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更新日 2026-08-04 法人の決算と申告

法人成り1年目の社長へ|決算から申告まで、何がどの順で起きるのか【全体マップ】

個人事業から法人になると、1年の締めくくりの作業が別物になります。確定申告書1枚に決算書を添えて出す、という形ではなくなり、別表・決算書・内訳明細書・概況説明書を束にして提出することになります。

しかも「決算」と「申告」は別の作業で、順番が決まっています。この順番を知らないまま手をつけると、数字が合わなくなって最初からやり直しになります。

この記事の結論

  • 決算・申告は5段階で進む。①残高を確定 → ②消費税を確定 → ③仮の決算書 → ④申告調整して税額を出す → ⑤税額を決算に戻す
  • 消費税を先に確定させる。消費税が決まらないと当期利益が決まらず、当期利益が決まらないと所得も法人税額も決まらない
  • ④と⑤は循環している。税額を決めるには決算が要り、決算を確定させるには税額が要る。だから「申告書は行ったり来たりするもの」
  • 税額を動かせるのは期末まで。申告書を書く段階でできることはほとんど残っていない
  • 申告期限は事業年度終了の日の翌日から2か月以内納付期限も同じ日
  • 法人税の申告書は確定した決算(定時株主総会で承認を受けた決算)に基づいて作る。一人会社でも総会は省略できない

1. 決算・申告は5段階で進む

法人の1年の締めくくりは、次の順番で進みます。この順番が崩れると数字が合わなくなるという意味で、順番そのものが実務の骨格です。

段階 やること 出てくるもの
① 残高を確定させる 現金・預金・売掛金・買掛金・棚卸・固定資産・借入金などの実際の残高を確かめ、帳簿を実態に合わせる 決算整理後の残高試算表
② 消費税を確定させる 課税・非課税・不課税を区分し、消費税の年税額を計算する 消費税の申告書。税込経理ならこの年税額が租税公課になり、当期利益が動く
③ 仮の決算書を作る 法人税等を計上する前の当期利益を出す 仮の貸借対照表・損益計算書
④ 申告調整をして税額を出す 別表を埋めて所得金額を出し、法人税・地方法人税・住民税・事業税の年税額を計算する 各申告書。年税額が確定する
⑤ 税額を決算に戻す ④で出た年税額を「未払法人税等」として決算に計上し、決算書を完成させる 確定した決算書・申告書一式

ここで必ずつまずくのが④と⑤の循環です

当期の税額を決めるには決算が要ります。ところが決算を確定させるには税額が要ります。にわとりと卵です。

だから実務では、期末の未払法人税等の欄をいったん空欄にして申告書を作り、税額が出た時点で遡って記入するという作り方をします。会計ソフトを使っていても内部で同じ往復をしているので、「申告書は行ったり来たりするもの」と最初に飲み込んでおくと迷いません。

そして②を後回しにしてはいけません

税込経理なら、決算で算出された消費税の年税額が全額「租税公課」になって当期利益を押し下げます。税抜経理でも、端数や控除対象外消費税額等が雑収入・雑損失に出ます。

消費税が決まらないと当期利益が決まらず、当期利益が決まらないと所得も税額も決まりません。「法人税をやってから消費税」という順番で進めると、必ず後戻りします。

2. 期末を挟んだ4か月の地図

決算作業は期末の日から始まるものではありません。期末前にしかできないこと期末後にしかできないことが分かれていて、前者を逃すと1年待つことになります。3月決算の会社を例に並べます。

時期 やること なぜその時期か
期首から3か月以内(4〜6月) 役員報酬の改定。事前確定届出給与の届出 会計期間開始の日から3か月を経過する日までにしか改定できない
期首〜 前期確定申告分の納付、繰越欠損金の残高確認
期首6か月経過後2か月以内(11月) 中間申告・納付 予定申告額が10万円を超えるなら義務
期末3か月前(1月頃) 決算予測。着地見込みの利益を出し、打ち手を洗い出す 設備投資・共済・決算賞与などは期末までに実行しないと効かない
期末2か月前〜期末(2〜3月) 設備投資の実行と事業供用、共済の加入・前納、決算賞与の通知、不良債権の整理、除却・廃棄の実行 いずれも「期末までに事実が完成していること」が要件
期末日(3/31) 実地棚卸、現金実査、預金残高証明の依頼 期末時点の事実は期末にしか確認できない
期末後1か月(4月) 残高確定 → 消費税の確定 → 仮の決算書 5段階の①〜③
期末後1〜2か月(4〜5月) 別表の作成 → 税額計算 → 未払法人税等の計上 → 決算書の完成 5段階の④⑤
期末後2か月以内(5月末) 定時株主総会 → 申告書の提出・納付 提出は総会承認後

