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更新日 2026-08-07 消費税とインボイス

家賃・駐車場・リースのインボイス──契約書は巻き直さなくていい。通知書1枚で足りる

家賃・駐車場代・リース料は、契約書を交わしたあとは毎月の請求書が出ません。通帳に引き落としの記録が残るだけ、という取引です。

それでも一般課税で消費税を引くには、原則としてインボイスの保存が必要です。ただし1枚の書類にすべてが書かれている必要はありません。手持ちの契約書と通帳の組み合わせで要件を満たせます。

この記事の結論

  • 契約書を巻き直す必要はない。不足している項目を書いた通知書1枚を交付してもらえば足りる
  • 口座振替なら契約書+通帳、口座振込なら契約書+振込金受取書で要件を満たす
  • そもそも住宅の家賃は非課税なので、インボイスの問題は起きない。課税になるのは事業用の家賃と駐車場
  • 駐車場付き住宅は、条件を満たせば全体が非課税(1戸1台分以上・車の有無にかかわらず割当・家賃と別に駐車場代を取っていない)
  • 返還しない敷金・礼金・一時金や共益費は家賃に含まれるので、住宅なら非課税・事業用なら課税
  • リースは引渡し時に交付された1枚を保存すれば、分割控除の各期で引ける
  • 借主は年1回、公表サイトで貸主の登録を確認する。期中にやめる場合も、相続で承継される場合もある
  • 不動産賃貸業の簡易課税は第6種(みなし仕入率40%)

1. 1枚の書類で揃える必要はない

インボイスとして必要な記載事項は、複数の書類全体で満たしていれば足ります。契約書に一部が書いてあり、実際に取引を行った事実を示す書類と一緒に保存しておけば、要件を満たします。

家賃で言えば、こういう組み合わせになります。

記載事項 口座振替の場合 口座振込の場合
貸主の氏名又は名称 契約書 又は 通帳の履歴 契約書 又は 振込金受取書
登録番号 契約書(または通知書) 契約書(または通知書)
取引年月日 通帳の履歴 振込金受取書
取引の内容 契約書 契約書
金額・適用税率 契約書 又は 通帳の履歴 契約書 又は 振込金受取書
消費税額等 契約書(または通知書) 契約書(または通知書)
借主の氏名又は名称 契約書 又は 通帳の名義 契約書 又は 振込金受取書

通帳が担っているのは「取引年月日」です。契約書だけでは「何月分をいつ払ったか」が分からないので、通帳や振込金受取書が要ります。

なお、貸主から一定期間分をまとめたインボイスを出してもらう方法もあります。半年分・1年分をまとめて1枚で出すことも認められています。物件数が少ないなら、こちらのほうがすっきりします。

2. 令和5年9月以前の契約は、通知書1枚で足りる

インボイス制度が始まる前に交わした契約書には、当然ながら登録番号も消費税額も書かれていません。

この場合、契約書を巻き直す必要はありません。不足している事項の通知を別途受け、契約書と一緒に保存しておけば足ります。国税庁がそう明示しています。

貸主が出す通知書は、この程度で足ります。

賃貸借契約に係る適格請求書の記載事項の通知

○○ 様

下記物件の賃貸借契約について、適格請求書として必要な事項のうち、契約書に記載のない事項を次のとおり通知いたします。本書は賃貸借契約書と併せて保存してください。

  • 物件名:○○ビル 3階
  • 登録番号:T1234567890123
  • 賃料(月額):165,000円(うち消費税額等 15,000円)
  • 適用税率:10%

令和○年○月○日
貸主 ○○○○

大家の側から見ると、これは1枚の書式を作って入居者全員に一斉に送れば終わる仕事です。契約更新のたびに巻き直す必要はありません。

これから結ぶ契約なら、契約書の賃料条項にそのまま書き込んでしまうのがいちばん楽です。

賃料は1か月165,000円(消費税率10%・うち消費税額等15,000円)とし、毎月末日までにその翌月分を、貸主の指定する口座に振り込んで支払う。

物件数が多い大家なら、「インボイスの交付ではなく、契約書の記載内容等で対応する」旨をあらかじめ借主に伝えておくと、毎月「請求書をください」と言われずに済みます。

3. そもそも住宅の家賃は非課税

ここを飛ばすと話がややこしくなります。住宅の貸付けは非課税です。非課税なら消費税はかからず、借主も引けないので、インボイスの問題自体が起きません。

貸しているもの 消費税
住宅(人の居住の用に供することが契約で明らか。貸付期間1か月以上) 非課税
店舗・事務所・倉庫 課税
駐車場(原則) 課税
土地(1か月未満の貸付け・施設の利用に伴うものを除く) 非課税
民泊(住宅宿泊事業)・旅館業に当たるもの 課税(利用期間が1か月以上でも非課税にならない)

