個人事業主の経費、どこまでOK?迷う費目を「できる・できない・家事按分」で一覧化
レシートを見るたびに手が止まります。「このカフェ代、経費にしていい?」「この服は?」「この本は?」——開業したての最大の悩みが、この経費の線引きです。入れすぎて後から否認されるのも怖いし、遠慮しすぎて払わなくていい税金を払うのも損。どちらも避けたいです。
安心してください。判断の軸は、実はたった一つです。この記事は、その軸を示したうえで、迷いやすい費目を「できる/できない/家事按分」の3分類で一覧にした「引ける辞書」です。ブックマークして、迷ったら開いてください。
この記事の結論
– 経費かどうかの軸は「その支出が事業の遂行上、必要か(事業関連性)」の一点(所得税法37条)
– プライベートと共通する支出は、事業ぶんだけを家事按分して経費にする(施行令96条)
– 自分の給料・所得税・住民税・生活費・スーツや散髪は原則経費にならない
– 10万円以上の物は「経費」で一発ではなく、減価償却(例外あり)
– 迷ったら「第三者に事業との関係を説明できるか」で判断する
判定の軸は「事業に必要か」だけ
必要経費とは、ざっくり言えば「売上を上げるために必要な支出」です(所得税法37条)。だから判断は、費目の名前ではなく、その支出が自分の事業とどうつながっているかで決まります。
チェックはこの3つで足ります。
- 事業に関係する支出か?(事業関連性)
- その金額のうち、事業に使ったのは何割か?(プライベート共通なら家事按分)
- 説明できる根拠(レシート・メモ・記録)が残っているか?
同じ「カフェ代」でも、取引先との打合せなら経費、ただの気分転換なら家事費。費目ではなく使い方で決まることが、全体を貫く原則です。
一覧:できる/できない/家事按分
迷いやすい費目を3分類でまとめます。金額や使い方で変わるものは「家事按分」に置いています。
| 費目 | 判定 | 勘定科目・補足 |
|---|---|---|
| 仕入・材料 | ○ できる | 仕入高/材料費 |
| 外注・業務委託 | ○ できる | 外注工賃 |
| 事業用の消耗品・文具 | ○ できる | 消耗品費(1個10万円未満) |
| 事業専用のPC・機材 | △ 金額次第 | 10万円未満は消耗品費、10万円以上は減価償却(特例あり※後述) |
| 広告・名刺・Web制作 | ○ できる | 広告宣伝費 |
| 取引先との打合せ飲食 | ○ できる | 会議費/接待交際費(相手・目的をメモ) |
| 事業に関する書籍・研修 | ○ できる | 新聞図書費/研修費(事業関連が説明できる範囲) |
| 仕事専用回線の通信費 | ○ できる | 通信費(私用と分けていれば全額) |
| 自宅の家賃・電気・ネット(兼用) | 家事按分 | 地代家賃/水道光熱費/通信費(事業割合のみ) |
| 車のガソリン・保険・車検(兼用) | 家事按分 | 車両費・旅費交通費等(走行距離比) |
| 自宅の火災保険・固定資産税(持ち家兼用) | 家事按分 | 損害保険料/租税公課(面積比) |
| 一人のカフェ代・ランチ | 目的次第 | 打合せ・作業実態があれば会議費、私的なら家事費 |
| スーツ・時計・カバン・散髪 | × できない | 「業務専用」と言い切りにくく、原則は家事費 |
| 自分(事業主)への給料 | × できない | 事業主の取り分は「事業主貸」。経費にならない |
| 所得税・住民税 | × できない | 租税公課だが所得税・住民税は必要経費不算入 |
| 生計を共にする家族への給料 | × 原則不可 | 青色事業専従者給与の届出があれば別枠でOK |
| 罰金・交通反則金・延滞税 | × できない | 必要経費不算入 |
| 生活費・私的な旅行 | × できない | 家事費 |
※凡例:○経費にできる/事業ぶんだけ(家事按分・目的判定)/×原則できない
「できる」の代表——事業専用の支出
売上に直結する仕入・外注・広告、事業だけに使う機材やソフトは、迷わず経費です。取引先との飲食も、「いつ・誰と・何のために」をレシート裏やメモに残すだけで、立派な会議費・交際費になります。
「家事按分」の代表——プライベートと共通する支出
自宅家賃・光熱費・通信費・車など、仕事にも生活にも使う支出は、事業で使った割合だけを経費にします。割合の決め方と根拠の残し方は、専用記事にまとめました(家事按分の割合をゼロから決める手順)。
「できない」の代表——家事費・税金・自分の取り分
自分の生活費、スーツや散髪などの身だしなみ、所得税・住民税、そして事業主自身の給料は経費になりません。事業のお金を生活に回した分は「事業主貸」で処理します(経費ではなく、単なる資金の移動です)。
つまずきポイント:10万円のルール
取得価額が10万円以上の物は、買った年に全額経費、とはいきません。原則は減価償却(耐用年数に応じて分割)です。ただし、
- 10万円未満:消耗品費で全額その年の経費
- 青色申告なら40万円未満まで、少額減価償却資産の特例で全額その年の経費にできる(合計300万円/年まで。2026年3月31日以前に買ったものは30万円未満)
PCやカメラなど「ちょっと高い買い物」は、この線引きで処理が変わります。詳しくは減価償却の記事もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q. レシートがない支出は経費にできない?
原則は証憑が必要ですが、電車代など受け取れない場合は出金伝票やメモ(日付・金額・目的・相手)で代替できます。習慣として、支払ったらその場で記録を残しましょう。
Q. 家族との食事は交際費になる?
生計を共にする家族との私的な食事は家事費です。事業と無関係なので経費になりません。取引先や外部の協力者との会食は、目的が説明できれば会議費・交際費です。
Q. 経費が多いほど得なの?
税金は減りますが、手元のお金も減っています。無理に使うのは本末転倒です。「事業に必要だから使う→結果として経費」が正しい順序です。節税は「使う」より、使える経費を取りこぼさないことが本筋です。
Q. グレーな費目は入れないほうが安全?
入れ忘れも損です。大切なのは白か黒かではなく、事業関連性を説明できるか。説明できるなら堂々と、説明が苦しいなら控えます。この一貫した基準を持つことが、いちばんの安全策です。
まとめ
- 経費の軸は「事業の遂行上必要か」の一点
- プライベート共通は家事按分、自分の給料・税金・生活費・身だしなみは原則NG
- 10万円以上は減価償却(青色は40万円未満まで特例)
- 迷ったら「第三者に説明できるか」で判断
- 節税は使うことより、取りこぼさないことが本筋
この記事の主な根拠(出典)
- 所得税法37条(必要経費)、45条(家事費・家事関連費の不算入)
- 所得税法施行令96条(家事関連費のうち必要経費に算入できる部分)
- 租税特別措置法28条の2(中小事業者の少額減価償却資産の特例・40万円未満。2026年3月31日以前の取得は30万円未満)
- 国税庁タックスアンサー No.2210(やさしい必要経費の知識)、No.2100(減価償却のあらまし)
- ※出典の各ページは2026年8月7日に確認しました。制度は改正されることがあります
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