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更新日 2026-07-26 経理と確定申告第34回

8月に届く「個人事業税」の納付書は払うべき?法定70業種と290万円控除、フリーランスが課税されるかの判定

8月、身に覚えのない封筒が届きます。差出人は税務署ではなく都道府県。中身は「個人事業税 納税通知書」。

「こんな税金、聞いたことがない」「詐欺の請求では?」——毎年8月に必ず出る相談です。

先に結論だけ言います。これは正規の税金です。 税務署(国税)ではなく都道府県が課す地方税なので、確定申告とは別ルートで、あとから届きます。ただし全員に来るわけではありません

この記事の結論
– 個人事業税は都道府県が課す地方税。納付は8月・11月の年2回(都道府県の条例による)
– 課税されるのは地方税法が定めた70業種にあたる事業だけ。法定業種に当たらなければ非課税
事業主控除290万円があるので、事業所得が290万円以下なら税額はゼロ
– 計算では青色申告特別控除を足し戻す。所得税の所得より大きくなる
確定申告をしていれば、事業税の申告は原則不要(通知を待つだけ)
払った事業税は、払った年の必要経費になる

まず落ち着く:これは誰から来た何なのか

項目 個人事業税
課税するのは 都道府県(県税事務所・都税事務所)
根拠 地方税法72条の2ほか
対象 法定70業種にあたる事業の所得
課税標準 前年の事業所得等(青色申告特別控除は引かない
控除 事業主控除 年290万円
税率 3%・4%・5%(業種の区分による)
通知 8月頃に納税通知書が届く
納付 8月・11月の2回(税額が少額なら8月に一括のことも)
申告 所得税の確定申告をしていれば原則不要

税務署に問い合わせても「うちではありません」と言われます。窓口は都道府県税事務所です。ここを知らないと、たらい回しになります。

「後から来る税金」全体の並びは個人事業主に「後から来る税金」一覧にまとめています。

課税されるのは「法定70業種」だけ

個人事業税がほかの税金と決定的に違うのは、業種を限定して課税するという点です。地方税法が3つの区分で業種を列挙していて、その合計が70業種になります。

区分 業種数 税率 主な業種の例
第1種事業 37業種 5% 物品販売業、製造業、請負業、印刷業、出版業、運送業、飲食店業、旅館業、不動産貸付業、駐車場業、周旋業、代理業、広告業、写真業、席貸業 など
第2種事業 3業種 4% 畜産業、水産業、薪炭製造業(自家労力が主なものを除く)
第3種事業 30業種 5%(一部3%) 医業、歯科医業、薬剤師業、獣医業、弁護士業、税理士業、公認会計士業、司法書士業、行政書士業、社会保険労務士業、弁理士業、コンサルタント業デザイン業、設計監督者業、不動産鑑定業、理容業、美容業、クリーニング業、諸芸師匠業、印刷製版業、測量士業、土地家屋調査士業 など

第3種のうち、あん摩・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業装蹄師業だけは税率が3%です。

自分の仕事がどの区分かは、都道府県のサイトに一覧が載っています。「業種名が違っても、実態が同じなら同じ扱い」になる点に注意してください。

一覧に載っていない仕事はどうなるのか

ここが本当に知りたいところだと思います。フリーランス系の職種名は、70業種の中に出てきません。

仕事 よくある扱い 見られやすい区分
ライター・編集・翻訳 非課税とされることが多い(文筆業として)
画家・作曲家・演奏家 非課税とされることが多い(芸術活動として)
Webデザイン・グラフィックデザイン 課税されやすい デザイン業(第3種5%)
Webサイト制作(受託開発を含む) 課税されやすい 請負業(第1種5%)/デザイン業
システム開発・プログラミング 判断が分かれる。課税とされた例がある 請負業(第1種5%)
経営・IT・マーケのコンサル 課税されやすい コンサルタント業(第3種5%)
動画編集・撮影 課税されやすい 請負業/写真業/映画製作業
ネットショップ・物販 課税 物品販売業(第1種5%)
整体・エステ・サロン 課税(施術の種類で税率が分かれる) 第3種5%または3%
学習塾・教室 課税されやすい 諸芸師匠業ほか(第3種5%)
アパート・駐車場の賃貸 規模基準を超えると課税 不動産貸付業・駐車場業(第1種5%)

