別表四の留保欄は、そのまま別表五(一)へ引っ越す──2枚のつながりを数字で追う
別表四が税務上の損益計算書なら、別表五(一)は税務上の貸借対照表です。
そして2枚は完全につながっています。別表四の「留保②」に書いた金額は、そのまま別表五(一)Iへ引っ越します。このつながりを一度数字で追ってしまえば、申告書の検算ができるようになります。
この記事の結論
- 別表五(一)Iは「会計上の利益剰余金 + 別表四の留保項目 △ 未納法人税等」の積み上げ
- 加算・留保は③(増)に+、減算・留保は③(増)に△で書く。認容は②(減)へ
- 科目名は「売上高計上もれ」ではなく「売掛金」。貸借対照表の勘定科目を使う
- 繰越損益金だけは洗い替え。期首をそのまま②(減)に書いて消し、期末残高を③(増)に書く
- ★未払法人税等をきちんと積んだのに利益剰余金と利益積立金額が一致しない理由は、確定申告分の事業税
- ★検算式を1回やるだけで、申告書のミスの大半が見つかる
1. 別表五(一)は何を計算している表なのか
別表五(一)は2部構成です。
- 別表五(一)I──利益積立金額の計算に関する明細書
- 別表五(一)II──資本金等の額の計算に関する明細書
このうち日常的に動くのはIのほうです。会計上の利益剰余金に税務調整を足し引きして、税務上の利益積立金額を出すという作りになっています。
ヨコの計算は単純です。
④期末残高 = ①期首残高 − ②(減) + ③(増)
- ①期首現在利益積立金額──前期の「差引翌期首現在利益積立金額④」をそのまま繰り越す
- ②(減)──①にある金額を消すときに使う。①と同符号で記載する(+で書くとマイナスされ、△で書くとプラスされる)
- ③(増)──当期に新たに発生した項目
- ④差引翌期首現在利益積立金額──翌期の①になる
タテの構造は3つのブロックの積み上げです。
- 会計上の利益剰余金──利益準備金/別途積立金/繰越損益金。株主資本等変動計算書から転記し、期末残高は貸借対照表の純資産の部と一致する
- + 別表四の留保項目──別表四から転記
- △ 未納法人税等──未納法人税及び未納地方法人税/未納道府県民税/未納市町村民税
2. 別表四の留保は、どう引っ越すのか
ルールはこれだけです。
| 別表四の調整 | 別表五(一)Iでの書き方 |
|---|---|
| 加算・留保(新規発生) | ③(増)欄に+の数値 |
| 減算・留保(新規発生) | ③(増)欄に△の数値 |
| 前期以前の加算・留保の認容(当期は減算・留保) | ②(減)欄に+の数値 |
| 前期以前の減算・留保の認容(当期は加算・留保) | ②(減)欄に△の数値 |
数字で追います。
例イ:売上高の計上もれ 100(加算・留保)
- 追加の仕訳は(借)売掛金100/(貸)売上100
- 別表五(一)Iの③(増)欄に「売掛金 100」
- 意味:会計上の利益剰余金 + 売掛金100 = 税務上の利益積立金額
- 翌期に売上を計上して解消 → 別表四「売上高計上もれ認容 100(減算・留保)」→ ②(減)欄に「売掛金 100」→ ④期末残高はゼロ
例ロ:売上原価の計上もれ 80(減算・留保)
- 追加の仕訳は(借)売上原価80/(貸)棚卸資産80
- 別表五(一)Iの③(増)欄に「棚卸資産 △80」
- 意味:会計上の利益剰余金 − 棚卸資産80 = 税務上の利益積立金額
- 翌期に解消 → 別表四「売上原価計上もれ認容 80(加算・留保)」→ ②(減)欄に「棚卸資産 △80」→ ④はゼロ
★科目名は貸借対照表の勘定科目を使います。「売上高計上もれ」ではなく「売掛金」と書きます。別表五(一)Iが税務上の貸借対照表だからです。ここを別表四の項目名のまま書くと、表の意味が崩れます。
3. 繰越損益金だけは「洗い替え」で書く
会計上の利益剰余金は株主資本等変動計算書から転記しますが、繰越利益剰余金だけは特殊な書き方をします。
- 別表五(一)Iでの科目名は「繰越損益金」
- 期中の変動(配当・積立・当期純利益)を②③に個別に書くことはしない
- ★①(期首)の金額をそのまま②(減)に書いていったんゼロにし、当期末の残高を③(増)に書く
- 結果として ③(増) = ④(期末残高) になる
株主資本等変動計算書の変動内訳を②③に個別に書こうとすると、必ず数字が崩れます。洗い替えが正解です。
数値例
株主資本等変動計算書がこうなっている会社を考えます。
| 当期首 | 剰余金の配当 | 別途積立金の積立 | 当期純利益 | 当期末 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 利益準備金 | 100 | +10 | 110 | ||
| 別途積立金 | 200 | +60 | 260 | ||
| 繰越利益剰余金 | 500 | △110 | △60 | +670 | 1,000 |
| 合計 | 800 | △100 | 0 | +670 | 1,370 |
このとき、
- 別表四:当期利益又は当期欠損の額 → 総額① 670 / 留保② 570 / 社外流出③(配当)100
- 別表五(一)I:
- 利益準備金 ①100 ③+10 ④110
- 別途積立金 ①200 ③+60 ④260
- 繰越損益金 ①500 ②500 ③1,000 ④1,000
- 検算:別表五(一)Iへの記載合計 10+60+500 = 570 = 別表四の留保欄570
別表四の留保570が、別表五(一)Iでは3つの科目に分かれて入っているという関係が見えます。利益準備金への振替も別途積立金への積立も、社外に出ていくわけではないので留保に残る、ということです。
4. 未払法人税等を正しく積んだのに、なぜズレるのか
経理担当者が必ず一度は悩むところです。答えは確定申告分の事業税です。
設例
