株主3人と、その家族──同族会社の判定(別表二)は、なぜ小さい別表なのに怖いのか
法人税の申告書のなかで、別表二はいちばん地味な1枚です。株主の名前と持株数を書いて、割合を計算して終わり。会計ソフトなら前期の内容がそのまま繰り越されます。
ところが、ここでの判定を間違えると、影響は給与にまで及びます。社長の親族に払っている給与が損金にならなくなったり、登記簿に載っていない人が役員扱いになったりします。しかもその年の申告書だけでは、誰も気づきません。
小さい別表ほど、繰り越したまま何年も見ていないことが多い。ここはその1枚です。
この記事の結論
- 同族会社 = 株主等の3人以下(+それぞれの同族関係者)が発行済株式の50%超を持っている会社(法人税法2条10号)
- ★自己株式は、発行済株式の総数から除く
- ★株式数だけで判定しない。一定の議決権の数、持分会社なら社員の数でも判定する
- ★名義株は、名義人ではなく実際の権利者で判定する(法人税基本通達1-3-2)
- 同族会社になると効くのは3つ。行為計算の否認/役員の範囲の拡張/留保金課税
- ★留保金課税は資本金1億円超の特定同族会社だけ。資本金1億円以下の中小法人は対象外(ただし資本金5億円以上の法人の100%子会社などは別)
- ★中小企業で本当に効くのは「役員の範囲」。みなし役員と、使用人兼務役員になれない人の判定に直結する
※制度はいずれも2026年時点のものです。
1. 別表二は何を判定しているのか
判定基準はひとつです。
株主等の3人以下と、これらと特殊の関係のある個人及び法人が、発行済株式(自己株式を除く)の総数の50%超を保有していれば、同族会社。
「3人」ではなく「3グループ」と考えるのが実務です。株主本人だけでなく、その同族関係者の持株を合算するからです。
日本の中小企業の圧倒的多数は同族会社です。社長ひとりが100%持っている一人会社なら、その時点で1グループ100%なので確定します。判定そのもので悩む会社は多くありません。問題は、判定の副作用のほうです。
同族関係者の範囲
| 区分 | 誰が入るか |
|---|---|
| 親族 | 配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族(民法上の親族) |
| 内縁 | 事実上婚姻関係と同様の事情にある者 |
| 使用人等 | 株主等の使用人、株主等から生計の支援を受けている者 |
| 生計一親族 | 上記の者と生計を一にする親族 |
| 法人 | 株主等とその同族関係者が50%超を支配している他の会社など |
★「6親等内の血族」はかなり広いです。はとこ(再従兄弟)までが6親等に入ります。実務で問題になるのはほぼ配偶者・子・親・兄弟の範囲ですが、株主に遠縁の親族が混じっている会社は、いったん系図を書いたほうが早いです。
グループの作り方
★「持株数がいちばん多い株主を中心にグループを作る」のではありません。そのグループの持株数が最も多くなるようにまとめます。
たとえば、社長20%・社長の妻15%・専務(社長の弟)18%・その他多数、という会社なら、社長+妻+弟で53%となり第1グループが53%です。「20%の社長」を単独で第1位に置いて数えるのではありません。
2. ★3つの落とし穴
落とし穴1. 自己株式
発行済株式の総数から、自己株式は除きます。
会社が自社株を買い取っていると、分母が減るので各株主の割合は上がります。自己株式の取得は事業承継の場面でよく行われるので、買い取った年から判定の数字が変わることを見落とさないでください。
落とし穴2. 議決権
判定は株式数(出資金額)だけではありません。一定の事項に係る議決権の数でも、持分会社の社員の数でも判定します。いずれかで50%超なら同族会社です。
★種類株式を発行していると、結論が変わることがあります。無議決権株式を使って持株割合を下げても、議決権ベースでは50%超のまま、というのが典型です。事業承継対策で種類株式を入れた会社は、株式数と議決権の両方で確かめてください。
落とし穴3. 名義株
株主が単なる名義人で、別の者が実際の権利者である場合は、その実際の権利者を株主とします(法人税基本通達1-3-2)。
設立時に発起人の頭数をそろえるために親族や知人の名前を借りた、という会社は今も残っています。株主名簿の名前をそのまま書けばよい、という話ではありません。
★税務調査では「同族会社の判定は真実の株主をもとにして行っているか」が確認項目になっています。名義株は、判定だけでなく相続の場面でも必ず問題になります。調査全般の流れは 税務調査とは何か【2026年版】 にまとめています。
3. 毎期、株主の異動を確かめる
別表二は前期の内容をそのまま繰り越せてしまいます。だからこそ、毎期この2つだけは確かめてください。
- 発行済株式総数を履歴事項全部証明書で確認する。増資・自己株式の取得があれば分母が動きます
- 前期と比べて株主に異動がないか。あるなら、その株の移動について別の申告が必要だったのではないかを考える
★2番目が重要です。株が動いていれば、譲渡した側に譲渡所得の申告、安く譲り受けた側に贈与税の申告が必要だった可能性があります。「別表二の株主欄が去年と違う」というのは、税務署から見れば分かりやすい端緒です。
📌 範囲注記
