12月20日に納品して請求書を出した。入金は1月25日。——この売上は今年ですか、来年ですか。
会計ソフトの入金画面を見ながら固まる人がとても多い場面です。そして、ここを「入金した日」で入れてしまうと、売上の年がまるごとズレます。
結論は単純です。モノやサービスを引き渡した日で計上します。 入金日ではありません。
この記事の結論
– 売上は引き渡した日/役務の提供が完了した日。入金日は関係ない(所得税法36条1項)
– 経費は債務が確定した日。支払日ではない(所得税法37条1項)
– 使う勘定は4つ。売掛金・買掛金・未払費用・前払費用
– 12月利用・1月引落のカード払いは利用日(購入日)が今年の経費
– 支払調書と自分の帳簿は一致しないことがある。相手は支払日基準、自分は引渡日基準
– この調整を飛ばすと65万円控除の前提が崩れる。税務調査で最初に見られる論点でもある
所得税法は、その年の収入を「その年において収入すべき金額が確定したもの」と定めています(36条1項)。国税庁の通達では、物の販売は引渡しの日、人的役務の提供は役務の提供を完了した日が基準です(所得税基本通達36-8)。
経費のほうは「その年において債務が確定した金額」(37条1項)。次の3つを満たした時点で「確定」します。
つまり「使ったかどうか」「引き渡したかどうか」で年が決まります。請求書を出したかどうかも、入金があったかどうかも、判定基準ではありません。
| 出来事 | 何年の売上/経費? | 期末に使う勘定 |
|---|---|---|
| 12/20納品、1/25入金 | 今年の売上 | 売掛金 |
| 12/28に作業完了、請求書は1/5発行 | 今年の売上(請求書の日付ではない) | 売掛金 |
| 12/15に前金を受け取り、納品は2月 | 来年の売上(引き渡し前) | 前受金 |
| 12月分の外注費、支払いは1/31 | 今年の経費 | 買掛金 |
| 12月に使った電気・通信費、引落は1月 | 今年の経費 | 未払費用 |
| 1月分の家賃を12/27に前払い | 原則来年の経費(例外あり・後述) | 前払費用 |
| 12/20にカードで備品購入、引落は1/27 | 今年の経費 | 未払金 |
| 12/28にAmazonで注文、到着は1/4 | 来年の経費(引渡しは1月) | — |
最後の行は見落としがちです。注文日でも決済日でもなく、引き渡された日で判定します。
| 勘定 | 意味 | 典型例 |
|---|---|---|
| 売掛金 | 引き渡し済みで、まだ入金されていない売上 | 12月納品・1月入金 |
| 買掛金 | 仕入や外注で、まだ支払っていないもの | 12月分の外注費 |
| 未払費用 | 継続的なサービスで、期末までに使った分の未払い | 12月分の電気代・通信費・家賃 |
| 前払費用 | 来年分を先に払ったもの | 1月分の家賃を12月に支払 |
買掛金と未払費用の違いは、仕入・外注のような個別の取引か、家賃・水道光熱費のような継続的な役務かの違いです。実務では会計ソフトの科目に合わせれば足りますが、「未払金」は資産の購入代金や単発の債務に使う、と覚えておくと迷いません。
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 12月に納品(税込11万円) | 売掛金 110,000 | 売上 110,000 |
| 1月に入金 | 普通預金 110,000 | 売掛金 110,000 |
| 12月分の外注費(未払) | 外注費 50,000 | 買掛金 50,000 |
| 12月分の電気代(1月引落) | 水道光熱費 8,000 | 未払費用 8,000 |
| 1月分の家賃を12月に前払 | 前払費用 80,000 | 普通預金 80,000 |
| 翌年1月に前払費用を振替 | 地代家賃 80,000 | 前払費用 80,000 |
売掛金・買掛金を立てたら、翌年の入金・支払で必ず消し込む。ここを忘れると残高が積み上がり、貸借対照表がおかしくなります(請求・入金の消し込み)。
「1年分まとめて払った家賃やサーバー代」は、原則なら期間で按分します。ただし、支払った日から1年以内に役務の提供を受けるものについては、支払った時点で経費にする処理が認められています(所得税基本通達37-30の2)。
条件があります。
