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更新日 2026-07-25 起業時の知識第31回

稼いだお金、いくら残せば税金で困らない?「利益の◯割を別口座」の決め方

売上が立ち始めると、次に来る不安が「税金でいくら持っていかれるんだろう」。ネットで「税金 何割 貯金」と調べても、2割・3割・4割と人によってバラバラで、結局自分はどれなのかが分からない。多めに残せば資金繰りが苦しいし、少なすぎると納税で詰む——どちらも怖い、という状態です。

この記事は、その「何割?」にあなたの利益の帯で答えを出します。結論はシンプル。まず利益の3割を別口座に隔離し、初めての確定申告が終わったら自分の実際の率に微調整する——これだけです。

この記事の結論
– 個人事業主に後から来る税金は主に4つ:所得税・住民税・個人事業税・(課税事業者なら)消費税
– 取り置きの目安は利益の帯で変わる。ざっくり2割(低め)〜4割(高め)
– 迷ったら「利益の3割を別口座」から始め、確定申告後に自分の実効率で微調整
– 別口座に物理的に隔離するのが最強の防衛策。使えないお金は使えない
– インボイスの課税事業者は、上に消費税ぶん(2割特例なら売上の約2%)を上乗せ

まず全体像:後から来る税金は4つ(+α)

利益(売上−経費)に対して、時間差でこれらが請求されます。稼いだ年の翌年に集中して来るのが、資金繰りを狂わせる最大の理由です。

税金 ざっくりの中身 いつ来る
所得税 利益(所得)に応じて5〜45%の累進 翌年2〜3月(確定申告で納付)
住民税 所得のおおむね10%+均等割 翌年6月〜(4分割 or 一括)
個人事業税 業種により3〜5%(事業主控除290万円/年あり) 翌年8月・11月
消費税 課税事業者のみ。2割特例なら売上税額の2割 翌年3月末

※このほか、税ではありませんが国民健康保険料・国民年金も所得に応じて後から来ます(市区町村・年金機構の管轄で、金額は自治体により異なります)。「後から来るお金」として頭の片隅に置いておきましょう。

ポイントは、所得税だけを見ていると足をすくわれること。住民税と個人事業税は所得税とは別のタイミングで、合計すると所得税と同じくらいのインパクトになることもあります。だから「取り置き率」は、この合算で考えます。

取り置き率の早見表(利益の帯で決める)

下の表は、所得控除(基礎控除・社会保険料控除・青色65万円控除など)をおおまかに織り込んだ“取り置きの目安”です。正確な税額は確定申告で計算されますが、「別口座にいくら避けておくか」の目安としてはこれで十分実用的です。

年間の利益(おおよそ) 取り置き率の目安 ひとことメモ
〜300万円 約20% 所得税率も低く、各種控除で税額は小さめ。まず2割
300〜600万円 約25〜30% 個人事業税(5%)も効いてくる帯。3割が安心
600〜900万円 約30〜35% 所得税率20〜23%+住民税10%+事業税5%
900万円〜 約40%〜 所得税率33%以上の帯。4割は確保したい

インボイスで課税事業者になっている場合は、上の率に消費税ぶんを上乗せします。2割特例(2026年時点で使える簡便計算)なら、負担は税抜売上のおおむね2%(売上に係る消費税10%×20%)。本則課税や簡易課税を選んでいる場合は別途計算になります。

例:利益450万円・インボイス課税事業者(2割特例)・税抜売上600万円の場合
→ 取り置き 約28%(≒126万円)+消費税ぶん 約12万円(600万円×2%)= 合計およそ138万円を別口座へ

だから「利益の3割を別口座」から始める

帯ごとの目安はあるものの、初年度は自分の控除額が読み切れません。そこで実務的なスタートラインが「利益の3割」です。

  • 多くの個人事業主にとって、3割はやや多め〜ちょうどの安全側
  • 初めての確定申告で実際の税額が分かるので、翌年からは自分の実効率(納税額 ÷ 利益)に微調整すればよい
  • 低い所得帯なら、申告後「2割で足りた」と分かって余りが出る。それは貯蓄として残せばいい——足りないより、ずっと健全です

仕組み化:物理的に「使えないお金」にする

意志の力で貯めようとすると、たいてい失敗します。おすすめは物理的な隔離です。

  1. 納税用の口座を1つ作る(事業用口座とは別に)
  2. 売上が入金されたら、または月末に、利益の3割を自動 or 手動で移す
  3. その口座は「ない口座」として扱い、確定申告・住民税・事業税の納付にだけ使う

入金のたびに3割を先に避ける「先取り」にすると、残ったお金で生活・事業を回す習慣がつき、納税月に慌てません。会計ソフトで毎月の利益を把握できていれば、移す金額もすぐ分かります。

2年目の落とし穴:予定納税

もう一つ気をつけたいのが予定納税。前年の所得税額が一定以上だと、2年目以降はその年の所得税を前払いする予定納税が7月・11月に来ます。つまり2年目は「前年ぶんの確定申告+今年ぶんの前払い」が重なりやすい。取り置きは、この前払いも見込んでおくと安心です(詳しくは予定納税の記事へ)。

よくある質問(FAQ)

Q. 売上の何割、じゃなくて利益の何割で合ってる?
はい、利益(売上−経費)を基準にします。売上ベースだと経費の多い事業ほどズレます。税金は利益にかかるので、取り置きも利益で考えるのが正確です。

Q. 個人事業税は誰でもかかる?
事業主控除290万円があるため、利益が290万円以下ならかかりません。また、業種によって税率(3〜5%)が違い、一部の業種は課税対象外です。自分の業種の扱いは、都道府県の案内で確認できます。

Q. 3割も残すと事業に回すお金が足りない…
その感覚はとても大事です。だからこそ別口座で見える化します。「回せるお金」と「納税で消えるお金」を最初から分けておけば、手元資金を実態より多く錯覚せずに済みます。取り置きは“貯金”ではなく“預かっているだけの他人のお金”と考えると割り切れます。

Q. 国保や年金も取り置きに入れるべき?
税金とは別ですが、これらも所得に応じて後から来ます。心配なら取り置き率を数%上乗せしておくと、より安心です(保険料額は自治体により異なるため、通知や試算で確認を)。

まとめ

  • 後から来る税金は所得税・住民税・個人事業税・(課税事業者は)消費税の合算で考える
  • 取り置きの目安は利益の帯で2割〜4割。インボイス課税事業者は消費税ぶんを上乗せ
  • 迷ったら「利益の3割を別口座」から。確定申告後に自分の実効率へ微調整
  • 物理的に隔離して「使えないお金」にするのが最強
  • 2年目は予定納税の前払いも重なりやすい
この記事の主な根拠(出典)

  • 所得税法89条(所得税の税率)、地方税法(住民税所得割・個人事業税)
  • 地方税法72条の49の12ほか(個人事業税の事業主控除290万円・法定業種と税率)
  • 国税庁タックスアンサー No.2260(所得税の税率)、No.2040(予定納税)
  • 消費税の2割特例:平成28年改正法附則51条の2(適格請求書発行事業者となる小規模事業者の負担軽減)
  • ※2026年時点の制度に基づく。税率・控除・保険料は年度や自治体で変わる

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