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更新日 2026-07-25 経理と確定申告第28回

12月に納品・1月に入金、この売上は今年?来年?売掛金・買掛金の年またぎ処理を仕訳つきで

12月20日に納品して請求書を出した。入金は1月25日。——この売上は今年ですか、来年ですか

会計ソフトの入金画面を見ながら固まる人がとても多い場面です。そして、ここを「入金した日」で入れてしまうと、売上の年がまるごとズレます。

結論は単純です。モノやサービスを引き渡した日で計上します。 入金日ではありません。

この記事の結論
– 売上は引き渡した日/役務の提供が完了した日。入金日は関係ない(所得税法36条1項)
– 経費は債務が確定した日。支払日ではない(所得税法37条1項)
– 使う勘定は4つ。売掛金・買掛金・未払費用・前払費用
– 12月利用・1月引落のカード払いは利用日(購入日)が今年の経費
– 支払調書と自分の帳簿は一致しないことがある。相手は支払日基準、自分は引渡日基準
– この調整を飛ばすと65万円控除の前提が崩れる。税務調査で最初に見られる論点でもある

判定の原則:お金ではなく「引き渡し」を見る

所得税法は、その年の収入を「その年において収入すべき金額が確定したもの」と定めています(36条1項)。国税庁の通達では、物の販売は引渡しの日、人的役務の提供は役務の提供を完了した日が基準です(所得税基本通達36-8)。

経費のほうは「その年において債務が確定した金額」(37条1項)。次の3つを満たした時点で「確定」します。

  1. 期末までに債務が成立している
  2. 期末までに具体的な給付をすべき原因となる事実が発生している
  3. 期末までに金額を合理的に算定できる

つまり「使ったかどうか」「引き渡したかどうか」で年が決まります。請求書を出したかどうかも、入金があったかどうかも、判定基準ではありません

年またぎの具体例

出来事 何年の売上/経費? 期末に使う勘定
12/20納品、1/25入金 今年の売上 売掛金
12/28に作業完了、請求書は1/5発行 今年の売上(請求書の日付ではない) 売掛金
12/15に前金を受け取り、納品は2月 来年の売上(引き渡し前) 前受金
12月分の外注費、支払いは1/31 今年の経費 買掛金
12月に使った電気・通信費、引落は1月 今年の経費 未払費用
1月分の家賃を12/27に前払い 原則来年の経費(例外あり・後述) 前払費用
12/20にカードで備品購入、引落は1/27 今年の経費 未払金
12/28にAmazonで注文、到着は1/4 来年の経費(引渡しは1月)

最後の行は見落としがちです。注文日でも決済日でもなく、引き渡された日で判定します。

4つの勘定の使い分け

勘定 意味 典型例
売掛金 引き渡し済みで、まだ入金されていない売上 12月納品・1月入金
買掛金 仕入や外注で、まだ支払っていないもの 12月分の外注費
未払費用 継続的なサービスで、期末までに使った分の未払い 12月分の電気代・通信費・家賃
前払費用 来年分を先に払ったもの 1月分の家賃を12月に支払

買掛金と未払費用の違いは、仕入・外注のような個別の取引か、家賃・水道光熱費のような継続的な役務かの違いです。実務では会計ソフトの科目に合わせれば足りますが、「未払金」は資産の購入代金や単発の債務に使う、と覚えておくと迷いません。

仕訳の形

場面 借方 貸方
12月に納品(税込11万円) 売掛金 110,000 売上 110,000
1月に入金 普通預金 110,000 売掛金 110,000
12月分の外注費(未払) 外注費 50,000 買掛金 50,000
12月分の電気代(1月引落) 水道光熱費 8,000 未払費用 8,000
1月分の家賃を12月に前払 前払費用 80,000 普通預金 80,000
翌年1月に前払費用を振替 地代家賃 80,000 前払費用 80,000

売掛金・買掛金を立てたら、翌年の入金・支払で必ず消し込む。ここを忘れると残高が積み上がり、貸借対照表がおかしくなります(請求・入金の消し込み)。

前払いには例外がある——短期前払費用

「1年分まとめて払った家賃やサーバー代」は、原則なら期間で按分します。ただし、支払った日から1年以内に役務の提供を受けるものについては、支払った時点で経費にする処理が認められています(所得税基本通達37-30の2)。

条件があります。

  • 等質・等量のサービスであること(家賃、保険料、サーバー使用料など)
  • 1年以内に提供を受けること
  • 継続してその処理をすること(毎年やり方を変えるのは不可)

「決算前に1年分前払いして節税」という話の根拠はここです。ただし翌年以降も同じ処理を続ける必要があるので、初年度だけ利益を圧縮する使い方はできません。弁護士報酬のような等質でない役務、物品の購入代金には使えません

案件が年をまたぐ3パターン

制作や工事のように、着手と完成が別の年になる仕事は判定が分かれます。

パターン 売上を計上する年
一括で引き渡す 12月着手・2月完成のサイト制作 完成して引き渡した年(=来年)。12月時点では売上ゼロ
段階的に引き渡す 第1稿12月納品・最終稿2月納品で、契約上も分割検収 引き渡した部分だけ今年の売上
前金を受け取った 12月に着手金を受領、納品は2月 受領時は前受金(負債)。売上は来年