「ライターだから非課税」と決め打ちするのは危険です。判断するのは都道府県税事務所で、名乗っている職種名ではなく実態を見ます。同じ「エンジニア」でも、成果物を納品する受託開発なら請負業と見られやすく、常駐して時間で報酬をもらう形なら別の見方をされることもあります。

開業届の職業欄がここで効いてきます(開業届の「職業」「事業の概要」は何て書く?)。ただし書き方で決まるのではなく、実態で決まるという順序は変わりません。

計算:290万円を超えた分に課税される

計算式はシンプルです。

(前年の事業所得等 + 青色申告特別控除額 − 各種控除 − 事業主控除290万円)× 税率

ポイントは2つあります。

1つめ。青色申告特別控除は引けません。 所得税では65万円(または55万円・10万円)を引いた後の金額で税額を計算しますが、個人事業税ではその控除がない前提で計算します。だから所得税の所得金額より事業税の課税標準のほうが大きくなります。

2つめ。事業主控除は年290万円。 年の途中で開業・廃業した年は月割になります(営業期間が6か月なら145万円)。1か月未満の端数は1か月として数えます。

具体例で見ます。

項目 金額
売上 800万円
必要経費 300万円
青色申告特別控除前の所得 500万円
(所得税での事業所得=65万円控除後) 435万円
事業税の計算:500万円 − 290万円 210万円
税率5%(第1種・第3種) 10万5,000円

所得税の申告書には435万円と書いてあるのに、事業税は500万円を基準に計算されます。「計算が合わない」と感じる原因はほぼこれです。

なお専従者給与(青色)・事業専従者控除(白色)は事業税でも引けます。すでに事業所得の計算で引かれているためです。

事業所得290万円以下なら通知は来ない

事業主控除290万円のおかげで、事業所得が290万円以下なら税額はゼロです。この場合、納税通知書そのものが届きません。

「今年は届いたけれど、去年は届かなかった」というのは、多くの場合前年の所得が290万円を超えたからです。届かなくなったなら、所得が下がったか、業種の見方が変わったかのどちらかです。

赤字の年も課税されません。さらに青色申告者は、事業税でも損失を3年間繰り越せます(所得税の繰越とは別に、事業税独自の計算で管理されます)。

申告は必要?——原則いりません

個人事業税には申告制度があり、期限は翌年3月15日です。ただし、

  • 所得税の確定申告をした人
  • 住民税の申告をした人

は、事業税の申告は不要です。申告のデータが都道府県へ回るためです。確定申告書の第二表に「事業税に関する事項」という欄があるのは、この受け渡しのためにあります(「青色申告決算書」と「確定申告書」は何が違う?)。

第二表のこの欄には、非課税所得がある場合の区分や、不動産所得と事業所得の内訳などを書きます。ここを埋めておくと、都道府県側の判断材料になります。

この記事で扱う範囲について
個人事業税は都道府県が課す地方税で、業種の判定・税率・納期・減免の取扱いは各都道府県の条例と運用によります。自分の事業が法定70業種のどれに当たるか(または当たらないか)の最終判断は、都道府県税事務所が行います。本記事は制度の全体像を整理したもので、個別の課税・非課税を保証するものではありません。判定に迷う場合は、事業内容がわかる資料を持って所管の都道府県税事務所にご相談ください(2026年時点の制度に基づく記事です)。

払った事業税は経費になる

見落とされがちですが、納めた個人事業税は必要経費です。勘定科目は「租税公課」。

税金 必要経費になるか
個人事業税 ○ なる(支払った年の経費)
消費税(税込経理の場合) ○ なる
固定資産税(事業用部分) ○ なる
印紙税・登録免許税(事業用) ○ なる
所得税・住民税 ✗ ならない
国民健康保険料・国民年金 ✗ 経費ではない(所得控除)
加算税・延滞税・交通反則金 ✗ ならない

