ホーム起業時の知識 › 開業届の「職業」「事業の…
更新日 2026-07-25 起業時の知識第32回

開業届の「職業」「事業の概要」は何て書く?業種別の記入例と個人事業税の関係

住所と氏名、マイナンバー、開業日——ここまではスラスラ書けたのに、「職業」「事業の概要」の2つの空欄で手が止まる。開業届で一番よく詰まるのが、実はこの2箇所です。

そして検索すると「職業欄の書き方で個人事業税が変わる」という話が出てきて、余計に手が止まります。

結論から言うと、この欄に唯一の正解はありません。ただし、まったくの無関係でもない——ここが誤解されがちなポイントです。この記事で、書き方の型と「実際は何で決まるのか」を整理します。

この記事の結論
「職業」=世間に通じる言葉で、実態どおりに書く。ひとことで足りる(例:デザイン業、不動産賃貸業)
「事業の概要」=「誰に・何を・どうやって」を1〜2行。職業欄をもう少し具体化するだけ
– 個人事業税は届出の書き方で決まるのではなく、事業の実態で都道府県が判断する。記載は“入口”にすぎない
– 迷ったら具体的に書くのが正解。曖昧に書いても得はしないし、事実と違うことを書くのは論外

「職業」欄:世間に通じる言葉で、実態どおりに

この欄は、税務署が「どういう仕事をしている人か」を把握するためのものです。決まった選択肢はなく、自由記載です。

書くときのコツは3つだけ。

  1. 世間に通じる言葉で書く……「ノマドワーカー」「複業家」ではなく「Webデザイン業」「執筆業」
  2. 語尾は「〜業」で締める……業種として伝わりやすい
  3. メインの仕事ひとつでよい……複数あるなら売上の大きい順に「デザイン業、執筆業」と並べる

業種別の記入例(職業欄/事業の概要欄)

そのまま真似できる形で並べます。自分の実態に合わせて言葉を差し替えてください。

やっていること 職業欄の例 事業の概要欄の例
Webサイト制作・デザイン デザイン業 中小企業向けのWebサイトの企画・デザイン・制作
記事執筆・ライター 執筆業(文筆業) Webメディア・企業サイト向けの記事執筆および編集
プログラム開発・受託開発 ソフトウェア開発業 受託によるWebアプリケーションの設計・開発・保守
コンサル・研修 経営コンサルタント業 中小企業向けの業務改善コンサルティングおよび社内研修の実施
動画編集・撮影 映像制作業 YouTube動画の撮影・編集の受託およびサムネイル制作
ネットショップ・物販 小売業(インターネット販売) 自社ECサイトおよびモールでの雑貨の仕入販売
ハンドメイド販売 製造小売業 アクセサリーの製作およびネットショップでの販売
整体・エステ・サロン 整体業(サービス業) 店舗での整体施術および出張施術
学習塾・教室 学習塾経営 小中学生向けの個別指導塾の運営
アパート・駐車場の賃貸 不動産賃貸業 所有するアパート1棟(8室)および駐車場の賃貸

「事業の概要」欄:誰に・何を・どうやって

概要欄は、職業欄をもう一段だけ具体化する場所です。長々と事業計画を書く欄ではありません。「誰に・何を・どうやって」の3点が1〜2行に入っていれば十分です。

  • △ 悪い例:「インターネット関連事業」……何をしているのか分からない
  • ○ 良い例:「中小企業向けのWebサイトの企画・デザイン・制作」

将来やる予定の事業まで盛り込む必要はありません。始める時点の実態を書き、事業内容が変わったら、その後の確定申告書の「職業」欄などで実態に合わせていけば大丈夫です。

本題:個人事業税は「書き方」ではなく「実態」で決まる

ここが一番誤解されている部分です。

個人事業税は都道府県の税金で、地方税法が定めた業種(いわゆる法定業種・70業種)に当てはまる事業だけが課税対象になります。税率は業種によって3〜5%、そして年間290万円の事業主控除があるので、所得が290万円以下なら結果として税額は出ません(2026年時点)。

