期末に間に合わせる2つの打ち手──決算賞与の3要件と、経営セーフティ共済の「振込」
決算対策には、お金を用意すれば済むものと、お金より先に手続が要るものがあります。落ちるのはいつも後者です。
この記事で扱う2つは、どちらも「期末までに現金を動かせば当期の損金になる」と思われがちですが、実際には別の要件のほうで落ちます。決算賞与は就業規則の一文で、経営セーフティ共済は払込みの方法で。
この記事の結論
- 決算賞与を未払計上するには3要件がすべて要る。①各人別・同時期に全使用人へ通知 ②翌日から1か月以内に支払 ③通知した日の事業年度で損金経理
- ★就業規則に「支給日に在職する使用人に支給する」とあると、その通知は要件の「通知」に当たらない(法基通9-2-43)
- パート・臨時雇い等を区分している場合は、区分ごとに通知したかを判定できる(同9-2-44)
- 経営セーフティ共済の掛金は損金。ただし★確定申告書等に明細書の添付がないと適用されない(措法66の11③)
- 別表は「別表十(八)」(令和7年4月1日以後終了事業年度分)。適用額明細書の区分番号は00374
- ★決算月に加入するなら「振込による前納」。初回口座振替の前納だと決算日までに引き落とされない
- ★手形の振出しは「現実に支払った日」に当たらない(措通66の11-2)
- 前納は1年以内の部分だけ(措通66の11-3)。解除後2年間は損金にならない
1. 決算賞与|使用人賞与の損金算入時期は3つに分かれる
法人が使用人に支給する賞与は、次の区分に応じた事業年度の損金になります(法令72の3)。
| 区分 | 損金になる事業年度 |
|---|---|
| 1号 労働協約または就業規則により支給予定日が到来している賞与(支給額を通知し、支給予定日または通知日の事業年度で損金経理したものに限る) | 支給予定日と通知日のいずれか遅い日の属する事業年度 |
| 2号 下の3要件をすべて満たす賞与 | ★通知をした日の属する事業年度 |
| 3号 上記以外 | 支払をした日の属する事業年度 |
決算賞与として未払計上したいときに使うのが2号です。要件は3つあります。
| 要件 | |
|---|---|
| ① | その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知していること |
| ② | ①の通知をした金額を、通知したすべての使用人に対し、通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1か月以内に支払っていること |
| ③ | その支給額につき、①の通知をした日の属する事業年度において損金経理していること |
「決算日までに払わなくてよい」のは②のとおりですが、そのかわり①と③がセットで要求されます。
2. ★就業規則の一文で、全部飛ぶ
ここが最大の落とし穴です。通達にこう書かれています。
法人が支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合のその支給額の通知は、令第72条の3第2号イの支給額の通知には該当しない(法人税基本通達9-2-43)。
つまり、就業規則や賞与規程に
「賞与は、支給日に在職する使用人に対して支給する」
という定めがあると、どれだけ丁寧に各人別の通知書を配っても、2号の「通知」をしたことになりません。支給日に辞めていれば払わないのですから、通知の時点では全員に対して債務が確定したとはいえない、という理屈です。
★決算賞与を検討する前に、まず就業規則を開いてください。この一文があるかどうかで、打ち手が使えるかどうかが決まります。順序が逆になっている相談が非常に多いところです。
3. パート・臨時雇いは区分できる
もう1つ、実務で助かる通達があります。
法人が、使用人に対する賞与の支給について、いわゆるパートタイマー又は臨時雇い等の身分で雇用している者(雇用関係が継続的なものであって、他の使用人と同様に賞与の支給の対象としている者を除く)とその他の使用人を区分している場合には、その区分ごとに、支給額の通知を行ったかどうかを判定することができる(法人税基本通達9-2-44)。
「同時期に支給を受けるすべての使用人」という要件を、正社員だけの区分で判定できるということです。ただし、継続的な雇用関係があって他の使用人と同様に賞与の対象にしているパートは、区分から除かれます。名目ではなく実態で見ます。
4. 公表されている照会事例の組み立て
国税庁の文書回答事例(金沢国税局・平成27年2月26日回答「決算賞与金の税務上の取扱いについて」)に、実務で参考になる組み立てが公表されています。3月決算法人の例です。
| いつ | 何をするか |
|---|---|
