障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除|該当するのに書いていない人的控除
所得控除のなかで、該当しているのに書かれていないことがいちばん多いのが、この3つです。
障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除。
理由は単純で、誰も教えてくれないからです。会社員なら年末調整の用紙に欄がありますが、個人事業主は自分で気づくしかありません。しかも「障害者手帳がないから対象外」「離婚していないから関係ない」と、思い込みで飛ばしてしまいます。
金額は27万円〜75万円。書くだけで税金が数万円〜十数万円変わります。
この記事の結論
– 障害者控除:一般27万円 / 特別障害者40万円 / 同居特別障害者75万円
– 手帳がなくても対象になる——65歳以上で市区町村長の認定を受けた人など
– 16歳未満の子は扶養控除が0円だが、障害者控除は取れる
– 同居していない扶養親族でも、一般・特別の障害者控除は受けられる(75万円は同居が要件)
– 寡婦控除27万円:離婚後は扶養親族が必要、死別なら扶養親族は不要。合計所得500万円以下
– ひとり親控除35万円:未婚でも、男性でも対象。生計を一にする子が必要。合計所得500万円以下
– 両方に当たるときはひとり親控除を優先(併用はできない)
– 住民票に「未届の夫」「未届の妻」の記載がある人は、寡婦・ひとり親のいずれも対象外
① 障害者控除
金額
| 区分 | 所得税 | 住民税 |
|---|---|---|
| 一般の障害者 | 27万円 | 26万円 |
| 特別障害者 | 40万円 | 30万円 |
| 同居特別障害者 | 75万円 | 53万円 |
対象になるのは、本人・同一生計配偶者・扶養親族です。
誰が「障害者」か
| 一般の障害者 | 特別障害者 |
|---|---|
| 身体障害者手帳 3〜6級 | 身体障害者手帳 1級・2級 |
| 精神障害者保健福祉手帳 2級・3級 | 精神障害者保健福祉手帳 1級 |
| 療育手帳(愛の手帳)B・中度〜軽度 | 療育手帳 A・重度 |
| 市町村長等の認定を受けた人(障害者に準ずる) | 市町村長等の認定を受けた人(特別障害者に準ずる) |
| — | 常に就床を要し、複雑な介護を要する人 |
| — | 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人(成年被後見人を含む) |
| 戦傷病者手帳の交付を受けている人 | 戦傷病者手帳のうち一定の区分 |
| — | 原子爆弾被爆者で厚生労働大臣の認定を受けた人 |
【重要】手帳がなくても対象になることがある
ここが最大の見落としポイントです。
65歳以上の人で、障害の程度が知的障害者・身体障害者に準ずるものとして「市町村長等の認定」を受けている人は、障害者控除の対象になります。
多くの市区町村が「障害者控除対象者認定書」を発行しています。
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| 要介護認定=障害者控除ではない | 要介護認定を受けているだけでは自動的に該当しません |
| ただし | 多くの自治体が、要介護度や日常生活自立度を基準に認定しています |
| 手続き | 市区町村の高齢福祉課等に申請して、認定書の交付を受ける |
| 遡り | 過去の年分について認定書が出れば、更正の請求(原則5年以内)で還付を受けられることもある |
親を扶養に入れていて、その親が要介護状態にある——という人は、必ず市区町村に確認してください。特別障害者(40万円)や同居特別障害者(75万円)に該当することもあり、影響は大きいです。
16歳未満の子でも取れる
平成23年に年少扶養控除が廃止されたため、16歳未満の扶養親族には扶養控除がありません(0円)。
しかし、障害者控除は別です。16歳未満でも、障害者に該当すれば27万円・40万円・75万円の控除を受けられます。
扶養控除が0円だから「扶養親族として書かなくていい」と思ってしまうのが、漏れの原因です。申告書には必ず記載してください(住民税の非課税判定にも使われます)。
「同居」の75万円は誰と同居か
同居特別障害者(75万円)は、その特別障害者が、
本人、その配偶者、または本人と生計を一にするその他の親族のいずれかと、同居を常況としている
ことが要件です。「本人と同居していること」に限りません。
