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更新日 2026-08-07 節税・経費

領収書とレシート、経費にするならどっち?──レシートで足りる場面と、保存期間・電子取引データの扱い

コンビニのレジで「経費にするので領収書をください」と伝えて、店員が手書きの用紙を書き終わるのを待っている。

その待ち時間は、たいていの場合いりません。手書きの領収書とレジのレシートに税法上の格の違いはなく、迷いどころは「どちらをもらうか」ではなく「もらったあと、何年・どんな形で保存するか」のほうにあります。

この記事の結論

  • 所得税でも消費税でも、手書きかレジ印字かで扱いを変える定めは置かれていない
  • レシートは品目・単価・個数・税率が印字されているぶん、あとから中身を説明しやすい
  • 宛名が効いてくるのは消費税の側だけ。小売業や飲食店、タクシーなどは宛名のない適格簡易請求書を交付できる
  • 保存年数は申告の種類で違う。青色申告なら領収証やレシートは原則7年、白色申告なら5年
  • 消費税の課税事業者は、仕入税額控除のために保存する請求書等を7年とっておく
  • メールやWebで受け取った請求書・領収書は、データのまま保存する義務がある。紙に印刷したものだけを残す形は原則として認められない
  • 紙をスキャンしてデータで残すスキャナ保存は希望者だけの制度で、やらなくても違反にはならない

1. 手書きの領収書とレシート、法律上の扱いは変わらない

個人で事業を行う人が保存しなければならないのは、「業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類」です。レシートもこの「領収書など」に含まれます。手書きの用紙のほうが格上、といった区別は置かれていません。

消費税の側も同じです。仕入税額控除の要件は、一定の事項を記載した帳簿と、適格請求書などの請求書等を保存していることです。要件は「何が書いてあるか」で判定され、書いた手段は問われません。手書きでも記載事項がそろっていれば適格請求書になりますし、レジ発行でも登録番号が印字されていなければ適格請求書にはなりません。

つまり、レジでわざわざ手書きを頼む理由は、税法上はありません。

2. レシートのほうが説明しやすいのは、書いてある中身が多いから

格の違いはない、と書きました。それでも実務でレシートをすすめるのは、情報量が違うからです。

レシートには、買った品目・単価・個数・税率ごとの金額が印字されています。半年後に見返したとき、それが事業の何に使ったものだったのかを、自分でも思い出せます。帳簿に付けるときの勘定科目も決めやすくなります。

一方、手書きの領収書は金額と但し書きしか残りません。但し書きが「お品代」だけだと、何を買ったのかが書類のどこにも残らない状態になります。これは税務署に疑われるという以前に、自分が困ります。

手書きの領収書をもらう場面があるとすれば、レシートが出ない支払い(レジのない事業者への支払いなど)のときです。そのときは、但し書きを具体的に書いてもらうよう頼んでおきます。

3. 宛名が効いてくるのは、消費税を引くときだけ

「宛名がないと経費にならない」と思っている人は多いのですが、宛名の話が出てくるのは消費税の仕入税額控除の要件のほうです。

適格請求書(インボイス)の記載事項には、次のものが並びます。

  • 書類作成者の氏名または名称および登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額および適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税額等
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称(これが宛名)

ここに宛名が入っています。ただし、小売業、飲食店業、タクシー業などを営む事業者が交付する書類については、適用税率か消費税額等のいずれかの記載でよく、しかも宛名の記載は不要とされています。これが適格簡易請求書、いわゆる簡易インボイスです。スーパーやコンビニ、飲食店、タクシーのレシートは、宛名がなくてもそのまま使えます。

所得税のほうには、宛名がなければ必要経費にならない、という定めは置かれていません。求められているのは記帳と、取引に伴って受け取った書類の保存です。宛名を書いてもらわないと経費にならない、というのは思い込みです。

4. 但し書きの「お品代」で困るのは、取引内容が欠けるから

前の項目の表にある「取引内容」は、宛名を省略できる適格簡易請求書でも省略できません。但し書きが「お品代」だけの領収書は、この取引内容が空白の書類ということになります。

ただし、記載のしかたには幅があります。国税庁は、商品名を個々の名称ではなく包括的に書いた場合でも、課税資産の譲渡等に当たることが明らかになる方法であれば認められるとしています。「文房具」「書籍」「飲食代」といった書き方で足ります。「お品代」だけが弱いのは、それすら分からないからです。

