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更新日 2026-08-05 法人の決算と申告

少額資産の線は3本ある──40万円未満に全部寄せる前に、法人だけにある4つの条件を見る

パソコンや工具を買ったとき、その事業年度に全額を損金にできるかは金額で決まります。そして令和8年度改正で、その線が1本動きました。

ただし法人の場合、金額の線を越えていても使えないことがあります。個人事業主にはない条件が4つあるからです。しかもこの改正は、国税庁のタックスアンサーにも法令データベースにも、2026年8月時点でまだ反映されていません。

金額の4区分と償却資産税の基本は少額減価償却資産が30万円未満→40万円未満へにまとめています。この記事は法人だけの論点に絞ります。

この記事の結論

  • 線は10万円未満/20万円未満(一括償却資産)/40万円未満(中小企業者等の特例)の3本。加えて使用可能期間1年未満は金額不問
  • 法人には4つの追加条件がある。従業員400人以下/e-Tax義務化対象法人は300人以下/通算法人は一律対象外/適用除外事業者は対象外
  • タックスアンサーNo.5408は2026年8月時点でも「30万円未満・令和8年3月31日まで・500人以下」のまま。e-Govの法令データも同様
  • 貸付けの用に供した資産は対象外。ただし★不動産貸付業を営む法人が賃借人に家具・電気機器を貸すのは「主要な事業として行われる貸付け」に当たる
  • 一括償却資産は、捨てても壊れても売っても、損金が増えない(法基通7-1-13)
  • 判定は「通常1単位として取引される単位」。単体で機能しないものは一体で見る
  • 別表十六(七)/十六(八)。特例は明細書の添付が適用要件

1. 線は3本(+1本)

区分 金額 処理 償却資産税
使用可能期間1年未満(法令133) 金額不問 事業供用年度に全額損金 対象外
10万円未満(法令133) 10万円未満 事業供用年度に全額損金 対象外
一括償却資産(法令133の2) 10万円以上20万円未満 3年均等償却 対象外
中小企業者等の特例(措法67の5) 10万円以上40万円未満 事業供用年度に全額損金。年300万円が上限 対象になる

使用可能期間1年未満は、金額に関係なく全額損金になります。その法人の属する業種で一般的に消耗品として認識されていて、その法人の平均的な使用状況・補充状況からみて1年未満のものです(法基通7-1-12)。過去おおむね3年間の平均で判定します。50万円の資産でも、要件を満たせば通ります。

一括償却資産の計算式は、意外と誤解されています。

損金算入限度額 = 一括償却対象額 ÷ 36 × その事業年度の月数

掛けるのは「その事業年度の月数」であって、「取得してからの月数」ではありません。期末に買った資産でも、1年決算なら初年度に12/36が落ちます。月割りされません。

2. ★法人だけにある4つの条件

40万円未満の特例(措法67の5)には、個人事業主にはない制限があります。

条件 内容
従業員数 常時使用する従業員数が400人を超える法人は対象外(令和8年4月1日以後の取得等。それ以前は500人超が対象外)
e-Tax義務化対象法人 いわゆる特定法人は300人以下
通算法人 一律に対象外。資本金1億円以下でもグループ通算制度を選択していれば使えない
適用除外事業者 前3年平均所得15億円超の法人は対象外

通算法人が一律に外れている点は見落とされます。条文(措法67の5①)が「通算法人」をかっこ書きで明示的に除いています。同族の資産管理会社でグループ通算を選んでいる場合は、この1行で特例が消えます。

従業員数の要件は法律本体ではなく措令39の28①一にあります。500人→400人は、この政令の改正です。

3. ★改正が公表資料に追いついていない

令和8年度改正の内容は次のとおりです。

改正前 改正後
取得価額 30万円未満 40万円未満
適用される取得日 令和8年3月31日以前 令和8年4月1日以後
従業員数 500人超は対象外 400人超は対象外
適用期限 令和8年3月31日 3年延長
年間限度額 300万円 300万円(据置き)

