登録をやめても、自動で免税事業者には戻らない──必要な届出書は、人によって1枚・2枚・3枚
登録取消届出書を出した。年が明けた。でも、免税事業者になっていない。
これは手続のミスではなく、制度がそういう作りになっているためです。「登録をやめる」と「免税事業者に戻る」は、別々の手続です。
この記事の結論
- 登録している限り、売上がいくら下がっても免税事業者にはならない(消基通1-4-1の2)
- 何枚出すかは、自分がどのルートで課税事業者になったかで決まる
- 経過措置で登録した人=登録取消届出書の1枚
- 課税事業者選択届出書を出している人=2枚(登録取消届出書+課税事業者選択不適用届出書)
- 2枚の期限は違う。登録取消は12月17日、課税事業者選択不適用は12月31日
- 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えている人=何枚出しても課税事業者
- 課税事業者選択には2年の継続がある。課税事業者となった日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でないと、不適用届出書を出せない
- 3枚目(簡易課税制度選択不適用届出書)は「戻るため」には要らないが、放置すると後で効いてくる
1. 登録している限り、免税にはならない
原則は「基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら免税」です。しかし適格請求書発行事業者は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下になっても免税事業者になりません(消法9①、消基通1-4-1の2)。
国税庁のQ&Aも、この質問に一言で答えています。登録している限り、翌課税期間に免税事業者となることはありません。
だから、免税に戻る手続の1枚目は必ず「登録取消届出書」になります。期限と1日遅れたときの影響はインボイス登録をやめたいにまとめました。
2. 自分がどのルートで課税事業者になったのか
ここが分岐点です。3つのルートがあります。
| ルート | どういう人か | 免税に戻るために出す書類 |
|---|---|---|
| A | 免税事業者が、経過措置で登録した(登録申請書に登録希望日を書いただけ。課税事業者選択届出書は出していない) | 登録取消届出書の1枚 |
| B | 課税事業者選択届出書を出して課税事業者になってから登録した | 登録取消届出書+課税事業者選択不適用届出書の2枚 |
| C | 基準期間(または特定期間)の課税売上高が1,000万円超だから課税事業者 | 何枚出しても課税事業者。売上が下がるのを待つしかない |
AとBの見分けがつかない人が多くいます。登録申請書だけを出した記憶があるならA、税理士や税務署の案内で課税事業者選択届出書も出しているならBです。記憶に頼らず、提出済みの届出書を確認してください。確認方法は昔出した簡易課税の届出書は、まだ生きているにまとめました。
3. 2枚の期限は、2週間ずれている
Bの人が令和9年1月1日から免税事業者に戻る場合です。
| 書類 | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 登録取消届出書 | 令和8年12月17日 | 翌課税期間の初日から起算して15日前の日 |
| 課税事業者選択不適用届出書 | 令和8年12月31日 | 適用をやめようとする課税期間の初日の前日 |
国税庁のQ&Aにも、次の趣旨の注記があります。
課税事業者選択届出書を提出している事業者が、登録の効力が失われた後の課税期間について事業者免税点制度の適用を受ける(免税事業者となる)ためには、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出する必要がある。
先に来るのは登録取消届出書のほうです。12月17日を過ぎてから「2枚要ると気づいた」場合、そもそも1枚目が間に合いません。年末の締切は12月17日で1本にまとめて覚えるほうが安全です(消費税の届出書カレンダー)。
4. 課税事業者選択不適用届出書には、2年の縛りがある
出せば必ず通る書類ではありません。
- 効力:提出があった日の属する課税期間の末日の翌日から失われる=翌課税期間から免税
- 制限:事業を廃止した場合を除き、課税事業者となった日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ提出できない
つまり課税事業者を選択したら、最低2年は課税事業者です。
