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更新日 2026-08-06 消費税とインボイス

課税売上割合が95%を切ると何が起きるか──全額控除が終わり、個別対応方式と一括比例配分方式の選択が始まる

本則課税で消費税を計算していると、ある年から急に控除できる金額が減ることがあります。

売上も仕入れも変わっていないのに、です。原因は課税売上割合であることが多くあります。

この記事の結論

  • 課税売上高5億円以下 かつ 課税売上割合95%以上なら、仕入れの消費税は全額控除
  • どちらかを外れると、★個別対応方式か★一括比例配分方式を選ぶことになる
  • 一括比例配分方式には2年の継続適用がある。翌年に全額控除できる状態に戻っても解けない
  • 非課税売上げは割合を下げる。不課税収入は割合に影響しない
  • 有価証券・金銭債権の譲渡は、対価の5%だけを分母に入れる
  • 課税売上割合に準ずる割合は承認制。★課税期間の末日までに申請が要る
  • 準ずる割合の承認があっても、95%判定は本来の課税売上割合で行う
  • 80%を切ると、法人税・所得税の側でも「5年払い」の資産が生まれる

1. まず、全額控除できるかどうか

状況 控除できる額
課税売上高5億円以下 かつ 課税売上割合95%以上 全額控除
課税売上高5億円超 または 課税売上割合95%未満 個別対応方式 または 一括比例配分方式

課税期間が1年未満の場合は、課税売上高を年換算して5億円を判定します。

中小事業者の多くは5億円のラインには当たりません。★問題になるのは、たいてい95%のほうです。

2. 課税売上割合は、こう計算する

課税売上割合 = 課税売上高(税抜・免税売上を含む)÷ 総売上高(税抜・課税+免税+非課税)

分母と分子で扱いが変わるものを押さえます。

収入 分母(総売上高) 分子(課税売上高) 割合への影響
通常の売上げ 入る 入る
輸出売上げ(免税) 入る 入る 下がらない
受取利息・預金利子 入る 入らない 下がる
住宅家賃 入る 入らない 下がる
土地の譲渡・貸付け 入る 入らない 大きく下がる
受取配当金・保険金・損害賠償金・補助金・助成金 入らない(不課税) 入らない 影響しない
有価証券・貸付金等の金銭債権の譲渡 対価の5%だけ入る 入らない 下がりにくい
支払手段(現金・小切手等)の譲渡、暗号資産の譲渡 入らない 入らない 影響しない

「収入だから割合が下がる」ではありません。保険金や補助金は不課税なので、いくら受け取っても課税売上割合は動きません。

一方で★土地を1回売ると、その年だけ割合が急落します。これが「去年と同じ経費なのに控除が減った」の正体です。

貸倒れになった売上高は分母・分子の両方に含めます。返品・値引き・割戻しはそれぞれ控除します。

3. 個別対応方式

課税仕入れ等を、用途で3つに区分します。

区分
課税売上げにのみ要するもの 販売する商品の仕入れ、店舗の修繕費
非課税売上げにのみ要するもの 賃貸マンション(住宅)の修繕費、土地の売却にかかった仲介手数料
両方に共通して要するもの 本社家賃、水道光熱費、税理士報酬

控除できる額 = ① +(③ × 課税売上割合)

②はまったく控除できません。

この区分ができている場合に限って採用できます。区分していなければ選べません。

③は「受け皿」です。国税庁の通達の考え方では、③は①にも②にも当たらないものが落ちる区分であって、「共通に必要だったもの」を積極的に探して入れる区分ではありません。まず①か②に振れないかを考えるのが順番です。

4. 一括比例配分方式と、2年の縛り

控除できる額 = 課税仕入れ等の税額の合計 × 課税売上割合

区分ができていない場合、または区分できていてもこちらを選ぶ場合に使います。計算は簡単です。

ただし、一括比例配分方式を選ぶと、2年以上継続して適用した後でなければ個別対応方式に変更できません。

★★この2年は、翌年に課税売上割合が95%以上に戻っても解けません。「土地を売った年だけ一括比例で楽をする」は、翌年に跳ね返ります。

逆に、個別対応方式から一括比例配分方式へはいつでも変更できます。

一般には個別対応方式のほうが控除税額は多くなる傾向にあります。区分の手間と控除額を比べて決めることになります。

5. 課税売上割合に準ずる割合

課税売上割合で計算すると事業の実態に合わない場合、個別対応方式の③(共通対応分)についてだけ、別の割合を使えます。

内容
合理的な割合の例 使用人の数または従事日数の割合/消費・使用する資産の価額/使用数量/使用面積の割合
手続 「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」を提出し、★適用を受けようとする課税期間の末日までに承認を受ける
みなし承認 末日までに申請し、その翌日から1月を経過する日までに承認があれば、末日に承認があったものとみなされる
適用単位 事業の種類ごと・費用の種類ごと・事業場ごとに別の割合を承認してもらえる。一部の事業場だけ本来の課税売上割合のまま、という組み方もできる
やめるとき 不適用届出書。★提出した課税期間から適用がなくなる

