 → 期限は3月16日(ここから「2か月以内」に切り替わります)
- 3月10日に開業 → 期限は5月10日
- 6月30日に開業 → 期限は8月31日(月末開業なので2か月後の月末)
- 11月30日に開業 → 期限は翌年1月31日
- 12月31日に開業 → 期限は翌年2月の末日
1月15日までに開業した人と、1月16日以降に開業した人とで、期限の決まり方が変わります。自分がどちらなのかを先に確かめてください。
なお、こうして数えた日が土曜日・日曜日・祝日に当たるときは、次の平日が期限になります(国税通則法10条2項)。12月29日から1月3日までも同じ扱いです。
「1日ずらすと1年遅れる」のはこんなとき
開業日をさかのぼって書くときが、いちばん多いです。今日が5月10日で、これから開業届を出す場面で考えてみます。
- 開業日を3月10日と書く → 期限は5月10日。今日出せば間に合います。
- 開業日を3月9日と書く → 期限は5月9日。昨日で終わっています。
開業日が1日違うだけで、その年は白色申告に決まってしまいます。早くても翌年分から、青色に切り替えられます。
翌年分から青色にするには、翌年の3月15日までに承認申請書を出します(所得税法144条)。つまり、青色申告が丸1年先送りになるということです。
すでに間に合わなかったときの立て直し方は青色申告の申請を出し忘れて「今年は白色」に。来年こそ65万円を取る方法にまとめています。
とはいえ、期限ぎりぎりを狙う意味はありません。開業届と青色申告承認申請書を一緒に出してしまえば、この数え方で悩む場面自体がなくなります。
開業日と「開業費」の関係
もう一つ、開業日は開業費の範囲にも関わります。開業費とは、開業の準備のために開業日より前に使った費用のことです。つまり、開業日を後ろにすればするほど、「開業日前の準備費用(=開業費)」として集められる範囲が広がるという関係があります。
このあたりは、開業日を決めるときに一緒に考えておくと得です。詳しくは開業費の記事で。
開業費はどこまでOK?いつまで遡れる?入る/入らないを一覧で
よくある質問(FAQ)
Q. 開業日と、開業届を提出する日は同じでないといけない?
いいえ。開業日は「事業を始めた日」、提出日は「書類を出した日」で、別々でOKです。提出が開業日より後になっても問題ありません。
Q. まだ売上がゼロでも開業日を決めていい?
決められます。これから事業をする意思があれば、売上ゼロでも開業日を設定して開業届を出せます。
Q. 開業日を過去にさかのぼると、その年の確定申告はどうなる?
その開業日以降に生じた事業の売上・経費は、その年の事業所得として申告します。さかのぼった結果、過去の年に申告が必要だった、というケースもあるので、大きくさかのぼる場合は確認を。
Q. 会社員をしながらの開業。開業日はいつにする?
副業として事業を始めた日、または本格化した日など、実態に合わせて合理的に決めます。青色の2か月期限は同じく適用されるので、期限を確認してください。
まとめ:開業日の決め方チェック
- 開業日は「事業を始めた日」を自分で合理的に決めます
- 過去日付も可。ただし青色申告の「開業から2ヶ月」期限を必ず確認
- 迷ったら、開業届と青色申告承認申請書をセットで早めに提出するのが安全
- 開業日は開業費の範囲にも影響します
この記事の主な根拠(出典)
- 所得税法229条(個人事業の開業・廃業等届出書。2026年1月1日以後の開業は、その年分の確定申告期限までに提出。それより前は1ヶ月以内)
- 所得税法144条(青色申告の承認申請。原則3月15日、1月16日以降開業は開業日から2ヶ月以内)
- 国税庁タックスアンサー(開業届・青色申告承認申請の各項目)
- 国税通則法10条(期間の計算及び期限の特例。初日不算入、応当日の前日に満了、期限が休日なら翌日)
- ※出典の各ページは2026年8月21日に確認しました。制度は改正されることがあります
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