| 1月 | 取締役会で支給基準条件(「当年度において粗利○○円以上を達成した場合」など)を設定し、従業員ごとの決算賞与金の額を決定して、書面で通知し確認・押印させる |
| 決算(3月末) | 決算賞与金の額を未払金に計上 |
| 4月 | 支給基準条件を達成しているか確認し、達成していれば個人別の成績評価をして追加賞与金の額を算定 |
| 4月末まで | 決算賞与金と追加賞与金を合計して現金で支給 |
読みどころは2つです。
- 条件付きの通知でも、金額を各人別に通知して押印まで取っていること。「粗利○○円以上を達成した場合」という条件を付けたうえで、金額そのものは各人に確定的に伝えています
- ★4月に個人別評価で決める追加賞与金は、未払金ではなく賞与引当金に計上する前提になっていること。期末時点で各人別の金額が決まっていないものは、当期の損金にはなりません
つまり、「総額だけ決めておいて、配分は決算後に考える」は通りません。期末までに各人別の金額まで固める必要があります。
★なお文書回答事例は、照会において前提とされた事実関係と、照会当時に施行されていた法令に基づく回答です。前提が違えば取扱いも違います。
5. 経営セーフティ共済|個人事業主の場合と、どこが違うか
制度そのもの(掛金月5,000円〜20万円、年240万円、掛金総額800万円、40か月で解約手当金100%、貸付限度は掛金総額の10倍かつ8,000万円)は法人も個人も同じです。個人事業主向けの整理は経営セーフティ共済は個人事業主も使えるにまとめてあります。
法人で変わるのは、税務上の箱と、申告書での見え方です。
| 法人 | 個人事業主 | |
|---|---|---|
| 掛金の扱い | 損金(措法66の11①二) | 必要経費(措法28①二) |
| 添付する書類 | ★別表十(八)+適用額明細書(区分番号00374) | 明細書 |
| 解約手当金 | 雑収入(益金) | 事業所得の総収入金額 |
| 出口の組み方 | ★役員退職金と同じ年に当てるのが基本形 | 赤字の年・廃業の年に当てる |
| 不動産所得のみ | — | 加入対象にならない |
★法人でいちばん使いやすいのは、解約する年に役員退職金を出す組み方です。解約手当金という一時的な益金と、退職金という一時的な損金をぶつけます。ただし退職金の額には「不相当に高額」の壁があるので、解約手当金に合わせて金額を決めることはできません。退職金の水準が先で、解約の年をそれに合わせるという順番になります。
6. ★明細書を付けないと適用されない
条文はこう書かれています。
第一項の規定は、確定申告書等に同項に規定する金額の損金算入に関する明細書の添付がない場合には、適用しない。ただし、当該添付がない確定申告書等の提出があつた場合においても、その添付がなかつたことにつき税務署長がやむを得ない事情があると認める場合において、当該明細書の提出があつたときは、この限りでない(措法66の11③)。
ただし書(宥恕規定)はありますが、「やむを得ない事情」と認められることを前提に運用するものではありません。会計ソフトで掛金を費用処理しただけでは足りない、と理解しておくのが安全です。
添付するのは別表十(八)です。令和7年4月1日以後終了事業年度分の様式では、社会保険診療報酬・農地所有適格法人の肉用牛・特定業績連動給与と同じ1枚にまとまっていて、「特定の基金に対する負担金等の損金算入」の欄に書きます。適用額明細書には「租税特別措置法第66条の11第1項」「区分番号00374」として記載します。
★別表の番号は年度によって動きます。「別表十(七)」と書かれた古い資料を見て探すと、様式が見つからないことがあります。当年の様式一覧で確かめてください。
7. 期末に間に合わせるための3点
① 損金になるのは「現実に支払った日」の事業年度
措置法第66条の11に規定する負担金の損金算入時期は、法人が当該負担金を現実に支払った日を含む事業年度となる(措置法通達66の11-2)。
そして注意書きにこうあります。
★当該負担金の支払のための手形の振出し(裏書譲渡を含む。)の日は、現実に支払った日に該当しない(同通達 注1)。
未払計上はもちろん、手形も使えません。現金が動いた日で判定します。
② 決算月に加入するなら「振込による前納」
払込みの方法を選べますが、決算月に加入する場合は、金融機関の窓口で払い込む「振込による前納」を選ぶ必要があります。
★「初回預金口座振替による前納」を選ぶと、決算日までに口座振替が実行されず、当期の損金になりません。加入自体は間に合っているのに、支払日が翌期になってしまうという事故です。
③ 前納は1年以内の部分だけ