注意点が3つあります。

  1. 一括比例配分方式では使えません
  2. 承認を受けたら強制適用。あとで課税売上割合のほうが有利だと分かっても選び直せません
  3. ★★5億円・95%の判定は、準ずる割合ではなく本来の課税売上割合で行います

「たまたま土地を売った」場合は、単発かつ事業の実態に変動がないと認められるときに限り、①前3年に含まれる課税期間の通算課税売上割合 ②前課税期間の課税売上割合 のいずれか低い割合による承認が受けられます。★適用したら翌課税期間に不適用届出書を出さないと、承認が取り消されます。

6. ★80%を切ると、法人税・所得税の側にも出てくる

税抜経理をしていて、★課税売上割合が80%未満の事業年度に資産に係る控除対象外消費税額等が生じると、その金額は繰延消費税額等として5年(60か月)で費用化することになります(20万円未満のものなどを除きます)。

住宅の家賃は非課税売上げなので、居住用物件を持つ会社は80%を切りやすいところです。建物や設備を買った年に支出しているのに、損金は5年に分かれます。仕組みは事務所の礼金は、その年の経費にならないで扱っています。

7. どこから手をつけるか

  1. 決算のたびに課税売上割合を計算して記録する。95%・80%・5億円のどこにいるかを毎年見る
  2. 土地の売却・大きな受取利息・住宅家賃の発生が見込まれる年は、事前に割合を試算する
  3. 95%を切りそうなら、仕入れの用途区分ができる帳簿の作りに変える(個別対応方式の準備)
  4. 準ずる割合を使うなら、課税期間の末日までに申請する。承認に時間がかかるので早めに
  5. 一括比例配分方式を選ぶときは、2年分で有利不利を見る

そもそも本則・簡易課税・特例のどれで計算するかは2割特例・簡易課税・本則、どれで消費税を計算する?初心者の選び方にまとめました。

範囲注記:この記事は消費税の仕入税額控除の計算方法を扱っています。用途区分の判定は個々の取引の実態によるため、実際の申告では所轄税務署または関与税理士に確認してください。この記事は2026年8月時点の制度に基づきます。

まとめ

  • 5億円以下 かつ 95%以上なら全額控除
  • 非課税売上げは割合を下げ、不課税収入は影響しない
  • 有価証券・金銭債権の譲渡は対価の5%だけ分母に入る
  • 個別対応方式=① +(③ × 課税売上割合)。③は受け皿
  • 一括比例配分方式は2年縛り。全額控除に戻っても解けない
  • 準ずる割合は個別対応方式の共通対応分だけ。課税期間の末日までに申請、承認後は強制適用
  • 95%判定は本来の課税売上割合で行う
  • 80%を切ると、控除できなかった消費税が5年払いの資産になる
この記事の主な根拠(出典)

  • 消費税法30条1項・2項(仕入れに係る消費税額の控除。個別対応方式・一括比例配分方式)/同5項(一括比例配分方式の2年以上の継続適用)/同3項、消費税法施行令47条(課税売上割合に準ずる割合の承認)/消費税法施行令48条(課税売上割合の計算。金銭債権等の譲渡は対価の5%)
  • 国税庁タックスアンサー No.6401(仕入控除税額の計算方法。準ずる割合の承認を受けていても95%以上かどうかは本来の課税売上割合で判定する旨の注記)/No.6405(課税売上割合の計算)/No.6417(課税売上割合に準ずる割合。事業の種類ごと・費用の種類ごと・事業場ごとの適用、課税期間の末日までの承認、翌日から1月以内の承認によるみなし)
  • 消費税法基本通達11-2-16(共通して要するものの区分)
  • 法人税法施行令139条の4(資産に係る控除対象外消費税額等の損金算入。課税売上割合80%、20万円未満、60か月)
  • ※2026年時点の制度に基づく記事です

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