段ボールが増えていきます。7年と聞いた気もするし、5年とも聞いた気もする。捨てていいのか分からないから、全部とってある。
保存期間があいまいなまま増え続ける書類は、置き場所だけでなく「探せない」というコストも生みます。この記事で一度、線を引いておきましょう。
結論はこうです。帳簿と決算関係書類は7年、請求書などの「その他の書類」は5年。ただし消費税の課税事業者なら、その5年の書類も7年になります。
この記事の結論
– 青色申告:帳簿7年/決算関係書類7年/現金預金取引等関係書類7年/その他の書類5年
– 白色申告:法定帳簿7年/それ以外は5年
– 数え始めは書類の日付ではなく、その年分の確定申告期限の翌日から
– 消費税の課税事業者は、請求書等も7年(仕入税額控除の要件)
– 迷うなら全部7年でそろえるのがいちばん安い判断
– 電子で受け取ったものは、紙に印刷しても保存したことにならない(データのまま保存)
根拠は所得税法148条と同施行規則63条です。書類を4つに分けて考えます。
| 区分 | 具体例 | 保存期間 |
|---|---|---|
| 帳簿 | 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳 | 7年 |
| 決算関係書類 | 損益計算書、貸借対照表、棚卸表 | 7年 |
| 現金預金取引等関係書類 | 領収書、預金通帳、小切手控、借用証、預り証 | 7年(※下記の例外あり) |
| その他の書類 | 請求書、見積書、契約書、納品書、送り状、注文書 | 5年 |
※例外:前々年分の事業所得と不動産所得の合計が300万円以下の人は、「現金預金取引等関係書類」の保存期間が5年になります。ただし帳簿と決算関係書類は7年のままです。
線引きのイメージは「お金が動いた証拠は7年、取引の内容を示す紙は5年」です。領収書は7年で請求書は5年、というのは直感に反しますが、領収書が「現金預金取引等関係書類」だからです。
白色でも記帳と保存の義務があります(所得税法232条、同施行規則102条)。
| 区分 | 具体例 | 保存期間 |
|---|---|---|
| 法定帳簿(収入金額・必要経費を記載した帳簿) | 収支を記録した帳簿 | 7年 |
| 任意帳簿 | 業務用に作ったその他の帳簿 | 5年 |
| 決算関係書類・現金預金取引等関係書類・その他の書類 | 棚卸表、領収書、請求書など | 5年 |
「白色は保存しなくていい」は誤りです。法定帳簿だけは青色と同じ7年です。
ここを間違えると1年早く捨ててしまいます。
起算日はその年分の確定申告期限(翌年3月15日)の翌日です。
2026年分(2026年1月〜12月)の書類なら、確定申告期限は2027年3月15日。そこから7年なので、2034年3月15日まで保存することになります。書類に書かれた日付から7年ではありません。
つまり実務では、「今年から数えて8年分の箱がある」状態が正常です。年が明けて確定申告が終わったら、いちばん古い箱を1つ処分する——このリズムで回すと迷いません。
いちばん見落とされるのがここです。
消費税の課税事業者は、仕入税額控除を受けるために帳簿と請求書等の保存が必要です(消費税法30条7項)。この保存期間は7年とされています(同施行令50条1項)。
つまり、
| 書類 | 所得税での保存期間 | 消費税の課税事業者の場合 |
|---|---|---|
| 請求書・納品書・領収書(インボイス含む) | 5年〜7年 | 7年 |
| 帳簿 | 7年 | 7年 |
免税事業者のうちは5年でよかった請求書も、インボイス登録などで課税事業者になった時点から7年になります。所得税と消費税で別々の年数を管理するのは現実的ではないので、全部7年に統一するのがいちばん手間もリスクも小さい判断です。
保存期間の話とセットで押さえておくべきなのが保存方法です。
メール添付のPDF請求書、ネット通販の領収書、クラウドサービスの利用明細——こうした電子取引のデータは、データのまま保存することが義務です。印刷して紙のファイルに綴じるだけでは、保存したことになりません。
とはいえ、個人事業主がやるべきことは多くありません。
詳しくは電子帳簿保存法、個人事業主が”最低限やること”はこれで全部とメール・ネットで届く請求書や領収書、「印刷して紙で保存」はもうダメ?にまとめています。検索要件の実務は電子取引の「検索要件」は個人事業主はどこまで?です。
紙のレシートをスキャンして原本を捨てたい場合は、別制度(スキャナ保存)の条件を満たす必要があります(スキャンしたら紙のレシートは捨てていい?)。
