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更新日 2026-08-05 法人の決算と申告

会計ソフトが出した申告書を、自分で点検する──合わないときに見る20か所

会計ソフトが申告書を作ってくれる時代に、別表を1から手で書く場面はほとんどありません。

それでも、出てきた申告書が正しいかどうかは別の話です。ソフトは入力どおりに計算するだけなので、税金の納付を1件入れ忘れただけで、別表五(二)も別表四も別表五(一)も、静かに全部ずれます。

しかも困ったことに、ずれても申告書は完成します。エラーは出ません。翌期の期首残高が合わなくなって、1年後に気づくことになります。

この記事は、その点検のやり方です。

この記事の結論

  • ★まずこの3つだけ回す。大半のミスはここで見つかる
  • 別表五(二)の「損金経理による納付⑤」の縦計 = 決算書で費用に落とした税金
  • 納税充当金の三者一致:別表五(二)「期末納税充当金41」=別表五(一)の納税充当金の期末 = 貸借対照表の未払法人税等
  • 別表五(一)の検算式
  • 期首は前期の期末と一致する。ここが合わないまま進めない
  • 法人税の欄には基本税額しか書かない。利子税・延滞税・加算税・延滞金は「その他」の欄へ
  • 事業税は、前期の確定分を「当期発生税額②」に書く。だから事業税の期末未納税額は通常ゼロになる
  • 国税庁の記載要領そのものに「チェックポイント」が刷り込まれている。点検表を自作しなくてよい

※様式・欄番号はいずれも2026年時点のものです。

1. まず3つだけ回す

点検を20項目から始めると続きません。次の3つで、合わないものの大半は見つかります。

検算① ⑤欄の縦計 = 費用に落とした税金

別表五(二)の「損金経理による納付⑤」の列を縦に合計します。これは「費用として払った税金」の合計なので、決算書で費用に計上した税金(租税公課・法人税等)と一致するはずです。

合わなければ、納付の転記漏れか、区分の入れ間違いです。もっとも見つかりやすく、もっともよく起きる誤りです。

検算② 納税充当金の三者一致

未払法人税等は、3か所に同じ金額が載ります。

どこ
別表五(二) 「期末納税充当金41」
別表五(一) 「納税充当金」の期末(差引翌期首現在利益積立金額)
貸借対照表 未払法人税等

国税庁の記載要領にも、そのままチェックポイントとして書かれています。

「41」の金額と貸借対照表上の納税充当金(未払法人税等)は一致していますか。

検算③ 別表五(一)の検算式

別表五(一)の欄外に印刷されている式です。期首の利益積立金額に別表四の留保総額を足し、中間・確定分の法人税・住民税を引くと、期末の利益積立金額になる、というものです。式の中身と、事業税が式に入らない理由は 別表四と別表五(一)は、どこでつながっているのか に書きました。

この3つは、会計ソフトを使っていても自分でやる価値があります。ソフトが出した数字を「合っているはず」と思うのと、「合っていることを確かめた」のとでは、あとで効いてくるものが違います。

2. 別表五(二)の形

3つの検算のうち2つが別表五(二)にかかります。ここだけは構造を押さえておきます。

ヨコの式はこれだけです。

⑥期末現在未納税額
 = ①期首現在未納税額 + ②当期発生税額
  - ③充当金取崩しによる納付 - ④仮払経理による納付 - ⑤損金経理による納付

★③④⑤の使い分けは、払ったときの仕訳で決まる

納付したときの仕訳
③ 充当金取崩しによる納付 (借)未払法人税等 /(貸)現金預金
④ 仮払経理による納付 (借)仮払税金 /(貸)現金預金
⑤ 損金経理による納付 (借)法人税等(租税公課)/(貸)現金預金

同じ納付でも、仕訳が違えば書く欄が違います。中小企業のよくある形は、

  • 前期の確定申告分=前期末に未払法人税等を積んでいるので
  • 当期の中間申告分=そのまま費用処理していれば
  • 当期の確定申告分=当期中には払わないので③〜⑤には出てこない(②と⑥にだけ載る)