一方、別居していても、扶養親族であれば一般(27万円)・特別(40万円)の控除は受けられます。仕送りをしている別居の親も対象になり得ます。
② 寡婦控除(27万円)
次のどちらかに当てはまり、かつ合計所得金額が500万円以下の人が対象です(ひとり親に該当する人を除く)。
| パターン | 要件 |
|---|---|
| 離婚 | 夫と離婚した後、婚姻をしていない人で、扶養親族がいる |
| 死別 | 夫と死別した後、婚姻をしていない人、または夫の生死が明らかでない一定の人(扶養親族は不要) |
離婚と死別で要件が違うのがポイントです。死別の場合は扶養親族がいなくても受けられます。
さらに、住民票の続柄に「未届の夫」の記載がある人(事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人)は対象外です。
なお、寡婦控除は女性のみが対象です(男性は次のひとり親控除で判定します)。
③ ひとり親控除(35万円)
令和2年分から創設された控除です。未婚のひとり親も、男性も対象になりました。
次の3つをすべて満たす人が対象です。
| # | 要件 |
|---|---|
| ① | 現に婚姻をしていない、または配偶者の生死が明らかでない一定の人(婚姻歴を問わない) |
| ② | 生計を一にする子がいる(その子の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者・扶養親族になっていないこと) |
| ③ | 合計所得金額が500万円以下 |
そして、住民票に「未届の妻」「未届の夫」の記載がある人は対象外です。
何が変わったのか
| 令和元年分まで | 令和2年分から | |
|---|---|---|
| 未婚のひとり親 | 対象外 | 対象(ひとり親控除35万円) |
| 男性のひとり親 | 寡夫控除27万円(所得制限あり) | ひとり親控除35万円 |
| 事実婚状態の人 | 制限なし | 対象外 |
「離婚していないから使えない」という思い込みで漏れているケースが多いです。婚姻歴は問われません。
判定の順番
迷ったら、この順で当てはめてください。
- 生計を一にする子(総所得金額等48万円以下)がいるか
→ いる、かつ婚姻していない、かつ合計所得500万円以下 → ひとり親控除 35万円 - ひとり親に当たらない場合、離婚後で扶養親族がいる(合計所得500万円以下) → 寡婦控除 27万円
- ひとり親に当たらない場合、死別後(合計所得500万円以下) → 寡婦控除 27万円
- いずれの場合も、住民票に「未届の夫/妻」の記載があれば対象外
寡婦控除とひとり親控除は併用できません。両方に該当する場合はひとり親控除(35万円のほう)が適用されます。
そして、これらは障害者控除とは別枠です。障害者控除は重ねて受けられます。
この記事は所得税・住民税の人的控除を扱っています。障害者手帳の交付申請、障害者控除対象者認定書の交付、要介護認定は市区町村および都道府県の所管で、認定の基準は自治体によって異なります。認定書が発行されるかどうかの判断は市区町村が行いますので、必ず窓口にご確認ください。障害福祉サービス・介護保険サービスの利用、児童扶養手当その他の給付の可否も、それぞれの制度の所管窓口の判断によります。離婚・死別に伴う戸籍や住民票の記載、養育費の取り決めは、この記事の範囲外です(法律問題は弁護士の業務です)。
書く場所と、必要なもの
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 確定申告書 第一表 | 「障害者控除」「寡婦、ひとり親控除」欄 |
| 確定申告書 第二表 | 「本人に関する事項」「配偶者や親族に関する事項」に区分を記載 |
| 添付書類 | 原則として不要(障害者手帳・認定書の写しの添付は求められていません)。ただし記載内容の確認を求められることはあるので、手元に保管しておく |
16歳未満の扶養親族は、第二表の「住民税に関する事項」欄にも記載します。
控除全体の抜け漏れは所得控除の最終チェックリスト、証明書の集め方は控除証明書を集める段取りを参照してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 親が要介護3です。障害者控除の対象になりますか。
自動的には該当しません。市区町村に「障害者控除対象者認定書」の交付を申請してください。多くの自治体が要介護度や日常生活自立度を基準に認定しています。認定されれば、一般(27万円)または特別(40万円)、同居していれば75万円の対象になります。
