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更新日 2026-07-25 経理と確定申告第27回

毎日ちゃんと記帳しているのに、なぜ年末に「決算整理」が必要なの?箱の比喩で腹落ちさせる

毎日レシートを入力して、通帳も同期して、1年きちんと記帳してきた。なのに年明けに調べると「決算整理をします」と出てくる。

もう帳簿はできているのでは? ——ここでつまずく人がとても多いです。

結論から言います。日々の記帳は「お金が動いた事実」の記録です。一方、税金の計算に必要なのは「その年に属するもうけ」。この2つはズレます。決算整理は、そのズレを直して帳簿を「その年のもうけ」に組み替える作業です。

この記事の結論
– 日々の記帳=箱にレシートを入れる。決算整理=年末に箱の中身を数え直す
– ズレる理由は法律側にある。収入は「収入すべき金額が確定した」年、経費は「債務が確定した」年に計上する(所得税法36条・37条)
– 期末にしかできない調整は5つ。①売掛・買掛 ②棚卸 ③減価償却 ④家事按分 ⑤事業主貸借と残高の確認
– 順番がある。現金・預金の残高を合わせるのが最初。ここを飛ばすと後の作業が全部やり直しになる
– 飛ばすと65万円控除が取れない/利益が過小になって後で修正申告になる

「箱の比喩」で3分

日々の記帳 決算整理
やっていること 起きた取引を箱に入れる 箱の中身をその年のもうけに組み替える
基準 お金が動いた/取引があった その年に属するかどうか
いつでもできる? できる。毎日・毎月の作業 12月31日を過ぎないとできない
12月20日に納品して請求書を出した その入金が1月でも今年の売上にする
12月に仕入れた商品 売れ残った分は今年の経費から外す

日々の記帳は「集める」作業、決算整理は「数え直す」作業です。集めただけでは、まだ税金の計算に使えません。

なぜ数え直しが必要なのか——理由は条文にある

所得税は「その年中に入ってきた現金」で計算するのではありません。

  • 収入は、その年において収入すべき金額が確定したものを計上します(所得税法36条1項)
  • 経費は、その年において債務が確定した金額を計上します(所得税法37条1項)

これがいわゆる発生主義です。だから「12月に納品して1月に入金」は今年の売上、「12月に使った電気代を1月に引き落とし」は今年の経費になります。

会計ソフトは、あなたが入力した日付でしか判断できません。どの取引がどちらの年に属するかを決めるのは人間の側です。ここが決算整理の正体です。

なお、青色申告者で前々年の所得が一定額以下の人は届出により現金主義を選べますが(所得税法67条)、その場合の青色申告特別控除は10万円になります。65万円・55万円を狙うなら発生主義は避けて通れません。

期末にしかできない5つの調整

① 売掛金・買掛金・未払費用・前払費用(期間のズレ)

12月納品・1月入金、12月利用・1月引落。年末年始をまたぐ取引は、日付を跨ぐ側に寄せる調整が必要です。売上の計上年を間違えると、そのまま税額の間違いになります。

ここは論点が多いので別記事にしました(12月に納品・1月に入金、この売上は今年?来年?)。

② 棚卸(売れ残りは経費ではない)

仕入れた商品のうち12月31日に売れ残っている分は、今年の経費になりません。翌年に売れたときの経費になります。

12月31日時点の在庫を数え、金額を出して帳簿に入れる。これが棚卸です。評価方法は届出をしていなければ最終仕入原価法になります(所得税法47条、同施行令99条・101条)。

在庫を持たない業種(サービス業・制作業など)は原則としてこの作業は不要ですが、販売用に仕入れた材料や、まだ請求していない未完成の仕事がある場合は確認してください。

③ 減価償却(高いものは分割して経費にする)

取得価額10万円以上のものは、買った年に全額を経費にできません。耐用年数にわたって分割します(所得税法49条)。

10万円〜30万円の帯には選択肢があり、青色申告者なら全額を経費にできる特例もあります(12万円のパソコンはその年に全額経費で落とせない?)。この判断は年末の利益を見てからのほうが有利なので、決算整理のタイミングで確定させます。

④ 家事按分(プライベートと混ざっている費用)

自宅兼事務所の家賃、電気代、スマホ代。事業に使った割合だけが経費になります(所得税法45条1項1号、同施行令96条)。

毎月の入力時に按分してもよいのですが、年末にまとめて按分するほうが計算が安定します(1年分の使用実績で割合を出せるため)。割合の決め方と根拠の残し方は家事按分で“盛りすぎ否認”を避ける割合の決め方にまとめています。

⑤ 事業主貸・事業主借と残高の確認

個人事業では、生活費の引き出しは事業主貸、自分の財布から事業の支払いをしたら事業主借で処理します。これを経費や売上に混ぜていると、利益がまるごとおかしくなります。

そして最後に、現金と預金の残高が実際と一致しているかを確認します。

業種別——自分に必要な調整はどれか

5つ全部が必要な人は多くありません。自分の業種で当たりを付けてください。

業種の例 売掛買掛 棚卸 減価償却 家事按分
受託制作・ライター・デザイナー 必須(月末締め翌月払いが多い) 原則不要 PC・カメラがあれば必要 自宅兼事務所なら必須
コンサル・講師・士業 必須 不要 PC・書籍等 必須
物販・EC・小売 必須 必須(最重要) 什器・PC 自宅発送なら必要
飲食店 必須 必須(食材・酒類) 必須(厨房設備・内装) 店舗が別なら不要
教室・サロン 前受金の調整が出やすい 物販があれば必要 必須(設備) 自宅開業なら必須
不動産賃貸(兼業) 前受賃料・未収賃料 不要 必須(建物) 自宅の一部を貸すなら必要

