法人税の別表は、番号順に埋めると必ず詰まる──どの順で書くのか
法人税の申告書を初めて自分で追いかけようとすると、別表一から順番に埋めようとして、必ず途中で止まります。
止まる場所は決まっています。寄附金と納税充当金です。どちらも「先に別のものが決まっていないと計算できない」ものだからです。
会計ソフトを使っていれば順番は自動で処理されます。それでも作業の順番を知っておく価値はあります。出てきた申告書を点検するときの順番が、そのまま作成の順番だからです。
この記事の結論
- 別表は40種類以上あるが、中心は別表一・別表四・別表五(一)の3枚。ほかはすべてこの3枚の付属資料
- 作業順は別表番号順ではない
- ★寄附金(別表十四(二))は、別表四の「仮計」が出てからでないと計算できない。損金算入限度額の計算に所得金額を使うから
- ★別表五(二)を先に作ると、別表四の租税公課まわりの調整が自動的に決まる
- ★納税充当金は最後。法人税・地方法人税・住民税・事業税の年税額が全部出そろわないと金額が決まらず、決まったら4か所に遡って書く
- ★2026年の変更:令和8年4月1日以後に終了する事業年度分から、別表一は初葉・次葉一・次葉二の3枚になった。次葉一が防衛特別法人税額の計算
※制度・様式はいずれも2026年時点のものです。
1. 中心は3枚しかない
別表は細分化を含めると40種類以上ありますが、骨格はこれだけです。
決算書の当期純利益
→ 別表四 で法人税の所得金額に変換する
→ 同時に、貸借対照表に載らない税務上の残高を別表五(一)に積む
→ 別表一 に所得金額を転記して法人税額を計算する
ほかの別表は、この3枚のどこかに入れる数字を作るための計算用紙です。交際費の別表十五は「別表四に加算する金額」を、減価償却の別表十六は「償却限度額」を出すためにあります。
別表四と別表五(一)の中身は 決算書の利益と法人税の所得はなぜ違うのか と 別表四と別表五(一)は、どこでつながっているのか で扱いました。この記事は、それらを「どの順に書くか」の話です。
中小企業が実際に使う別表
| 別表 | 名称 | いつ使うか |
|---|---|---|
| 別表一・次葉 | 各事業年度の所得に係る申告書 | 必ず |
| 別表二 | 同族会社等の判定に関する明細書 | 必ず |
| 別表四 | 所得の金額の計算に関する明細書 | 必ず |
| 別表五(一) | 利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書 | 必ず |
| 別表五(二) | 租税公課の納付状況等に関する明細書 | 必ず |
| 別表六(一) | 所得税額の控除に関する明細書 | 預金利子・配当の源泉税があるとき |
| 別表七(一) | 欠損金の損金算入等に関する明細書 | 欠損金があるとき |
| 別表八(一) | 受取配当等の益金不算入に関する明細書 | 配当を受けたとき |
| 別表十四(二) | 寄附金の損金算入に関する明細書 | 寄附金があるとき |
| 別表十五 | 交際費等の損金算入に関する明細書 | 交際費があるとき(ほぼ必ず) |
| 別表十六(一)/(二) | 定額法/定率法による減価償却額の計算 | 減価償却資産があるとき |
| 別表十六(七) | 少額減価償却資産の損金算入の特例 | 特例を使うとき |
| 別表十六(八) | 一括償却資産の損金算入 | 一括償却をするとき |
| 適用額明細書 | 租税特別措置の適用 | 軽減税率・特別償却・税額控除を使うとき |
★適用額明細書を忘れると、中小法人の軽減税率15%が使えません。この種の「書かないと権利を失うもの」は 決算で税金を動かせるのは「決算まで」 にまとめています。
2. 実際の作業順
決算整理が終わった試算表から始めて、次の順で進みます。
| 順 | やること |
|---|---|
| ① | 仮の決算書(B/S・P/L)を作る。法人税等を計上する前の当期利益を出す |
| ② | 別表六(一) 控除所得税額(受取利息・受取配当金から) |
| ③ | 別表十五 交際費等の損金不算入額 |
| ④ | 別表八(一) 受取配当等の益金不算入額 |
| ⑤ | 別表五(二) 租税公課の納付状況(前期の別表五(二)と租税公課の集計から) |