★印を付けた「期末3か月前の決算予測」が、中小企業の税額を最も大きく動かします。申告書を作る段階でできることは、ほとんど残っていません。この理由は 決算で税金を動かせるのは「決算まで」 で詳しく書きました。

3. 「確定した決算」に基づく、という縛り

法人税の申告書は、確定した決算に基づいて作らなければなりません(確定決算主義)。株式会社の「確定した決算」とは、定時株主総会で承認を受けた決算を指します。

つまり理屈のうえでは、定時株主総会より前に確定申告書を提出することはできません。

実務では、株主総会の前に申告書を作っておき、総会で決算承認を受けてから提出します。一人会社でも株主総会の省略はできず、株主総会議事録は作ります。「法人成りしたら急に面倒になった」と感じる最大の原因がこれです。

そしてこのルールから、もう一つ大事な帰結が出ます。

過年度の決算は、後から直しません(直せません)。

税務調査で否認されても、決算書は修正しません。申告書の別表四だけで修正します。過去の総会で承認された決算に、後から売上を追加することはできないからです。

📌 範囲注記
株主総会の招集手続・議事録・役員の任期は会社法の話で、役員変更の登記は司法書士の領域です。この記事では「税務上、総会承認済みの決算が必要になる」という接点だけを扱っています。

4. 提出するもの一式

法人税の確定申告として提出するのは、別表だけではありません。

書類 内容
別表一・別表一次葉 法人税額・地方法人税額の計算。申告書の表紙にあたる
各種別表 所得金額と各調整の明細。中小企業が実際に使うのは10種類前後
貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書 決算書。添付義務あり
勘定科目内訳明細書 貸借対照表の各科目の内訳。添付義務あり。これを作る作業が決算そのもの
法人事業概況説明書 A4表裏1枚の会社の自己紹介。添付義務あり(法人税法施行規則35条)
適用額明細書 租税特別措置を適用する場合。軽減税率15%にも必要。忘れると特例が飛ぶ

全部合わせると30ページを超えます。提出先は本店所在地を管轄する税務署です。

勘定科目内訳明細書を1枚ずつ作っていくと、自然と残高の検証になります。「決算整理を先にやって、それから内訳書を作る」のではなく、内訳書を作る作業が決算整理そのものだと考えると手が動きます。

法人事業概況説明書は、記載に誤りがあっても直ちに納税額に影響するものではありませんが、税務署が会社の全体像を掴むための資料であり、調査の入口になります。とくに「期末従事員等の状況」「経理の状況」「帳簿類の備付状況」「月別の売上高等の状況」は、実態と合っているか確認しておいてください。

5. 落としてはいけない期限

年度依存の税率・限度額は毎年動きますが、期限の骨格は変わりません。

いつまでに 何を
事業年度終了の日の翌日から2か月以内 法人税・地方法人税の確定申告と納付(3月決算なら5月末日。納付期限も同じ日
同上 消費税・地方消費税の確定申告と納付
同上 都道府県民税・事業税・特別法人事業税、市町村民税
★設立の日から3か月を経過した日最初の事業年度終了の日のいずれか早い日の前日 青色申告の承認申請書(法法122)
会計期間開始の日から3か月を経過する日まで 役員報酬の改定(定期同額給与)
決議の日から1か月を経過する日会計期間開始の日から4か月を経過する日いずれか早い日 事前確定届出給与に関する届出書
事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内 中間申告(予定申告額が10万円を超える場合)
適用を受けようとする課税期間開始の日の前日まで 消費税の各種選択届出書
毎年1月31日まで 償却資産(固定資産税)の申告
法定申告期限から5年以内 更正の請求(納めすぎたとき。欠損金額が過少だった場合は10年以内)