よく話題になるのが、文筆業・画家・作曲家のような「法定業種に見当たらない仕事」です。該当する業種がなければ課税されない、という理屈になります。逆に、デザイン業や請負業に当たると判断されれば課税対象です。

ただし——ここが本題です。

この判定をするのは税務署ではなく都道府県税事務所で、判断材料は「届出書の職業欄の文字」ではなく事業の実態です。 職業欄に何と書いたかで税額が自動的に決まる仕組みではありません。「文筆業と書いておけば非課税」という裏技は存在せず、実態がデザイン業なら課税対象と判断されます。

つまり、書き方を工夫して有利になろうとするのは筋が悪く、実態どおりに具体的に書くのが唯一の正解ということです。判断が微妙な業種(プログラマー、ライター兼デザイナーなど)は、開業後に都道府県税事務所へ確認するのが最短です。

職業欄が意外なところで効いてくる場面

税金以外でも、この欄は後から見返されます。

場面 どう使われるか
屋号付き口座の開設 開業届の控えで事業内容を確認される。概要欄が曖昧だと追加説明を求められることがある
融資(日本政策金融公庫など) 事業計画書と開業届の事業内容が食い違っていないかを見られる
保育園・学童の申込み 就労状況の裏づけ資料として控えの提出を求められることがある
補助金・助成金 対象業種の判定資料になることがある

だからこそ、「後から人に見せる書類」だと思って具体的に書くのが得策です。

よくある質問(FAQ)

Q. 職業欄と概要欄、同じ内容になってしまいます。
問題ありません。職業欄が「デザイン業」、概要欄が「Webサイトのデザイン・制作」のように、粒度が違えばOKです。

Q. 複数の仕事をしています。全部書くべき?
売上の中心になるものから2つ程度を並べれば十分です。すべて書き切る必要はありません。

Q. 会社員の副業として開業します。職業欄は?
副業として行う事業のほうを書きます。会社の勤務先は関係ありません。

Q. 後から事業内容が変わったら、書き直しの届出が必要?
職業欄の変更だけを届け出る手続きは、通常は不要です。その後の確定申告書の「職業」欄を実態に合わせることで足ります。事業の廃止・新設や納税地の変更など、届出が必要なケースは別にあります。

Q. 空欄で出したらどうなりますか?
受け付けてもらえないことも、後から確認の連絡が来ることもあります。空欄のまま出すメリットはゼロなので埋めましょう。

まとめ

  • 職業欄は自由記載。世間に通じる言葉で、語尾は「〜業」、メインひとつでOK
  • 概要欄は「誰に・何を・どうやって」を1〜2行。事業計画は不要
  • 個人事業税は実態で都道府県が判断する。職業欄の書き方で決まるものではない
  • 書類は後から金融機関・自治体に見せるもの。具体的に、事実どおりに書くのが最短ルート
この記事の主な根拠(出典)

  • 所得税法229条(個人事業の開業等の届出)
  • 地方税法72条の2(個人の事業に対する事業税の課税対象となる事業の区分)
  • 国税庁「[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
  • 各都道府県「個人事業税のご案内」(法定業種・税率3〜5%・事業主控除290万円)
  • ※2026年時点の制度に基づく

次に読む

👉 開業届の“開業日”はいつにする?さかのぼりは可能?
👉 開業届、結局どれで出すのが一番ラク?e-Tax・郵送・窓口を比較
👉 個人事業主に屋号は必要?なしで開業できる?
👉 開業で必須の届け出一覧|提出先・期限・メリット
👉 青色申告承認申請書の提出期限はいつ?開業日別の締切

相談したいとき

👉 税理士の宍倉に相談する(LINE)

FOLLOW & CONSULT

新しい記事はLINEでお知らせ

個別のご相談は、事務所サイトの単発相談で承っています。

LINEで友だち追加個別相談について(事務所サイト)