契約書に用途が書かれていなくても、実態から居住用であることが明らかなら非課税です。借主が個人で、居住用に使っていないことを貸主が把握していない場合などが、これに当たります。

住宅と店舗が一体の建物を一括で貸す場合は、住宅部分だけが非課税です。この場合は賃料を住宅部分と事業用部分に合理的に区分することになります。

つまり居住用アパートだけを持っている大家は、そもそも課税売上がないので登録の話にならないことが多いはずです。登録すべきかどうかの判断軸はインボイスに登録すべき?迷ったときの判断フローにまとめました。

4. 駐車場付き住宅という例外

駐車場は原則として課税ですが、住宅の一部として非課税になる場合があります。

全体が住宅の貸付けとされる駐車場は、次のすべてを満たすものです。

  1. 集合住宅の入居者について、1戸当たり1台分以上の駐車スペースが確保されている
  2. 自動車の保有の有無にかかわらず割り当てられる
  3. 住宅の家賃とは別に駐車場使用料等を収受していない

一戸建住宅に係る駐車場も同じ扱いです。

逆に言えば、家賃とは別に月3,000円の駐車場代を取っていれば、その3,000円は課税になります。「入居者向けだから非課税だろう」と決めつけると間違えます。別建てで料金を取った時点で、別の賃貸借の目的物という整理になるからです。

これは駐車場に限りません。家具・照明・冷暖房設備のように住宅と一体で貸されているものは家賃に含まれて非課税ですが、住宅とは別の賃貸借の目的物として使用料を別に取れば、その部分は課税になります。

なお、コインパーキングは自動販売機特例の対象にはなりませんが、駐車場業として簡易インボイスを交付できます。精算機から出る領収書に登録番号が入っていれば、それを保存して引けます。自販機特例の範囲は電車代・自販機・出張旅費はインボイスが要らないにまとめました。

5. 敷金・礼金・更新料・共益費はどうなるか

家賃には、返還しない敷金・保証金・一時金や、共用部分の費用を入居者が応分に負担する共益費も含まれます。

項目 扱い
返還する敷金・保証金 預り金なので課税の対象外
返還しない敷金・保証金・礼金 家賃と同じ。住宅なら非課税、事業用なら課税
共益費 家賃と同じ(住宅の貸付けに含まれない施設等に係る部分を除く)
更新料 家賃の一部として、同じ考え方で整理されるのが一般的

事業用テナントなら、礼金にも更新料にも消費税がかかります。入居時にまとまった金額が動くので、ここを課税対象から落とすと影響が大きくなります。

6. リースは、引渡し時の1枚で足りる

所有権移転外ファイナンス・リースは、消費税ではリース資産の譲渡として扱われます。したがってインボイスは、引渡しのときにリース料総額に対する1枚が交付されます。

一方、経理では賃貸借処理をして、毎月のリース料を支払うべき日の課税期間の課税仕入れとする(分割控除)ことも認められています。

この場合、引渡し時に受け取ったインボイス1枚を保存しておけば、分割控除する各課税期間の要件を満たします。毎月インボイスをもらう必要はありません。

注意するのは保存期間です。このインボイスは、最終支払期日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間保存する必要があります。5年リースなら、引渡し時にもらった1枚を12年近く持ち続けることになります。契約直後にファイルしておかないと、後から探せません。帳簿・書類の保存期間全体は領収書・帳簿は何年とっておく?にあります。

7. サブスク型・マイページ型は、落とさなくてもよい場合がある

最近増えているのが、書面の請求書が出ず、取引先のサイトの「マイページ」からダウンロードする形式です。

この場合、一定の要件を満たしていれば、毎月ダウンロードして保存しなくても差し支えありません。保存期間が満了するまでその画面でいつでも確認できる状態であること、真実性の確保と検索機能の確保の要件が満たされていることが条件です。

基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者などは、そもそも検索機能の確保の要件が不要とされているので、確認できる状態であれば足りることになります。電子取引の保存要件は電子取引データの検索要件にまとめました。

ただし「いつでも見られる」の保証は相手方次第です。解約後に見られなくなるサービスもあるので、解約する前に必要な期間分をダウンロードしておく運用にしておくほうが安全です。

