アパートを持っている個人事業主の消費税──住宅家賃は非課税なのに、課税売上割合を下げて本業の控除を減らす
本業をやりながらアパートや駐車場を持っている——このパターンは思ったより多くいます。
「住宅の家賃は非課税だから消費税は関係ない」。半分は正しく、半分は違います。★非課税売上げは、本業の仕入税額控除を減らします。
この記事の結論
- 住宅の貸付け=非課税/店舗・事務所・駐車場=課税/土地の貸付け=非課税
- ★1か月未満の貸付けは、土地でも住宅でも課税
- ★建物の使用料を建物部分と敷地部分に分けて表示しても、総額が建物の使用料として課税
- ★★住宅家賃は課税売上割合の分母にだけ入る。本則課税なら、本業の控除が減る
- 課税売上高1,000万円の判定は、事業所得と不動産所得を合算して行う
- ★インボイスの登録が要るかどうかは、借主が誰かで決まる
- ★★税抜1,000万円以上の居住用賃貸建物は、取得時に仕入税額控除ができない
- 簡易課税なら不動産業は第6種(みなし仕入率40%)
1. 4区分の早見表
| 収入 | 区分 | 注意 |
|---|---|---|
| 住宅の家賃(居住用と契約で明らか) | 非課税 | 一戸建て・マンション・アパート・社宅・寮・貸間を含む。庭・塀・給排水施設、家具や冷暖房設備など住宅と一体で貸すものも含む |
| 店舗・事務所・倉庫の賃料 | 課税 | ─ |
| 駐車場(区画・アスファルト・フェンス等の設備がある) | 課税 | ★更地を「そのまま」貸すなら非課税 |
| 土地の譲渡・貸付け | 非課税 | ★1か月未満の貸付けは課税 |
| 礼金・更新料(返還しないもの) | 家賃と同じ区分 | 住宅なら非課税、店舗なら課税 |
| 敷金・保証金(返還するもの) | 不課税 | 返還しないことが確定した部分は家賃と同じ区分 |
| 共益費 | 家賃と同じ区分 | ─ |
| 建物の売却 | 課税 | ★土地部分は非課税。合理的に按分する |
住宅に付随する駐車場が非課税になる条件、家賃のインボイスの出し方(通知書1枚で足りる話)は家賃・駐車場・リースのインボイス|契約書は巻き直さなくていいにまとめました。
2. ★1か月未満と、敷地の分離表示
見落とされやすい2点です。
1か月未満の貸付けは、土地でも住宅でも課税になります。マンスリー・ウィークリーの形態や、イベント用の土地の一時貸しはここに当たります。
もうひとつ。★建物(住宅を除く)の使用料を「建物部分」と「敷地部分」に区分して表示していても、その総額が建物の使用料として課税されます。「敷地分は土地だから非課税」にはなりません。
3. ★★住宅家賃は、本業の控除を減らす
ここがこの記事の本題です。
課税売上割合は、分母=総売上高(課税+免税+非課税)/分子=課税売上高で計算します。★住宅家賃は分母にだけ入ります。
| 本業の課税売上げ | 住宅家賃 | 課税売上割合 | 本則課税での控除 | |
|---|---|---|---|---|
| アパートなし | 2,000万円 | 0円 | 100% | ★全額控除 |
| アパートあり | 2,000万円 | 300万円 | 2,000 ÷ 2,300 = 約87% | ★95%未満。全額控除できない |
★本業の売上は1円も変わっていないのに、控除できる金額が減ります。
95%を切ったあとは、個別対応方式か一括比例配分方式を選ぶことになります。個別対応方式なら、アパートの修繕費など住宅家賃にだけ対応する仕入れは控除できず、本社家賃や税理士報酬など共通のものは課税売上割合を掛けた分だけ控除できます。仕組みは課税売上割合が95%を切ると何が起きるかにまとめました。
★さらに80%を切ると、税抜経理をしている場合に「控除できなかった消費税」が5年払いの資産になります。居住用物件の比重が大きい事業者ほど、ここに当たりやすくなります。
4. 1,000万円の判定は、本業と合算する
★消費税の判定は「事業者単位」です。所得税では事業所得と不動産所得に分かれていても、消費税では合算します。
- 住宅家賃は課税売上高に含めません(非課税なので)
- 店舗賃料・駐車場収入は含めます
- ★事業所得だけ簡易課税、不動産所得だけ本則、という分け方はできません
課税事業者になるタイミングそのものは売上1000万円を超えそう。消費税の課税事業者になるタイミングと、その前にやることにまとめました。不動産を持つ個人事業主の所得税まわりは不動産を持っている個人事業主の税金で扱っています。
5. ★インボイスの登録が要るかどうかは、借主で決まる
貸主側の判断はシンプルです。借主がインボイスを必要とするかどうかだけを見ます。
| 借主 | インボイスを必要とするか | 貸主の登録 |
|---|---|---|
| 住宅の入居者(個人) | ★必要としない(そもそも非課税なのでインボイスの話にならない) | 要らない |
| 店舗・事務所を借りる本則課税の事業者 | ★必要とする | ★要る |
