ホーム起業時の知識 › 退職して独立、健康保険は…
更新日 2026-07-23 起業時の知識第16回

退職して独立、健康保険は「任意継続・国保・扶養」どれが安い?1年目の選び方

会社を辞めて独立すると、それまで会社任せだった健康保険を、自分で選んで手続きしなければなりません。ここで多くの人が「任意継続と国保、どっちが安いの?」で固まります。選び方を間違えると、年間で数万円〜十数万円、保険料が変わることもある、地味に効くテーマです。

この記事では、退職後の健康保険の3つの選択肢——任意継続・国民健康保険・家族の扶養——を、仕組み・保険料の決まり方・向いている人で整理します。どれが安いかは人によって変わるので、「自分はどれを比べるべきか」が分かるところまで案内します。

この記事の結論
– 退職後の健康保険は基本 ①任意継続 ②国民健康保険 ③家族の扶養 の3択
– 保険料の決まり方が3つで違う。両方を試算して安い方を選ぶのが原則
– 独立1年目は前年(会社員時代)の所得で保険料が決まり、高く感じやすい
– 手続きには期限がある(任意継続は退職翌日から20日以内など)。早めに動く

※健康保険・年金の具体的な加入手続きや個別の可否判断は、社会保険労務士・各保険者(協会けんぽ/健保組合/市区町村)の領域です。本記事は制度の全体像を理解するための説明です。

退職したら、健康保険は自分で選ぶ

日本は「国民皆保険」で、誰もが何らかの公的医療保険に入ります。会社員のときは勤務先の健康保険(協会けんぽや健保組合)に自動加入で、保険料は会社と折半でした。独立するとこの“会社折半”がなくなり、次の3つから自分で選ぶことになります。

3つの選択肢を比較

選択肢 どんな制度 保険料の決まり方 向いている人
①任意継続 退職後も、元の会社の健康保険を最長2年続ける 退職時の標準報酬月額ベース(上限あり)。会社負担がなくなり全額自己負担 前年の所得が高め/扶養家族が多い人
②国民健康保険 市区町村(または国保組合)の保険に加入 前年の所得と世帯人数などで市区町村ごとに計算 前年の所得が低め/退職後に所得が下がる人
③家族の扶養 配偶者など家族の健康保険の被扶養者になる 保険料の追加負担なし(要件を満たす場合) 独立直後で自分の収入が少ない人

①任意継続——「会社の保険を続ける」

退職後も、それまで入っていた会社の健康保険を最長2年間続けられる制度です。ポイントは、これまで会社が半分払ってくれていた分も自分で負担するため、保険料は在職時の“手取りから引かれていた額”のおよそ2倍になるイメージ(ただし上限あり)。扶養家族を自分の保険に入れられる点はメリットです。退職日の翌日から原則20日以内という短い手続き期限があるので要注意。

②国民健康保険——「前年所得で決まる」

市区町村が運営する保険で、保険料は前年の所得をベースに、世帯人数などを加味して計算されます。だからこそ、独立1年目は“会社員時代の高い所得”をもとに計算され、保険料が高く感じやすいのが実情です。逆に、2年目以降で所得が下がれば、それに応じて保険料も下がっていきます。医師・建設・文筆など、業種別の「国保組合」に入れるケースもあります。

③家族の扶養——「入れるなら一番安い」

配偶者や親など、家族が会社の健康保険に入っている場合、その被扶養者になれれば、あなた自身の保険料負担なしで保険に入れます。ただし、被扶養者には収入などの要件(一般に年収130万円未満などの目安)があり、独立して事業所得が増えると外れることになります。独立直後で収入がまだ小さい時期に選択肢になり得ます。

「どれが安いか」は試算しないと分からない

大事なのは、正解が人によって違うということ。ざっくりした目安はこうです。

  • 前年の所得が高かった人:国保だと高くなりがち → 上限のある任意継続が有利なことが多い
  • 前年の所得が低い/退職後に所得が下がる人国保が有利なことが多い
  • 自分の収入がまだ小さい人:入れるなら扶養が最安

任意継続の保険料は、加入していた協会けんぽ・健保組合に問い合わせれば分かります。国保の保険料は、お住まいの市区町村の窓口やサイトで試算できます。両方の金額を出して、安い方を選ぶ——これが確実です。

1年目の“落とし穴”:保険料は前年ベース

独立して驚くのが、「収入が減ったのに、保険料や税金がむしろ高い」という現象です。理由は、国民健康保険も住民税も“前年の所得”をもとに計算されるから。会社員時代の所得が高かった人ほど、独立1年目にその請求が来ます。これは健康保険だけの話ではなく、住民税・国民年金とあわせて資金繰りを直撃するので、独立1年目は現金を厚めに準備しておきましょう(詳しくは関連記事へ)。

よくある質問(FAQ)

Q. 任意継続と国保、途中で切り替えられる?
制度上の要件や期限があり、自由なタイミングでの乗り換えには制約があります。加入前にどちらが有利かを試算して選ぶのが基本です。詳細は各保険者・市区町村へ。

Q. 扶養に入りながら個人事業ってできる?
自分の収入が扶養の要件内であれば可能な場合があります。ただし事業所得が増えると外れます。判定基準は保険者により異なるため、加入先に確認を。

Q. 保険料は経費になる?
健康保険料・国民年金保険料は事業の「経費」ではなく、確定申告で社会保険料控除として所得から差し引きます。節税にはなりますが、経費とは別の扱いです。

Q. 手続きはどこで?
任意継続は元の会社の健康保険(協会けんぽ/健保組合)へ、国保は市区町村の窓口へ、扶養は家族の勤務先経由で。いずれも期限があるので退職前後に段取りしておきましょう。

まとめ

  • 退職後の健康保険は 任意継続・国保・扶養 の3択
  • 保険料の決まり方が違うので、両方試算して安い方を選ぶ
  • 前年所得が高い人は任意継続、低い人は国保が有利になりやすい
  • 独立1年目は前年所得ベースで高く感じやすい。現金を厚めに
  • 手続きには期限あり(任意継続は退職翌日から20日以内)。早めに動く
この記事の主な根拠(出典)

  • 健康保険法(任意継続被保険者の制度。原則退職翌日から20日以内の申出、最長2年)
  • 国民健康保険法(前年の所得等に基づく保険料算定。市区町村により計算方法が異なる)
  • 所得税法74条(社会保険料控除)
  • 協会けんぽ・各市区町村の案内(保険料は加入先・自治体で確認)

※具体的な保険料・加入可否は各保険者・市区町村により異なります。手続きの詳細は社会保険労務士・各窓口へご確認ください。

次に読む

👉 独立1年目、国保・住民税・年金が一気に来て詰む理由
👉 個人事業主と法人、結局どっちが得?税金・社保・信用で比較
👉 事業用の口座って本当に分けなきゃダメ?
👉 個人事業の始め方、何から?開業の全体像を「最短ルート」で図解

相談したいとき

👉 税理士の宍倉に相談する(LINE)

FOLLOW & CONSULT

新しい記事はLINEでお知らせ

個別のご相談は、事務所サイトの単発相談で承っています。

LINEで友だち追加個別相談について(事務所サイト)