さらに、その2年の間に税抜100万円以上の調整対象固定資産を取得して一般課税で申告すると、3年間は免税事業者になれず、簡易課税制度選択届出書も出せなくなります。建物・車両・機械を買った直後に「やっぱり免税に戻ろう」はできません。
5. 3枚目がある人
簡易課税制度選択届出書を過去に出している人です。
これは「免税に戻るため」に必要な書類ではありません。免税事業者になれば、そもそも仕入税額控除の計算をしないからです。
問題はそのあとです。簡易課税制度選択届出書は、不適用届出書か事業廃止届出書を出さない限り効力が続きます。免税事業者に戻っている間は眠っているだけで、再び課税事業者になった瞬間に自動で復活します。
「免税に戻ったから関係ない」と放置すると、数年後に設備投資をしたときに還付が受けられません。この事故は昔出した簡易課税の届出書は、まだ生きているで詳しく扱います。
6. そもそも戻れない人がいる
2枚そろえても免税にならないケースが2つあります。
- 免税事業者から経過措置で登録した人は、登録をやめても「登録日以後2年を経過する日の属する課税期間」まで免税事業者になれません(平成28年改正法附則44⑤)。登録日の属する課税期間が令和5年10月1日を含む人は対象外です
- 基準期間または特定期間の課税売上高が1,000万円を超えている人(ルートC)
1に当たる人は、登録が切れているのに課税事業者、という期間が生まれます。インボイスは交付できず、消費税の申告と納付だけが残ります。この期間に当たるなら、登録を続けたほうが有利です。
7. 順番の決め方
| いつ | やること |
|---|---|
| 10〜11月 | 提出済みの届出書を確認する(課税事業者選択届出書の有無、簡易課税制度選択届出書の有無) |
| 11月 | 基準期間・特定期間の課税売上高を確認する。1,000万円を超えていれば、そもそも戻れない |
| 11月 | 取引先の内訳を出す。インボイスを必要とするのは本則課税の課税事業者だけ |
| 12月17日まで | 登録取消届出書 |
| 12月31日まで | 課税事業者選択不適用届出書(Bの人)/必要なら簡易課税制度選択不適用届出書 |
登録するかどうかの判断そのものはインボイスに登録すべき?迷ったときの判断フローにまとめました。
範囲注記:この記事は消費税法上の届出手続を扱っています。個々の期限と制限期間は登録日・課税期間・過去に提出した届出書によって変わるため、提出前に所轄税務署または関与税理士に確認してください。この記事は2026年8月時点の制度に基づきます。
まとめ
- 登録している限り、免税事業者にはならない
- 経過措置で登録した人=1枚/課税事業者選択届出書を出している人=2枚
- 期限は12月17日と12月31日で別。先に来るのは登録取消届出書
- 課税事業者選択不適用届出書は、課税事業者となった日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でないと出せない
- 2年の間に調整対象固定資産を買って一般課税で申告すると、3年縛りに入る
- 3枚目(簡易課税)は戻るためには要らないが、放置すると復活する
- 経過措置で登録した人には、やめても免税に戻れない2年がある
- 売上1,000万円超なら、何枚出しても課税事業者
この記事の主な根拠(出典)
- 消費税法9条1項(小規模事業者に係る納税義務の免除)/同4項(課税事業者選択届出書)/同5項〜8項(課税事業者選択不適用届出書、2年の継続適用、調整対象固定資産を取得した場合の制限)/消費税法基本通達1-4-1の2(適格請求書発行事業者は免税事業者とならない)
- 消費税法57条の2第10項1号、消費税法施行令70条の5第3項(登録取消届出書と15日前の日)
- 国税庁 インボイス制度に関するQ&A 問13(登録の取りやめ。令和6年4月改訂。参考として、課税選択届出書を提出している事業者が免税事業者となるには課税事業者選択不適用届出書を課税期間の初日の前日までに提出する必要がある旨)/問17(適格請求書発行事業者が免税事業者となる場合)
- 平成28年改正法附則44条5項(経過措置により登録した免税事業者は、登録日以後2年を経過する日の属する課税期間まで免税事業者となれない)
- 消費税法37条1項・5項・6項、消費税法基本通達13-1-3(簡易課税制度選択届出書の効力の継続)
- 国税庁タックスアンサー No.6501(納税義務の免除)
- ※出典の各ページは2026年8月7日に確認しました。制度は改正されることがあります
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