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更新日 2026-07-26 起業時の知識第55回

会社都合で辞めたなら国保が下がる|非自発的失業者の軽減の対象・期間・手続きを独立時に使い切る

会社を辞めて独立すると、1年目の国民健康保険料は高くなります。前年の会社員時代の所得をもとに計算されるからです。

「収入はもう無いのに、去年の給料で計算される」——これが独立1年目の資金繰りを一番圧迫します。

ただし、倒産・解雇・雇止めで辞めた人には、この計算そのものを軽くする制度があります。知らずに満額を払っている人が本当に多い制度です。

この記事の結論
– 対象者は、国保料の計算で前年の給与所得を30/100とみなしてもらえる
– 対象は雇用保険の離職理由コードで決まる。自己都合退職は対象外
– 軽減されるのは離職日の翌日が属する月から、その年度の翌年度末まで(最長で約2年)
– 申請先は市区町村の国保窓口。雇用保険受給資格者証(または受給資格通知)が要る
開業しても軽減は続く。ただし任意継続を選ぶと使えない(国保の制度のため)
– 軽減を前提にすると、任意継続との有利不利がひっくり返ることがある

この軽減は何をしてくれるのか

国民健康保険料は、大きく分けて「所得割」と「均等割」でできています。このうち所得割は、前年の所得をもとに計算されます。

非自発的失業者の軽減は、この計算に使う前年の給与所得を100分の30として扱うというものです。

項目 通常 軽減が適用されると
給与所得400万円だった人の計算基礎 400万円 120万円(30/100)
所得割 400万円ベース 120万円ベース
均等割・平等割の軽減判定 400万円で判定 120万円で判定(軽減が効くことがある)
高額療養費の所得区分 400万円で判定 120万円で判定(自治体の運用による)

所得割が下がるだけでなく、均等割の軽減判定にも反映されるのがポイントです。所得が大きく下がったとみなされることで、均等割まで7割・5割・2割の軽減対象に入ることがあります。

金額の下がり方は自治体の料率で変わりますが、保険料が半分以下になるケースは珍しくありません

対象になるのは誰か——離職理由コードで決まる

ここが最重要です。対象かどうかは、勤め先が「会社都合」と言ったかどうかではなく、ハローワークが判定した離職理由コードで決まります。

区分 離職理由コード 主な内容
特定受給資格者 11・12 解雇(重責解雇を除く)、天災等による事業継続不能
21・22 倒産・事業所の廃止・事業所の移転による通勤困難
31・32 解雇、退職勧奨、事業主からの働きかけによる離職
特定理由離職者 23 期間の定めのある労働契約の雇止め(更新の確約がなかった場合)
33・34 正当な理由のある自己都合退職(病気・家族の看護・転居等)

加えて、次の条件を満たす必要があります。

  • 離職日時点で65歳未満であること
  • 離職時に雇用保険の一般被保険者であったこと(会社の健康保険に入っていたかどうかではありません)

なお、コード23・33・34(特定理由離職者)は、軽減の対象になる年度が限定されている場合があります。ここは自治体の案内で確認してください。

退職後の健康保険の選び方そのものは会社を辞めて個人事業主に。健康保険は国保・任意継続・扶養の3択にまとめています。

離職理由コードはどこに書いてあるか

自分のコードは、次の書類で確認できます。

書類 どこを見るか
雇用保険受給資格者証 第1面の「離職理由」欄に2桁の数字
雇用保険受給資格通知(マイナンバーカードで手続きした場合) 同じく離職理由の欄
離職票(雇用保険被保険者離職票-2) 事業主の記載と本人の記載。最終判定はハローワーク

大事なのは、離職票に書かれた会社の主張が最終結論ではないということです。ハローワークが判定した結果が受給資格者証(または受給資格通知)に載ります。会社が「自己都合」と書いていても、実態が退職勧奨であれば、ハローワークで異議を申し立てて判定が変わることがあります。