法人成り直後の最重要期限は、青色申告の承認申請書です。落とすと繰越欠損金も少額減価償却資産の特例も使えません。設立の日から3か月を経過した日と、最初の事業年度終了の日の、早いほうの前日が期限です。設立初年度が3か月未満で終わる会社は、期限が前倒しになる点に注意してください。

6. 申告期限は延長できます(ただし利子税がかかります)

定款の定め等により2か月以内に定時株主総会が招集されない常況にある法人は、申請により法人税の申告期限を1か月延長できます(法法75の2)。申請は事業年度終了の日までです。

ここでよく誤解されているのが納付の扱いです。

申告期限を延長すると、納付期限も延びます。ただし延長された期間について利子税がかかります。

だから実務では、利子税を避けるために2か月以内に見込納付をします。「納付期限は延びない」と書かれた資料がありますが、正確には「延びるが利子税がつくので、実務上は見込みで払っておく」です。

なお地方税は手続が分かれます。法人住民税は届出、法人事業税・特別法人事業税は承認申請が必要で、地方税では利子税ではなく延滞金がかかります。消費税の申告期限も、法人税の延長を受けている法人が届出書を出せば1か月延長されます。

7. この連載で扱うこと

法人の決算と申告は、大きく分けると次の順で理解していくのが近道です。

  1. 概念──決算までにできること/申告書に書かないと権利を失うもの → 決算で税金を動かせるのは「決算まで」
  2. 核心──利益と所得のズレを1枚で表す別表四 → 決算書の利益と法人税の所得はなぜ違うのか
  3. 判定──留保か社外流出か → 4つの箱を「追加仕訳が書けるか」で見分ける
  4. つながり──別表四と別表五(一) → 別表四の留保欄は、そのまま別表五(一)へ引っ越す
  5. 論点──社長がいちばん迷うところ → 役員報酬を変えていいのは1年に1回事前確定届出給与の期限その修理は経費?資産?

なお、法人化するかどうかの判断は別の話です。売上や利益からの目安は 売上いくらから法人化がトク?、判断軸の整理は 法人化の分岐点 をご覧ください。この連載は「法人化したあと」から始めています。

まとめ

  • 決算・申告は①残高確定 → ②消費税確定 → ③仮の決算書 → ④申告調整と税額計算 → ⑤税額を決算に戻すの5段階
  • 消費税を先に確定させる。当期利益が動くから
  • ④と⑤は循環している。未払法人税等は空欄にして作り、後から遡って書く
  • 税額を動かせるのは期末まで。★決算予測は期末3か月前に
  • 申告・納付とも事業年度終了の日の翌日から2か月以内
  • 申告書は確定した決算(定時株主総会の承認済み決算)に基づく。一人会社でも総会は省略できない
  • 過年度の決算は直さない。修正は別表四で行う
  • 提出物は別表+決算書・勘定科目内訳明細書・法人事業概況説明書・適用額明細書
  • 法人成り直後の最重要期限は青色申告の承認申請書
  • 申告期限は1か月延長できるが、延長期間に利子税。実務では見込納付する
この記事の主な根拠(出典)

  • 法人税法74条(確定申告)/75条・75条の2(申告期限の延長)/122条(青色申告の承認の申請)
  • 法人税法施行規則35条(法人事業概況説明書)
  • 法人税法施行令69条1項1号イ(定期同額給与の改定期限)/69条4項(事前確定届出給与の届出期限)
  • 国税通則法23条(更正の請求)
  • 租税特別措置の適用額の記載がない場合等の特例に関する法律(適用額明細書)
  • 国税庁「法人税のあらましと申告の手引」「法人事業概況説明書の書き方」
  • ※2026年時点の制度に基づく記事です。税率・限度額は改正が続いているため、実際の判断前に当年の内容をご確認ください

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👉 役員報酬を変えていいのは1年に1回、それも期首から3か月まで
👉 決算整理はなぜ必要?(個人事業主版)

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