ホーム起業時の知識 › 青色申告「65万・55万…
更新日 2026-07-25 起業時の知識第36回

青色申告「65万・55万・10万」の分かれ道を図解|あなたはどれ?複式簿記とe-Taxの関係

青色申告の控除は「65万円」だと思っていたのに、調べると55万円10万円という数字も出てくる。自分はどれになるのか分からない——最初にここでつまずく人はとても多いです。

安心してください。分かれ道は3つの質問だけです。しかも会計ソフトを使ってe-Taxで出すなら、意識せずに65万円のルートに乗ります。

この記事では、3つの控除額の要件を1枚の表と分岐チャートで整理し、「差額が税額でいくらになるか」まで具体的に見ていきます。

この記事の結論
10万円=簡易簿記(単式)でもOK。青色申告の最低ライン
55万円複式簿記+貸借対照表と損益計算書を添付+期限内申告
65万円=55万円の要件+e-Taxで申告(または「優良な電子帳簿」の保存と届出)
– 会計ソフト+e-Taxでほぼ自動的に65万円。10万円と65万円の差は税額で年8万〜18万円の水準

3つの分かれ道を一枚の表で

10万円控除 55万円控除 65万円控除
帳簿 簡易簿記(単式)でOK 複式簿記 複式簿記
確定申告書への添付 損益計算書 貸借対照表+損益計算書 貸借対照表+損益計算書
申告期限 期限後でも可 期限内申告(原則3/15)が必須 期限内申告が必須
提出方法 紙でも可 紙でも可 e-Tax送信(または優良な電子帳簿+届出)
対象の所得 事業所得/不動産所得/山林所得 事業所得/事業的規模の不動産所得 事業所得/事業的規模の不動産所得
こんな人 副業規模・記帳を始めたばかり 複式簿記だが紙で提出する人 会計ソフトを使う人(=ほとんどの人)

分岐チャート:3つの質問に答えるだけ

上から順に答えてください。

  1. その所得は事業所得?(または5棟10室などの事業的規模の不動産所得?)
      → いいえ(雑所得)……青色申告特別控除は使えません。まず事業として組み立てるところから
  2. 複式簿記で記帳し、貸借対照表を作れる?
      → いいえ……10万円
  3. 期限内(原則3月15日)に申告する?
      → いいえ……10万円(期限に1日遅れただけで65万・55万は消えます)
  4. e-Taxで送信する?(または優良な電子帳簿の要件を満たして届出済み?)
      → はい……65万円 / いいえ……55万円

つまり、会計ソフトで記帳して、3月15日までにe-Taxで送信する。これだけで65万円です。難しいのは制度ではなく「毎月の記帳を続けること」だけ、と言い換えてもいいくらいです。

差額はいくら?——税額で見ると納得できる

控除額の差は、(控除額の差)×(所得税率+住民税10%)でおおよそ計算できます。10万円控除と65万円控除の差=55万円で見てみましょう(復興特別所得税は考慮しない概算)。

課税所得の目安 所得税率 55万円の差=減る税額の目安 10万円の差(55万→65万)
195万円以下 5% 約8万2,500円 約1万5,000円
195万〜330万円 10% 約11万円 約2万円
330万〜695万円 20% 約16万5,000円 約3万円
695万〜900万円 23% 約18万1,500円 約3万3,000円

帳簿を複式にして、e-Taxで送るだけで年10万円以上の差。しかもこれは毎年続きます。会計ソフトの年間費用が1〜2万円台なら、金額だけ見ても答えは明白です。

さらに、所得が下がることで国民健康保険料にも効いてきます(保険料は所得を基礎に計算されるため)。

一方で、注意点も1つ。個人事業税の計算では青色申告特別控除は差し引けません。 事業税の課税標準は青色申告特別控除を引く前の所得で計算されるので、「事業税も一緒に下がる」わけではない点は押さえておきましょう。

65万円の“もう一つの道”:優良な電子帳簿

65万円の条件は「e-Tax」だけではありません。電子帳簿保存法の「優良な電子帳簿」の要件を満たして帳簿を保存し、所定の届出書を出している場合も65万円になります。