Q. 過去の年に書き忘れていました。
更正の願い(更正の請求)を、原則として法定申告期限から5年以内に行えば還付を受けられます。認定書が過去の年分について発行される自治体もあるので、確認してみてください。金額が大きいので、必ず確認する価値があります。
Q. 別居している親を扶養に入れています。障害者控除も取れますか。
取れます。扶養親族であれば、別居でも一般(27万円)・特別(40万円)の控除は受けられます。75万円(同居特別障害者)は同居が要件なので、別居では使えません。なお、扶養親族に該当するには生計を一にしている(仕送り等の事実)ことが必要です。
Q. 子どもが3歳です。障害があるのですが、扶養控除は0円と言われました。
扶養控除は0円ですが、障害者控除は受けられます。16歳未満でも27万円・40万円・75万円の対象です。申告書に必ず記載してください。
Q. 未婚で子どもを育てています。離婚していなくても使えますか。
使えます。ひとり親控除は婚姻歴を問いません(令和2年分から)。生計を一にする子(総所得金額等48万円以下)がいて、合計所得金額500万円以下であれば対象です。
Q. 男性ですが、ひとり親控除は受けられますか。
受けられます。性別は問いません。旧「寡夫控除」(27万円)は廃止され、ひとり親控除(35万円)に統合されました。
Q. 事実婚のパートナーがいます。
住民票の続柄に「未届の夫」「未届の妻」の記載がある場合、寡婦控除・ひとり親控除のいずれも受けられません。
Q. 子どもがアルバイトをしています。ひとり親控除は使えますか。
子の総所得金額等が48万円以下であることが要件です。給与だけなら年収103万円以下が目安になります。これを超えると、その子ではひとり親控除の要件を満たしません。
Q. 学生で働きながら事業もしています。勤労学生控除は?
合計所得金額85万円以下(令和7年分から。改正前は75万円以下)で、うち給与所得等以外の所得が10万円以下なら、27万円の勤労学生控除を受けられます。事業所得が10万円を超えると受けられない点に注意してください。
まとめ
- 障害者控除:一般27万円 / 特別40万円 / 同居特別75万円
- 手帳がなくても、市区町村長の認定(障害者控除対象者認定書)で対象になる
- 要介護認定だけでは自動的に該当しない。申請して認定を受ける
- 16歳未満の子は扶養控除0円でも、障害者控除は取れる
- 別居の扶養親族でも一般・特別は取れる(75万円は同居が要件)
- 寡婦控除27万円:離婚は扶養親族が必要、死別は不要。合計所得500万円以下
- ひとり親控除35万円:未婚でも男性でも対象。生計を一にする子が必要
- 両方に当たればひとり親控除(併用不可)。障害者控除とは併用できる
- 住民票に「未届の夫/妻」があると、寡婦・ひとり親はいずれも対象外
- 過去の分は更正の請求(原則5年以内)で取り戻せる
- 所得税法79条(障害者控除。27万円、特別障害者40万円、同居特別障害者75万円)/同2条1項28号・29号、所得税法施行令10条(障害者・特別障害者の範囲。精神保健指定医等の判定、市町村長等の認定、常に就床を要し複雑な介護を要する者 等)
- 所得税法80条(寡婦控除27万円。合計所得金額500万円以下。ひとり親に該当する者を除く)/同2条1項30号
- 所得税法81条(ひとり親控除35万円。現に婚姻をしていない者等で、生計を一にする子(総所得金額等48万円以下)を有し、合計所得金額500万円以下)/同2条1項31号
- 所得税法施行令11条の2(事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる者。住民票の続柄に「未届の夫」「未届の妻」等の記載がある場合)
- 所得税法82条(勤労学生控除27万円)。令和7年度税制改正により合計所得金額の要件が75万円以下から85万円以下に引き上げ(令和7年分以後)
- 地方税法314条の2(個人住民税の人的控除額。障害者26万円・特別障害者30万円・同居特別障害者53万円、寡婦26万円、ひとり親30万円)
- 国税通則法23条(更正の請求。原則として法定申告期限から5年以内)
- ※2026年時点の取扱いです。障害者控除対象者認定書の交付基準は市区町村により異なります
次に読む
👉 所得控除の最終チェックリスト
👉 地震保険料控除——火災保険とセットなのに書き忘れる
👉 生命保険料控除はいくら戻る?新・旧制度と3つの枠
👉 医療費控除は10万円から?5%の話
👉 社会保険料は生計一の家族の分も控除できる