となります。

④仮払経理による納付があるときは、加算と減算の両建てになります。いったん「仮払税金認定損」で減算しておいてから、あらためて加算する形です。仮払で処理する会社は多くありませんが、1件でもあると別表四の見た目が急に複雑になります。

3. 税目別に、間違えやすいところ

注意点
法人税及び地方法人税 基本税額だけを書く(別表一の「差引所得に対する法人税額」「差引地方法人税額」に相当する額)。利子税・延滞税・過少申告加算税・無申告加算税・重加算税はここに書かない。「その他」の欄へ
「確定」欄は別表一の「差引確定法人税額」+「差引確定地方法人税額」。中間分が確定分を超えるときは、確定欄に超える金額を△で書く
道府県民税・市町村民税 法人税の欄に準じる。★均等割を含む。加算金・延滞金はここに書かない
事業税及び特別法人事業税 ★★前期の確定分は「当期発生税額②」に書く(期首現在未納税額ではない)。当期の確定分を書く欄がないので、期末残高は通常ゼロになる
その他 損金算入のもの(利子税、納期限の延長に係る延滞金、印紙税、固定資産税など)と、損金不算入のもの(加算税及び加算金、延滞税、延納分を除く延滞金、過怠税、源泉所得税)に分ける

事業税だけ扱いが違うのは、事業税が「損金になる税金」で、しかも損金になるのが納付した期だからです。この理由は 決算書の利益と法人税の所得はなぜ違うのか に書きました。別表五(二)の見た目が事業税だけ他とそろわないのは、間違いではありません。

延滞金は2種類あります。納期限の延長を受けた期間に係る延滞金は損金算入、それ以外の期間の延滞金は損金不算入で、書く欄が分かれます。加算税・延滞税の金額そのものは 加算税早見表【2026年版】 にまとめています。

4. 別表五(二)から別表四へ、どう飛ぶか

別表五(二)を正しく埋めると、別表四の租税公課まわりは機械的に決まります。

別表五(二) 別表四
法人税「計」の④+⑤ 加算「損金経理をした法人税及び地方法人税」
住民税「計」の④+⑤ 加算「損金経理をした道府県民税及び市町村民税」
加算税及び加算金〜過怠税の③〜⑤ 加算「損金経理をした附帯税等」
「損金経理をした納税充当金」 加算「損金経理をした納税充当金」
事業税の③・④(プラス表示分) 減算「納税充当金から支出した事業税等の金額」

国税庁の記載要領にも、この対応がチェックポイントとして書かれています。

5、10、15及び24〜29の⑤欄の金額(プラス表示分)は、別表四の2、3及び5欄の金額と一致していますか。

19の③欄及び④欄でプラス表示している事業税の額を別表四の13欄等で減算していますか。

還付されたときは向きが逆になります。法人税等の欄がマイナス表示になっているのに別表四で減算していない、というのが典型的な漏れです。記載要領も「マイナス表示されている還付法人税等又は還付所得税等が、別表四の18又は19欄で減算されていますか」とわざわざ書いています。

5. 突き合わせ20か所

合わないときに、この順で見ます。前半は「前期とつながっているか」、後半は「今期の中で閉じているか」です。

# 突き合わせる先 内容
1 別表五(二)の期首① ⇔ 前期の別表五(二)の期末⑥ 一致
2 別表五(二)の期首納税充当金 ⇔ 前期の期末納税充当金 一致
3 別表五(一)の未納法人税等の期首 ⇔ 別表五(二)の期首① 一致
4 別表五(一)の未納法人税等 期首 + 中間 = 当期の減 になっているか
5 別表五(一)の繰越損益金の期首 ⇔ 株主資本等変動計算書 前期末の繰越利益剰余金と一致
6 別表四「社外流出・配当」 ⇔ 株主資本等変動計算書 「剰余金の配当」と一致
7 別表十五の支出額 ⇔ 損益計算書 交際費等の額と一致
8 別表十四(二)の寄附金合計 ⇔ 試算表 一致
9 別表八(一)「当期に支払う負債利子等の額」 ⇔ 損益計算書 支払利息+手形売却損
10 別表六(一) ⇔ 別表五(二)「その他」の源泉所得税 一致
11 別表一「中間申告分の法人税額」 ⇔ 別表五(二)「法人税 当期中間分」② 一致
12 第6号様式 ⇔ 別表五(二)「道府県民税 当期中間分」② 一致
13 第20号様式 ⇔ 別表五(二)「市町村民税 当期中間分」② 一致
14 税額の集計 ⇔ 損益計算書「法人税、住民税及び事業税」 一致
15 別表五(一)の納税充当金 ⇔ 別表五(二)「期末納税充当金41」 ⇔ 貸借対照表の未払法人税等 三者一致
16 別表五(一)の未納法人税等の期末 ⇔ 別表五(二)の期末⑥ 一致
17 別表五(一)の差引合計額 タテの合計とヨコの差引が一致
18 別表四「当期利益又は当期欠損の額」 ⇔ 損益計算書の当期純利益 一致
19 別表五(二)「損金経理による納付⑤」の縦計 ⇔ 費用に落とした税金 一致。合わなければ転記漏れ
20 別表五(一)の検算式 一致