離職後の切替手続き全体の流れは退職したら14日以内に何をする?を参照してください。

この記事で扱う範囲について
国民健康保険は市区町村(および都道府県)が運営する制度で、保険料率・均等割の額・軽減の運用は自治体ごとに異なります。離職理由の判定と受給資格者証の交付はハローワーク(公共職業安定所)の所管であり、失業給付の受給可否についてもハローワークにご確認ください。本記事は制度の仕組みを整理したもので、個別の保険料額や適用可否を保証するものではありません。実際の金額は必ずお住まいの市区町村の国保窓口でご確認ください(2026年時点の制度に基づく記事です)。

軽減される期間

軽減は永久には続きません。期間はこう決まっています。

離職日の翌日が属する月から、その月が属する年度の翌年度末(3月31日)まで

言葉だと分かりにくいので、具体例で見ます。国保の年度は4月から翌年3月です。

離職日 軽減の始まり 軽減の終わり 実質の長さ
2026年4月30日 2026年5月 2028年3月31日 約1年11か月
2026年12月31日 2027年1月 2028年3月31日 約1年3か月
2027年3月31日 2027年4月 2029年3月31日 約2年

年度の後半に辞めるほど、軽減を受けられる期間は短くなります。3月末に辞めた人が最長で、12月に辞めた人はその半分強です。退職日を自分で選べる立場なら、ここは判断材料のひとつになります。

手続き——市区町村の国保窓口へ

自動では適用されません。申請が必要です。

  1. ハローワークで受給資格の決定を受ける(受給資格者証または受給資格通知が交付される)
  2. 市区町村の国保窓口へ行く
  3. 持ち物:雇用保険受給資格者証(または受給資格通知)、マイナンバーが分かるもの、本人確認書類、国民健康保険証
  4. 窓口で軽減の申請書を書く(自治体により様式は異なる)

国保への加入手続き(退職日の翌日から14日以内)と同時にできる場合が多いので、加入と軽減の申請をまとめて済ませるのが効率的です。

すでに国保に入っていて、あとから軽減に気づいた場合も申請できます。さかのぼって適用され、払い過ぎた分は還付または充当されるのが通常です。「もう払ってしまったから手遅れ」ではありません

独立する人が誤解しやすい3点

ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。

① 開業しても軽減は続く
軽減は「離職したこと」に対する措置なので、その後に事業を始めても止まりません。事業所得が出れば当然その分は保険料に反映されますが、前年の給与所得を30/100とみなす扱いは期間中ずっと続きます

② 任意継続を選ぶと使えない
これは制度上そうなっています。軽減は国民健康保険の制度なので、健康保険の任意継続を選んだ人には適用されません。「任意継続のほうが安いと思って選んだが、軽減を使った国保のほうが安かった」——これが一番もったいないパターンです。

③ 失業給付を受けるかどうかとは別
軽減の要件は受給資格者証(または受給資格通知)の交付を受けていることです。実際に失業給付を受け取ったかどうかは問いません。ただし、すでに事業を始めている人は求職者としての要件を満たさず、受給資格の決定を受けられないことがあります。順序と可否は必ずハローワークに確認してください。

軽減を前提に、任意継続ともう一度比べる

軽減が使えるなら、退職直後に立てた比較はやり直す価値があります。

任意継続 国保(軽減なし) 国保(軽減あり)
計算のもと 退職時の標準報酬月額(上限あり) 前年所得の全額 前年給与所得の30%
会社負担 なくなる(実質2倍
期間 最長2年 最長で年度末+1年
扶養家族 保険料は増えない 1人ずつ均等割が増える 同左(ただし軽減判定に反映)

扶養家族が多い人は国保の均等割が効いてくるので、軽減があっても任意継続が有利なことがあります。家族構成と前年所得の両方で変わるので、必ず両方の金額を出して比べてください。任意継続の詳細は会社を辞めて個人事業主に。健康保険は国保・任意継続・扶養の3択、国保そのものの仕組みは独立したら健康保険はどうする?にあります。