株主名簿の名義書換や株式の発行・自己株式の取得そのものの手続は会社法の話で、登記が必要なものは司法書士の領域です。また、株式の評価額の算定や贈与税・譲渡所得の申告は、この記事の範囲外です。ここでは「法人税の申告書で毎期どう判定するか」だけを扱っています。
4. 同族会社になると、何が変わるのか
効くのは3つです。
| 規定 | 内容 | 中小企業への影響 |
|---|---|---|
| 同族会社の行為計算の否認(法人税法132条) | 形式的には合法でも、法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められる行為・計算は、税務署長が否認できる | 同族間の管理料が相場より高い、個人と会社の間の賃貸料が不当に安い/高い、が典型 |
| 役員の範囲の拡張 | 登記されていなくても役員とされる(みなし役員)。使用人兼務役員になれない人が増える | ★社長の親族への給与・賞与に直結する |
| 特定同族会社の留保金課税(法人税法67条) | 課税留保金額に10%〜20%の追加課税 | ★資本金1億円以下の中小法人は対象外 |
5. 留保金課税は、中小企業には原則として関係ない
「利益を内部留保すると余計に課税される」と聞いて心配される方がいますが、中小企業には基本的に当たりません。
| 項目 | 内容(2026年時点) |
|---|---|
| 対象 | 被支配会社(上位1グループの持株割合等が50%超)のうち、資本金1億円超のもの=特定同族会社 |
| ★適用除外 | 資本金1億円以下の法人。ただし資本金5億円以上の法人による完全支配関係がある子会社などは、資本金にかかわらず対象 |
| 税率 | 課税留保金額のうち 年3,000万円以下 10%/3,000万円超1億円以下 15%/1億円超 20% |
| 留保控除額 | ①所得等の金額×40% ②年2,000万円 ③期末資本金×25%−期末利益積立金額 のうち最も多い金額 |
★一人会社・家族経営の会社が心配する必要はありません。気にすべきなのは、資本金を1億円超に増やすときと、大きな会社のグループに入るときです。増資は均等割にも効くので、その点は 赤字でも7万円──法人にかかる税金を、6つ全部並べてみる をご覧ください。
6. ★中小企業で本当に効くのは「役員の範囲」
3つのうち、日常の申告で毎年効いてくるのはこれです。
- みなし役員──登記簿に載っていなくても、経営に従事していて一定の持株要件を満たす人は役員扱いになります。役員になると、賞与は原則として損金になりません
- 使用人兼務役員になれない人──①第1〜第3順位の株主グループの累積が初めて50%超となるグループに属し ②その株主グループの所有割合が10%超 ③本人+配偶者等が5%超、の3つをすべて満たす役員は、使用人兼務役員になれません
★どちらの判定にも、別表二で作った株主グループの数字をそのまま使います。つまり、別表二を間違えると、給与の損金算入まで間違えます。しかも給与は毎月出ていくものなので、間違いは1年分まとめて否認されます。
★自分は1株も持っていなくても、配偶者が持っていれば該当することがあります。中小同族会社では、社長の親族はほぼ全員が使用人兼務役員になれないと考えたほうが早いです。詳しくは 役員報酬は1年に1回しか動かせない に書きました。
7. 現場でやること
- 履歴事項全部証明書で発行済株式総数を確認する(増資・自己株式の取得があれば分母が動く)
- 自己株式を分母から除いているかを確かめる
- 株式数と議決権の両方で判定する(種類株式があるなら必ず)
- 株主名簿の名前が実際の権利者かを確かめる。名義株があるなら整理を検討する
- 前期と株主の異動を突き合わせる。異動があれば、譲渡所得・贈与税の申告の要否を確認する
- 役員とその親族の持株割合を毎期出しておく。使用人兼務役員の判定に使う
- 資本金1億円超への増資を考えるときだけ、留保金課税を思い出す
まとめ
- 同族会社 = 株主等の上位3グループで発行済株式の50%超(法人税法2条10号)
- ★自己株式は分母から除く
- ★株式数・議決権・持分会社の社員の数のいずれかで50%超なら同族会社
- ★名義株は実際の権利者で判定する(法人税基本通達1-3-2)
- 同族関係者には6親等内の血族・3親等内の姻族まで入る
- グループは「そのグループの持株数が最も多くなるように」まとめる
- 効くのは行為計算の否認/役員の範囲/留保金課税の3つ
- ★留保金課税は資本金1億円超だけ。中小法人は対象外(大法人の100%子会社などは例外)
- ★中小企業で毎年効くのは「役員の範囲」。みなし役員・使用人兼務役員の判定に直結する
- 毎期、株主の異動を確かめる。動いていれば譲渡・贈与の申告が要ったかもしれない
- 法人税法2条10号(同族会社)/67条(特定同族会社の特別税率)/132条(同族会社等の行為又は計算の否認)
- 法人税法施行令4条(同族関係者の範囲)/7条(役員の範囲)/71条(使用人兼務役員とされない役員)
- 法人税基本通達1-3-1(株式会社における同族会社の判定)/1-3-2(名義株についての株主等の判定)
- 民法725条(親族の範囲)
- 国税庁「法人税のあらましと申告の手引」
- ※2026年時点の制度に基づく記事です
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