決算書の利益と法人税の所得はなぜ違うのか──別表四が「たった1枚の計算書」である理由
「利益はほとんど出ていないのに、税金がこの金額ですか」
法人成りして最初の決算で、多くの社長がここで止まります。答えは、会計の「利益」と法人税の「所得」が別物だからです。
そして、その違いのすべてが別表四という1枚の紙に収まっています。この1枚が読めるようになると、中小企業の申告書は大半が理解できたことになります。
この記事の結論
- 会計の目的は経営成績と財政状態の把握、税務の目的は課税の公平。目的が違うから答えが違う
- でもズレは全体のごく一部。だから法人税法は当期純利益をスタート地点にして足し引きする方式を採った。その一覧表が別表四
- 調整は4種類しかない。損金不算入(加算)/益金算入(加算)/益金不算入(減算)/損金算入(減算)
- 別表四のスタートは税引後の当期純利益。税引前ではない
- 各行には総額①・留保②・社外流出③の3つの欄がある。総額①=留保②+社外流出③
- ★中小企業の別表四は、実は3〜5行で終わる
1. 目的が違うから、答えが違う
会計の目的は適正な経営成績及び財政状態の把握です。株主や銀行に「この1年でいくら儲かって、いま何を持っているか」を正しく伝えるためにあります。
法人税の目的は課税の公平です。会社ごとに費用の見積り方が違ってはいけないので、税務は独自のルールを持っています。
目的が違う以上、同じ会社の同じ1年について、会計が出す「当期純利益」と税務が出す「所得金額」が一致しないのは当然です。
もっとも、ズレは全体のうちのわずかな部分にすぎません。売上のほとんど、仕入のほとんど、人件費のほとんどは、会計でも税務でも同じ扱いです。
そこで法人税法は、益金と損金をゼロから集計するのではなく、こういう方法を採りました。
会計が出した当期純利益をスタート地点にして、税法独自の考え方で足し引きし、所得金額というゴールに着地させる。
この足し引きの一覧表が別表四です。
当期純利益(損益計算書のいちばん下)
+ 加算項目(税務では利益を増やすべきもの)
- 減算項目(税務では利益を減らすべきもの)
= 所得金額(別表一へ)
2. スタートは「税引後」の当期純利益
ここが最初の引っかかりどころです。
別表四の1行目は、損益計算書のいちばん下、つまり法人税等を引いたあとの当期純利益です。税引前ではありません。
「法人税は損金にならないのだから、税引前から始めればいいのに」と思うところですが、そうしません。いったん税引後から始めて、あとから「損金経理をした法人税」を加算し直すという遠回りをします。
理由は、次の記事で扱う別表五(一)との連動にあります。いまの段階では「そういう作りになっている」と受け止めておけば十分です。
3. 調整は4種類しかない
別表四に出てくる調整は、この4つだけです。
| 方向 | 名前 | 意味 | 典型例 |
|---|---|---|---|
| 加算 | 損金不算入 | 会計は費用にしたが、税務は損金にしない | 減価償却超過額、交際費等の損金不算入、寄附金の損金不算入、役員給与の損金不算入、賞与引当金・退職給付引当金の繰入 |
| 加算 | 益金算入 | 会計は収益にしなかったが、税務は益金にする | 売上高の計上もれ、引当金の取崩不足 |
| 減算 | 益金不算入 | 会計は収益にしたが、税務は益金にしない | 受取配当等の益金不算入、法人税等の還付金 |
| 減算 | 損金算入 | 会計は費用にしなかったが、税務は損金にする | 売上原価の計上もれ、収用換地等の所得の特別控除 |
大企業では「損金不算入」の加算が圧倒的に多くなります。税務は費用について債務確定主義を採っているので、会計上の見積計上費用(賞与引当金、退職給付引当金、役員退職慰労引当金など)は債務が確定しておらず損金にならないからです。
4. タテとヨコ──別表四は2次元の表です
別表四には、2つの読み方があります。
タテは所得計算です。当期純利益からスタートして、所得金額にゴールします。
ヨコは、各行にある3つの欄です。
| 欄 | 何を書くか |
|---|---|
| 総額① | 留保/社外流出の区分に関係なく、調整金額をすべて書く |
| 留保② | そのうち、利益積立金額も同時に増減するもの |
| 社外流出③ | そのうち、所得は増減するが利益積立金額は増減しないもの |
関係は単純で、総額① = 留保② + 社外流出③ です。
そして、この連載でいちばん大事な一文がここです。
留保②に書いたものだけが、別表五(一)Iへ引っ越します。社外流出③に書いたものは、別表五(一)Iには一切現れません。
この一文が、別表四と別表五(一)の関係のすべてです。留保と社外流出の見分け方は 4つの箱を「追加仕訳が書けるか」で見分ける にまとめました。
5. 記載のルール(実務メモ)
会計ソフトが自動で埋めてくれる部分ですが、出力を検算するために知っておくと役に立つところです。
- 1行目の総額①=確定した決算の損益計算書の当期(純)利益。税引後
