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更新日 2026-08-07 節税・経費

節税・租税回避・脱税の3つはどこで分かれるか──グレーゾーンと、税務調査で説明できる形

節税の話をしていると、必ず「どこまでならやっていいのか」という質問が出ます。

税法の世界には、実は3つの層があります。節税・租税回避・脱税。この3つは連続していますが、法律上の扱いはまったく違います。そして中小企業が知らずに踏み込みやすいのは、真ん中の「租税回避」です。

この記事の結論

  • 脱税は事実を偽ること。仮装隠蔽があれば重加算税(加算税早見表)、悪質なら刑事罰
  • 租税回避は私法上は有効だが、法人税法132条(同族会社等の行為計算否認)で否認され得る
  • 判断枠組みは最高裁が示している。経済的合理性を欠くかどうか(最判令和4年4月21日)
  • 節税は法が予定している行動。制度を要件どおりに使うこと
  • 実務の分かれ目は「事実を作ったか、事実に形を与えたか」
  • 使った後に経費にできるかを聞くのではなく、使う前に経費になる形で使う
  • 過去に封じられた手法は共通の形をしている。制度の趣旨から外れた使い方は、いずれ塞がれる

1. 3つの層

何をしているか 法律上の扱い
節税 法が予定している選択肢を選ぶ。要件を満たして制度を使う 適法。何の問題もない
租税回避 私法上は有効な取引だが、通常は用いない形式を選んで税負担を減らす 個別の否認規定や法人税法132条で否認され得る。加算税は原則として過少申告加算税
脱税 事実を偽る。売上を隠す、架空の経費を計上する、書類を改ざんする 重加算税。悪質ならほ脱犯として刑事罰(法人税法159条)

境目は明確ではありませんが、脱税との境目だけははっきりしています。事実を偽ったかどうかです。

2. 脱税の線──仮装隠蔽

国税通則法68条は、課税標準等または税額等の計算の基礎となるべき事実の全部または一部を隠蔽し、または仮装していた場合に重加算税を課すとしています。

実務で問題になるのは、次のような行為です。

  • 売上の除外(一部の入金を帳簿に載せない)
  • 架空仕入れ・架空外注費の計上
  • 領収書の改ざん、他人名義の領収書の使用
  • 二重帳簿
  • 期末在庫の圧縮(実際にある在庫を計上しない)
  • 契約書の日付の遡及・改変
  • 調査時の虚偽答弁と、それに沿った書類の作成

ここで大事なのは、「経費にならないものを経費にした」と「事実を偽った」は違うということです。判断を誤って否認されるのは過少申告であって、重加算税の対象ではありません。重加算税がつくのは隠蔽・仮装があったときです。

だからこそ、判断の根拠を残しておくことが防御になります。判断は誤ることがありますが、隠していないことは記録で示せます。

3. 租税回避の線──法人税法132条

同族会社は、株主と経営者が同じなので、通常の会社ならやらない取引を作ることができます。そこで法人税法132条は、同族会社の行為または計算で、これを容認すると法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものについて、税務署長がそれを否認して計算できるとしています。

「不当に減少させる」の意味について、最高裁は令和4年4月21日の判決(ユニバーサルミュージック事件)で、経済的合理性を欠くかどうかという観点から判断すべきであり、その判断に当たっては

  • 当該行為または計算の不自然さの程度
  • 税負担の減少以外にそのような行為または計算を行うことの合理的な理由となる事業目的等の有無

を考慮するとしました。

つまり、税負担の減少以外の理由を説明できるかどうかが実務の要になります。分社化にしても、資産の移転にしても、役員構成にしても、事業上の理由が先にあるかが問われます(会社をもう1つ作ると得なのか)。

4. 過去に封じられた節税手法

「これは大丈夫か」を判断するとき、過去に塞がれた手法を見ておくと感覚がつかめます。共通しているのは、制度の趣旨から外れた使い方が大量に広まったという形です。

手法 いつ、どう封じられたか
節税保険(全額損金の定期保険) 令和元年6月28日付課法2-13で個別通達5本を廃止。最高解約返戻率による資産計上へ(「法人保険で節税」は令和元年6月に終わった
保険の名義変更プラン 令和3年6月25日付課個3-9で所得税基本通達36-37を改正。低解約返戻金型の評価を見直し(保険の契約転換・払済・失効・名義変更
足場・ドローン・コンテナのレンタル 令和4年度改正で、貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供した資産を少額減価償却資産・一括償却資産・中小企業者等の少額特例の対象から除外(少額資産の線は3本ある
海外中古不動産 令和2年度改正。国外中古建物の不動産所得の損失のうち、耐用年数を簡便法等で計算した減価償却費に相当する部分は生じなかったものとみなす(措置法41条の4の3・令和3年分以後)
自動販売機スキーム(居住用賃貸建物の消費税還付) 令和2年度改正。居住用賃貸建物の課税仕入れは仕入税額控除の対象外(消費税法30条10項)
タワーマンション節税 令和5年9月28日付「居住用の区分所有財産の評価について」(課評2-74)。令和6年1月1日以後に相続・遺贈・贈与により取得した財産の評価から適用
倒産防止共済の解約・再加入ループ 令和6年度改正。令和6年10月1日以後の解約は、解約日から2年間は掛金が損金にならない繰り延べただけの節税は、いつ税金が戻ってくるのか

