営業に回り、現場に行き、荷物を運ぶ。移動が多い仕事だと車関連の支出は年間で数十万円になります。それなのに「私用でも乗っているから、たぶん半分くらい?」というあいまいな処理で毎年やり過ごしている人が本当に多い。
車の按分でつまずく原因は2つに分けられます。①どの費目が経費になるのか分からない、②按分の根拠をどう作ればいいか分からない。この2つは別の問題なので、別々に片づけるのが早道です。
この記事では、費目の一覧・減価償却の考え方・按分方法の使い分け・走行記録の残し方を、まとめて引ける形にしました。
この記事の結論
– 車両本体は減価償却(普通自動車6年・軽自動車4年が基本)。ガソリン・保険・車検・税金・駐車場もすべて按分して経費
– 按分は走行距離按分が最も説明しやすい。難しい場合は使用日数按分
– ローンの元本は経費にならない(利息だけが経費)。ここは間違えやすい定番
– 割合そのものより根拠の記録が大事。「なんとなく5割」がいちばん弱い
まず全体像です。「按分」列が○のものは、事業使用割合を掛けた金額が経費になります。
| 費目 | 勘定科目の例 | 按分 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 車両本体(購入) | 車両運搬具(減価償却) | ○ | 一括では落とせない。後述 |
| ガソリン・軽油 | 車両費(旅費交通費でも可) | ○ | 給油レシートを保存 |
| 自動車税・軽自動車税 | 租税公課 | ○ | 環境性能割も同様 |
| 自動車重量税 | 租税公課 | ○ | 車検時にまとめて発生 |
| 自賠責保険・任意保険 | 損害保険料 | ○ | 複数年分は期間按分も検討 |
| 車検の検査・整備費用 | 車両費 | ○ | 大がかりな改造は資本的支出の可能性 |
| 修理代・タイヤ・部品・オイル | 車両費 | ○ | 性能を上げる支出は資産計上の検討 |
| 洗車・コーティング | 車両費 | ○ | 頻度が過大だと私的性格を問われやすい |
| 月極駐車場 | 地代家賃 | ○(事業専用なら全額) | 自宅の駐車場は自宅分と切り分ける |
| コインパーキング・高速道路料金 | 旅費交通費 | 事業分は全額 | 訪問先を記録すれば按分不要 |
| ETC車載器・ドラレコ・カーナビ | 消耗品費/資産計上 | ○ | 10万円以上は減価償却の検討 |
| JAFなどの年会費 | 諸会費 | ○ | ― |
| ローンの利息 | 利子割引料 | ○ | 元本は経費にならない |
| リサイクル料金 | 預託金(資産) | ― | 廃車時に費用化 |
| カーリース料 | リース料・賃借料 | ○ | 契約形態により処理が変わる |
ポイントは2つ。個々の移動で発生する高速代・パーキング代は「その移動が事業なら全額」であり、按分の対象ではありません(訪問先を記録するだけで済みます)。一方、車を持っていることで発生する固定費(税金・保険・減価償却)は按分になります。
費目全体の線引きは経費にできるものの一覧、判断で見られやすい点は経費の注意点にまとめています。
100万円の車を買っても、その年に100万円を経費にはできません。車両運搬具として資産に計上し、耐用年数にわたって分割して経費にする——これが減価償却です。
主な耐用年数(新車の場合)はこうなっています。
| 区分 | 法定耐用年数 |
|---|---|
| 普通自動車(自家用) | 6年 |
| 軽自動車(自家用) | 4年 |
| 小型貨物自動車 | 4年 |
| 二輪・原付 | 3年 |
個人事業主は原則定額法です。計算はシンプルで、取得価額 ÷ 耐用年数 × 事業使用割合(年の途中で使い始めたら月数按分)。
例:250万円の普通自動車(新車)を事業割合60%で使う場合
中古車なら年数が短くなります。 中古資産は「(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%」で計算し(1年未満切捨て、最低2年)、たとえば4年落ちの普通自動車は2年になります。同じ金額でも1年に落とせる額が大きくなるため、中古車が選ばれる理由のひとつです。
また、青色申告者は取得価額30万円未満の資産を全額その年の経費にできる特例(合計300万円まで)が使えます。車両で30万円未満は多くありませんが、ドラレコ・ETC・タイヤ交換などで効くことがあります(30万円未満の減価償却の特例)。
なお、購入時の付随費用のうち自動車税・保険料・リサイクル料金・検査登録や車庫証明の費用などは、取得価額に含めずその年の費用として処理できます。車両本体価格と諸費用を分けて把握しておくと計算が楽になります。