ただし個人事業主の実務では、e-Taxで送るほうが圧倒的に簡単です。優良な電子帳簿は訂正・削除履歴の確保や検索機能など要件が細かく、届出も必要。あえて選ぶ理由があるのは、電子帳簿を軸に整備したい人だけでしょう。

つまずきポイント3つ

① 期限に1日遅れると、その年は10万円

これが一番痛いパターンです。期限内申告は55万・65万の絶対条件。3月15日(休日なら翌開庁日)を過ぎると、複式簿記でどれだけきれいに記帳していても10万円まで落ちます。

② 事業的規模でない不動産所得は10万円まで

不動産所得は、おおむね5棟10室以上(事業的規模)でないと55万・65万の対象になりません。アパート1室・駐車場数台という規模なら、青色でも10万円控除です。

③ 承認申請書を出していなければ0円

そもそも青色申告承認申請書を提出していないと青色申告そのものができません。控除は0円です。期限は原則3月15日、1月16日以後に開業した人は開業日から2ヶ月以内。ここは提出期限の記事で確認してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 承認申請書で「簡易簿記」に○をしてしまいました。65万円は無理?
控除額は最終的に申告時の帳簿と申告内容で判断されます。複式簿記で記帳して貸借対照表を添付し、期限内にe-Taxで申告すれば65万円を狙えます。ただし記載と実態を合わせておくのが本来なので、心配なら税務署に相談を。書き方は申請書の記入例にまとめました。

Q. 開業初年度でも65万円使えますか?
使えます。要件を満たせば年の途中の開業でも満額です(控除額が月割りされることはありません)。

Q. 赤字なら控除は関係ない?
青色申告特別控除は黒字の範囲内でしか使えません(控除で赤字を作ることはできない)。ただし青色なら純損失を3年繰り越せるので、赤字の年でも申告する価値は大きいです。

Q. 複式簿記って自力でできますか?
手書きで組むのは大変ですが、会計ソフトを使えば取引を入力するだけで複式簿記の帳簿・貸借対照表が自動でできます。ソフト選びは会計ソフト比較を参考に。

Q. e-Taxの送信でつまずいたら?
マイナンバーカードの読み取りやID・パスワード方式でつまずく人は多いので、e-Taxの提出方法とトラブル対処を先に読んでおくと安心です。

まとめ

  • 分かれ道は①事業所得か ②複式簿記か ③期限内か ④e-Taxかの4つの質問だけ
  • 会計ソフト+期限内+e-Tax=65万円。ここを標準にする
  • 10万円と65万円の差は税額で年8万〜18万円。国保にも効くが、個人事業税は青色控除を引けない
  • 期限後申告は一発で10万円。承認申請書を出していなければ0円
この記事の主な根拠(出典)

  • 租税特別措置法25条の2(青色申告特別控除/65万・55万・10万の要件)
  • 所得税法148条(青色申告者の帳簿書類の備付け・記録・保存)
  • 電子帳簿保存法8条4項(優良な電子帳簿)
  • 地方税法(個人事業税の課税標準/青色申告特別控除は控除されない)
  • 国税庁タックスアンサー「青色申告特別控除」「不動産所得を生ずべき事業の判定(5棟10室)」
  • ※2026年時点の制度に基づく

次に読む

👉 青色申告承認申請書の提出期限はいつ?開業日別の締切
👉 青色申告承認申請書の書き方:簿記方式・備付帳簿名はどこにチェック?
👉 青色申告と白色申告どっちがいい?
👉 65万円控除の条件は“複式簿記”だけじゃない|e-Tax提出が必須
👉 freee・マネフォ・弥生、結局どれ?会計ソフト比較

相談したいとき

👉 税理士の宍倉に相談する(LINE)

FOLLOW & CONSULT

新しい記事はLINEでお知らせ

個別のご相談は、事務所サイトの単発相談で承っています。

LINEで友だち追加個別相談について(事務所サイト)