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更新日 2026-08-07 節税・経費

会社をもう1つ作ると得なのか──2社目のメリットと、否認される作り方

利益が増えてくると、「もう1社作ったほうがいいのでは」という話が出てきます。

税務上のメリットは、実際にあります。交際費の800万円枠も、法人税の軽減税率が使える年800万円の所得も、会社ごとに判定されるからです。消費税の免税期間を作れる場合もあります。

一方で、コストと制約もはっきりしています。そして最も重要なのは、税金のためだけに分けた会社は否認されうるということです。

この記事の結論

  • メリットは主に4つ。交際費800万円枠/軽減税率の年800万円/消費税の免税期間/事業リスクの分離
  • コストは均等割が各社(最低年7万円)/記帳と申告が2倍/社会保険の適用事業所が2つ
  • グループ法人税制は選択制ではない。完全支配関係があれば自動的に適用される
  • 消費税の免税は資本金1,000万円未満が前提。特定新規設立法人に当たると初年度から課税
  • インボイス登録をすれば、免税のメリットは消える
  • 分割等で作った会社には、納税義務免除の特例がある(そのままでは免税にならない)
  • 最後の壁は法人税法132条(同族会社等の行為計算否認)。事業の実体があるかどうか

1. メリット1・2──800万円の枠が2つになる

中小企業だけが使える制度には、年800万円という区切りが2か所出てきます。

制度 内容 根拠
交際費の定額控除限度額 年800万円までは損金(資本金1億円以下) 措置法61条の4第2項
法人税の軽減税率 所得のうち年800万円以下の部分は15%(800万円超は23.2%) 措置法42条の3の2

どちらも法人ごとに判定されます。1社で所得1,600万円なら、800万円超の部分に23.2%がかかります。2社に800万円ずつなら、どちらも15%です。

ただし2つ注意があります。

  • 令和7年4月1日以後に開始する事業年度で、所得が年10億円を超える事業年度は17%になりました
  • 通算法人(グループ通算制度を選択している法人)は、800万円を所得の比で配分します。交際費も同様です(「中小企業には関係ない」と言われる3つの制度

また、みなし大企業に当たると中小企業向けの特例が使えません。大法人に発行済株式の50%以上を保有されているような場合です。単に会社を2つ持っているだけでは、通常これには当たりません。

2. メリット3──消費税の免税期間

新しく設立した法人は、基準期間(前々事業年度)がないので、原則として設立から2期は免税事業者になれます。

ただし条件が並びます。

条件 内容
資本金1,000万円未満 1,000万円以上だと設立初年度から課税事業者(消費税法12条の2)
特定新規設立法人でない 他の者に50%超を支配され、その者等の課税売上高が5億円超だと初年度から課税(消費税法12条の3)
特定期間の判定 上半期の課税売上高と給与等支払額の両方が1,000万円超だと2期目から課税(消費税法9条の2)
短期事業年度 前事業年度が7か月以下なら、特定期間にならない
分割等で作った会社でない 分割等があった場合の納税義務免除の特例(消費税法12条)がある

そして最大の論点がこれです。インボイス登録をすると、免税のメリットは消えます。取引先が課税事業者で、インボイスを求めてくるなら、登録しないという選択が難しい場合があります。

詳しくは 法人成りしても消費税が2年免税になるとは限らない にまとめました。判断の前提は インボイスに登録すべき?迷ったときの判断フロー を参照してください。

3. メリット4──事業リスクの分離と、株主構成の設計

税務以外の理由も並べておきます。実務ではこちらのほうが重いことがあります。

  • リスクの分離。訴訟リスクや許認可リスクのある事業を切り離せる
  • 許認可の要件。業種によっては専業でないと許可が取りにくい
  • 売却・承継の単位。将来一部の事業だけ売るなら、別会社にしておくほうが簡単
  • 株主構成。事業ごとに出資者を変えられる。後継者に片方だけ渡すこともできる
  • 決算期を変えられる。繁忙期をずらせる

4. コスト──何が2倍になるか

項目 内容
法人住民税の均等割 赤字でも各社に発生。標準税率で最低年7万円(資本金等の額と従業者数で変わる)
記帳・決算・申告 別々に必要。税理士報酬もおおむね2社分
社会保険 適用事業所が2つ。2以上事業所勤務の届出が要る場合がある
登記関係 設立費用(株式会社で約25万円前後、合同会社で約10万円前後)、役員変更登記も各社
口座・契約 銀行口座、賃貸借契約、各種契約の名義が二重になる
会計処理 会社間の取引に適正な対価が必要。無償や低額のやりとりは寄附金・受贈益の問題になる

見落とされがちなのが最後です。2社間で仕事をやりとりするなら、第三者と同じ条件の取引にする必要があります。片方が無償で人を出したり、事務所を無償で使わせたりすると、寄附金と受贈益の問題になります。

5. グループ法人税制は、選択ではない

ここは必ず押さえてください。グループ通算制度は選択制ですが、グループ法人税制は選択制ではありません。完全支配関係(100%の支配関係)があれば、自動的に適用されます。