| ⑥ | 別表五(一) 利益積立金額・資本金等の額(前期の別表五(一)と⑤から) |
| ⑦ | 別表四:ここまでの調整を書いて「仮計」まで出す |
| ⑧ | ★別表十四(二) 寄附金の損金不算入額(仮計が出てから) |
| ⑨ | 別表四:所得金額を確定させる |
| ⑩ | 別表四の総額を「留保」「社外流出」に区分する |
| ⑪ | 別表一・次葉 所得金額を転記して法人税額を計算 |
| ⑫ | 税額控除がある場合の別表 |
| ⑬ | 別表一・次葉 特別控除・所得税額控除・地方法人税まで確定 |
| ⑭〜⑯ | 第6号様式・第20号様式 事業税、道府県民税、市町村民税 |
| ⑰ | 税額を集計する |
| ⑱ | ★納税充当金を損金経理して、別表五(二)を完成 |
| ⑲ | 別表五(一)を完成(★ここで検算する) |
| ⑳ | 別表四を完成 |
| ㉑ | 別表四・五(一)・五(二)の関係を確認 |
| ㉒ | 決算書(B/S・P/L・株主資本等変動計算書)を完成 |
| ㉓ | 事業概況説明書・適用額明細書を作る |
別表の記載順序に唯一の正解があるわけではありません。会社の事情で前後させても構いません。ただし、動かせない縛りが2つあります。
3. ★縛りその1──寄附金は「仮計の後」
一般の寄附金の損金算入限度額は、次の2つの合計の4分の1です(法人税法施行令73条)。
| 計算 | |
|---|---|
| 資本基準 | (資本金の額+資本準備金の額)÷12×当期の月数 × 2.5/1,000 |
| 所得基準 | 当期の所得の金額 × 2.5/100 |
所得の金額を使います。しかもこの「所得の金額」は、支出した寄附金の全額をいったん損金不算入として計算した所得です(同条3項)。
つまり、
寄附金の限度額を出すには所得が要る
→ 所得を出すには別表四をほぼ書き終えている必要がある
→ だから寄附金は最後のほうに回る
という順序になります。別表番号順に埋めようとすると、必ずここで詰まります。別表十四(二)は番号こそ後ろですが、作業としては「別表四の仮計」という中間地点を通ってから戻ってくる位置にあります。
★仮計というのは、別表四の途中に置かれた中間合計です。加算・減算をひととおり書いた段階の小計で、ここから先に寄附金・法人税額控除・欠損金控除などが続きます。仮計が出ていないと計算できないものがある、という設計になっています。
(寄附金を1円も出していない会社なら、この工程は飛ばせます。)
4. ★縛りその2──納税充当金は最後
これが 法人成り1年目の社長へ|決算から申告までの全体マップ で「④と⑤の循環」と書いたものの正体です。
未払法人税等(納税充当金)の金額は、法人税・地方法人税・住民税・事業税の年税額が全部出そろってはじめて決まります。ところが、その未払法人税等を計上しないと決算書が完成しません。
だから実務では、期末の納税充当金の欄をいったん空欄にしたまま申告書を作り、税額が出た時点で遡って記入します。遡って書く場所は4つです。
| # | 遡って書く場所 |
|---|---|
| 1 | 別表五(一)の未納法人税等(確定)の欄 |
| 2 | 別表五(二)の当期分・確定税額の欄と期末現在未納税額 |
| 3 | 別表五(一)の納税充当金と繰越損益金 |
| 4 | 決算書の未払法人税等と繰越利益剰余金 |
会計ソフトは内部でこの往復を自動でやっています。手で追うときは、「申告書は行ったり来たりするもの」と最初に飲み込んでおかないと、必ず迷子になります。
5. なぜ別表五(二)を先に作るのか
順番のなかで意外に思われるのが、別表五(二)(租税公課の納付状況)を別表四より先に作るところです。
理由は単純で、税金を「いつ、どういう仕訳で払ったか」が決まらないと、別表四の書き方が決まらないからです。
同じ「法人税を100万円払った」でも、
- 前期末に積んだ未払法人税等を取り崩して払ったのか
- 仮払金で処理したのか
- 租税公課(法人税等)として損金経理したのか
で、別表四に書く行も金額も変わります。別表五(二)は、その分類を1枚にまとめた表です。ここを先に埋めれば、別表四の租税公課まわりの調整は機械的に決まります。
別表五(二)の読み方そのものは、次の記事で扱います。
6. 2026年の変更──別表一が3枚になった