「決算前に1年分前払いして節税」という話の根拠はここです。ただし翌年以降も同じ処理を続ける必要があるので、初年度だけ利益を圧縮する使い方はできません。弁護士報酬のような等質でない役務、物品の購入代金には使えません。
制作や工事のように、着手と完成が別の年になる仕事は判定が分かれます。
| パターン | 例 | 売上を計上する年 |
|---|---|---|
| 一括で引き渡す | 12月着手・2月完成のサイト制作 | 完成して引き渡した年(=来年)。12月時点では売上ゼロ |
| 段階的に引き渡す | 第1稿12月納品・最終稿2月納品で、契約上も分割検収 | 引き渡した部分だけ今年の売上 |
| 前金を受け取った | 12月に着手金を受領、納品は2月 | 受領時は前受金(負債)。売上は来年 |
「12月にお金をもらったから今年の売上」ではありません。引き渡しの単位が契約でどう決まっているかを見ます。契約書や発注書に検収の区切りが書かれていれば、それが判定の材料になります。
なお、期末にまだ引き渡していない仕事のためにかかった費用(外注費・材料費など)は、原則としてその年の経費にはなりません。売上と対応させて翌年に繰り越します。物販の棚卸と同じ考え方です。
12月20日に事業用カードで備品を買い、引落は1月27日。この経費は今年です。
カードの経費は発生日(購入日)で計上します。引落日で入れると、毎年12月分がまるごと翌年にズレていきます。仕訳と口座の分け方は開業したてで事業用クレカの審査は通る?にまとめています。
報酬から源泉徴収されている場合、支払調書の金額と自分の帳簿の売上が一致しないことがあります。
12月納品・1月入金の案件は、自分は今年の売上、相手の支払調書は来年になります。これはどちらも間違っていません。
このとき申告書に書く源泉徴収税額は、その年の売上に対応する源泉税です。支払調書の合計をそのまま写すと、売上と源泉税の年がズレます。相手からの入金明細で、案件ごとに突き合わせてください。なお支払調書は確定申告書への添付義務がありません(法定調書は税務署へ提出されるもので、あなたの申告の必須書類ではない)。届かない相手先があっても、自分の帳簿で申告できます。
青色申告者で、前々年分の事業所得+不動産所得が300万円以下の人は、届出により現金主義(入金・支払ベース)で記帳できます(所得税法67条、同施行令195条)。
ただしこの場合の青色申告特別控除は10万円です。65万円・55万円を狙うなら発生主義しかありません(青色申告65万円控除の条件)。
Q. 少額なら入金日で入れても問題ないですか。
金額が小さくても計上年が変わる処理は原則どおりが安全です。ただし、毎年同じ方法で継続していて、年ごとの金額に大きな差がない未払費用の一部については、実務上そこまで厳格に問われない場面もあります。売上については妥協しないでください。売上の計上年は最も見られる論点です。
Q. 相手が「今年の請求にして」と言ってきました。
引き渡しが翌年なら、翌年の売上です。請求書の日付を動かしても計上年は変わりません。逆に、引き渡しが済んでいるのに請求を遅らせても、今年の売上です。
Q. 12月に受け取った前金は売上になりませんか。
納品前なら前受金(負債)です。売上になるのは引き渡した年です。ただし分割で成果物を引き渡す契約なら、引き渡した部分だけが売上になります。
Q. 未入金のまま相手が倒産しました。
貸倒れの処理になります。青色申告者は貸倒引当金を計上できる制度もあります(所得税法52条、同施行令144条の一括評価による繰入)。回収不能が確定した年に貸倒損失として処理するのが原則です。
Q. 前年に売掛金を立て忘れていました。
前年の売上が漏れているので、修正申告になります。放置すると、今年その入金を売上にして二重計上になるか、どこにも計上されないかのどちらかになります。残高の食い違いは翌年に必ず出てくるので、早く直すほうが軽いです。
Q. 買掛金と未払金、どちらを使えばいいか迷います。
仕入・外注は買掛金、それ以外の未払いは未払金でおおむね足ります。継続的な役務の期末未払分は未払費用。厳密な区分より、残高を毎年きちんと消し込めることのほうが重要です。
Q. 12月に届いた請求書がまだ手元にありません。
金額が合理的に算定できるなら、見積りで未払費用に計上して構いません(37条の「金額を合理的に算定できる」に該当)。翌年に確定額との差額を調整します。
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