赤字でも7万円──法人にかかる税金を、6つ全部並べてみる
法人化してはじめての決算が終わると、納付書の数に驚きます。
個人事業のときは、所得税と住民税と、場合によって個人事業税と消費税。法人になると税目が6つあり、申告先も税務署・都道府県・市町村の3か所に分かれます。
そして何より、赤字でも税金がゼロにならない。
この記事の結論
- 法人にかかる税金は法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税・防衛特別法人税の6つ(+消費税)
- 申告先は税務署・都道府県・市町村の3か所
- ★法人住民税の均等割は赤字でもかかる。標準税率ベースで最低年7万円
- ★均等割の判定基礎は所得ではなく資本金等の額。増資をすると区分が上がることがある
- ★防衛特別法人税は2026年(令和8年)4月1日以後に開始する事業年度から。納付額がゼロでも申告が必要
- 中小法人の軽減税率15%を使うには適用額明細書の添付が要る
※税率・金額はいずれも2026年時点のものです。
1. まず全体像
2026年時点の一覧です。
| 税目 | 何にかかるか | 税率 | 申告先 |
|---|---|---|---|
| 法人税 | 所得金額 | 普通法人23.2% 中小法人の年800万円以下は15%(所得10億円超の事業年度は17%) |
税務署 |
| 地方法人税 | 法人税額 | 10.3% | 税務署(法人税と同じ申告書) |
| 道府県民税 法人税割 | 法人税額 | 標準1.0%(制限2.0%) | 都道府県 |
| 道府県民税 均等割 | 資本金等の額・従業者数 | 年2万円〜80万円 | 都道府県 |
| 市町村民税 法人税割 | 法人税額 | 標準6.0%(制限8.4%) | 市町村 |
| 市町村民税 均等割 | 資本金等の額・従業者数 | 年5万円〜300万円 | 市町村 |
| 法人事業税(所得割) | 所得金額 | 資本金1億円以下:年400万円以下3.5%/400万円超800万円以下5.3%/800万円超7.0% | 都道府県 |
| 特別法人事業税 | 基準法人所得割額 | 資本金1億円以下の普通法人37% | 都道府県(事業税と併せて申告) |
| 防衛特別法人税 | 基準法人税額 − 年500万円 | 4% | 税務署 |
見てのとおり、課税標準が3種類あります。
- 所得金額にかかるもの……法人税、法人事業税
- 法人税額にかかるもの……地方法人税、法人住民税の法人税割、防衛特別法人税
- 資本金等の額と人数で決まるもの……法人住民税の均等割
★2番目のグループがあるので、法人税が動くと連鎖して他の税額も動きます。別表を直したら地方税の申告書も作り直す、という手戻りはここから生まれます。
★3番目のグループだけが、利益とまったく関係がありません。これが均等割です。
2. 赤字でも7万円──均等割
★法人住民税の均等割は、利益が出ていなくても課税されます。
金額は資本金等の額と従業者数の区分で決まり、標準税率ベースの最低額は次のとおりです。
| 標準税率ベースの最低額 | |
|---|---|
| 道府県民税 均等割 | 年2万円 |
| 市町村民税 均等割 | 年5万円 |
| 合計 | 年7万円 |
法人成りして最初に驚くのがここです。「赤字なら税金はゼロ」は、個人事業では概ね当てはまりますが、法人には当てはまりません。
★自治体によって超過課税があります。上の7万円は標準税率で計算した最低額です。実際の金額は本店所在地の自治体の条例で決まるので、均等割だけは「うちの市はいくらか」を必ず確認してください。なお東京23区内は、道府県民税と市町村民税に相当するものが都民税として一本化されて課されます。
★増資すると均等割が上がることがある
均等割の判定基礎は「資本金等の額」です。これは会計上の資本金とイコールではなく、資本金+資本準備金などの税務上の金額です。
つまり、
- 増資をすると区分が上がって、毎年の均等割が増えることがある
- 役員借入金を資本に振り替える(DES)ような手当ても、均等割への影響を見てから決める