レシートをそのまま保存すれば、この問題は起きません。品目が最初から印字されているためです。

5. 何年とっておくか──青色・白色・消費税で年数が違う

ここからが本題です。もらった書類は、決まった年数、住所地や事業所に整理して保存しておく必要があります。年数は一律ではありません。

青色申告の場合

仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳などの帳簿 7年
損益計算書、貸借対照表、棚卸表などの決算関係書類 7年
領収証、小切手控、預金通帳、借用証など(現金預金取引等関係書類) 7年
請求書、見積書、契約書、納品書、送り状などのその他の書類 5年

レシートや領収証は3行目の現金預金取引等関係書類に当たるので、原則7年です。ただし、前々年分の事業所得および不動産所得の金額が300万円以下の人は5年でよいとされています。

白色申告の場合

収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿) 7年
業務に関して作成した上記以外の帳簿(任意帳簿) 5年
決算に関して作成した棚卸表その他の書類 5年
請求書、納品書、送り状、領収書などの書類 5年

白色申告では、7年なのは法定帳簿だけです。領収書を含む書類はすべて5年でよいことになっています。同じ領収書でも青色なら原則7年、白色なら5年と分かれるので、ここは混同しやすいところです。

消費税の課税事業者は、上の年数にかかわらず7年になります。仕入税額控除の要件として保存する帳簿・請求書等と、適格請求書発行事業者として交付した適格請求書の写しが対象です。正確には、帳簿は閉鎖の日、請求書等は受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間で、6年目と7年目についてはいずれか一方を保存すればよいとされています。

年数を1つに決めておきたいなら、消費税の課税事業者であれば7年、免税事業者で青色なら7年(前々年分の所得が300万円以下なら5年)、白色なら帳簿7年・書類5年、と覚えることになります。迷うくらいなら全部7年で置いておくのが手間は少なくて済みます。

6. メールやWebで受け取った領収書は、データのまま保存する

ここが、数年前に書かれた記事と現在でいちばん食い違うところです。

取引に関して書面でやりとりしていれば保存が必要になる書類(注文書、契約書、送り状、領収書、見積書、請求書など)に相当する電子データを受け取ったり送ったりした場合、そのデータの電子保存が義務付けられています。ネット通販の領収書、メール添付のPDF請求書、Web明細、クラウドサービスの利用明細などが対象です。

令和5年12月31日までは、印刷して紙で保存し、税務調査のときに提示・提出できるようにしていれば差し支えないという取扱い(宥恕措置)がありました。これは終わっています。令和6年1月からは、次に説明する猶予措置に置き換わりました。「2023年末までは紙でよい」と書いてある解説は、そこで時間が止まっています。

原則的な保存ルールは3つです。

改ざん防止のための措置をとる タイムスタンプ、訂正削除の履歴が残るシステム、事務処理規程の策定・運用・備付けのいずれか
ディスプレイやプリンタ等を備え付ける データを画面と書面で確認できる状態にしておく
日付・金額・取引先の3つで検索できる 索引簿を作る、または規則性のあるファイル名を付ける方法でも可

3つ目の検索要件は、専用ソフトがなくても対応できます。表計算ソフトで索引簿を作る方法のほか、「日付_金額_取引先」の順に並べたファイル名を付けて特定のフォルダにまとめる方法が国税庁の資料に示されています。さらに、基準期間(2年前)の売上高が5,000万円以下の人などは、税務調査の際にデータのダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、検索要件を満たす必要はありません。

猶予措置は、この原則ルールへの対応が間に合わない場合の受け皿です。次の2つをどちらも満たせば、データを保存しておくだけで足ります。

  • 原則的な保存ルールに従って保存できなかったことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認めること。事前の届出は不要で、人手不足、システム整備の資金不足、システム整備が間に合わないなども相当の理由として認められます
  • 税務調査の際に、データのダウンロードの求めと、それをプリントアウトした書面の提示・提出の求めの両方に応じられるようにしていること

猶予措置でも、データそのものを消してはいけない点は変わりません。印刷したあとにメールやダウンロードデータを削除してしまうと、猶予措置の2つ目の条件を満たせなくなります。当面やることは、受け取ったPDFを消さずに1か所へためておくこと、これだけです。

7. 紙をスキャンして捨てるかどうかは、選んでいい

電子帳簿保存法の制度は3つに分かれています。混同すると、やらなくてよいことまで抱え込むことになります。

電子帳簿等保存(会計ソフトで作った帳簿をデータのまま保存) 希望者のみ
スキャナ保存(紙で受け取った書類をスキャンして保存) 希望者のみ
電子取引データ保存(データで受け取った書類をデータのまま保存) 法人・個人事業者は対応が必要