中小企業倒産防止共済法の規定による共済契約を締結した法人が独立行政法人中小企業基盤整備機構に前納した共済契約に係る掛金は、前納の期間が1年以内であるものを除き、措置法第66条の11第1項第2号に掲げる掛金に該当しない(措置法通達66の11-3)。
1年を超える前納をしても、超える部分は当期の損金になりません。年払いの上限は240万円です。当期分の掛金と合わせて、初年度に最大480万円というのはこの仕組みです。
8. 翌年以降も年払いを続けるには手続が要る
見落とされやすい点です。年払い(前納)をした1年後に何も手続をしないと、原則の月払いに自動的に戻ります。
年払いを続けたい場合は、「掛金前納申出書」を口座振替月の5日までに中小機構へ到着させる必要があります。「去年やったから今年も自動で240万円落ちているはず」と思っていると、当期の損金が20万円×12か月にとどまります。
また、取扱金融機関にも条件があります(口座開設から1年以上の取引があること、そうでなければプロパー借入れがあること等)。商工会議所や税理士協同組合を経由して加入できる場合もあります。
9. 解除後2年ルール
令和6年度改正で、「解約してすぐ入り直す」が封じられました。
前項(第二号に係る部分に限る。)の規定は、法人の締結していた同号に規定する共済契約につき解除があつた後同号に規定する共済契約を締結した当該法人が、その解除の日から同日以後二年を経過する日までの間に当該共済契約について支出する同号に掲げる掛金については、適用しない(措法66の11②)。
令和6年10月1日以後に共済契約を解除した場合に適用されます。40か月で解約して受け取り、翌期に全額前納して損金にする、という回し方はもうできません。
★掛金は損金になりますが、解約手当金は雑収入です。これは節税ではなく課税の繰延べで、出口の年を設計してから入る制度だと考えてください。
範囲注記:経営セーフティ共済の加入資格の可否、必要書類、掛金の変更手続、共済金の貸付条件、取引先の「倒産」に該当するかの判断は、独立行政法人 中小企業基盤整備機構および委託先の金融機関・商工会議所等の所管です。また、就業規則・賞与規程の作成と変更は社会保険労務士の領域です。この記事は「損金になるかどうか、いつの事業年度の損金になるか、申告書のどこに書くか」を扱っています。
まとめ
決算賞与
- 未払計上には3要件。各人別・同時期の通知/翌日から1か月以内の支払/通知した日の事業年度での損金経理
- ★就業規則に「支給日に在職する使用人に支給する」とあると、その通知は要件を満たさない(法基通9-2-43)
- パート・臨時雇い等を区分していれば、区分ごとに判定できる(同9-2-44)
- ★期末までに各人別の金額まで固める。総額だけ決めて配分を翌期に回すのは不可
経営セーフティ共済(法人)
- 掛金は損金。ただし★確定申告書等に明細書の添付がないと適用されない(措法66の11③)
- 別表十(八)(令和7年4月1日以後終了事業年度分)+適用額明細書(区分番号00374)
- ★損金になるのは現実に支払った日の事業年度。手形の振出しは支払った日に当たらない(措通66の11-2)
- ★決算月に加入するなら振込による前納。初回口座振替の前納は間に合わない
- 前納は1年以内の部分だけ(措通66の11-3)。年240万円
- 翌年以降も年払いを続けるには掛金前納申出書(口座振替月の5日まで)
- ★解除の日から2年間は損金にならない(令和6年10月1日以後の解除)
- 出口は雑収入。役員退職金と同じ年に当てるのが基本形
- 法人税法施行令72条の3(使用人賞与の損金算入の時期)
- 法人税基本通達9-2-43(支給額の通知)/9-2-44(同時期に支給を受ける全ての使用人)
- 国税庁タックスアンサー No.5350(使用人賞与の損金算入時期)
- 国税庁 文書回答事例(金沢国税局・平成27年2月26日回答)「決算賞与金の税務上の取扱いについて」
- 租税特別措置法66条の11(特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例)第1項第2号・第2項・第3項
- 租税特別措置法関係通達(法人税編)66の11-2(負担金の損金算入時期)/66の11-3(中小企業倒産防止共済事業の前払掛金)
- 中小企業倒産防止共済法/独立行政法人 中小企業基盤整備機構「経営セーフティ共済」制度案内
- 国税庁「法人税等各種別表関係(令和7年4月1日以後終了事業年度等分)」別表十(八)/「適用額明細書の記載の手引」(区分番号00374)
- ※2026年時点の制度に基づく記事です。掛金の上限・返戻率・貸付条件、別表の番号は改正されることがあります
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