★資金調達や債務整理の話として増資を検討するときに、均等割まで見ていないケースは実際によくあります。一度上がると毎年効いてくるので、判断の前に区分を確認してください。
3. 防衛特別法人税──2026年4月から始まった新しい税
2026年時点で最も新しい税目です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 課税事業年度 | 令和8年(2026年)4月1日以後に開始する各事業年度 |
| 納税義務者 | 法人税を課される法人(全法人) |
| 税額 | (基準法人税額 − 基礎控除額 年500万円)× 4% |
| 基準法人税額 | 所得税額控除・外国税額控除等を適用しないで計算した法人税額 |
| 申告期限 | 課税事業年度終了の日の翌日から2か月以内(法人税と同じ) |
| ★申告義務 | 納付税額がゼロでも申告が必要 |
| 中間申告 | 令和9年4月1日以後に開始する課税事業年度から |
基礎控除が年500万円あるので、法人税額が500万円以下なら納付額はゼロです。中小法人の軽減税率を考えると、法人税額500万円は所得およそ2,500万〜3,000万円あたりが目安になります。
★つまり多くの中小企業は当面ゼロ納付です。ただし──
★★ゼロでも申告書は出します。
「かからないから関係ない」ではなく、「かからないことを申告する」税目です。申告書に欄が増えるので、会計ソフト・申告ソフトが対応しているかは決算前に確認してください。
4. 中小法人の軽減税率15%は、黙っていても使えない
法人税の本則は23.2%ですが、中小法人(期末資本金1億円以下)の所得年800万円以下の部分は15%です。差は8.2ポイントあるので、影響は小さくありません。
ただし条件があります。
| 論点 | 内容(2026年時点) |
|---|---|
| 適用期限 | 令和9年3月31日までに開始する各事業年度 |
| ★所得10億円超の事業年度 | 17%(15%ではない) |
| ★適用除外事業者 | 前3年平均所得が15億円超の法人は15%を使えず19% |
| 通算法人 | 対象外 |
| ★手続 | 適用額明細書の添付が必要 |
★最後の行が実務では効きます。租税特別措置は、申告書に適用額明細書を付けて初めて使えます。添付を忘れると、条件を満たしていても軽減税率が受けられません。
これは「申告書に書かないと権利を失うもの」の一例です。決算をどう組んでも取り返せない種類のミスなので、決算で税金を動かせるのは「決算まで」と併せて押さえてください。
5.「実効税率は約○%」の扱い方
法人の税負担を一言で言おうとして「実効税率は約30%」という言い方をよく見ます。ここは注意が要ります。
- 財務省が公表している「29.74%」は、外形標準課税が適用される大法人ベースの法人実効税率です
- 中小法人(標準税率・外形標準課税の対象外)を法定税率から計算すると、所得800万円超の部分でおおむね33%台、800万円以下の部分(15%適用)で22%台になります
- ★ただしこれは計算値であって、一次情報として公表されている数字ではありません
そのうえ、
- 地方税には超過課税があり、自治体ごとに動く
- 防衛特別法人税が乗る(法人税額500万円超の部分)
★なので、自社の負担率は「前期の申告書の税額合計 ÷ 前期の所得」で見るのがいちばん正確です。一般論の実効税率を当てはめるより、自分の数字を1回割ってみるほうが早いです。
6. 中間申告──前期の税額で決まる
事業年度が6か月を超える普通法人は、期首から6か月を経過した日から2か月以内に中間申告をします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 予定申告額 | (前事業年度の確定法人税額 ÷ 前事業年度の月数)× 6 |
| ★申告不要 | 上の算式の金額が10万円以下、又はその金額がない場合 |
| 仮決算による中間申告 | 期首から6か月を1事業年度とみなして仮決算をする。決算報告書・勘定科目内訳明細書など本決算と同様の書類を添付する |
| ★仮決算が使えない場合 | ①中間申告書の提出の必要がない場合(災害損失金額がある場合を除く)②仮決算による税額が予定申告の算式による金額を超える場合 |
