レシートの紙束が財布とレジ袋にたまっていく。会計ソフトのアプリで撮れば自動で読み取ってくれるし、撮ったんだから紙はもう捨てていいのでは——そう思って手を止めた人に、まず伝えたいことがあります。
「撮ったから捨てていい」ではありません。「要件を満たしたスキャナ保存をしているなら捨てていい」です。
そして意外に知られていないのが、もう一つの結論。スキャナ保存は任意制度で、やらない選択があります。 紙のまま7年間ファイリングしておくのは、今も完全に合法です。
この記事では、原本を捨てるための条件と、そこまでやるべきかの判断軸を整理します。
この記事の結論
– スキャナ保存は任意制度。紙のまま保管し続けても法的に問題なし
– 原本を廃棄するには、解像度200dpi以上・カラー・入力期間の制限・訂正削除履歴(またはタイムスタンプ)・検索要件などを満たす必要がある
– 2022年からは税務署長の事前承認が不要、定期検査まで原本を残す要件も廃止。要件を満たせばスキャン後すぐ廃棄できる
– ただし税法上OK≠すべての場面でOK。契約書の原本など残すべきものは別にある
電子帳簿保存法には別々の制度が同居していて、ここを混ぜると混乱します。
| 制度 | 対象 | 義務か任意か |
|---|---|---|
| 電子取引データ保存 | 最初からデータで受け取ったもの(メール添付のPDF請求書、Web領収書など) | 義務 |
| スキャナ保存 | 紙で受け取ったものをスキャン・撮影してデータ化 | 任意 |
| 電子帳簿等保存 | 自分が作る帳簿・決算書類を最初からデータで作成 | 任意 |
この記事は真ん中のスキャナ保存の話です。データで受け取ったものは義務なので、そちらは電子取引の検索要件と電子取引データの保存とはを先に整えてください。全体の最低ラインは電帳法・個人事業主の最低限にまとめています。
「重要書類」(領収書・請求書・契約書・納品書など、資金や物の流れに直結する書類)をスキャナ保存する場合の主な要件です。
| 要件 | 内容 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 入力期間の制限 | ①速やかに(おおむね7営業日以内)/②業務処理サイクル後速やかに(最長1ヶ月+おおむね7営業日以内、規程が必要) | 撮り忘れて1ヶ月放置すると要件から外れる |
| 解像度 | 200dpi以上 | スマホ撮影でも通常は満たすが、遠い・傾いた撮影は不可 |
| 階調 | 赤・緑・青それぞれ256階調以上(カラー) | 白黒(モノクロ2値)設定のスキャナはNG |
| タイムスタンプ/訂正削除履歴 | タイムスタンプを付す、または訂正削除の履歴が残る(できない)システムで保存 | ここが自力では最も難しい。会計ソフト頼みになる |
| 検索要件 | 取引年月日・取引金額・取引先で検索できる | ダウンロードの求めに応じられれば範囲指定・組合せは不要 |
| 帳簿との相互関連性 | スキャンしたデータと帳簿の記録を相互に確認できる | 仕訳に証憑を紐づける機能が必要 |
| 見読可能装置 | 14インチ以上のカラーディスプレイとカラープリンタ等 | 通常のPC環境なら問題なし |
| システム関係書類の備付け | 使うソフトの操作説明書等 | 市販ソフトならマニュアルで足りる |
見ていただくと分かりますが、カギは「訂正削除の履歴が残るシステム」です。フォルダにPDFを置くだけでは満たせません。つまり実務上は、電帳法のスキャナ保存に対応した会計ソフトを使うかどうかでほぼ決まります(会計ソフト比較)。
なお、見積書・注文書など「一般書類」はもう少し緩く、グレースケール可・相互関連性不要・入力期間の制限なし(規程が必要)で扱えます。
以前のスキャナ保存は、正直なところ個人事業主が手を出す制度ではありませんでした。それが変わりました。
つまり、「対応ソフトを使っているなら、やる価値が出た」というのが現在地です。逆に、対応していないソフトや手作業のフォルダ運用なら、紙のまま保管するほうが確実です。
上から順に答えてください。
やらないと決めるのも立派な判断です。紙で7年ファイリングしておけば、電子帳簿保存法の観点では何も問題ありません。 保管の工夫はレシート保管を仕組みにするコツにまとめました。
要件を満たせば税務上は廃棄できます。ただし書類には税務以外の役割もあります。次のものは原本を残すことをおすすめします。
| 書類 | 原本を残す理由 |
|---|---|
| 契約書(特に収入印紙を貼ったもの) | 紛争時の証拠力。印紙を貼った原本そのものに意味がある |
| 保証書・保険証券 | 修理・請求のときに原本の提示を求められることがある |
| 補助金・助成金の関係書類 | 実績報告や検査で原本提出を求められる制度がある |
| 金融機関に提出する可能性がある書類 | 融資審査で原本確認を求められることがある |
| 登記・許認可に関する書類 | 行政手続きで原本が必要 |
「レシート・領収書はデータ化して捨てる、契約書系は紙で残す」——この線引きが実務的にいちばん扱いやすいです。
Q. スマホのカメラで撮ったものでもスキャナ保存になりますか?
なります。スキャナ専用機である必要はありません。ただし解像度200dpi以上・カラーという条件は変わらないので、明るい場所で書類全体が正面から写るように撮ってください。折れたレシートを斜めから撮ったものは、読み取れず要件を満たさない可能性があります。
Q. とりあえずスマホの写真アプリに入れておけばいいですか?
それでは要件を満たしません。訂正削除の履歴が残らず、検索要件も満たせないからです。写真アプリは「撮り忘れ防止の一時置き場」と考え、必ず会計ソフト(または命名ルールを決めたフォルダ)に移してください。
Q. 途中から始めてもいいですか?
はい。事前承認が不要になったので、いつでも開始できます。ただし開始後に受け取った書類から適用するのが自然です。過去の紙をまとめて撮って捨てるのは、入力期間の要件から外れるため避けてください。
Q. すでにスキャンして捨ててしまった領収書があります。
まずは落ち着いて、保存しているデータと帳簿の記録で支出内容を説明できる状態にすることです。データがなく紙も捨てた支出については、領収書をなくした経費の残し方の考え方で代替の記録を整えてください。
Q. 自分がPDFで送った請求書の控えは、スキャナ保存ですか?
違います。相手にデータで交付した請求書の控えは電子取引にあたるので、データでの保存が必要(義務)です。紙で郵送した請求書の控えを自分でスキャンする場合はスキャナ保存の話になります。入口が違うので分けて考えてください。
Q. 紙とデータの両方を残してもいいですか?
問題ありません。むしろ移行期はそのほうが安心です。ただし両方を「管理」しようとすると必ず片方が抜けます。データを正、紙は段ボールに年別で放り込むだけ、と役割を決めるのがコツです。
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