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更新日 2026-08-05 法人の決算と申告

申告期限を1か月延ばすと、納付期限も延びる──ただし利子税がつき、その率は2026年に上がりました

3月決算の会社の申告期限は5月31日です。定時株主総会が6月にある会社では、この日程がそもそも成り立ちません。申告期限は申請により1か月延ばせます(法法75の2)。

ここで必ず出てくるのが「でも納付は2か月以内にしないといけないんですよね」という質問です。答えは、正確に言うと違います。

法人税の納期限は「確定申告書の提出期限」です(法法77)。だから提出期限が延びれば、納付期限も延びます。ただし延びた期間について利子税がかかります。

だから実務では、利子税を避けるために2か月以内に見込納付をします。「納付期限は延びない」という説明は、この実務を短く言ったものです。

そして2026年、その利子税の率が上がりました。

この記事の結論

  • 法人税の納期限=申告書の提出期限(法法77)。提出期限が延びれば納付期限も延びる
  • 延長期間には利子税がかかる。令和8年は年1.3%(令和7年は0.9%)。2026年から上がった
  • 一部を納付すれば、その翌日以後はその分に利子税がかからない(通則法62・64③)。これが見込納付の意味
  • 申請は事業年度終了の日まで定款等の写しを添付する。1回出せば翌期以後も続く
  • 事業年度終了の日の翌日から15日以内に処分がなければ、延長されたものとみなされる
  • 地方税は3本を別々に出す。法人住民税は届出、法人事業税・特別法人事業税は承認申請
  • 利子税は損金算入、延滞税・加算税は損金不算入。地方税は納期限の延長に係る延滞金だけ損金算入
  • 消費税も1か月延ばせる。ただし★中間申告の期限は延びない

1. 延長の制度は3つある

類型 根拠 延ばせる期間 申請期限
定款の定め等により2か月以内に定時総会が招集されない常況 法法75の2① 1か月(通算法人は2か月) 事業年度終了の日まで(通算法人は翌日から45日以内)
会計監査人を置いており、かつ定款等の定めにより3か月(通算法人は4か月)以内に定時総会が招集されない常況 法法75の2①一 4か月を超えない範囲で税務署長が指定する月数 同上
特別の事情があり、やむを得ない事情がある 法法75の2①二 税務署長が指定する月数 同上
災害その他やむを得ない理由で決算が確定しない 法法75① 税務署長が期日を指定 事業年度終了の日の翌日から45日以内
災害等による期限延長 通則法11 理由のやんだ日から2か月以内 地域指定の場合は申請不要

中小企業がふつうに使うのは1行目です。「定時総会が2か月以内に招集されない常況にある」ことが要件なので、定款で「定時株主総会は事業年度末日の翌日から3か月以内に招集する」と定めておくのが前提になります。

申請書には定款等の写しを添付します(法法75の2④)。定款の定めを理由にするのに、その定款が3か月以内の招集になっていなければ通りません。

2. 申請と、そのあと

申請期限は「最初に適用を受けようとする事業年度終了の日まで」です。3月決算なら3月31日。決算が終わってから「やっぱり延ばしたい」は間に合いません。

処分がなければ、承認されたものとみなされます。

事業年度終了の日の翌日から15日以内(通算法人は2か月以内)に、提出期限の延長または申請の却下の処分がなかったときは、1か月間(指定を受けようとする場合はその月数)延長されたものとみなす(法法75の2⑧が法法75⑤を読み替えて準用)。

一度承認されればその後の各事業年度についても続きます。毎期出し直す必要はありません。

ただし、続くからこそ注意点が2つあります。

  1. やめるときは届出が要ります。適用をやめようとする事業年度終了の日までに届出書を出します(法法75の2⑦)。
  2. 税務署長が取り消すことがあります。定款等の定めに変更が生じた場合、特別の事情がなくなった場合などです(法法75の2⑤)。定款を変えたのに放置していると、延長の前提が崩れます。