- 1行目の社外流出③「配当」欄=当期に支払いの効力が生ずる剰余金の配当等の支払額。株主資本等変動計算書の「剰余金の配当」と一致する
- 1行目の留保②=総額① − 社外流出③。社外流出のほうが多ければ△を付ける
- 配当をしていない会社は、当期純利益の全額をそのまま留保②に書く
- 印刷済みの項目にない調整は、加算欄・減算欄の空欄に項目名を書いて追加する
- 仮計より下の記載項目はすべて決まっている。該当欄がない調整は、仮計より上の加算・減算欄に書く
- 別表四の検算式:「所得金額又は欠損金額」の総額① = 留保② + 社外流出③の本書の金額 ±「※」の金額(様式の欄外にも印刷されています)
- 転記先は、所得金額(総額①)→別表一、欠損の場合→別表七(一)
なお、特殊な特例を使わない法人は簡易様式で足ります。中小企業はほぼ簡易様式です。
6. 中小企業の別表四は、本当は3〜5行で終わります
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
大企業の別表四に調整がずらりと並ぶのは、会計基準を厳密に適用して引当金を積んでいるからです。中小企業は、そもそも決算書を税務の取扱いに寄せて作っています。退職給付引当金を積まない、減価償却は税務の償却限度額どおりに計上する、という具合です。
その結果、黒字の中小企業の典型的な別表四は、こうなります。
| 項目 | 総額① | 留保② | 社外流出③ |
|---|---|---|---|
| 当期利益又は当期欠損の額 | 当期純利益 | 同額(配当がなければ) | 配当があればその額 |
| 損金経理をした法人税及び地方法人税 | 中間納付分 | 同額 | |
| 損金経理をした道府県民税及び市町村民税 | 中間納付分 | 同額 | |
| 損金経理をした納税充当金 | 当期末に積んだ未払法人税等 | 同額 | |
| 損金経理をした附帯税等 | あれば | その他 | |
| 交際費等の損金不算入額 | あれば | その他 | |
| 納税充当金から支出した事業税等の金額 | 前期確定分の事業税等 | 同額 | |
| 法人税額から控除される所得税額 | 預金利子等の源泉税 | その他 | |
| 所得金額又は欠損金額 |
つまり、中小企業の別表四に出てくる調整は「租税公課の調整・交際費等の損金不算入・源泉所得税の加算」程度です。赤字の年なら、これに「欠損金又は災害損失金等の当期控除額」が加わります。
★逆に言うと、中小企業なのに別表四に留保項目がずらりと並んでいるなら、どこかで会計と税務がズレています。決算書を見直す合図です。
7. 事業税だけ、ルールが違います
上の表に「納税充当金から支出した事業税等の金額」という減算が出てきました。ここが最後の関門です。
決算書では「法人税、住民税及び事業税」という1行にまとまっているのに、税務の扱いは正反対です。
| 法人税・地方法人税・住民税 | 事業税・特別法人事業税 | |
|---|---|---|
| 損金になるか | ならない | なる |
| いつの損金か | ─ | ★申告書を提出した日の属する事業年度 |
| 別表五(一)Iの「未納法人税等」に書くか | 書く | 書かない |
事業税は申告納税方式なので、申告書を出して初めて債務が確定するという考え方を採ります。だから期末時点では債務が確定しておらず、翌期(申告書を出す期)の損金になります。
この1点が原因で、会計上の利益剰余金と税務上の利益積立金額は必ずズレます。その仕組みは 別表四の留保欄は、そのまま別表五(一)へ引っ越す で数字を使って追いかけます。
まとめ
- 会計と税務は目的が違うから、当期純利益と所得金額は一致しない
- でもズレは一部。だから当期純利益をスタートにして足し引きする。その表が別表四
- 調整は4種類だけ。損金不算入・益金算入(加算)/益金不算入・損金算入(減算)
- スタートは税引後の当期純利益
- 各行に総額①=留保②+社外流出③。★留保②だけが別表五(一)Iへ引っ越す
- 配当がなければ、当期純利益は全額が留保②
- ★中小企業の別表四は3〜5行で終わる。租税公課の調整・交際費・源泉所得税くらい
- 中小企業なのに留保項目が並んでいたら、会計と税務がどこかでズレている
- 事業税は損金になる。ただし申告書を提出した日の属する事業年度の損金
- 法人税法22条(各事業年度の所得の金額の計算)/22条の2(収益の額)/38条(法人税額等の損金不算入)/74条(確定申告)
- 法人税基本通達9-5-1(事業税の損金算入の時期)
- 租税特別措置法61条の4(交際費等の損金不算入)
- 国税庁「別表四 所得の金額の計算に関する明細書」記載要領、「法人税のあらましと申告の手引」
- ※2026年時点の制度に基づく記事です。別表の行番号は様式改訂でずれるため、実際の申告では当年の様式でご確認ください
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