「12月にお金をもらったから今年の売上」ではありません。引き渡しの単位が契約でどう決まっているかを見ます。契約書や発注書に検収の区切りが書かれていれば、それが判定の材料になります。

なお、期末にまだ引き渡していない仕事のためにかかった費用(外注費・材料費など)は、原則としてその年の経費にはなりません。売上と対応させて翌年に繰り越します。物販の棚卸と同じ考え方です。

カード払いの年またぎ

12月20日に事業用カードで備品を買い、引落は1月27日。この経費は今年です。

カードの経費は発生日(購入日)で計上します。引落日で入れると、毎年12月分がまるごと翌年にズレていきます。仕訳と口座の分け方は開業したてで事業用クレカの審査は通る?にまとめています。

源泉徴収された報酬のズレ

報酬から源泉徴収されている場合、支払調書の金額と自分の帳簿の売上が一致しないことがあります。

  • 支払調書は、支払側が支払った日で集計している
  • 自分の帳簿は、引き渡した日で計上している

12月納品・1月入金の案件は、自分は今年の売上、相手の支払調書は来年になります。これはどちらも間違っていません。

このとき申告書に書く源泉徴収税額は、その年の売上に対応する源泉税です。支払調書の合計をそのまま写すと、売上と源泉税の年がズレます。相手からの入金明細で、案件ごとに突き合わせてください。なお支払調書は確定申告書への添付義務がありません(法定調書は税務署へ提出されるもので、あなたの申告の必須書類ではない)。届かない相手先があっても、自分の帳簿で申告できます。

現金主義を選べる人もいる

青色申告者で、前々年分の事業所得+不動産所得が300万円以下の人は、届出により現金主義(入金・支払ベース)で記帳できます(所得税法67条、同施行令195条)。

ただしこの場合の青色申告特別控除は10万円です。65万円・55万円を狙うなら発生主義しかありません(青色申告65万円控除の条件)。

よくある質問(FAQ)

Q. 少額なら入金日で入れても問題ないですか。
金額が小さくても計上年が変わる処理は原則どおりが安全です。ただし、毎年同じ方法で継続していて、年ごとの金額に大きな差がない未払費用の一部については、実務上そこまで厳格に問われない場面もあります。売上については妥協しないでください。売上の計上年は最も見られる論点です。

Q. 相手が「今年の請求にして」と言ってきました。
引き渡しが翌年なら、翌年の売上です。請求書の日付を動かしても計上年は変わりません。逆に、引き渡しが済んでいるのに請求を遅らせても、今年の売上です。

Q. 12月に受け取った前金は売上になりませんか。
納品前なら前受金(負債)です。売上になるのは引き渡した年です。ただし分割で成果物を引き渡す契約なら、引き渡した部分だけが売上になります。

Q. 未入金のまま相手が倒産しました。
貸倒れの処理になります。青色申告者は貸倒引当金を計上できる制度もあります(所得税法52条、同施行令144条の一括評価による繰入)。回収不能が確定した年に貸倒損失として処理するのが原則です。

Q. 前年に売掛金を立て忘れていました。
前年の売上が漏れているので、修正申告になります。放置すると、今年その入金を売上にして二重計上になるか、どこにも計上されないかのどちらかになります。残高の食い違いは翌年に必ず出てくるので、早く直すほうが軽いです。

Q. 買掛金と未払金、どちらを使えばいいか迷います。
仕入・外注は買掛金、それ以外の未払いは未払金でおおむね足ります。継続的な役務の期末未払分は未払費用。厳密な区分より、残高を毎年きちんと消し込めることのほうが重要です。

Q. 12月に届いた請求書がまだ手元にありません。
金額が合理的に算定できるなら、見積りで未払費用に計上して構いません(37条の「金額を合理的に算定できる」に該当)。翌年に確定額との差額を調整します。

まとめ

  • 売上は引き渡した日/役務完了日、経費は債務が確定した日。入金・支払日ではない
  • 年またぎで使う勘定は売掛金・買掛金・未払費用・前払費用の4つ
  • カード払いは購入日が経費の年。引落日で入れると毎年ズレ続ける
  • 1年以内の等質な役務は短期前払費用として支払時に経費化できるが、継続適用が条件
  • 支払調書と自分の帳簿は一致しないことがある。源泉税は売上の年に対応させる
  • 現金主義は選べるが、青色申告特別控除は10万円になる
この記事の主な根拠(出典)

  • 所得税法36条1項(収入金額)/37条1項(必要経費)/52条(貸倒引当金)/67条(小規模事業者の現金主義)
  • 所得税法施行令144条(貸倒引当金の一括評価)/195条(現金主義の適用要件)
  • 所得税基本通達36-8(事業所得の総収入金額の収入すべき時期)/37-30の2(短期前払費用)
  • 租税特別措置法25条の2(青色申告特別控除)
  • 国税庁タックスアンサー「必要経費の計上時期」「事業所得の収入金額の計上時期」
  • ※2026年時点の制度に基づく記事です

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