家事関連費は、業務の遂行上必要な部分を明らかに区分できる場合に、その部分が経費になります(所得税法45条・同施行令96条)。「明らかに区分」の作り方が按分方法です。
| 方法 | 計算 | 向くケース | 根拠の残し方 |
|---|---|---|---|
| 走行距離按分 | 事業の走行距離 ÷ 総走行距離 | 営業・配送・現場移動など距離が実態を表す仕事 | 走行記録(日付・行き先・目的・距離) |
| 使用日数按分 | 事業で使った日数 ÷ 総日数 | 「平日は仕事、休日は私用」が明確な人 | カレンダー・稼働記録・週の使用パターン |
迷ったら走行距離按分です。理由は単純で、数字の裏づけを作りやすいから。「週5日仕事で使うから5/7=約71%」という日数按分も成立しますが、平日の買い物や送迎が混ざると説明が弱くなります。
按分の考え方そのものは自宅家賃・光熱費と共通です。全体の設計は家事按分の比率の決め方と家事按分の割合を先に読むと、車だけ浮いた割合にならずに済みます。
按分割合の数字より、その数字の出どころが問われます。とはいえ毎日きっちり記録するのは続きません。現実的な落としどころを示します。
記録する項目は4つだけ。
続けるための工夫。
避けたいのは、根拠ゼロの丸い割合です。「たぶん半分だから50%」は、説明を求められたときに何も出せません。逆に、多少ラフでも記録に基づいて算出した62%のほうが、はるかに強いです。
事業専用車であれば全額経費です。次のような状態なら説明が通ります。
一方、注意したいのが自宅兼事務所のケース。自宅が事務所なら「通勤」がないので、その分は事業と言いやすい。ただし買い物・送迎・帰省で使えばそれは私用です。1台しか持っていない場合は、100%を主張するより実態に沿った高めの割合で組むほうが安全です。
返済額のうち経費になるのは利息だけです。元本の返済はお金が出ていくだけで費用ではありません(車両の価値は減価償却で費用化されています)。月々の引落額をまるごと車両費にすると、経費が二重に立ちます。
車検・重量税・保険がまとまって出るため、隔年で経費が大きく動きます。誤りではありませんが、納税資金の見込みが狂う原因になります。車検の年を把握して資金計画に入れておきましょう。領収書を紛失したときの対応は領収書をなくした経費の残し方を参照してください。
事業用の車両を売った場合、帳簿価額との差額は譲渡所得として計算します(事業所得ではありません)。下取りに出して新車を買うと、値引きと下取りが混ざって処理を誤りやすい部分です。金額が大きくなりやすいので、迷ったら税理士に確認してください。
Q. 家族名義の車を仕事で使っています。経費にできますか?
生計を一にする親族が所有する資産を事業に使っている場合、その資産に係る減価償却費やガソリン代などを事業主の必要経費として扱う取扱いがあります。ただし前提として実際に事業で使っていることと、按分の根拠が必要です。名義だけ家族で実質は自分の車、というケースは特に記録を丁寧に残してください。
Q. 途中から事業用に使い始めた車はどうなりますか?
私用で使っていた車を事業に転用した場合、非事業用期間の減価に相当する額を差し引いた金額(未償却残高)を基礎に償却していきます。購入価額をそのまま使うわけではありません。購入時の契約書・見積書を探しておいてください。
Q. 按分割合は毎年変えてもいいですか?
実態が変わったなら変えるべきです。仕事量が増えて走行距離が伸びたのに前年の割合を使い続けるのは、かえって不自然です。変えた年の記録(走行記録・稼働状況)を残すことがセットになります。
Q. 走行距離の記録を求められることは実際にありますか?
車両費・減価償却費の金額が大きいと、按分割合の根拠を尋ねられることは十分にあります。そのとき出せるものが走行記録か、それに代わる客観的な記録です。作っておいて損はありません。
Q. 消費税の課税事業者です。車の購入は全額仕入税額控除できますか?
本則課税の場合、事業に使う割合に応じた部分が控除の対象になります。家事使用分は控除できません。所得税の按分割合と整合させるのが基本です。
Q. カーリースなら按分は不要ですか?
不要にはなりません。リース料も事業使用割合分が経費です。ただし減価償却の計算が不要になり、月額が一定になるため管理は楽になります。
👉 家事按分の比率はどう決める?決め方と根拠の作り方
👉 家賃・光熱費の家事按分の割合
👉 30万円未満なら全額経費?少額減価償却資産の特例
👉 どこまで経費にできる?費目別の一覧
👉 領収書をなくした経費、出金伝票で残す方法