主な内容は次の4つです。

制度 内容 「法人による完全支配関係」に限るか
譲渡損益調整資産の譲渡損益の繰延べ 帳簿価額1,000万円以上の資産の譲渡損益を繰り延べる 限定なし(個人株主の兄弟会社にも効く)
寄附金の全額損金不算入・受贈益の益金不算入 グループ内の寄附と受贈 法人による完全支配関係に限る
貸倒引当金の対象外 グループ内の金銭債権は引当ての対象外 限定なし
現物分配 適格現物分配として簿価で移転

「法人による」の限定があるかないかで、効き方が変わります。社長個人が2社の株式を100%持っている(=個人による完全支配関係の兄弟会社)場合、寄附金・受贈益の規定は適用されませんが、譲渡損益の繰延べと貸倒引当金の除外は適用されます。

なお完全支配関係の判定では、個人株主はその親族等を含めて見ます(法人税法施行令4条の2第2項)。社長が60%、配偶者が40%を持つ会社は、社長「等」による完全支配関係です。

6. 否認される作り方

税務のためだけに会社を分けると、法人税法132条(同族会社等の行為計算の否認)の対象になり得ます。同条は、同族会社の行為または計算で、これを容認した場合に法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、税務署長がそれを否認して計算できるとしています。

実務で危ないのは、次のような形です。

  • 実体のない会社に外注費を払っている。従業員も設備もなく、実際の作業は本社が行っている
  • 2社の業務が区別できない。同じ場所で、同じ人が、同じ仕事をしている
  • 取引価格に合理性がない。利益調整のために毎期末に金額を決めている
  • 消費税の免税期間だけを目的に作り、期間が終わると別の会社を作る
  • 人為的に売上を分けている。同じ顧客との1つの契約を、事業年度末に2社に割り振っている

逆に、次が説明できれば分社の合理性は立ちやすくなります。

観点 説明できるべきこと
事業の内容 業種・提供するサービスが違う
顧客 取引先が違う(または契約主体が明確に分かれている)
従業員がそれぞれに所属し、労務管理が分かれている
場所・設備 事務所や設備が分かれている(共用なら賃貸借契約と適正な対価)
意思決定 取締役会・株主総会が別に開かれ、議事録がある
取引条件 会社間の取引が第三者と同じ条件になっている

分社化の動機として「事業リスクの分離」「承継の準備」「許認可」のような税務以外の目的を説明できるかどうかが、最終的な分かれ目になります。

7. 消費税の分割等の特例に注意

既存の会社を会社分割して2社にする場合、消費税法12条(分割等があった場合の納税義務の免除の特例)が働きます。新設分割子法人は、分割前の親法人の課税売上高をもとに納税義務が判定されるため、単純に免税にはなりません。

「新しく作れば2期免税」は、まったくの新設(分割等でないもの)の話です。ここを混同すると、免税のつもりで課税事業者だった、という事故になります。

8. 判断の順番

  1. 税務以外の理由があるか。リスク分離・許認可・承継・出資者。なければ再考する
  2. 年間のコストを出す。均等割・税理士報酬・事務負担で、年間いくら増えるか
  3. メリットを金額にする。交際費枠の増分、軽減税率の差、消費税の免税額
  4. 完全支配関係になるか確認する。なるならグループ法人税制が自動適用される
  5. 会社間の取引条件を設計する。賃貸借契約、業務委託契約、価格の根拠
  6. 登記・許認可は司法書士および各所管庁に確認する

なお、会社分割・設立の登記手続きは司法書士、許認可は各所管庁、社会保険の適用と2以上事業所勤務の届出は社会保険労務士および年金事務所の領域です。

まとめ

  • メリットは交際費800万円枠/軽減税率の年800万円/消費税の免税期間/事業リスクの分離
  • 軽減税率は所得10億円超なら17%通算法人は所得の比で配分
  • 消費税の免税は資本金1,000万円未満が前提。特定新規設立法人なら初年度から課税
  • インボイス登録をすれば免税のメリットは消える
  • 分割等で作った会社には納税義務免除の特例があり、単純には免税にならない
  • コストは均等割(各社最低年7万円)・申告2倍・社会保険2か所
  • グループ法人税制は選択制ではない。完全支配関係で自動適用。「法人による」の限定は規定ごとに違う
  • 最後の壁は法人税法132条。事業・顧客・人・場所・意思決定・取引条件で実体を説明できるか

この記事の主な根拠(出典)

  • 法人税法132条(同族会社等の行為又は計算の否認)/2条10号(同族会社)/施行令4条の2第2項(完全支配関係の判定)
  • 法人税法25条の2・37条2項(グループ内の受贈益・寄附金)/52条9項2号(貸倒引当金)/61条の11(譲渡損益調整資産)
  • 租税特別措置法42条の3の2(中小企業者等の法人税率の特例)/61条の4(交際費等の損金不算入)
  • 消費税法9条の2(特定期間)/12条(分割等があった場合の納税義務の免除の特例)/12条の2(新設法人)/12条の3(特定新規設立法人)
  • 地方税法52条(法人の道府県民税の均等割)/312条(市町村民税の均等割)
  • ※均等割の額は自治体により異なります
  • ※出典の各ページは2026年8月7日に確認しました。制度は改正されることがあります

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