ここで注意が必要です。

国税庁タックスアンサーNo.5408は、2026年8月時点でも「令和7年4月1日現在法令等」のままです。開くと「30万円未満」「令和8年3月31日まで」「500人以下」と書かれています。

e-Govの法令データも同様に、租税特別措置法67条の5は「三十万円未満」「令和八年三月三十一日」のままです。

改正内容を確かめる最短ルートは、国税庁が毎年出している「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」です。この資料は「令和8年5月27日現在公布されている法令に基づき作成」と明記されていて、改正条項(措法67の5①、改正法附則65、措令39の28①一、改正措令附則20)まで書いてあります。

同じ日に買った資産でも、3月31日と4月1日で結論が変わります。「取得」は原則として引渡しを受けた日です。3月に発注して4月に納品されたものは4月の取得になります。

4. 貸付けの用に供した資産は対象外──ただし大家には例外がある

令和4年4月1日以後に取得したものから、貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供した資産は、10万円未満の即時損金・一括償却資産・40万円未満の特例のいずれからも外れました(法令133①、法令133の2①、措法67の5)。ドローンや建設足場を大量に買って貸し出す節税スキームを止めるための改正です。

ここで重要なのは、かっこ書きの「主要な事業として行われるものを除く」のほうです。通達が例示を挙げています(法基通7-1-11の3)。

(4) 不動産貸付業を営む法人がその貸し付ける建物の賃借人に対して、家具、電気機器その他の減価償却資産を貸し付ける行為

家具・家電付きの賃貸物件は「主要な事業として行われる貸付け」に当たります。入居者に貸すエアコン、洗濯機、備え付け家具は、この改正で外されたものではありません。

また、一時的に貸し付けただけで貸付用と決めつけられることはありません(法基通7-1-11の2)。使用目的・使用状況を総合勘案して判定します。

5. ★一括償却資産は、捨てても損金が増えない

ここが一括償却資産のいちばん大事な性質です。

一括償却資産につき、その全部又は一部に滅失、除却等の事実が生じたときであっても、損金の額に算入される金額は、計算される損金算入限度額に達するまでの金額となる(法基通7-1-13)。

壊れて捨てても、除却損は計上できません。3年均等の残りを、そのまま3年かけて落とし続けます。注書きで「譲渡した場合も同様」とされているので、売っても同じです。

これは有利にも不利にも働きます。

一括償却資産(20万円未満) 中小企業者等の特例(40万円未満)
損金になる時期 3年に分けて均等 事業供用年度に全額
除却・滅失・譲渡 除却損を計上せず、限度額どおり償却を続ける 既に全額損金
期中取得の月数按分 なし(事業年度の月数/36)
償却資産税 対象外 対象になる
年間の上限 なし 300万円
貸付用資産の除外 あり あり
通算法人 使える 使えない

通算法人は一括償却資産なら使えます。40万円未満の特例だけが一律に外れているので、グループ通算を選んでいる会社は20万円未満を一括償却資産に寄せることになります。

なお、合併により解散した場合や残余財産が確定した場合は、その事業年度に残額を全額損金にできます(法令133の2④)。会社をたたむときだけは残りが一気に落ちます。

6. 判定は「通常1単位として取引される単位」

10万円・20万円を判定する単位は次のとおりです(法基通7-1-11)。

  • 機械及び装置 … 1台又は1基ごと
  • 工具、器具及び備品 … 1個、1組又は1そろいごと
  • 枕木・電柱など単体では機能を発揮できない構築物 … 一の工事等ごと

単体では予定される機能を発揮できないものは、一体として捉えます。カーテンは1部屋ごと、間仕切りパネルは設置した状態、組立式の商品棚は一体使用が目的なら全体で1組です。

判断が分かれた実例を並べると、線の引き方が見えてきます。

対象 結論
DVDプレーヤー 単独で本来の機能を有するので個別に判定
液晶テレビ+リクライニングシート アーム・ボルト接合、専用基板、シート内蔵リモコン、ヘッドレストのスピーカーという一体加工がされていたため、「テレビ付リクライニングシート」1個の資産(平20.10.3裁決)
防犯用ビデオカメラシステム テレビ・ビデオは単独で取引単位になるので個別判定。カメラ・コントローラー・ケーブルは各店舗ごとの単位(さいたま地判平16.2.4)