在庫を持たない業種は棚卸を飛ばして構いません。逆に物販で棚卸を飛ばすのは致命的です。売れ残りが全部経費に入り、利益が実態より小さく出ます。

順番を間違えないための手順

  1. 預金残高を通帳と一致させる(未入力・二重入力を先に潰す)
  2. 現金残高がマイナスになっていないか確認(マイナスは物理的にありえない=入力漏れのサイン)
  3. 売掛金・買掛金の消し込み(入金済みなのに残っていないか)
  4. 棚卸を入れる
  5. 減価償却を確定させる(10万〜30万円の処理方法をここで選ぶ)
  6. 家事按分を入れる
  7. 事業主貸・事業主借の中身を点検する
  8. 貸借対照表と損益計算書を出して違和感を見る

①②を後回しにすると、③以降をやり直すことになります。残高合わせが最初、これだけは順番を守ってください。

飛ばすとどうなるか

飛ばした調整 起きること
売掛・買掛 売上や経費の計上年がズレる。税務調査で最初に見られる論点
棚卸 売れ残りが経費に入り、利益が過小になる。後で修正申告
減価償却 高額品を全額経費にして否認される/逆に特例を使い損ねる
家事按分 経費に私用が混ざる。割合の根拠がないと否認されやすい
残高の確認 貸借対照表が実態と合わず、65万円控除の前提が崩れる

青色申告特別控除の65万円・55万円は、貸借対照表の添付が要件です(租税特別措置法25条の2、所得税法施行規則65条)。貸借対照表は決算整理を通さないと意味のある数字になりません。「控除のために形だけ出す」ができない仕組みになっています。

よくある質問(FAQ)

Q. 会計ソフトが自動でやってくれないのですか。
一部はやってくれます(減価償却の計算、元入金の振替など)。しかし棚卸の金額、按分の割合、どの取引が年をまたぐかは、ソフトが知りようのない情報です。そこは人が入れます。

Q. 売上も経費も全部その年に入金・支払済みです。それでも決算整理は必要?
売掛・買掛の調整は不要でも、減価償却・家事按分・残高の確認は残ります。在庫があれば棚卸も必要です。

Q. 白色申告でも決算整理は必要ですか。
必要です。収支内訳書でも、売上・経費の計上年と減価償却・按分の考え方は同じです。青色との違いは控除と帳簿の作り方であって、もうけの計算ルールは共通です。

Q. 12月31日が休日で在庫を数えられませんでした。
実務では、直近の実地棚卸に年末までの受払を加減して12月31日時点の数量を出します。数えた日付と計算過程をメモに残すことが大切です。

Q. 前年の決算整理を間違えていたと気づきました。
所得が過少なら修正申告、過大なら更正の請求(原則5年以内・国税通則法23条)で直せます。放置すると翌年の期首残高が狂い続けるので、早いほうが軽く済みます

Q. 決算整理はいつやるのがいいですか。
12月31日を過ぎたらすぐ着手できます。ただし減価償却の方法選択や少額特例は「その年の利益」を見て決めるほうが有利なので、12月中に利益の見込みを出しておくと選択肢が広がります。

Q. どこまでやれば「終わり」なのですか。
貸借対照表の現金・預金が実際の残高と一致し、事業主貸借の中身を説明できる状態になれば終わりです。ここまで来れば、あとは決算書と申告書の作成です(記帳が終わったら何をする?)。

まとめ

  • 日々の記帳は集める作業、決算整理はその年のもうけに組み替える作業。別物です
  • ズレる理由は条文側にある。収入は確定した年、経費は債務が確定した年(所得税法36条・37条)
  • 期末にしかできない調整は①売掛買掛 ②棚卸 ③減価償却 ④家事按分 ⑤事業主貸借と残高
  • 順番は残高合わせが最初。ここを飛ばすと後工程がやり直しになる
  • 65万円・55万円控除は貸借対照表が要件。決算整理を通さないと数字が意味を持たない
  • ソフトが代われないのは棚卸の金額・按分の割合・年をまたぐ判定の3つ
この記事の主な根拠(出典)

  • 所得税法36条(収入金額)/37条(必要経費)/45条(家事関連費)/47条(棚卸資産の売上原価)/49条(減価償却費)/67条(小規模事業者の現金主義)
  • 所得税法施行令96条(家事関連費)/99条・101条(棚卸資産の評価方法・法定評価方法)
  • 所得税法施行規則65条(青色申告決算書の添付)
  • 租税特別措置法25条の2(青色申告特別控除)
  • 国税通則法23条(更正の請求)
  • 国税庁タックスアンサー「やさしい必要経費の知識」「棚卸資産の評価方法」「減価償却のあらまし」
  • ※2026年時点の制度に基づく記事です

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👉 12月に納品・1月に入金、この売上は今年?来年?
👉 12万円のパソコンはその年に全額経費で落とせない?
👉 家賃・電気・スマホは経費に何割?家事按分の割合の決め方
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