| 店舗を借りる簡易課税・2割特例の事業者 | 必要としない(仕入税額を実額集計しないため) | 要らない |
| 店舗を借りる免税事業者 | 必要としない | 要らない |
| 月極駐車場を借りる本則課税の事業者 | 必要とする | 要る |
| 月極駐車場を借りる個人(通勤・私用) | 必要としない | 要らない |
★住宅だけを貸している人は、原則として登録の話になりません。非課税売上げしかないからです。逆に、★テナントが1件でもあれば、その相手の課税方式によって判断が変わります。
登録するかどうかの判断軸そのものはインボイスに登録すべき?迷ったときの判断フロー【取引先タイプ別】にまとめました。
6. ★★1,000万円以上の居住用賃貸建物は、買った年に引けない
賃貸物件を買うときの、いちばん大きな論点です。
住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物「以外」の建物で、税抜1,000万円以上のもの(高額特定資産・調整対象自己建設高額資産に該当するもの)を居住用賃貸建物といい、★その課税仕入れ等の税額は仕入税額控除ができません。
- ★税抜1,000万円未満なら、居住用賃貸建物に該当しません
- 建物の一部が店舗など「居住用賃貸以外の部分」がある場合、構造・設備その他の状況により合理的に区分すれば、居住用賃貸部分だけが制限されます
- 「合理的に区分」とは、★使用面積割合や、使用面積に対する建設原価の割合など、その建物の実態に応じた基準によることをいいます
- ★廊下やエントランスなどの共用部分も、同じ基準で区分します。ただし居住用賃貸部分にのみ使われる廊下等を面積割合で按分するのは、合理的な区分とはいえません
- ★★区分した結果、居住用賃貸部分が1,000万円未満になっても、その部分の控除制限は外れません(1,000万円の判定は建物全体で行うため)
調整期間内に課税賃貸用に転用したり譲渡したりした場合は、課税賃貸割合・課税譲渡等割合で調整します。
★そして、税抜1,000万円以上の建物を買うと3年縛りが始まります。内容は1,000万円以上の資産を買うと3年しばられるにまとめました。
7. 簡易課税を使うなら第6種
不動産業は第6種事業(みなし仕入率40%)です。★同じ大家でも、建物を売れば固定資産の譲渡として第4種になるなど、区分は取引ごとに変わります。判定は簡易課税のみなし仕入率、自分は何種?|6つの事業区分の判定と75%ルールにまとめました。
範囲注記:この記事は消費税の課税・非課税の区分を扱っています。賃貸借契約の内容の解釈や借地借家法上の取扱いは弁護士の業務範囲、不動産の売買・賃貸の媒介は宅地建物取引業者の業務範囲です。この記事は2026年8月時点の制度に基づきます。
まとめ
- 住宅=非課税/店舗・事務所・駐車場=課税/土地=非課税
- ★1か月未満の貸付けは課税。建物と敷地を分けて表示しても総額が課税
- ★★住宅家賃は課税売上割合の分母にだけ入り、本業の控除を減らす
- 1,000万円の判定は事業所得と不動産所得を合算。計算方法も事業者単位
- ★登録が要るのは、本則課税の事業者にテナント・駐車場を貸しているとき
- ★★税抜1,000万円以上の居住用賃貸建物は、取得時に控除できない
- 店舗併用なら合理的に区分。共用部分も同じ基準で区分する
- 簡易課税なら第6種(40%)
- 消費税法6条・別表第二(非課税取引。土地の譲渡及び貸付け、住宅の貸付け)/消費税法施行令16条の2(1か月未満の貸付け)/消費税法30条10項(居住用賃貸建物に係る仕入税額控除の制限)/35条の2(居住用賃貸建物を課税賃貸用に供した場合等の調整)
- 国税庁タックスアンサー No.6201(非課税となる取引。1か月未満の土地の貸付けと駐車場等の施設の利用に伴う土地の使用は非課税に当たらない)/No.6213(駐車場の使用料など。建物などの施設の貸付けで使用料を建物部分と敷地部分に区分していても総額が建物の使用料として課税される)/No.6226(住宅の貸付け)/No.6405(課税売上割合の計算)
- 国税庁 質疑応答事例「建物の一部が店舗用となっている居住用賃貸建物の取得に係る仕入税額控除の制限」(合理的な区分の意味、共用部分の取扱い、区分後に1,000万円未満となっても制限される旨)
- 消費税法37条1項、消費税法施行令57条(簡易課税制度の事業区分。不動産業は第六種事業)
- 法人税法施行令139条の4(資産に係る控除対象外消費税額等の損金算入)
- ※2026年時点の制度に基づく記事です
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👉 家賃・駐車場・リースのインボイス|契約書は巻き直さなくていい
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👉 不動産を持っている個人事業主の税金|5棟10室・青色65万円・損益通算
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