義務なのは3つ目だけです。紙のレシートをスキャンして原本を捨てる運用は、やりたい人がやる制度で、やらなくても違反にはなりません。

逆に言うと、スキャナ保存の要件を満たさないままスキャン画像を作っても、それは控えにすぎず、紙のほうを保存し続ける必要があります。「スキャンしたから捨てていい」と考えるなら、先に要件のほうを確認してからにします。

8. レシートの保存は、置き場所とファイル名を先に決める

制度の話が続いたので、手を動かす側の話に戻します。保存で失敗するのは、たいてい仕組みではなく置き場所を決めていないからです。

  • 財布の中で分ける。事業用とプライベート用のレシートが同じポケットに入っていると、あとで仕分ける作業が丸ごと発生します。分ける手間は入れるときのほうが小さくて済みます
  • 月ごとの封筒かクリアファイルに入れるだけにする。ノートに貼る必要はありません。求められているのは整理して保存することで、貼り方の指定はありません
  • 感熱紙は退色する。レジのレシートは数年で文字が薄くなります。金額の大きいものや長く残す必要があるものは、コピーやスキャン画像を一緒に入れておきます。ただし前の項目のとおり、スキャナ保存の要件を満たしていないなら紙も残します
  • データで届いたものは、紙の箱に混ぜない。電子取引データはデータのまま保存する義務があるので、印刷して封筒に入れる運用にすると、かえって条件を外します。クラウドストレージに「2026年_電子取引」のようなフォルダを作り、そこへ入れるところまでを月次の作業にします

よくある質問(FAQ)

Q. レシートをなくしました。その支出は経費にできませんか

消費税と所得税で答えが分かれます。消費税の仕入税額控除は、帳簿と請求書等の保存が要件になっているので、書類がなければその分は原則として引けません。所得税のほうは、記帳と保存が義務であることに変わりはありませんが、必要経費になるかどうかは事業のための支出だったかどうかで決まります。まずは再発行を頼み、それができないなら支払いの記録(通帳やカードの明細、当日の予定)を残しておきます。

Q. クレジットカードの利用明細書があれば、レシートは捨てていいですか

捨てないでください。クレジットカード会社が交付する請求明細書は、実際に商品やサービスを売った加盟店が作成した書類ではなく、加盟店の名称や登録番号も記載されていないため、消費税法上の請求書等には該当しません。カード明細だけを保存しても仕入税額控除は受けられず、加盟店から受け取った適格請求書等のほうを保存する必要があります。

Q. 少額なものまで全部とっておく必要がありますか

書類の保存義務そのものは金額で区切られていません。ただし消費税の側には、基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者について、税込1万円未満の課税仕入れは帳簿の保存だけで仕入税額控除ができるという特例があります。令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に行う課税仕入れが対象です。ほかに、3万円未満の公共交通機関の運賃や自動販売機での購入なども帳簿のみでよいとされています。

Q. 高額な買い物のときは、手書きの領収書をもらったほうが安全ですか

金額で書類の種類を変えなければならない、という決まりはありません。金額が大きい支出で気にすべきなのは書類の様式ではなく、何年も残すことです。減価償却する資産なら耐用年数のあいだ帳簿に残り続けるので、感熱紙のレシートしかない状態は避けたいところです。レシートに加えて、注文書や納品書、振込の記録をひとまとめにしておけば足ります。

Q. 白色申告なら5年でいい、で本当に大丈夫ですか

消費税の課税事業者であれば7年になります。また、青色申告に切り替えれば領収証は原則7年です。いま白色でも来年から青色にするつもりがあるなら、最初から7年で運用しておくほうが切り替えのときに困りません。

まとめ

  • レジで手書きの領収書を頼むのはやめる。レシートで足りるうえ、品目が残るぶん扱いやすい
  • レシートが出ない支払いのときだけ領収書をもらい、但し書きを具体的に書いてもらう
  • 宛名は消費税の話。小売業や飲食店、タクシーなどのレシートは宛名がなくても使える
  • 自分の保存年数を1つ決める。青色なら領収証は原則7年、白色なら書類は5年、消費税の課税事業者は7年
  • メールやWebで受け取った請求書・領収書は、消さずにデータのまま1か所へためる。印刷して紙だけ残す運用は原則として認められない
  • 検索要件は索引簿かファイル名で足りる。「日付_金額_取引先」の順で名前を付けてフォルダにまとめる
  • スキャナ保存は急がない。希望者のみの制度なので、要件を確認するまでは紙も残しておく
  • 財布の中で事業用と私用を分け、月ごとの封筒に入れるところまでを毎月の作業にする

この記事の主な根拠(出典)

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