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更新日 2026-07-25 起業時の知識第44回

仕事とプライベート兼用の車、どこまで経費?車両代・ガソリン代の按分ルール総まとめ

営業に回り、現場に行き、荷物を運ぶ。移動が多い仕事だと車関連の支出は年間で数十万円になります。それなのに「私用でも乗っているから、たぶん半分くらい?」というあいまいな処理で毎年やり過ごしている人が本当に多い。

車の按分でつまずく原因は2つに分けられます。①どの費目が経費になるのか分からない②按分の根拠をどう作ればいいか分からない。この2つは別の問題なので、別々に片づけるのが早道です。

この記事では、費目の一覧・減価償却の考え方・按分方法の使い分け・走行記録の残し方を、まとめて引ける形にしました。

この記事の結論
– 車両本体は減価償却(普通自動車6年・軽自動車4年が基本)。ガソリン・保険・車検・税金・駐車場もすべて按分して経費
– 按分は走行距離按分が最も説明しやすい。難しい場合は使用日数按分
ローンの元本は経費にならない(利息だけが経費)。ここは間違えやすい定番
– 割合そのものより根拠の記録が大事。「なんとなく5割」がいちばん弱い

経費にできる費目の一覧

まず全体像です。「按分」列が○のものは、事業使用割合を掛けた金額が経費になります。

費目 勘定科目の例 按分 注意点
車両本体(購入) 車両運搬具(減価償却 一括では落とせない。後述
ガソリン・軽油 車両費(旅費交通費でも可) 給油レシートを保存
自動車税・軽自動車税 租税公課 環境性能割も同様
自動車重量税 租税公課 車検時にまとめて発生
自賠責保険・任意保険 損害保険料 複数年分は期間按分も検討
車検の検査・整備費用 車両費 大がかりな改造は資本的支出の可能性
修理代・タイヤ・部品・オイル 車両費 性能を上げる支出は資産計上の検討
洗車・コーティング 車両費 頻度が過大だと私的性格を問われやすい
月極駐車場 地代家賃 ○(事業専用なら全額) 自宅の駐車場は自宅分と切り分ける
コインパーキング・高速道路料金 旅費交通費 事業分は全額 訪問先を記録すれば按分不要
ETC車載器・ドラレコ・カーナビ 消耗品費/資産計上 10万円以上は減価償却の検討
JAFなどの年会費 諸会費
ローンの利息 利子割引料 元本は経費にならない
リサイクル料金 預託金(資産) 廃車時に費用化
カーリース料 リース料・賃借料 契約形態により処理が変わる

ポイントは2つ。個々の移動で発生する高速代・パーキング代は「その移動が事業なら全額」であり、按分の対象ではありません(訪問先を記録するだけで済みます)。一方、車を持っていることで発生する固定費(税金・保険・減価償却)は按分になります。

費目全体の線引きは経費にできるものの一覧、判断で見られやすい点は経費の注意点にまとめています。

車両本体は減価償却で分割する

100万円の車を買っても、その年に100万円を経費にはできません。車両運搬具として資産に計上し、耐用年数にわたって分割して経費にする——これが減価償却です。

主な耐用年数(新車の場合)はこうなっています。

区分 法定耐用年数
普通自動車(自家用) 6年
軽自動車(自家用) 4年
小型貨物自動車 4年
二輪・原付 3年

個人事業主は原則定額法です。計算はシンプルで、取得価額 ÷ 耐用年数 × 事業使用割合(年の途中で使い始めたら月数按分)。

例:250万円の普通自動車(新車)を事業割合60%で使う場合

  • 1年分の償却費 = 250万円 ÷ 6年 = 約41.6万円
  • そのうち経費になるのは 41.6万円 × 60% = 約25万円

中古車なら年数が短くなります。 中古資産は「(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%」で計算し(1年未満切捨て、最低2年)、たとえば4年落ちの普通自動車は2年になります。同じ金額でも1年に落とせる額が大きくなるため、中古車が選ばれる理由のひとつです。

また、青色申告者は取得価額30万円未満の資産を全額その年の経費にできる特例(合計300万円まで)が使えます。車両で30万円未満は多くありませんが、ドラレコ・ETC・タイヤ交換などで効くことがあります(30万円未満の減価償却の特例)。

なお、購入時の付随費用のうち自動車税・保険料・リサイクル料金・検査登録や車庫証明の費用などは、取得価額に含めずその年の費用として処理できます。車両本体価格と諸費用を分けて把握しておくと計算が楽になります。

按分方法は2つ、どちらかを選ぶ

家事関連費は、業務の遂行上必要な部分を明らかに区分できる場合に、その部分が経費になります(所得税法45条・同施行令96条)。「明らかに区分」の作り方が按分方法です。

方法 計算 向くケース 根拠の残し方
走行距離按分 事業の走行距離 ÷ 総走行距離 営業・配送・現場移動など距離が実態を表す仕事 走行記録(日付・行き先・目的・距離)
使用日数按分 事業で使った日数 ÷ 総日数 「平日は仕事、休日は私用」が明確な人 カレンダー・稼働記録・週の使用パターン

迷ったら走行距離按分です。理由は単純で、数字の裏づけを作りやすいから。「週5日仕事で使うから5/7=約71%」という日数按分も成立しますが、平日の買い物や送迎が混ざると説明が弱くなります。

按分の考え方そのものは自宅家賃・光熱費と共通です。全体の設計は家事按分の比率の決め方家事按分の割合を先に読むと、車だけ浮いた割合にならずに済みます。

走行記録の残し方(ここが本体)