なお、延長を受けている会社に災害が起きたときは別ルートに乗り換えられます。事業年度終了の日の翌日から2か月を経過する日より前に災害その他やむを得ない理由が生じた場合は、その事業年度に限り延長の特例がなかったものとみなして、法法75または通則法11条を適用できます(法法75の2⑨)。

3. ★納付も延びる。ただし利子税がつく

冒頭の話に戻ります。法人税の納期限は「申告書の提出期限」なので(法法77)、提出期限が延びれば納期限も延びます。そして延びた期間について利子税を納めます(法法75⑦を法法75の2⑧が準用)。

条文上の率は年7.3%ですが、これは租税特別措置法で毎年の利子税特例基準割合(平均貸付割合+年0.5%)に置き換わります(措法93)。実際の率は次のとおりです。

期間 利子税(=還付加算金) 延滞税(2か月以内) 延滞税(2か月超)
令和6年1月1日〜令和6年12月31日 0.9% 2.4% 8.7%
令和7年1月1日〜令和7年12月31日 0.9% 2.4% 8.7%
令和8年1月1日〜令和8年12月31日 1.3% 2.8% 9.1%

2026年から上がりました。平均貸付割合が0.4%から0.8%に改定されたためです。4年ぶりの引上げで、利子税も延滞税も還付加算金も同時に動いています。

もっとも、1か月ぶんの1.3%は年率です。法人税額が1,000万円なら、1か月で約1万1,000円。金額そのものは大きくありません。それでも見込納付が実務の標準になっているのは、次の理由です。

4. 見込納付は「一部納付」

見込納付が効くのは、通則法に一部納付の規定があるからです。

国税の一部が納付されたときは、その納付の日の翌日以後の期間に係る税額の計算の基礎となる税額は、その納付された税額を控除した金額とする(通則法62①)。この規定は利子税について準用されます(同64③)。

つまり、2か月以内に見込みで払っておけば、その翌日以後はその分について利子税がかかりません。全額を見込納付すれば利子税はほぼゼロになります。

多めに払っておくのも1つの手です。納めすぎた分は確定申告で還付され、還付加算金が付きます。還付加算金の率は利子税と同じ(令和8年は1.3%)なので、払いすぎのペナルティがありません。

逆に、見込納付が足りなかった場合でも、延長された期限までに残りを納めれば延滞税はかかりません。利子税の計算期間は延滞税の計算期間に算入されないからです(通則法64②)。延長された期限を過ぎて初めて延滞税に切り替わります。

5. 利子税は損金になる

ここは決算整理でよく間違えるところです。

損金算入
利子税 算入される
地方税の納期限の延長に係る延滞金(道府県民税・市町村民税・事業税) 算入される
延滞税・延滞金(上記以外) 算入されない
加算税・加算金 算入されない
法人税・地方法人税・住民税の本税 算入されない

「延滞」という字が付いていても、納期限の延長に伴うものだけは損金になります。罰則的な性格がないからです。

損金になる事業年度も決まっています。

利子税および納期限の延長に係る延滞金は、納付の日の属する事業年度の損金。ただし、その事業年度の期間に係る未納の金額を損金経理により未払金に計上したときは、その事業年度(法基通9-5-1(4))。

つまり、未払計上するかどうかを選べます。申告書上は別表五(二)の記載に影響します。

6. ★地方税は3本を別々に出す

ここが最も抜けやすいところです。法人税で延長の処分を受けても、地方税は自動では延びません。

税目 手続 根拠
法人住民税(都道府県民税・市町村民税) 法人税の延長処分に連動して延長される。ただし「申告書の提出期限の延長の処分等の届出書」の提出が必要届出 地方税法53条
法人事業税・特別法人事業税 別途「承認申請」が必要承認 地方税法72条の25

様式はどちらも同じで、地方税法施行規則の第13号の2様式(申告書の提出期限の延長の処分等の届出書・承認等の申請書)を、主たる事務所所在地の都道府県知事へ提出します。

地方税でかかるのは利子税ではなく延滞金です。名前は違いますが、上に書いたとおり納期限の延長に係る延滞金は損金算入されます。

7. 消費税も1か月延ばせる

法人税の申告期限の延長の特例の適用を受けている法人が「消費税申告期限延長届出書」を提出すれば、消費税・地方消費税の確定申告の期限も1か月延長されます(消法45の2)。提出期限は、適用を受けようとする事業年度終了の日の属する課税期間の末日までです。