#19・#15・#20 の3つが、冒頭の「まず回す3つ」です。

6. 合わないときの探し方

順番があります。上から順に潰さないと、直したつもりが別のところを壊します。

  1. 前期とのつなぎ(#1〜#5)を先に確定させる。期首が違っていたら、今期の中で何をやっても合いません
  2. 納付の分類(③④⑤)を確かめる。#19が合わないときは、たいてい納付1件の欄違いです
  3. 納税充当金の三者一致(#15)を見る。ここが合っていれば、税額の集計と決算への戻しは正しく回っています
  4. 最後に検算式(#20)。ここで合えば、別表四と別表五(一)は整合しています

#20 が合わない場合でも、100%グループ内の取引がある会社は、それだけで誤りとは限りません。グループ法人税制が適用される寄附や資産譲渡があると、検算式が一致しないことがあります。

1か所直すと、税額が動いて納税充当金が動き、決算書まで動きます。申告書は 番号順に埋めるものではない のと同じ理由で、部分修正が効きません。直したら、もう一度3つ回してください。

7. 現場でやること

  1. 前期の申告書を横に置く。期首はすべて前期の期末から来る
  2. 納付した税金の一覧を作る。日付・税目・金額・仕訳(未払取崩しか、費用処理か)
  3. 別表五(二)を埋めたら、⑤の縦計と費用計上額を突き合わせる
  4. 税額が出たら、納税充当金の三者一致を見る
  5. 最後に別表五(一)の検算式
  6. 合わないときは、前期とのつなぎ → 納付の分類 → 三者一致 → 検算式の順で探す
  7. 利子税・延滞税・加算税を法人税の欄に混ぜていないかだけは、毎回見る

📌 範囲注記
欄番号は法人税の別表のものです。事業税・住民税の第6号様式・第20号様式は自治体ごとに細部が異なるため、実際の突き合わせは所在地の様式でご確認ください。

まとめ

  • ★点検は3つから。⑤の縦計/納税充当金の三者一致/別表五(一)の検算式
  • 別表五(二)のヨコは ⑥=①+②−③−④−⑤
  • ③④⑤の使い分けは、払ったときの仕訳で決まる
  • 法人税の欄は基本税額だけ。利子税・延滞税・加算税・延滞金は「その他」へ
  • 事業税は前期の確定分を「当期発生税額②」に書く。期末残高は通常ゼロ
  • 住民税の欄は均等割を含む
  • 還付のときは向きが逆。マイナス表示を別表四で減算し忘れない
  • 国税庁の記載要領にチェックポイントが書いてある。点検表を自作しなくてよい
  • 1か所直すと全部動く。直したら3つを回し直す
この記事の主な根拠(出典)

  • 法人税法38条(法人税額等の損金不算入)/55条(不正行為等に係る費用等の損金不算入)/74条(確定申告)
  • 地方税法65条・72条の45の2・327条(納期限の延長の場合の延滞金)
  • 国税庁「法人税のあらましと申告の手引」別表五(二)記載要領・チェックポイント
  • 国税庁「法人税申告書別表等」(各年分の様式)
  • ※2026年時点の様式に基づく記事です。欄番号は様式の改訂で変わることがあります

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