| みなし申告 | 期限までに出さなければ、予定申告があったものとみなされる。税額があれば期限までに納付が必要 |
★★「前期の法人税額が20万円を超えたら中間申告」という言い方は、前期が12か月の会社にだけ当てはまります。条文上の基準は予定申告額が10万円以下かどうかです。設立初年度や決算期を変更した年は前期が12か月ではないので、この言い換えは成立しません。
★予定申告は地方税にも連動します。法人税で中間申告の義務があれば、法人住民税・法人事業税にも納付義務が生じます。
★赤字になれば中間納付額は還付されます。このときの申告書の書き方は独特なので、別途扱います。
7. 個人事業のときと何が違うのか
会社員・フリーランス・法人別税金の違いで入口は説明しています。決算・申告の実務から見ると、違いは3つに整理できます。
| 個人事業 | 法人 | |
|---|---|---|
| 赤字の年 | 所得税・住民税所得割はゼロ(住民税均等割は数千円) | ★法人住民税均等割が最低7万円 |
| 申告先 | 税務署(住民税・事業税は原則として申告書1枚から連動) | ★税務署・都道府県・市町村の3か所に申告書を出す |
| 税率の形 | 累進(5%〜45%+住民税10%) | ★ほぼ定率(800万円で段が1つあるだけ) |
★3番目が、法人化の損得を決める本体です。所得が増えるほど個人の税率は上がり続けますが、法人の税率はほぼ横ばいになります。この交差点の話は法人化の分岐点と売上いくらから法人化がトクかにまとめています。
★1番目は、法人化のランニングコストとして見ておく必要があります。均等割7万円に加えて、社会保険の会社負担、税理士報酬、決算公告。「赤字でも出ていくお金」が個人事業より確実に増えます。
まとめ
- 法人の税金は法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税・防衛特別法人税の6つ(+消費税)
- 課税標準は所得・法人税額・資本金等の額の3種類。法人税額が動くと連鎖する
- ★均等割は赤字でもかかる。標準税率ベースで最低年7万円。自治体の超過課税で変わる
- ★均等割は資本金等の額で決まる。増資・DESの前に区分への影響を見る
- ★防衛特別法人税は令和8年4月1日以後開始事業年度から。基礎控除年500万円、税率4%、ゼロでも申告
- 中小法人の15%は令和9年3月31日までに開始する事業年度。所得10億円超は17%、適用除外事業者は19%、★適用額明細書の添付が要る
- 「実効税率○%」は計算値。自社は「前期の税額合計 ÷ 前期の所得」で見る
- 中間申告の基準は予定申告額10万円超(前期が12か月なら前期法人税額20万円超)
- 申告先は3か所。地方税を忘れない
- 法人税法66条1項・2項(法人税の税率)/71条(中間申告)/72条(仮決算による中間申告)
- 地方法人税法10条(税率)
- 地方税法52条・312条(法人住民税の均等割)/53条(法人道府県民税の申告納付)/72条の24の7(法人事業税の標準税率)
- 特別法人事業税及び特別法人事業譲与税に関する法律
- 租税特別措置法42条の3の2(中小企業者等の法人税率の特例)/租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律(適用額明細書)
- 我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法(防衛特別法人税)
- 財務省「法人課税に関する基本的な資料」、総務省「地方法人課税の概要」
- 国税庁「令和7年度法人税関係法令の改正の概要」「法人税のあらましと申告の手引」
- ※2026年時点の制度に基づく記事です。税率・金額は改正で変わります。とくに均等割は自治体の条例で決まるため、本店所在地の自治体でご確認ください
次に読む
👉 法人成り1年目の社長へ|決算から申告までの全体マップ
👉 決算で税金を動かせるのは「決算まで」
👉 会社員・フリーランス・法人別税金の違い
👉 個人事業主に「後から来る税金」一覧
相談したいとき
このコースの続きはこちらです。