「単独で売られているか」「単独で使えるか」の2つで考えると、だいたい合います。

7. 償却資産税のほうも見る

40万円未満の特例を使った資産は、償却資産税(固定資産税)の対象になります。一括償却資産と10万円未満は対象外です。

項目 内容
税率 課税標準額 × 1.4%
免税点 同一市町村内・同一人の課税標準額の合計が150万円未満なら課税されない
申告期限 毎年1月1日現在の所有状況を1月31日までに資産所在地の市町村(東京23区は都税事務所)へ

設備の多い会社では、20万円未満を一括償却資産に寄せておくと課税標準が膨らみません。逆に、資産が少なくて免税点150万円に届かない会社は気にしなくてかまいません。

なお、償却資産税がどの事業年度の損金になるかにも決まりがあります。賦課課税方式なので、賦課決定のあった日の属する事業年度が原則ですが、各納期の開始の日または実際に納付した日に損金経理してもかまいません(法基通9-5-1(2))。選んだやり方を毎期変えないことが条件です。

範囲注記:償却資産税は地方税で、申告先は資産所在地の市町村(東京23区は都税事務所)です。国税の申告とはスケジュールも様式も別で、免税点未満でも申告そのものは必要です。

8. 申告書に付けるもの

何を 別表
中小企業者等の少額減価償却資産の特例 別表十六(七)
一括償却資産 別表十六(八)

40万円未満の特例は、明細書の添付が適用要件です(措法67の5③)。加えて適用額明細書にも記載します。租税特別措置なので、書かなければ使えません。

そして、事業供用年度に処理しなければなりません。いったん資産に計上して翌期以後に損金経理しても、一時の損金にはできません。10万円未満の即時損金(法令133)も損金経理が要件なので、決算調整事項です。

購入した資産が修繕なのか資産計上なのか迷う場面はその修理は経費?資産?、中古で買ったときの耐用年数は中古の車・機材を買ったときにまとめています。

まとめ

  • 線は10万円未満/20万円未満/40万円未満の3本。★使用可能期間1年未満は金額不問
  • 法人には4条件従業員400人以下/特定法人は300人以下/通算法人は一律対象外/適用除外事業者は対象外
  • タックスアンサーもe-Govも、2026年8月時点で改正前のまま。確認は「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」で
  • 取得日は引渡しを受けた日。3月31日と4月1日で結論が変わる
  • 貸付用資産は対象外だが、★家具・家電付き賃貸は「主要な事業として行われる貸付け」に当たる
  • 一括償却資産は捨てても売っても損金が増えない(法基通7-1-13)。ただし償却資産税は対象外通算法人でも使える
  • 判定は通常1単位として取引される単位。単独で機能しないものは一体
  • 別表十六(七)/十六(八)+適用額明細書。★事業供用年度に損金経理しないと使えない
この記事の主な根拠(出典)

  • 法人税法施行令133条(少額の減価償却資産の取得価額の損金算入)/133条の2(一括償却資産の損金算入。損金算入限度額の算式、4項の残余財産確定等の場合)
  • 法人税基本通達7-1-11(少額の減価償却資産又は一括償却資産の取得価額の判定)/7-1-11の2(一時的に貸付けの用に供した減価償却資産)/7-1-11の3(主要な事業として行われる貸付けの例示)/7-1-12(使用可能期間が1年未満の減価償却資産の範囲)/7-1-13(一括償却資産につき滅失等があった場合の取扱い)
  • 租税特別措置法67条の5(中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)/同3項(明細書の添付)/租税特別措置法施行令39条の28第1項1号(常時使用する従業員数)
  • 国税庁「令和8年度法人税関係法令の改正の概要」4(1)(取得価額基準の40万円未満への引上げ、適用期限の3年延長、従業員数400人超の法人の除外。措法67の5①、改正法附則65、措令39の28①一、改正措令附則20)
  • 法人税基本通達9-5-1(2)(賦課課税方式による租税の損金算入の時期)/地方税法341条・383条ほか(償却資産に対する固定資産税)
  • 国税庁「法人税等各種別表関係(令和7年4月1日以後終了事業年度等分)」別表十六(七)・十六(八)
  • ※2026年時点の制度に基づく記事です。金額・適用期限・従業員数要件は改正が続いています

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