年金にも似た制度がある

国民年金にも、失業を理由とする保険料免除の特例があります。通常は前年所得で審査されますが、失業した場合は本人の前年所得を除外して審査してもらえる仕組みです。

申請には同じく雇用保険受給資格者証(または離職票)が使えるので、国保の窓口に行くついでに年金の窓口でも相談するのが効率的です。ただし免除を受けた期間は将来の年金額が減るため、追納の可否も含めて判断してください(国民年金に上乗せするなら、どの順番?)。

なお、支払った国民健康保険料・国民年金保険料は全額が社会保険料控除になります。経費ではなく所得控除である点に注意してください(社会保険料控除は「生計を一にする家族の分」もまとめて引ける)。

よくある質問(FAQ)

Q. 自己都合で辞めましたが、実際は退職を勧められました。対象になりますか。
ハローワークが判定する離職理由が31・32(退職勧奨等)であれば対象です。離職票の内容に納得できない場合は、ハローワークで異議を申し立てられます。まずは受給資格者証(または受給資格通知)に載ったコードを確認してください。

Q. 軽減の申請を忘れていました。前の年度の分も戻りますか。
さかのぼって適用されるのが通常です。ただし還付には時効があるため、気づいた時点ですぐ窓口に相談してください。

Q. 軽減されると、住民税も安くなりますか。
なりません。これは国民健康保険料の計算だけの措置です。住民税は前年所得で通常どおり計算されます。独立1年目にまとめて来る負担は独立1年目にかかる税金と社会保険で整理しています。

Q. 独立して所得が増えたら、軽減は打ち切られますか。
期間中は続きます。ただし、あなたの事業所得はそのまま保険料に反映されるので、軽減されているのは「前年の給与所得部分」だけです。2年目以降に事業が伸びれば保険料は上がります。

Q. 家族の国保料にも影響しますか。
国保は世帯単位で計算されるので、世帯主の所得が下がった扱いになれば世帯全体の保険料が下がります。均等割の軽減判定にも反映されます。

Q. 保険料の通知が届く前に軽減の申請をしてもいいですか。
問題ありません。むしろ加入手続きと同時に申請するほうが、最初から軽減後の金額で通知が来るので分かりやすいです。

Q. 国保の「支払額の証明書」が確定申告前に届きません。
自治体によって送付の有無が違います。対応は国民健康保険の控除証明書が届かないときの確定申告にまとめています。

まとめ

  • 倒産・解雇・雇止めで辞めた人は、国保料の計算で前年の給与所得が30/100になる
  • 対象は離職理由コード(11・12・21・22・31・32/23・33・34)で決まる。自己都合は対象外
  • 期間は離職日の翌日が属する月から、その年度の翌年度末まで。年度後半の退職ほど短い
  • 申請先は市区町村の国保窓口。受給資格者証(または受給資格通知)が必要。あとからでもさかのぼれる
  • 開業しても続くが、任意継続を選ぶと使えない。選択の前に必ず両方を計算する
  • 国民年金にも失業による免除の特例がある。同じ書類で相談できる
この記事の主な根拠(出典)

  • 国民健康保険法/同法施行令(保険料の賦課・軽減)、各市区町村の国民健康保険条例
  • 雇用保険法13条・23条ほか(特定受給資格者・特定理由離職者の範囲)
  • 厚生労働省「非自発的失業者に対する国民健康保険料(税)の軽減措置について」
  • 日本年金機構「国民年金保険料の免除・納付猶予(失業等による特例免除)」
  • 所得税法74条(社会保険料控除)
  • ※2026年時点の制度に基づく記事です。保険料率・軽減の運用は自治体ごとに異なり、毎年度改定されます

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👉 健康保険は国保・任意継続・扶養の3択、どれを選ぶ?
👉 退職したら14日以内に何をする?切替手続きの順番
👉 独立したら健康保険はどうする?
👉 独立1年目にかかる税金と社会保険
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