8. 借主の心得:年1回は登録を確認する

家賃は1回の金額が大きく、しかも毎月続きます。引けないことが後で分かると、影響が大きくなります。

貸主が期中に登録をやめても、借主には連絡が来ないことがあります。相続で承継されて、相続人が登録事業者でないという場合もあります。国税庁も、必要に応じて公表サイトで確認するよう案内しています。

  • 契約時に、貸主が登録事業者かどうかを確認する
  • 年1回、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで登録内容を確認する
  • 引けなかった場合は、経過措置(令和8年10月から70%)の対象になるか確認する→免税事業者への支払いは7割しか引けない

9. 大家が課税事業者になる場合の話

事業用テナントや駐車場を貸していて課税事業者になった大家は、簡易課税なら第6種(みなし仕入率40%)です。

不動産賃貸業は、みなし仕入率が6区分の中でいちばん低い業種です。そのぶん、売上税額の3割で済む3割特例との差が最も大きく出ます。有利不利の比較は2割特例が終わるに、事業区分の判定は簡易課税のみなし仕入率、自分は何種?にまとめました。

不動産を持つ個人事業主の所得税側の論点は不動産を持っている個人事業主の税金にあります。

範囲注記:この記事は消費税の課税・非課税の区分と仕入税額控除の要件を扱っています。個々の物件の判定は契約内容と使用実態によって変わるため、実際の処理は所轄税務署または関与税理士に確認してください。賃貸借契約書の作成・変更そのものは宅地建物取引業・司法書士等の所管に関わる場合があります。この記事は2026年8月時点の制度に基づきます。

まとめ

  • 契約書は巻き直さなくてよい。不足事項の通知書1枚を契約書と一緒に保存すれば足りる
  • 口座振替は契約書+通帳、口座振込は契約書+振込金受取書
  • 通帳が担っているのは「取引年月日」
  • 住宅の家賃は非課税。課税になるのは事業用の家賃・駐車場・民泊
  • 駐車場付き住宅は、1戸1台分以上・保有の有無を問わず割当・別途料金を取っていない、の3つを満たせば非課税
  • 返還しない敷金・礼金や共益費は家賃と同じ扱い
  • リースは引渡し時の1枚で分割控除できる。保存は最終支払期日の課税期間から7年
  • マイページ型は毎月落とさなくてもよい場合がある。ただし解約前にダウンロードしておく
  • 借主は年1回、公表サイトで貸主の登録を確認する
  • 不動産賃貸業の簡易課税は第6種(40%)

この記事の主な根拠(出典)

  • 消費税法30条7項・9項(仕入税額控除の要件、保存すべき請求書等)/消費税法別表第二第13号(住宅の貸付け)
  • 国税庁 インボイス制度に関するQ&A 問95(口座振替・口座振込による家賃の支払。契約書と通帳・振込金受取書を併せて保存する。令和5年9月30日以前からの契約は不足事項の通知を受けて契約書とともに保存すれば差し支えない)
  • 国税庁 インボイス制度に関するQ&A 問99(所有権移転外ファイナンス・リース取引で賃借人が賃貸借処理した場合。引渡し時に交付を受けた適格請求書の保存で分割控除の要件を満たす。保存はリース料の最終支払期日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間)
  • 国税庁 インボイス制度に関するQ&A 問102-2(マイページ等で随時確認可能な電磁的記録の保存。令和7年6月改訂)/問47(自動販売機及び自動サービス機の範囲。コインパーキングは対象外だが駐車場業として適格簡易請求書を交付できる)
  • 消費税法基本通達6-13-1(住宅の附属設備等。別の賃貸借の目的物として使用料等を別に収受している場合は非課税とならない)/6-13-3(駐車場付き住宅。1戸当たり1台分以上、自動車の保有の有無にかかわらず割り当てられ、住宅の貸付けの対価とは別に駐車場使用料等を収受していないもの)/6-13-4(旅館業。住宅宿泊事業は非課税とならない)/6-13-5(店舗等併設住宅)/6-13-9(家賃の範囲。返還しない敷金・保証金・一時金、共益費)/6-13-10・6-13-11(用途が明らかにされていない場合)
  • 消費税法施行令50条1項、消費税法施行規則15条の5(電磁的記録の保存)
  • 国税庁 適格請求書発行事業者公表サイト
  • ※出典の各ページは2026年8月7日に確認しました。制度は改正されることがあります

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