所得税と住民税は経費にならないのに、事業税はなる——この違いは「事業に対して課される税か、個人に対して課される税か」で分かれています。経費の線引き全体は経費にできるもの・できないもの一覧を参照してください。

8月に慌てないための備え

事業税は所得が出た翌年の8月と11月に来ます。つまり、稼いだ年からいちばん遠いところで請求が届く税金です。

  • 所得が290万円を大きく超えた年は、翌年8月に事業税が来ると手帳に書いておく
  • 目安は「(所得 − 290万円)× 5%」。ざっくりでいいので額を出しておく
  • 納税用の口座に、所得税・住民税・国保とあわせて先取りしておく(稼いだお金、いくら残せば税金で困らない?

2年目以降の税金の来かたを俯瞰したい場合は確定申告の全体マップから順に読むと、どの税金がどの時期に来るかがつながります。

よくある質問(FAQ)

Q. 通知書が届きました。これは詐欺ではありませんか。
都道府県(県税事務所・都税事務所)から届く納税通知書であれば、正規の税金です。心配なら、封筒に書かれた番号ではなく、都道府県の公式サイトに載っている県税事務所の番号に自分でかけて確認してください。国税の税務署からは来ません。

Q. 業種が一覧にないので非課税だと思っていました。過去の分はどうなりますか。
都道府県が課税と判断すれば、さかのぼって課税されることがあります。判断が微妙な業種の場合は、先に都道府県税事務所に相談しておくほうが、後から数年分まとめて請求されるより安全です。

Q. 複数の仕事をしています。どうやって計算しますか。
課税対象の事業と対象外の事業がある場合、課税対象事業の所得だけを抜き出して計算します。区分できるように帳簿を分けておくと説明が早く済みます。

Q. 不動産の賃貸をしています。何室から課税ですか。
不動産貸付業には規模の基準(棟数・室数・面積など)があり、その基準は都道府県ごとに定められています。一般に「一戸建て10棟以上」「アパート等10室以上」「駐車場10台以上」といった水準が用いられますが、必ず所管の都道府県の基準を確認してください

Q. 会社員をしながら副業をしています。事業税は来ますか。
副業の所得が事業所得として法定業種に当たり、事業主控除290万円を超えれば対象です。ただし雑所得として申告している規模なら、通常は通知が来ません。

Q. 払えないときはどうすればいいですか。
都道府県税事務所に相談すると、分割納付や徴収猶予の相談ができます。放置すると延滞金がつきます。連絡すること自体にペナルティはありません

Q. 事業をやめました。廃業年の事業税はどうなりますか。
廃業した年の分も課税対象で、事業主控除は月割になります。廃業時に事業税の申告(廃業から1か月以内)が必要とされる場合があるので、都道府県税事務所に確認してください。廃業した年に見込みで申告し、通知を待たずに納めるケースもあります。

まとめ

  • 個人事業税は都道府県の地方税。8月に通知、8月・11月に納付。税務署ではない
  • 課税は法定70業種に限られる。ライター・作家・画家などは非課税とされることが多いが、判断するのは都道府県税事務所
  • 事業主控除290万円があるので、事業所得290万円以下なら税額ゼロで通知も来ない
  • 計算では青色申告特別控除を足し戻すので、所得税の所得より大きくなる
  • 確定申告をしていれば事業税の申告は不要。第二表の「事業税に関する事項」が受け渡し口
  • 払った事業税は必要経費。所得税・住民税との違いを押さえる
この記事の主な根拠(出典)

  • 地方税法72条の2(事業の意義・法定業種)/72条の49の11ほか(事業主控除・課税標準)
  • 地方税法72条の55(個人の事業税の申告)/各都道府県の税条例(税率・納期・不動産貸付業等の認定基準)
  • 所得税法37条・45条(必要経費/必要経費に算入されない租税)
  • 国税庁タックスアンサー「必要経費に算入できる税金」、各都道府県の「個人事業税」案内
  • ※2026年時点の制度に基づく記事です。業種の判定・税率・納期・認定基準は都道府県によって異なります

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