見てのとおり、塞がれるのは「制度の本来の目的と、使われ方がずれている」ものです。倒産防止共済は連鎖倒産を防ぐ制度であって、利益の繰延べのための箱ではありません。少額減価償却資産の特例は、少額の設備を買った事業者の事務負担を軽くする制度であって、レンタル用資産を大量に取得して落とすための制度ではありません。

「いま合法だから」と「制度の趣旨に沿っているか」は別の話です。趣旨から外れた使い方は、いずれ塞がれます。しかも改正は遡及しないとはいえ、塞がれた時点で出口が変わるので、繰延べた税金の返し方が狂います。

5. 「使う前に、経費になる形で使う」

節税の実務で、いちばん結果を分けるのがこれです。

使ったあとに「これは経費になりますか」と聞くのと、使う前に経費になる形を作っておくのとでは、通る確率が違います。しかも法人の制度は、そのほとんどが事前の形を要求します。

制度 使う前に何が要るか
役員社宅 会社名義の賃貸借契約。個人名義なら成立しない
出張日当 旅費規程。規程がなければ支給の根拠がない
事前確定届出給与 届出。決議から1か月と期首から4か月の早いほうまで
決算賞与 期末までの各人別通知と、翌日から1か月以内の支払
経営強化税制 経営力向上計画の認定。取得より先
福利厚生 規程と、全員を対象とする設計

このどれも、あとから作れません。決算月になってから慌ててできるのは、期ズレの正常化(未払費用の計上漏れの拾い直し)くらいです(決算で税金を動かせるのは「決算まで」)。

6. 税務調査で聞かれること

調査で交際費や旅費が問題になるとき、聞かれるのはほぼ次の4つです。

  1. 誰と(相手方の氏名・会社名・自社との関係)
  2. 何のために(商談か、接待か、打合せか)
  3. その支出が売上とどうつながるか
  4. 社内でどう決まったか(規程、稟議、議事録)

そして重要なのは、その場で思い出して説明するものではないということです。1年前、2年前の支出について、記憶で答えられる人はいません。

だから残すのは次の3つです。

  • その場で書く。領収書の裏、または経費精算アプリのメモに「誰と・何のために」
  • 形を作る。規程・議事録・契約書
  • 判断の根拠を残す。微妙な支出について、なぜ経費と判断したかのメモ

なお、調査の場で作成を求められる質問応答記録書への署名は義務ではありません質問応答記録書にサインを求められたら)。調査全体の流れは 税務調査とは何か にまとめてあります。

7. 王道はどこにあるか

グレーゾーンを避けて、それでも効く手を並べると、実は数が限られます。

打ち手 なぜ王道か
役員報酬の設計 法が予定した制度そのもの。税と社会保険を合計して決める
役員社宅 通達に算式が定められている。争いになる余地が小さい
出張日当 通達に判定基準がある。規程と実態があれば通る
退職金 制度として用意されている出口。金額の目安も判例で示されている
家族への給与 勤務実態があれば正面から損金
税額控除 制度の趣旨に沿って設備投資・賃上げをすれば、税額が本当に減る
期ズレの正常化 現金を使わずに所得が動く唯一の型

共通しているのは、算式・要件・手続が明文で定められていることです。明文があるということは、要件を満たせば通るということでもあります。グレーゾーンを探すより、明文のある制度を全部正しく使うほうが、結果として金額が大きくなります。

まとめ

  • 3つの層は節税/租税回避/脱税。脱税との境目は事実を偽ったかどうか
  • 重加算税の要件は隠蔽・仮装(国税通則法68条)。判断を誤っただけなら重加算税ではない
  • 租税回避は法人税法132条で否認され得る。判断枠組みは経済的合理性を欠くか(最判令和4年4月21日)
  • 実務の要は税負担の減少以外の理由を説明できるか
  • 過去に封じられた手法は共通して、制度の趣旨から外れた使い方が広まったもの
  • 使ったあとに聞くのではなく、使う前に形を作る。契約名義・規程・届出・認定は後から作れない
  • 調査で聞かれるのは誰と・何のために・売上とどうつながるか・社内でどう決まったか
  • 王道は明文のある制度を全部正しく使うこと

この記事の主な根拠(出典)

  • 国税通則法68条(重加算税)/70条5項(偽りその他不正の行為があった場合の更正の期間制限)
  • 法人税法132条(同族会社等の行為又は計算の否認)/159条(ほ脱犯)
  • 最高裁令和4年4月21日第一小法廷判決(法人税法132条の「不当に減少させる結果となると認められるもの」の判断枠組み)
  • 令和元年6月28日付課法2-13(定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱い)/令和3年6月25日付課個3-9(所得税基本通達36-37の改正)
  • 租税特別措置法41条の4の3(国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例)/消費税法30条10項(居住用賃貸建物の仕入税額控除の制限)
  • 令和5年9月28日付課評2-74「居住用の区分所有財産の評価について」(令和6年1月1日以後に取得した財産の評価に適用)
  • 租税特別措置法66条の11(経営セーフティ共済・解約後2年の損金不算入)
  • ※出典の各ページは2026年8月7日に確認しました。制度は改正されることがあります

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