期末に (借)法人税等 4,500 /(貸)未払法人税等 4,500 を計上しました。内訳は法人税3,000・道府県民税150・市町村民税350・事業税1,000。会計上の繰越利益剰余金は△4,500になりました。
別表五(一)Iはこうなります。
| 区分 | 金額 |
|---|---|
| 繰越損益金 | △4,500 |
| 納税充当金 | +4,500 |
| (小計) | 0 |
| 未納法人税(確定) | △3,000 |
| 未納道府県民税(確定) | △150 |
| 未納市町村民税(確定) | △350 |
| 差引合計額(利益積立金額) | △3,500 |
会計上の利益剰余金は△4,500、税務上の利益積立金額は△3,500。差の1,000が、確定申告分の事業税です。
理由は前の記事のとおりです。確定事業税は会計上は未払法人税等に含めて費用計上されているけれど、税務上は申告書を提出する翌期の損金なので、期末時点では利益積立金額の計算上まだ控除されていません。結果として税務上の利益積立金額のほうが、確定事業税の分だけ多くなります。
★これは誤りではなく、制度上そうなります。「一致しない」と気づいたら、差額が確定事業税と一致するかを確かめてください。それで一致すれば正常です。
なお、納税充当金とは会計でいう「未払法人税等」のことです。会計実務でこの科目名を使うことはまずありませんが、別表ではこの呼び方をします。納税充当金はプラス項目、未納法人税等はマイナス項目であること、未納法人税等に事業税は含めないこと、「未納法人税」には地方法人税が含まれ、住民税には均等割額も含むことを押さえておけば十分です。
5. 赤字の年──中間納付が還付されるとき
法人成り2〜3年目に必ず遭遇する場面です。
設例:当期の中間申告分7,500(法人税5,000/道府県民税250/市町村民税750/事業税1,500)を「法人税等」で損金経理したが、当期は赤字になり、中間納付額が全額還付されることになった。
| 表 | 書き方 |
|---|---|
| 別表五(二) | 中間分を②当期発生税額と⑤損金経理による納付に記載。確定申告税額は還付になるのでマイナス(△)で記載 |
| 別表四 | 当期利益△7,500/加算「損金経理をした法人税5,000(留保)」「損金経理をした住民税1,000(留保)」→ 所得金額△1,500(中間事業税1,500が損金になった結果) |
| 別表五(一)I | ★「未収還付法人税5,000」「未収還付道府県民税250」「未収還付市町村民税750」を③(増)にプラスで記載。下段の未納法人税等の欄は使わず、繰越損益金より上に書く |
翌期(還付を受けた年)は、
- 会計:(借)預金7,500/(貸)還付法人税等7,500
- 別表四:減算「法人税等の還付金 6,000(留保)」(法人税5,000+住民税1,000)。★事業税1,500は益金なので減算しません
- 別表五(一)I:未収還付法人税等を②(減)で消して④ゼロ
★還付されるものが全部「益金にならない」わけではありません。損金にならなかった法人税・住民税の還付は益金不算入、損金になった事業税の還付は益金です。ここを一括で減算すると所得が過少になります。
6. 検算式──これを1回やるだけで、ミスの大半が見つかります
別表五(一)の様式の欄外にも印刷されている式です。
期首現在利益積立金額 差引合計額 ①
+ 別表四 留保総額 ②
- 中間分・確定分の 法人税・地方法人税・道府県民税・市町村民税 の合計額
= 差引翌期首現在利益積立金額 差引合計額 ④
この式で計算した金額が別表五(一)Iの期末利益積立金額と一致しなければ、別表四と別表五(一)Iが合理的に対応していないということなので、記載の間違いを探します。
★式に事業税が入らないことに注意してください。事業税は損金算入なので、留保計算に乗りません。
★なお、グループ法人税制が適用される場合は、この検算式が一致しないことがあります。100%グループ内の資産譲渡や寄附がある会社は、不一致でも即エラーとは限りません。
会計ソフトが自動で作った申告書でも、この検算だけは自分でやる価値があります。「合っているはず」と「合っていることを確かめた」の差は、税務調査の場面で効いてきます。調査そのものの流れは 税務調査とは何か【2026年版】 にまとめています。
まとめ
- 別表五(一)Iは税務上の貸借対照表。会計の利益剰余金+別表四の留保△未納法人税等
- ヨコは ④=①−②+③。②(減)は①と同符号で書く
- 加算・留保→③に+/減算・留保→③に△。認容は②へ
- 科目名は貸借対照表の勘定科目(「売上高計上もれ」ではなく「売掛金」)
- ★繰越損益金は洗い替え。①をそのまま②に書いて消し、期末残高を③に書く
- ★利益剰余金と利益積立金額のズレの正体は確定申告分の事業税。制度上そうなる
- 納税充当金=未払法人税等。プラス項目。未納法人税等はマイナス項目で、事業税を含めない
- 赤字で中間納付が還付されるときは、★未収還付◯◯税を繰越損益金より上に③(増)で書く。翌期の減算は法人税・住民税だけ(事業税は益金)
- ★検算式を1回やる。式に事業税は入らない
- 法人税法2条18号(利益積立金額)/2条16号(資本金等の額)/26条(還付金等の益金不算入)/38条(法人税額等の損金不算入)
- 法人税基本通達9-5-1(事業税の損金算入の時期)
- 国税庁「別表五(一) 利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」「別表五(二) 租税公課の納付状況等に関する明細書」各記載要領
- ※2026年時点の制度に基づく記事です。別表の行番号・欄番号は様式改訂でずれるため、実際の申告では当年の様式でご確認ください
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