令和8年4月1日以後に終了する事業年度分から、別表一は「初葉・次葉一・次葉二」の3枚になりました。追加された次葉一が、防衛特別法人税額の計算です(従来の次葉が次葉二に繰り下がっています)。
防衛特別法人税そのものは 赤字でも7万円──法人にかかる税金を、6つ全部並べてみる で扱いましたが、申告書の実務としては次の2点が効きます。
★1. 税額が0でも申告書は出す。
所得金額が欠損等の理由により基準法人税額が0となる場合や基礎控除額(年500万円)の控除により課税標準法人税額が0となる場合であっても、防衛特別法人税確定申告書を提出する必要があります
(国税庁「防衛特別法人税の概要」)
「課税標準法人税額の計算」と「防衛特別法人税額の計算」の各欄を記載したうえで、税額欄に「0」と書いて出すという扱いです。中小企業の多くは基礎控除で0になりますが、書かずに空欄で出すのとは違います。
★2. 令和8年3月31日以前に開始した事業年度は、記載しない。
防衛特別法人税が適用されるのは令和8年4月1日以後に開始する事業年度からです。ところが様式は「終了する事業年度」で切り替わるため、3月31日以前に始まった事業年度なのに、次葉一が付いてくるという時期があります。国税庁は、この場合は防衛特別法人税に関する各欄は記載しないで提出するよう案内しています。
つまり、たとえば2026年3月1日に始まって2027年2月末に終わる事業年度は、次葉一のある様式で、次葉一の防衛欄は空のまま出すことになります。
なお、防衛特別法人税の中間申告が始まるのは令和9年4月1日以後に開始する課税事業年度からです。
7. 会計ソフトを使っていても、順番を知る意味
いまどき別表を手書きする会社はほとんどありません。それでも順番が要る場面は残ります。
- 入力の順番──租税公課の納付状況(別表五(二)相当)を入れないまま別表四を見ても、数字は合いません
- 点検の順番──出てきた申告書のどこから確かめるか。作成順にたどると、狂った起点が見つかります
- 修正したときの波及──1か所直すと、⑱以降の「遡って書く4か所」が全部動きます。部分修正が効かない構造です
その点検の具体的なやり方は、次の記事にまとめました。
📌 範囲注記
事業税・住民税の第6号様式・第20号様式は、都道府県・市町村ごとに欄の細部が異なります。実際に書くときは、所在地の自治体が配布している様式でご確認ください。
まとめ
- 中心は別表一・別表四・別表五(一)の3枚。ほかは付属資料
- 作業順は別表番号順ではない
- ★寄附金は「仮計の後」。損金算入限度額の計算に所得金額を使うから(施行令73条)
- ★納税充当金は最後。税額が出そろってから4か所に遡って書く
- ★別表五(二)を先に作ると、別表四の租税公課の調整が機械的に決まる
- 適用額明細書を忘れると軽減税率15%が使えない
- ★令和8年4月1日以後に終了する事業年度分から、別表一は3枚(次葉一=防衛特別法人税)
- ★防衛特別法人税は税額0でも申告が必要。ただし令和8年3月31日以前に開始した事業年度は記載しない
- 法人税法37条(寄附金の損金不算入)/74条(確定申告)
- 法人税法施行令73条(一般寄附金の損金算入限度額)
- 租税特別措置の適用額の記載がない場合等の特例に関する法律(適用額明細書)
- 我が国の防衛力の抜本的な強化に係る財源の確保のための税制上の措置に関する法律(防衛特別法人税)
- 国税庁「防衛特別法人税の概要」(令和7年5月・令和8年6月改訂)/国税庁「法人税、地方法人税及び防衛特別法人税の申告(法人税申告書別表等)」
- 国税庁「法人税のあらましと申告の手引」
- ※2026年時点の制度・様式に基づく記事です。別表の様式は毎年改訂されるため、実際に作成する年分の様式でご確認ください
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👉 決算書の利益と法人税の所得はなぜ違うのか──別表四が「たった1枚の計算書」である理由
👉 法人成り1年目の社長へ|決算から申告までの全体マップ
👉 決算整理は「残高を実際に合わせる」作業──勘定科目内訳明細書を1枚ずつ作れば、それがそのまま点検になる
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