「保存義務」と言われても、罰金の話が出てこないのでピンときません。実際に効いてくるのは、罰則ではなく税額そのものです。
| 起きること | 内容 |
|---|---|
| 青色申告の承認取消し | 帳簿書類の備付け・記録・保存が定めどおりでないとき、承認が取り消されることがある(所得税法150条)。65万円控除・専従者給与・3年の損失繰越が一度に失われる |
| 消費税の仕入税額控除が否認される | 課税事業者は、帳簿と請求書等の保存が仕入税額控除の要件。ないものは控除できない(消費税法30条7項) |
| 経費が認められない | 支出の事実を示す資料がなければ、必要経費として主張しにくい |
| 推計で課税される | 帳簿がないと、同業者の水準などから所得を推計されることがある |
とくに重いのは上の2つです。青色申告の承認取消しは遡って適用されることがあり、65万円控除が消えるだけで所得が65万円増えます。消費税の仕入税額控除の否認は、納税額がそのまま増えるダイレクトな影響です。
なお、保存する場所や方法に細かい形式の指定はありません。求められたときに、その年の分をまとめて出せる状態であれば足ります。段ボールに年を書いて積んであるだけでも、それが取り出せるなら問題ありません。
保存期間の表に収まらない書類があります。ここが実務では効きます。
| 書類 | いつまで持つか | 理由 |
|---|---|---|
| 減価償却資産の購入時の請求書・契約書 | 償却が終わるまで+7年 | 取得価額と取得日が償却の根拠。10年償却なら実質17年 |
| 不動産の売買契約書・仲介手数料の領収書 | 売却して申告が終わるまで | 譲渡所得の取得費の証拠。捨てると概算取得費(売却額の5%)しか使えない |
| 確定申告書の控え・受信通知 | 実質永久 | 融資・保育園・年金・各種証明で繰り返し使う |
| 借入金の契約書(金銭消費貸借契約書) | 完済+7年 | 残高と利息の根拠 |
| 開業費の領収書 | 償却しきるまで | 任意償却なので何年も先に経費化できる |
とくに不動産と減価償却資産は、捨てると取り返しがつかないタイプの損が出ます。「7年たったから」で機械的に処分しないでください。確定申告書の控えについては、2025年1月から税務署が収受日付印を押さなくなったため、e-Taxの受信通知(メール詳細)が実質的な控えになります。
やることを絞ります。
2026/ の下に、受け取ったPDFをそのまま入れる。ファイル名は「日付_取引先_金額」で統一しておくと、あとで検索要件を満たすときも流用できる領収書が見つからない支出をどう扱うかは領収書をなくした・出ない支出はどうする?にまとめています。「なくしたら経費にできない」わけではありません。
Q. 税務調査は何年さかのぼりますか。7年保存すれば十分ですか。
更正・決定ができる期間は原則5年、脱漏があると判断された場合は7年です(国税通則法70条)。保存義務の7年は、この期間に対応しています。
Q. 通帳は捨てていいですか。
現金預金取引等関係書類として7年(該当者は5年)です。ネットバンクで通帳がない場合は、明細をPDFで保存してください。銀行のサイトで見られる期間には限りがあり、あとから取れないことがあります。
Q. レシートが感熱紙で消えてしまいました。
消えてしまうと証拠力が落ちます。受け取ったらすぐ撮影・スキャンして画像も残すのが実務です。ただし紙の原本を捨ててよいかは別制度(スキャナ保存)の条件次第です。
Q. クラウド会計ソフトに入れてあるので、紙は捨てていいですか。
仕訳データが入っているだけでは、証憑(領収書・請求書)を保存したことにはなりません。ソフトの証憑保存機能がスキャナ保存の要件を満たしているかを確認してください。
Q. 赤字を繰り越しています。保存期間は変わりますか。
青色申告の純損失は3年繰り越せます。繰越の根拠となる年の帳簿・書類は、繰越が終わるまで確実に必要です。7年保存していれば通常はカバーできます。
Q. 廃業しました。もう捨てていいですか。
廃業しても保存義務は残ります。廃業した年分から7年は保存してください。
Q. データはどこに保存すればいいですか。クラウドで大丈夫ですか。
クラウドストレージでも問題ありません。ただし契約が切れると見られなくなるので、外付けディスク等にもバックアップを取り、二重にしておくことをおすすめします。
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