国税庁は延長期間の扱いをはっきり書いています。

申告期限が延長された期間の消費税および地方消費税の納付については、その延長された期間に係る利子税を併せて納付する必要があります。

延長されないものが2つあります。

  • 中間申告の期限
  • 課税期間の特例(3か月・1か月)により短縮された課税期間の確定申告期限

法人税だけ延ばして消費税の届出を忘れると、5月31日に消費税だけ期限が来ます。ここは必ずセットで出してください。

8. 延ばすべきかどうか

延長は「決算が間に合わない会社の救済」ですが、使わないほうがよい場合もあります。

延ばすほうがよい 延ばさなくてよい
定時株主総会が3か月目にある 一人会社・家族だけの会社で、総会の日程を自由に決められる
監査や親会社との連結の都合で数字が固まらない 2か月で余裕を持って締められている
期末後に大きな判断(役員退職金など)が残る 手続を増やしたくない

一人会社なら、そもそも延長が要らないことのほうが多いです。株主総会の招集手続は省略できても決算の確定そのものは省略できませんが、日程を自分で決められるなら2か月で足ります。延長すると地方税・消費税を含めて手続が3〜4本増えます。

範囲注記:定時株主総会の招集時期そのものは定款の定めで、定款変更には株主総会の決議が要ります。定款の作り方・変更の手続は会社法の領域で、登記が絡むものは司法書士にご確認ください。この記事は、その定めがあることを前提に税務上どう扱われるかを扱っています。

まとめ

  • 法人税の納期限=申告書の提出期限。提出期限が延びれば納付期限も延びる
  • 延長期間には利子税。★令和8年は1.3%(令和7年は0.9%)。2026年から上がった
  • 見込納付は「一部納付」(通則法62・64③)。払った分には翌日以後の利子税がかからない
  • 多めに払っても損はしない。還付加算金の率は利子税と同じ
  • 申請は事業年度終了の日まで定款等の写しを添付。★15日以内に処分がなければみなし承認
  • やめるときは届出定款を変えると取り消されることがある
  • 地方税は住民税=届出、事業税・特別法人事業税=承認申請。様式は同じ第13号の2様式
  • 利子税と「納期限の延長に係る延滞金」は損金算入。それ以外の延滞税・加算税は不算入
  • 消費税も1か月延ばせるが、★中間申告の期限は延びない
この記事の主な根拠(出典)

  • 法人税法74条(確定申告)/75条(災害等による申告期限の延長。7項の利子税)/75条の2(定款の定め等による申告期限の延長の特例。3項の申請期限、4項の定款等の写しの添付、5項の取消し、7項のやめる届出、8項の準用と読替え、9項の災害等)/77条(納付)
  • 租税特別措置法93条(利子税の割合の特例。利子税特例基準割合=平均貸付割合+年0.5%)
  • 国税通則法62条(一部納付が行われた場合の延滞税の額の計算等)/64条(利子税。2項の延滞税の計算期間からの除外、3項の準用)/11条(災害等による期限の延長)
  • 国税庁「延滞税の割合」(令和8年1月1日〜令和8年12月31日の延滞税2.8%・9.1%、利子税及び還付加算金1.3%)
  • 国税庁「C1-17 定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請」(提出時期、みなし承認、添付書類)
  • 法人税基本通達9-5-1(4)(利子税並びに納期限の延長の場合の延滞金の損金算入の時期)/国税庁タックスアンサーNo.5300
  • 地方税法53条(法人の道府県民税の申告納付)/72条の25(法人の事業税の申告納付)/72条の45の2(納期限の延長の場合の延滞金)/地方税法施行規則 第13号の2様式
  • 消費税法45条の2/国税庁タックスアンサーNo.6610(法人に係る消費税の確定申告書の提出期限について)
  • ※2026年時点の制度に基づく記事です。利子税・延滞税の割合は毎年変わります

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