按分割合の数字より、その数字の出どころが問われます。とはいえ毎日きっちり記録するのは続きません。現実的な落としどころを示します。

記録する項目は4つだけ。

  1. 日付
  2. 行き先(訪問先名)
  3. 目的(打合せ・納品・現場確認など)
  4. 走行距離(またはメーターの開始・終了)

続けるための工夫。

  • カレンダーで兼用する:訪問予定をカレンダーに入れているなら、そこに距離を1行足すだけ。専用の帳簿を作らない
  • 地図アプリの履歴を使う:スマホの位置履歴やカーナビの走行履歴が残っていれば、後から距離を復元できます
  • 代表期間で測る:1年分を毎日つけるのが難しければ、繁忙期・閑散期を含む1〜3ヶ月をきちんと記録し、そこから年間の割合を推計する。年間総走行距離は車検証・整備記録・オイル交換の記録で裏づけられます
  • 年始と年末にメーターを撮る:これだけで年間総走行距離が確定します。1年で2枚の写真です

避けたいのは、根拠ゼロの丸い割合です。「たぶん半分だから50%」は、説明を求められたときに何も出せません。逆に、多少ラフでも記録に基づいて算出した62%のほうが、はるかに強いです。

100%経費にできるのはどんなとき

事業専用車であれば全額経費です。次のような状態なら説明が通ります。

  • 私用の車が別にある(家族の車を含め、生活の移動はそちらで完結している)
  • 車体に屋号・ロゴを入れている、荷室が事業用に固定されている
  • 保管場所が事業所で、使用実態が事業に限られている

一方、注意したいのが自宅兼事務所のケース。自宅が事務所なら「通勤」がないので、その分は事業と言いやすい。ただし買い物・送迎・帰省で使えばそれは私用です。1台しか持っていない場合は、100%を主張するより実態に沿った高めの割合で組むほうが安全です。

つまずきポイント3つ

① ローンの元本を経費にしてしまう

返済額のうち経費になるのは利息だけです。元本の返済はお金が出ていくだけで費用ではありません(車両の価値は減価償却で費用化されています)。月々の引落額をまるごと車両費にすると、経費が二重に立ちます。

② 車検の年だけ経費が跳ねる

車検・重量税・保険がまとまって出るため、隔年で経費が大きく動きます。誤りではありませんが、納税資金の見込みが狂う原因になります。車検の年を把握して資金計画に入れておきましょう。領収書を紛失したときの対応は領収書をなくした経費の残し方を参照してください。

③ 売却・下取りの処理を忘れる

事業用の車両を売った場合、帳簿価額との差額は譲渡所得として計算します(事業所得ではありません)。下取りに出して新車を買うと、値引きと下取りが混ざって処理を誤りやすい部分です。金額が大きくなりやすいので、迷ったら税理士に確認してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 家族名義の車を仕事で使っています。経費にできますか?
生計を一にする親族が所有する資産を事業に使っている場合、その資産に係る減価償却費やガソリン代などを事業主の必要経費として扱う取扱いがあります。ただし前提として実際に事業で使っていることと、按分の根拠が必要です。名義だけ家族で実質は自分の車、というケースは特に記録を丁寧に残してください。

Q. 途中から事業用に使い始めた車はどうなりますか?
私用で使っていた車を事業に転用した場合、非事業用期間の減価に相当する額を差し引いた金額(未償却残高)を基礎に償却していきます。購入価額をそのまま使うわけではありません。購入時の契約書・見積書を探しておいてください。

Q. 按分割合は毎年変えてもいいですか?
実態が変わったなら変えるべきです。仕事量が増えて走行距離が伸びたのに前年の割合を使い続けるのは、かえって不自然です。変えた年の記録(走行記録・稼働状況)を残すことがセットになります。

Q. 走行距離の記録を求められることは実際にありますか?
車両費・減価償却費の金額が大きいと、按分割合の根拠を尋ねられることは十分にあります。そのとき出せるものが走行記録か、それに代わる客観的な記録です。作っておいて損はありません。

Q. 消費税の課税事業者です。車の購入は全額仕入税額控除できますか?
本則課税の場合、事業に使う割合に応じた部分が控除の対象になります。家事使用分は控除できません。所得税の按分割合と整合させるのが基本です。

Q. カーリースなら按分は不要ですか?
不要にはなりません。リース料も事業使用割合分が経費です。ただし減価償却の計算が不要になり、月額が一定になるため管理は楽になります。

まとめ

  • 車両本体は減価償却(普通車6年・軽4年/中古は短縮、4年落ち普通車は2年)
  • ガソリン・税金・保険・車検・駐車場は按分して経費。高速代・パーキング代は事業分は全額
  • 按分は走行距離按分が第一候補。日数按分は「平日仕事」が明確な人向け
  • 記録が本体。日付・行き先・目的・距離の4項目。年始年末のメーター写真+代表期間の記録で十分に戦える
  • ローン元本は経費にならない。売却は譲渡所得。転用は未償却残高から
この記事の主な根拠(出典)

  • 所得税法37条(必要経費)/45条1項1号・同施行令96条(家事関連費の必要経費算入)
  • 所得税法49条・同施行令120条の2(減価償却/個人は原則定額法)
  • 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(車両運搬具の耐用年数)
  • 同省令3条1項(中古資産の耐用年数の簡便法)
  • 所得税法施行令126条(減価償却資産の取得価額)
  • 租税特別措置法28条の2(中小事業者の少額減価償却資産の特例/30万円未満・年300万円まで)
  • 国税庁タックスアンサー「事業と家事に共通する費用の取扱い」「中古資産の耐用年数」
  • ※2026年時点の制度に基づく

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